俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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12.覗き見なんて…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝は苦手だ。って言うよりも、この起きたてでぼーっとしてしまうのがなんだか嫌だ。

 

 

 

登校中何度あくびをしたかわからない。靴を脱ぎ、上履きを履こうとしたところでもう一度あくびが出た。

それと同時に靴箱からするりと一枚の手紙が落ちる。

なんともかわいらしい薄いピンクの手紙だ。

 

「んー。これは…」

 

目をこすりながらもう一度それを見ると、やはり一枚の手紙だ。これはもしかしなくてもラブレターなのでは?と意味もなくそれを光に当ててみたり…

 

「ひろっちー!なんやいいもん持ってるなぁ?」

 

間延びした口調と少しだけわざとらしい関西弁に振り向くと、そこにはご察しの通り俺の親友である希がいた。

 

「の、希!?」

 

キョロキョロと周りを見回し、もう一人の親友の姿がないことを確認し、心底ほっとする。

ここであいつもいたら、俺の生死に関わってくるからな。

 

 

 

それにしても、急に背後から声をかけられて正直かなり驚いた。タイミングがベストすぎて、ずっと見られてたんじゃないかと錯覚してしまうくらいにだ。

ここは少しでも大げさに言っておかないと、誰も信じてくれなさそうだからな。この状況がどれだけめんどくさいのかってことを。

 

そんな俺の様子を見てか、はたまたもらったものに関してか、希は俺を茶化すように笑った。

 

「見なくてええの?」

 

「あぁ。あとで見ることにするよ」

 

今見たら余計に何か言われそうだしな。なんて口にしたら、それだけでもなんか言われそう…

 

カバンの中に手紙をしまうとつまんないなぁ、と希はそのまま教室に向かおうとしてしまった。

慌ててそれを追いかけて、希の肩に手を回した。希はびくりと肩を震わせてそっぽを向く。

 

「…どうしたん?」

 

「置いてくことないだろ。なに?ヤキモチやいちゃった?」

 

実際のところそうかはわからないが、こう言う他の女子が絡んでくることは大体いつもやたらと首を突っ込もうとしてくる。

なんていうか…少し拗ねているような、面白がっているように見えて、つまらなそうな顔をしたり。

まぁ、なんだかんだ言って深く聞いてこないのは、彼女なりの気遣いなのだろう。

 

絵里や希がそういった手紙をもらったり、呼び出されるたびに、俺は心の中で面白くないと思っている。

なんか、あいつらに彼氏とかできたらおれとはもう仲良くしてくれなくなるんじゃないかって、そんなことないってわかってるけどさ。

こんなこと絶対言わないけど。

だから、同じこと思ってくれてたらな…なんて、だっさいな。

 

 

 

「いや、ひろっち定期的にもらってるやん。そういうの」

 

何をいまさら、と首を振る希の耳はうっすらと赤く染まっていた。その反応が、言葉とは裏腹に答えになっているようで、思わずにやけてしまう。

 

ふっ、かわいいやつ。

 

ワシャワシャと頭をなでまわすと、きつく睨まれてしまった。

 

 

「えりちがもらったならまだしも、ひろっちなんかのためにヤキモチやくわけないやろ」

 

べっと舌を出して、そのまま走って行ってしまった。

 

希が照れるなんて珍しいこともあるもんだ。

こんななら、朝も悪くはないかな。なんて、俺って単純?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になり、さっそく朝もらった手紙に書かれていた通りの場所へ行くことにした。

今日は生徒会の仕事あったっけ?なんて考えながら、校舎裏の人気の少ない場所へ。

 

 

 

内容はやはり告白というものだった。

後輩と思われる彼女は俺に一生懸命想いを伝えてくれた。

 

「こんな俺のことを好きになってくれてありがとう。でも、ごめんね」

 

今までと同じように返事をする。

なるべく笑顔で、相手が傷つかないように。なんて言っても、どちらにせよ断るってことは相手を傷つけているわけだけど…

 

 

「あの…絢瀬先輩か東條先輩と付き合ってるんですか…?」

 

「へ?」

 

突然の質問に間抜けな声が出てしまった。

 

「いつも、一緒にいますよね?」

 

「って、違う違う!あいつらは親友!友達だよ」

 

「そうなんですか?じゃあ…」

 

突然ネクタイを引っ張られて体が前のめりになる。

 

なんとも積極的な子がいたものだ。

 

俺は今、告白を断ったはずの後輩ちゃんに熱いキッスをされてしまっていた。

 

「ちょ…!?」

 

「ごめんなさい。もうこれで、ちゃんと先輩のこと諦めます!」

 

そのままこの場を去ろうとする彼女の腕を反射的に掴む。

振り返った彼女は少しだけ期待しているような顔をしていた。ごめんね、期待してくれているような言葉はかけられない。そう心の中で謝りながら、俺は真剣な顔で彼女と向き合う。

 

「…キスとか、そういうのって女の子にとっては大事なものだろ?だから、もっと大切にしたほうがいいと思うよ」

 

少し説教じみたことを言ってしまった、と後悔した時には遅かった。

目の前の彼女の顔は歪み、涙が溢れ出す。

 

「ごめっ泣かせるつもりはなくて!」

 

「いえ、ありがとうございます。先輩のこと好きになってよかったです」

 

そう言って彼女は涙をぬぐい、そのまま走って行ってしまった。

 

ほんとに泣かせるつもりはなかったんだけどな。なんで彼女は泣いたんだろうか…?

