それと……投稿遅れて申し訳ありません。
友希那side
私は今スーツの人たちに連れられて都内でも有名なホテルに来てる。
「何なんですか…私は今忙しいんですけど…これからバンドの練習があるんですが?」
「友希那さん、貴女の返事をこちらはずっと待ってるんです中々来ないから我々がこうしてきてるのですが…「いくらでも待つ」とは言ったんですが上の方がうるさくて申し訳ありません…」
「それで、用事とはなんなんですか?」
「前にも仰ったとおりです。我々が用意した最高のメンバーと共にFWFに出てもらいたいとの事です」
「誘いは有難いわ。本当ならすぐにでも返事はしたいわ」
「だったら…」
「でもまだ結論を出すわけには行かないわ」
私がそう言うと向こうは溜息混じりに喋り出した。
「…こちらの話に乗ってくれさえすればすぐにでも出場出来るのに…『孤高の歌姫』も落ちぶれたものですね…」
「…誰が落ちぶれたですって?そんなことは有り得ないわ」
「バンドを組んだ時はこちらは度肝を抜かされましたよ。あの『孤高の歌姫』がバンドが友達なんて…貴女以外きっとただの寄せ集めでしょう?コンテスト要員とか踏み台程度にしか考えてないのでは?」
「…私がどんなにバカにされるのは構わないわ。けれども…他のメンバー達のことは悪く言わないでください。それ以上言うといくら私ても許しませんよ?」
私が睨みつかせる。
「Roseliaとして肩身の狭いここにいるか我々の用意したメンバーでやるかなんて一目瞭然でしょう?」
「私はフェスに出れるなら!何だってするわ!…だけどまだ答えを出せないわ…」
「まぁ、いい報告を待ってますよ。今日のところは話はこれくらいにしておきましょう……それと上からの伝言です」
「?」
そう言ってFWFの人達は去っていった。私はホテルを出てSPACEに向かう。FWFに出れるのなら今すぐにでも返事をしたかった。出場して用意したメンバーと演奏してそれで優勝出来るなら。お父さんの無念を晴らせるのなら。私のお父さんはかつて有名なバンドだった。メジャーデビューが決まった時はとても嬉しかった。リサと和都も喜んでいた。けどお父さんのプロデューサーがお父さん達の作った曲を勝手にアレンジした。メジャーデビュー当日は結局その曲を歌いその後は引退した。それからはお父さんは音楽の話をしなくなった。その時から私はお父さんが成し得ることの出来なかったFWFの優勝。その事だけを考えて私は今まで音楽以外のことを全て切り捨てて来た。妥協のない完璧なバンドを作りあげるためにこうしている。
「早く練習に行かないと……1秒でも時間を無駄にするわけには行かないわ」
私はそう言いホテルを出てSPACEへ向かった。この時の私は知らなかった。さっきまでの会話や取引の事を聞かれていたなんて……
SPACEに来てからは紗夜と和都とリサがもう練習していた。
「ごめんなさい遅れてしまって」
「湊さんが遅れるなんて珍しいですね?何かあったんですか?」
「何でもないわ。それよりもあこと燐子が来てないわね…和都、なにか聞いてない?」
「俺は特に何も…紗夜は何か知らないか?」
「あいにく私もわからないわ…今井さんは?」
「アタシも何も聞いてないなぁ、遅れるなんて連絡も来てないし…」
そんなことを話してるとあこと燐子が息を切らしながらスタジオに入ってきた。
「お、遅れてすいません…」
「宇田川さん、白金さん。10分遅刻ですよ?」
「あこと燐子さん、なんかあったのか?」
和都がそう聞くと2人ともなんでもないと言っていた。
「遅れを取り戻すわ。2人ともすぐに準備してもらえるかしら?」
「あ…はい」
「はいっ!」
2人は急いで楽器を準備した。そして準備が整ったのを見て和都にいつものを頼む。
「それじゃぁ和都。いつもみたく頼むわね?アドバイス」
「了解です」
そしてやっと練習を始めることが出来た。
和都side
演奏を見ていると友希那と紗夜はちゃんと集中している。ズレも無いし2人とも流石と言うべきだ。Roseliaを結成する前から2人は知り合っていただけはある。リサは最初1テンポほど遅れがあったがしっかりと音を合わせてるし付いてきてるから大丈夫そうだ。あこと燐子さんは心做しか僅かにだがタイミングがズレている。そしてそのまま演奏は終わった。
「なぁ、あこと燐子さん。2人とも音ズレとタイミングが悪かったんだけどどうした?いつもならそのんとこのパートちゃんと出来てたはずだろ?」
俺がそう聞くと2人とも何か気になってるのか目をそらしてしまった。もしかして遅れたことと何か関係してるのか?
