ジェームズ、リリーとリーマスが再会した翌々日、リーマスは残りの自分の荷物を持ってくるためにロンドンへと戻って行った。今回は大きな荷物だけを持って来たらしい。おそらく、次に来るのは九月一日だろう。
彼を送り出した翌日、ダンブルドアから屋敷しもべ妖精全員に通達があった。シリウス・ブラック捕獲のために、アズカバンから
「万が一生徒に何かあった時、助けてやってほしい。それに、生徒が吸魂鬼と揉め事を起こさぬよう見張っていてほしいのじゃ。無論、できる限り見つからぬようにのう」
見つからないように、と言うのは、『そちらの方が面白そうだから』というダンブルドアの趣味と、屋敷しもべ妖精たち自身が、家事をしている様子を見られずに、こっそりと仕事をして驚かせたいという『小人の靴屋』的発想のためである。それにより、俺たちは生徒たちから尋ねられる以外は、基本的に姿を現わすことはない。
また、ダンブルドアは俺にだけ耳打ちをしてきた。
「…………もし、シリウスが来たら匿ってやってくれんかのう。彼は無実じゃと、ジェームズたちからも聞いた。無実の者を吸魂鬼に引き渡すなど、そんな道理は通らんからの」
「もちろんですとも。そもそも、ジェームズ様にもそう言われております。シリウス様を見つけ次第、ジェームズ様、リリー様の元へと案内いたします」
「うむ、頼んだ。
……………ケーキを一つ、頼めんかのう?」
「申し訳ありませんが、お菓子の食べ過ぎにより始業式まで甘味は禁止です」
項垂れるダンブルドアをよそに、俺はしもべ妖精たちに掃除の指示を与えていった。
九月一日。
いつもよりも少し遅れて、ダンブルドアから料理の合図が来た。
彼からの指示で、今回のデザートはチョコレートを多めにしてある。精緻に飾り付けられたチョコケーキに、トリュフなどの丸いチョコ、ホットココアも用意しておいた。それに、それぞれの寮の紋章を入れたコインチョコも。新入生たちにはコインチョコが人気のようだ。フレッドとジョージの『いつもおいてくれてたらいいのに』という声も聞こえた。
翌日、各寮のベッドメイキングに向かった。これも、毎日朝と昼、夕方の三回、生徒のいないタイミングでやっている。
ハリーのベッドを整えていた時、トランクから『怪物的な怪物の本』が見えたから、少しばかりこれを扱うアドバイスを書き残すことにした。
付箋を一枚本に貼り、『ペットが喜ぶことをしてみましょう』と書く。この本を無事に開ける方法は、『背表紙を撫でる』だったはずだ。たいていのペットは、撫でられると喜んだはず。問題があるとしたら、ハリーがちゃんとわかるかどうか…………ヘドウィグがいるし大丈夫だろう。
さて、あとは教師たちのベッドと、ポッター夫妻の料理、シリウスを迎える準備もある。少し時間を取られてしまったから急がなければ。