俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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15.秘密、約束

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日は散々だった…

穂乃果はべったりで離れてくれないし、ことりと海未もなにを勘違いしてかぎゃーぎゃーうるさかったし。聞いてびっくり俺の取り合いが繰り広げられた。

散々じゃないじゃないかって?まぁ、そうかもしれない。ふはは、役得ってやつだな。

ま、おもちゃの取り合いみたいな感じだけど…

 

「なに変な顔してるの?」

 

「なんだ絵里か。びっくりしたー」

 

さっきまで誰もいなかったはずなのに、突然肩を叩かれたものだからびっくりしてしまった。

びくりと肩を揺らした俺を見て、絵里はくすくすと笑う。

 

「今日の朝は神田明神の掃除をするって、さっき希から連絡があったわ」

 

「じゃ、ふたりきりだな?」

 

「なんだか嫌だわ。大翔と二人とか、ろくなことなさそう」

 

大げさなほどに深いため息をつく絵里に悲しくなる。

 

「とか言って、本当は嬉しかったりして?」

 

「そ、そんなわけないわよ!」

 

俺は、結構うれしいのに。べつに、希がいてもうれしいのは変わらないけどさ。

パソコンに向かってしまった絵里をちらりと盗み見ると、小さく笑みを漏らしていた。

 

「…やっぱうれしいんじゃん」

 

「もう、口を動かすよりも手を動かして」

 

「へいへい」

 

朝のこんな生徒会室も、やっぱり悪くないな。

普段からちゃんと仕事をしているため、これといって急いで終わらせる必要があるものもない。俺は、書類に目を通しながらのんびりと仕事をしていた。

対する絵里は、後々困らないように余分なところにまで手をつけていた。時々、表情を曇らせたり、ため息をついてみたり。

そんな姿に苦笑しつつ、心の中で感謝する。

 

こうして二人でいると、出会ったばかりの頃を思い出す。

あの頃と見た目はあまり変わっていないが、絵里の態度といい、俺の絵里に対する心の持ちようといい、随分と変わったと思う。

気になる美人の冷徹なクラスメイトから、仲のいい親友だもんな。

なんて、思い出に浸っていたら見つめすぎていたようだ。

 

「どうしたの?」

 

呆れたように笑う彼女は、あの頃と変わらずとてもきれいで、思わず見とれてしまった。

俺は今でももっと絵里のことが知りたくて、この笑顔が好きで。

きっかけは声だったかもしれないけど、今は絢瀬絵里のことが大好きだ。

 

 

 

「なんでもない!仕事、そろそろ終わりそう?」

 

「ええ。今日は大翔が静かだったおかげで集中できたわ」

 

何か言い返そうと口を開いた瞬間、ポケットの携帯が震えた。短い、ということはメッセージだろう。

素早く画面を開く。

 

《すごいよたいちゃん!とにかく屋上に来て!》

 

穂乃果らしい、全く何が言いたいのか伝わらない内容。

これは、行かなかったら生徒会室まで押しかけてきそうだ。

 

「ごめん絵里。ちょっと用が入った」

 

「あの子たちのところ?」

 

絵里の目があまりにも真剣で驚いた。なんだかよくわからないが頷く。

 

「そう。戸締りは私がしておくわ」

 

「ありがとな。じゃあ、また教室で」

 

名残惜しく思いつつも、生徒会室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急いできた屋上は、予想とは裏腹にとても静かだった。

ゆっくりとドアを開けたその先には、ノートパソコンを食い入るように見ている三人の姿。少しずつ近づくと、パソコンから音が流れていることがわかった。

 

ピアノと真姫の歌声だ。

 

 

「それ、まさか…」

 

俺の小さなつぶやきに、海未が振り向いた。

 

「あ、ひろ。西木野さんが、曲を作ってくれたんですよ」

 

ことりは俺の存在に気がつくと、最初から音楽を流してくれた。

 

ピアノの音、真姫の歌声。それが一つの音楽となっていた。

 

「西木野さんが曲作ってくれたみたいなんだ!すごいよね!」

 

