俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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11.勝てる気がしない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会メンバーの朝は早い。

放課後や昼休みだけで全ての仕事が終わるわけじゃないからな。

まぁ、ある意味三人で仕事を回しているようなものだから、無理もない。

 

 

 

 

 

「朝からなに?」

 

さて仕事を始めよう。そんなことを考えていた矢先に勢いよく叩かれたドア。入ってきたのはもちろん穂乃果たち三人。

必然的に絵里の表情が険しくなった。入ってきた三人に問いかけた言葉も、それはそれは低く冷たいものだった。

 

「講堂の使用許可をいただきたいと思いまして」

 

対照的に、穂乃果は朝から明るく元気だ。

 

「部活動に関係なく、生徒は自由に講堂を使用できると生徒手帳に書いてありましたので」

 

生徒手帳…俺、読んだことすらないよ。

まぁ、講堂を使用するのは問題ないとは思うが…

 

「新入生歓迎会の日の放課後やなぁ」

 

希はなかなかよく見ている。

そして、こいつらの意図もわかっているのだろう。

 

「それは…」

 

「ライブです!三人でスクールアイドルを始めたので、その初ライブを講堂でやることにしたんです」

 

なるほどな。ライブをやってからでも部活動を作ることはできる。

なにより、うまくいけば部員をゲットできるかもしれない。あくまでうまくいけばの話だが。

 

「ほ、穂乃果…」

 

それにしても、後ろにいる海未とことりの顔があまり乗り気ではない気がするのは俺の見間違いか?

 

「やるよ〜」

 

駄々をこねる子供のような声を出す穂乃果に海未は困った顔をし、絵里は不審そうな目を向ける。

 

「待ってください。まだステージに立つとは…」

 

海未はおどおどとし始める。きっと、ちゃんとやると決めたわけではなかったのだろう。

そんな様子に絵里はため息をつく。

 

「できるの?そんな状態で」

 

「え?だ、大丈夫です!」

 

誰が見てもこういうだろう。

その大丈夫は絶対に大丈夫じゃない。ってな。

でも、ここでライブの話がなしになったら、それこそスクールアイドルなんてできないと思う。

 

「新入生歓迎会は遊びではないのよ」

 

今まで黙っていたが、助けてやるか、と口を開こうとしたら、隣にいた希が手を握ってきた。

突然のことに驚き口をつぐむ。

 

 

「三人は講堂の使用許可を取りにきたんやろ?部活でもないのに、生徒会が内容までとやかくいう権利はないはずや」

 

にへらと笑って言う希に、絵里が反抗できるはずなかった。

それに、希の言っていることは正しいし。

 

「そ、それは…」

 

ここは絵里の負けだ。

 

 

 

「「「失礼しました!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かになった生徒会室。

 

 

「あ、手…ごめんなぁ」

 

俺は少しも気にしていなかったが、希は眉尻を下げて謝った。

今さらになって、手が柔らかかったな…とか思い出す。

 

「いや、もっと繋いでてもよかったけど?」

 

「…ひろっちが言うと冗談に聞こえんよ」

 

何故かドン引きされてしまった。

 

「大翔に触ったら(けが)れるわよ」

 

「んなわけあるか!」

 

真顔で言われるとからかわれてるだけだって思ってても傷つくんだが…

 

「やーん。ひろっちのえっち」

 

なぜか、胸をかばうような仕草とともに希も参戦する。

両腕に挟まれたそのたわわな果実が揺れる。

もー、こいつらのこういうところほんと嫌だ。少しくらいは気にしろよな…

 

 

「って、俺は彼女にしか手を出さない!」

 

彼女ができるとも思えないけど。

 

「彼女いたことないのに?」

 

「これから先も彼女できないんとちゃう?」

 

なに言ってんのって顔で俺を見ないでくれ。

 

「自分で言うのはいいけど、他の人に言われるとダメージでかい…」

 

なんでこいつらはすぐ俺の心を折ろうとするんだ…

 

 

 

 

 

いつも通りのやりとりを終える。いつも通り?やめてくれ、こんなこといつもやってたら俺がもたない。

 

 

 

「なぜあの子たちの味方をするの?」

 

絵里の表情はどこか悲しそうだ、

ずっとそわそわしてたのはこのことを聞きたかったから…か。

 

 

なぜ絵里が、あそこまであの三人のことを否定するのかはわからない。まぁ、自分も理事長に言われたからって言うのもあるかもしれないが、どこか意地を張っているようにも見えるしな。

それにひきかえ希は、あの三人のやることに興味を持ち、うまい具合に活動を手助けしようとしているそぶりを見せる。

 

アイドル部を作ることにも賛成のようだし、ライブも絵里が却下しようとしていたところを助けてくれた。

俺を遮ってまでああ言ってくれたんだから、よっぽどあいつら三人のことを気に入っているのだろう。

 

うん。俺もなんで希があの三人の味方をするのか気になるな。

 

 

希は答えるよりも先に窓を開ける。

 

「何度やっても、そうしろって言うんや」

 

小さく呟いた言葉はちょっと意味がわからなかった。

 

「ん?」

 

「カードが…」

 

窓から強い風が室内に入る。

 

「きゃっ」

 

強い風をもろに受けた絵里は、かわいらしい悲鳴をあげた。

 

机の上に置いてあった、希が愛用しているタロットカードが宙に舞う。

風の力で舞い上がりパラパラと部屋に落ちる中、一枚のカードが壁に張り付いた。

 

「太陽のカード…」

 

で合ってるよな。カードの意味はなんだったかな…

 

「カードがウチにそう告げるんや!!!」

 

突然希がそう叫ぶものだから、俺も絵里もびっくりして一瞬固まってしまった。

 

「なんだそれ」

 

「…大翔、後片付けはちゃんとするのよ」

 

「なんで俺!?」

 

絵里はそれだけ言うと仕事を始めてしまった。

 

「ひろっち、ごめん…」

 

目を伏せて、恥ずかしそうに希が謝ってくる。

かわいいから許してやろう。

珍しく本気で反省しているみたいだしな。

 

 

はぁ…仕方ないから拾うか。

絵里が一人で仕事する中、俺と希の二人は床に散らばっているタロットカードを拾う。なんともおバカな光景だ。

 

「これで終わりか…?」

 

とりあえず落ちていたカードを全て拾い集め、希に手渡す。

希は確認のために、しゃがんだまま枚数を数え始めた。

 

 

「ひろっちぃ…カードが一枚たらへん…」

 

ひと息つこうと思った瞬間、下から希が悲しそうに言うものだから、またまた床を這いつくばってカード探しを再開する。

 

机の上から絵里の笑い声が聞こえた。

 

バカにしやがって…いつか覚えとけよ。

 

 

希がかわいいから、今回は見逃してやる。

今回だけ特別だからな!

 

「絵里、後で覚えとけよ!」

 

立ち上がって絵里を指差してそう宣言する。

 

「ほら、早く探さないと時間ないわよ」

 

「ひろっちぃぃぃ」

 

俺、弱いな。

 

 

「ちゃんと見つけるから待ってろって」

 

「うん。ありがと」

 

大事にしているものだからか、本当に悲しそうにする希。そんな希の頭を優しく撫でてから探すのを再開する。

 

 

「希とか、あの子達には甘いんだから…」

 

「あった!絵里、なんか言ったか…?」

 

希にカードを手渡して絵里の方を向くとなぜか不機嫌そうな顔をしていた。

 

「なんでもないわよ」

 

 

なかなかに意味がわからない。

ま、なんでもないならいいんだけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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