「宇田川さん、白金さん。和都の話を聞いてましたか?もし答える気が無いなら…」
紗夜がそう言うとあこは口を開いた。
「り、りんりん。やっぱり言うしかないよ…」
「あ、あこちゃん……」
あこはドラムの椅子から立ち上がった。
「あことりんりん、見ちゃったんですよ!」
「何をだ?」
「友希那先輩がスーツの人とホテルに入っていくのを!」
「!!」
友希那はかなり驚いていた。でも友希那にもプライベートの一つや二つあるだろ?俺はそう思ってると話を続けた。
「気になっちゃってついて行ったんです。そしたらスーツの人とFWFの話をしていて……」
「湊さん、それは本当ですか?」
紗夜に問い詰められて友希那は黙り込んでしまう。
「肯定しないんですか?だったら……」
「待って紗夜」
「和都?どうしました?」
「俺が聞く」
俺は背を向けてる友希那に向かって問いかける。
「おい友希那。どういうことか全部説明してもらえるよな…?FWFの人と何話してたんだ…洗いざらい白状してもらうぞ?」
俺が友希那にタメで喋りかけたのが気になったのか紗夜が聞いてきた。
「わ、和都?湊さんに対してなんで敬語じゃ……」
「そうだな。この際だから言っておいた方がいいな。あこと燐子さんもいる訳だしな……………友希那とリサは俺より年上だけど、幼馴染なんだよ。いつか言おうと思ってたけどこんな形で言うことになるなんてな…」
俺がそう言うとやはりあこと燐子さんは驚いていた。紗夜も驚いていたがすぐに冷静になった。
「それは驚きですが今は湊さんです。このままじゃ全員の練習に支障が出ます。ちゃんと説明してください」
「………わかったわ」
埒が明かないと思ったのか友希那が喋り出した。スーツの人もといFWFの人達に勧誘されてた事やメンバーの事など全部を聞いた。暫くして紗夜が口を開いた。
「………湊さん、私は今の話を聞いた限りだと『フェスに出れるなら誰でもいい。自分1人が立てればそれでも構わない』という解釈になりますが良いですか?」
紗夜のその発した一言により暗かった空気が更に重くなった。そしてあこも口を開いた。
「え……それじゃあこやりんりんに言ったあの言葉は嘘だったってこと?……そんな…」
「あ、あこちゃん…何もそこまでは…」
「?あの言葉?」
俺がそう言うとあこが説明を始めた。それはまだリサがRoseliaとして入ってなかった頃の話でその言葉はあこと燐子さんが友希那にRoseliaに入る際に言われた言葉だった。
『貴女達のレベルは確実に上がってるわ。あこ、燐子………2人はRoseliaに全てを賭ける覚悟はあるかしら?』
その言葉を思い出したのかあこは涙ぐんでいた。
「あの時かけた言葉は全部嘘だったって事なんですか!?フェスに出るためのコンテスト要員とか……そんなの…そんなのっ、びどいでずよぉ!!」
「ま、まって…あこちゃん!」
あこはそう言ってスタジオを出ていった。燐子さんはあこを追う形でスタジオを出た。
「湊さん…否定をしないということはそうだったということで受け止めていいんですね?」
紗夜がそう言うと友希那は黙って目を逸らしてしまう。それを見兼ねたリサがフォローに入った。
「ちょっとちょっと紗夜!?何もそこまで言うことは…友希那も黙ってないでなんか言ってよ!このままでいいの!?友希那!!」
「……………」