「ああ!これ、お前らμ'sの曲だぞ!」

 

なんだか自分のことのように嬉しい。

オリジナルの、μ'sだけの曲。

 

「そうですね。これから練習も本格的にがんばらないと、ですよね!」

 

 

「うん!がんばるぞー!!!」

 

「「「おー!」」」

 

 

屋上に、俺たちの声が響き渡った。

それはもう、喜びとやる気に満ちた、そんな声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ!」

 

「いいから、今日はウチと二人で帰ろ?」

 

今日は珍しく放課後に生徒会がない日だ。

俺はのんびりお菓子でも食べながら帰ろうか、なんて考えていたら突然希に手を引っ張られた。

 

「いいけどさ。絵里は?」

 

「えりちは亜里沙ちゃんと帰るって」

 

「亜里沙…最近会ってないな」

 

「もう、えりちもひろっちも亜里沙ちゃんのこと大好きなんやから」

 

呆れたように笑う希。

そんな希も亜里沙のことかわいがってるくせに。なんて言ったら、照れて拗ねてしまうだろう。

 

 

「妹がいたらあんな感じなんだろうなってさ。かわいいじゃん」

 

「そうやけど。ひらっちが言うとロリコンっぽい」

 

「んな!?ひでぇ!亜里沙はそんな年齢じゃねぇよ!」

 

中学三年生だし。見た目も絵里に似て美人だし。まぁ、絵里よりは少し幼くてあどけなさがあるけど。

 

「ってことは、手を出す可能性もあるってことやんなぁ?」

 

「ねぇよ。絵里の妹だぜ?姉がこわい」

 

これはきっぱりと言い切れる。亜里沙に手を出したってなったら、絶対に殺される。

それくらいに絵里は妹を大切にしているのだ。それに、亜里沙もお姉ちゃんである絵里のことが大好きだ。

あの姉妹は見ているだけで微笑ましい。

ま、最初から俺が入る隙なんてないさ。

 

なんてない話をしながら歩いていたら、いつの間にか希といつも別れる道の少し手前にある公園まで来ていた。

まぁ、今日は二人だし家まで送るつもりだけど。

 

「ひろっち、少し公園で話さん?」

 

「ん?珍しいな。俺は全然構わないよ」

 

 

そうして、公園のベンチで話すことになった。

ベンチに座ってからしばらくの間、希は公園で遊ぶ子どもたちを柔らかい眼差しで眺めていた。

 

「ウチら、カップルに見えるかな?」

 

「ぶふっ!!!」

 

「ひろっち汚い」

 

ふと、本当にふと思ったかのようにそんなことを言うものだから、思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまった。

希はそんな俺を見てくつくつと笑って、ハンカチでお茶を拭いてくれた。

 

「ごめん、ありがとう」

 

「いえいえ。ひろっちはおっきい子どもみたいやな」

 

そう言ってまた笑うから、恥ずかしさになにも言えなくなってしまう。

希が変なこと言うのが悪いのに。

 

 

「希。何か、俺に話したいことでもあるんじゃないの?」

 

ひと息ついたところで、俺は希にそう問いかける。これ以上待っても、からかわれるだけで言いたいこと言ってくれなさそうだったから。

案の定俺の問いかけに一瞬固まって、へらりと笑った。

 

「はは、バレてたか」

 

「そりゃまあ、俺と希の仲だし?俺ら親友だし?」

 

俺がふざけたようにそう言えば、いつもは悪ノリしてくれる。

しかし、今回ばかりは真剣なのかなにも言わず、俺をじっと見つめてきた。

その仕草に少しどきりとしたのは内緒だ。

 

「ひろっちにお願いしたいことがあるんよ。あ、そんなたいしたことやないよ?」

 

きっと、大事な話なのだろう。

 

「おう。なんでも言ってみ?」

 

希は膝の上で手を組んで、指をくるくるといじりだす。希は、そこを見ながら、えりちのことなん、と小さく言った。

 