 

 

ふと上を向くと、窓から顔をのぞかせていた赤髪の子とばっちり目が合ってしまった。

慌てて教室内に戻っていったが、盗み見なんて許せないな。なんて、嘘だけど。

 

その後すぐに聞こえてきたピアノの音につられるように、俺は音楽室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐々に音楽室に近づくにつれ、ピアノの音とともに歌声も聞こえてくる。

その二つが見事に調和していて、とてもきれいな世界観を生み出していた。

それに、感情の乗せ方がとても上手だ。

聞いていて思わず感情移入してしまうような、そう思わせることができるほどの圧倒的歌唱力。

 

教室のドアの窓からちらりと中を覗く。

そこには先ほどの赤い髪をした女の子が、目を瞑ってピアノを弾いて歌っている姿があった。

 

 

ーーーきれいだ。

 

音も、その姿も、彼女の周りはキラキラと輝いて見えた。

いつの間にか、俺はすっかり彼女のピアノに、歌に、彼女自身に魅了されてしまっていた。

 

なんだか今入ったら全てが終わってしまいそうで、それがどうしても嫌で、俺は教室の外で彼女が作り出す音を聞きながら待っていることにした。

 

 

 

 

 

音が完全に消えたタイミングで、ちゃんとドアをノックしてから中に入る。

 

「すごいな、キミ。思わず聞き惚れちゃったよ」

 

そう言いながらピアノへと近づく。赤髪のピアノ少女は突然の俺の登場にびっくりしているようだ。

 

 

「な、なに勝手に聞いてるのよ!」

 

おかしいな。褒めたはずなのに思い切り睨まれてしまった。それに…

 

「その言葉、そっくりそのままお返ししようか?なんて…ごめんって。そんなこわい顔したら、きれいな顔が台なしだよ?」

 

「う、うるさいわね!余計なお世話よ」

 

そんなに怒らなくてもいいじゃん。

 

「そんなことより、ピアノも歌もめちゃめちゃ上手だね」

 

「当たり前でしょ…!」

 

ふんっとそらした横顔が少し照れているように見えたのは、黙っておくことにしよう。

 

 

 

「その…あの、さっきは盗み見なんてするつもりじゃなかったのよ。でも、ごめんなさい」

 

これは俗に言うツンデレという類の子なのだろうか?

さっきまでのツンツンした態度とは違い、今度はシュンとしている。

あ、これじゃデレてないか。

 

 

 

「べつにいいよ。見られたからってどうこうなることじゃないしな」

 

あの状況を見られて嫌なのは、俺よりも後輩ちゃんのほうだろうし。

 

「はぁ…これでチャラってことでいいかしら?あっ、名前…」

 

自分の髪を指でくるくると弄りながら上目遣いで見つめてくる。

 

「一年の西木野真姫さん、でしょ?俺は三年の結城大翔だ」

 

「な、なんで知って…」

 

彼女は自己紹介を聞くなり若干引き気味な声を出す。

 

「ちょ、新入生代表だったでしょ!俺生徒会だから知ってただけ!他意はない!」

 

なんだかこの雰囲気だと俺がストーカー的な人間だと思われてしまう!それだけはなんとか阻止しなければ、と畳み掛けるように弁明する。

そんな俺を見てか彼女はくすりと笑う。しかし、すぐに少しだけ難しい顔をした。

 

「そう。それよりも、ごめんなさい。あなたの方が年上なのに」

 

「あぁ、べつにいいよ。大翔でいいし、敬語も使わなくていいよ」

 

俺も自然に話してたしな。と笑うと、変な人、と真姫も笑ってくれた。

 

「大翔っておかしいの?いや、絶対そう」

 

自分から聞いておいて、俺が答える前に自己完結されてしまった。

つーか、仮にも先輩に向かって、ましてや初対面の人に向かっておかしいとか。

いや、それよりも。

 

「俺、なんか変だった?」

 

正直、あの状況でなんで泣かれてしまったのか未だに謎のままだ。

女の子である真姫なら、あの子の気持ちもわかるかもしれないと期待の眼差しを向ける。

 

 

「あの状況なら怒ってもいいはずなのに、相手のことを気遣ったから。私もよくわからないけど、そういうのはなんだかずるいんじゃない?」

 

「んー。難しいな?」

 

「そうね」

 

二人して首をかしげると、また自然と笑みがこぼれた。

 

 

「それにしても、少し想像してたのと違ったかも」

 

「え?」

 

「だって、いつも笑顔とお菓子振りまいていて。自分より誰かの為に行動して。もっと王子様みたいな人なのかと思ってた」

 

周りもそう騒いでたし、と真姫はため息をついた。

真姫の話は、誰のことだろうかと錯覚してしまうくらいに全く俺とは別の人を話しているようだった。

まぁ、たしかにお菓子は自分が好きなのもあって周りにおすそ分けしたりしてるけど。王子様みたいってのはおかしいだろ。

 

「なんだそれ。俺はごくごく普通の高校生だよ。周りとなにも変わらない」

 

 

 

「そうね。でも、少しだけ特別かもね?」

 

くすりと笑う彼女は俺よりも年上なんじゃないかってくらいに大人びていた。

 

「真姫はほんと、その名の通りお姫様って感じだよなぁ」

 

「なによそれ。バカにしてる?」

 

「いや?ただ、案外かわいらしい一面もあるのかなって思っただけ」

 

「い、意味わかんない!」

 

否定したと思ったら、当然でしょ、とドヤ顔でこっちを向いた。

って、やっぱり照れてるじゃねぇか。

 

 

「あ、俺生徒会の仕事残ってるんだった。じゃ、またくる予定だからよろしくな!」

 

「え、えぇ…って!」

 

「じゃあな!」

 

やばい、やばい。これ以上遅れると希が絵里にあることないこと吹き込みそうだからな。

ま、いいことあったしそれくらいは我慢してやるとするか!

 

 

 

 

 

そのあと俺は、廊下を全力疾走したことに対してのお叱りを受けることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





真姫ちゃんがピアノ弾いてる姿っていいですよね。笑


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