依然として黙ったままだった。それを見ていて俺は段々と怒りがこみ上げてきてしまう。もし友希那の事が本当なら…俺達を『踏み台』『コンテスト要員』として扱っていたということになる。そんなことを考えただけで収まりそうにない。きっと友希那はそう思ってないはずなのに。それはわかってたはずなのに…。そして遂に………俺の怒りが限界を迎えてしまった。
「………ふざけんなよ」
「?」
不思議に思ったのかリサと紗夜、友希那も俺の方を向いた。だがもう遅かった。
「…………ふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
俺の放った怒号は3人の耳を塞ぐほどの声だった。
「ワト!?ちょっとどうしt」
リサの静止に耳を貸さずに俺は友希那の胸ぐらを掴んだ。
「!?和都!?」
「友希那テメェいい加減にしろよ!?ふざけんなよ!何が『私達ならバンドの頂点を目指せる』だ!何が『このメンバーとなら』だよ!?散々綺麗事を並べてまとめときながら最後はなんだ!?フェスに出れるなら誰だっていいだと!?本気で言ってんのか!?あぁん!?俺達はテメェの『踏み台』でも『コンテスト要員』でもねぇんだぞ!!俺達のことなんだと思ってんだよ!?」
きっと今の俺は怒りが爆発してしまっているんだろう。
「落ち着いてよワト!?まず友希那を離さないと!」
リサが静止に入ってきた。俺は仕方なく友希那を離す。当の本人は恐ろしいものを見たと言わんばかりの恐怖を感じてるのか震えていた。そりゃそうだろう。友希那はともかくリサも紗夜も俺がキレるところなんて始めて見たのだから。
「…湊さん」
紗夜が口を開いた。俺にはこの後何を言うのか分かってしまった。
「…紗…夜?」
「…貴女には失望しました。結局和都の言う通りだったんですね…」
そう言ってギターをしょってスタジオ出口まで行こうとする。リサはそれを止めに入る。
「紗夜!?どこ行くの?」
「私は家に帰って練習します。今の今までが時間の無駄と考えただけで苛立ちを感じます…」
「バンドは!?Roseliaはどうなっちゃうの!?」
「もう関係ないわ。あなた達は『幼馴染』という関係でしょう?ただそれだけじゃない?」
そう言って紗夜は出ていった。その瞬間俺の携帯に着信が来た。紗夜からだ。
『明日ギターの練習するので時間があったら家まで来てもらえますか?無理にとは言いません』
との事。俺は「少し考えさせてくれ」とだけメールで伝えておいた。一方友希那はまだ微かに震えていた。
「ワ、ワト…まさかワトまで離れていかないよね?」
リサが少し涙目になって俺に訴えている。俺は今言える最低限の言葉を投げかけた。
「…もし友希那が本当にRoseliaで、リサと紗夜、あこと燐子さん、俺とバンドをしていきたいって言うならさっきの発言は取り消す。これ以上はもう俺は何も言わねぇよ…それでも変わらないんだったらそのままだ」
俺は自分のギターをしょってスタジオから、SPACEから出て少し離れたところでギターを置く。そしてそのまま思いっきり壁を殴った。
(……俺が言いたかったのはこういう事じゃねぇんだよぉ!!…………友希那…リサ…ゴメン…クソォ!!クソッ!!クソッ!!クソがぁぁぁぁぁ!!!!)
血が滲んできた拳で俺は何度も壁を殴った。そしてその日は寝ることが出来なかった。