「あのな、これはウチの勝手なお願いやし、えりちには絶対内緒なんやけど…」

 

「あ、あぁ」

 

「ウチ、えりちの高校最後の年が、えりちにとってすっごく楽しいものであってほしいん。だから、ひろっちにはえりちがそうなれるようにお手伝いをしてあげてほしいんよ。最近のえりち、廃校のことばっかで、他のことばっかで自分のこと考えてないやん?だから…」

 

膝の上の手をぎゅっと握って、またしても俺を見つめてくる。

その表情は、本当に苦しそうだった。

 

「わかる、けど。それは希でもできることだろ?むしろ、希だからこそできることだって、あるだろ?」

 

希の瞳が揺れる。

 

「でも、えりちが、ウチら全員が笑顔で卒業するには、ひろっちの力が必要なんよ」

 

そんな真剣な顔して言われたら、理由はなんにせよ断ることなんかできない。

 

「いろいろ言いたいことはあるが、とりあえずわかったよ」

 

「ありがと、ひろっち。えりちのわがままも聞いてあげて。えりちのこといっぱい甘やかしたってな。えりちが困った時は助けてあげて、えりちが泣いてる時もそばにいてあげて。えりちが笑っている時は、ひろっちも一緒に笑っていてほしい」

 

俺の制服をぎゅっと握って頼んでくる希の髪をくしゃりとなでる。

 

「おう。でも、一つだけ条件がある」

 

「なぁん?」

 

希は安心しきった表情で俺を見上げた。

 

「希も、俺にいっぱいわがまま言ってほしいし、俺のこと頼って」

 

絵里が周りのことを考えているように、希も絵里ばかりのことを考えていて。俺はそれが少し心配だったり。

だからこそ、絶対にこの約束を取り付けたくて、小指を希の前に差し出す。

困ったように笑って、おずおずと小指を出すから、俺は無理矢理に小指同士を絡めた。

 

「約束だぞ?俺はどんな時でも、希の一番の味方になるから」

 

「…これじゃ、ひろっちがなんの得もしてないやん」

 

そう涙声でぽつりと呟いた希の瞳は、潤んでキラキラと光っていた。

 

「俺の願いは、お前らとずっと一緒にいることだから」

 

そんな宝石みたいな瞳をじっと見つめて、そう言ってのける。だって、本心だから。

ドヤ顔の俺に希はずるい、と一言言って俺の肩に頭を預けてきた。目元を押し付けているので、泣いてしまったのかと思ったが、涙は出ていないようだった。

 

「大翔くんには、敵わないなぁ」

 

久しぶりに聞いたその呼び方に、嬉しくなって。もう一度、希のことをなでる。そうしたら、希がぐりぐりと頭を擦り付けてくるものだから、笑ってしまった。

 

俺も、希には敵わないよ。

心の中でそっと呟いた。

 

「ほら、暗くなる前に帰ろう。家まで送って行くからさ」

 

立ち上がり、希に手を差し出せば、希はきょとんとして首をかしげた。

 

「どうした?」

 

「ひろっちがな、なんかすごく輝いて見えたん」

 

「な、なんだそれ…!」

 

照れてそっぽを向く俺に、くすりと希が笑えば、俺の手に俺よりも少しだけ温かい希の手が乗っけられた。

 

「ありがと。これから、もっともーっとよろしくな」

 

温かくて、やわらかくて、少しでも力を加えたら壊れてしまいそうなその手を優しく引っ張って、希を立ち上がらせる。

 

「なんだよそれ」

 

なんて、意味はわかったけど、少し気恥ずかしくて無愛想に返す俺に。

 

「二人だけの秘密、やからね」

 

なんて、唇に人差し指を持っていって、子どものような笑顔で言うから。

何も言えなくなって。

赤くなった顔を隠すように、希の手を引いてゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





お読みいただきありがとうございました!

絵里と希、どっちも大事な親友!って事を、とりあえず伝えられたらいいなって思います。
かわいい女の子が親友なんて、羨ましいにもほどがありますね。まったく。笑

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