俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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17.ファーストライブ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日。

今日はついに、新入生歓迎会の日。そう、μ’sのファーストライブ当日だ。

 

あれから、俺の言葉をしっかりと受け止めてくれた三人は、毎日練習を頑張ってきた。

ライブのステージなどの準備の方は、穂乃果たちの同級生のヒデコ、フミコ、ミカのヒフミトリオが進めてくれて。

 

あと少しで、ライブの時間になる。

 

 

控え室では、衣装に着替えた三人が。

 

「ねね、たいちゃん、どう?」

 

穂乃果くるりとその場で回って、俺に感想を求めてくる。

 

「おう。なかなかいいんじゃないか?」

 

「えへへー」

 

今度はことりが。

 

「ことり、めちゃめちゃかわいいよ。それに、衣装作り頑張ったんだな」

 

聞かれる前に。ことりの頭をなでると、ことりは嬉しそうに目を細めた。

 

「ありがとう。ひろくんに褒めてもらいたくて、ちょっと頑張っちゃった」

 

 

その後も少し話したが、時間が迫るにつれて顔が険しくなってくる。

緊張、するよな。

 

 

「あれだけ頑張って練習したんだから、大丈夫だよ」

 

俺の励ましの言葉も、もはや聞こえていない様子だ。それに少しむっとして、パンッと手のひらを鳴らす。

 

「こーら。笑え、笑え!アイドルだろ?いつもみたいに、かわいい顔で笑う!」

 

無駄に明るい声を出して、一番近くにいたことりのほっぺをむにゅむにゅといじる。

 

「ひりょく、やめっ」

 

「あはは、ことりちゃんかわいい!」

 

ことりは言葉ではやめてと言っているが、あまり嫌ではないようだ。その証拠に、俺が手を離した今では、穂乃果と二人してほっぺのいじり合いをしている。

 

「二人とも、騒ぎすぎですよ」

 

注意をした海未を見ると、彼女だけはまだ表情がガッチガチで。

 

「うーみっ」

 

わざわざ海未の背後に回って肩を叩く。

 

「なんですか?」

 

振り向いた海未のやわらかいほっぺたに、俺の人差し指が刺さった。突然のことに目を丸くさせた海未は、しばらくしてから顔を赤くした。

 

「な、なにするんですか!?」

 

「海未。緊張してるだろ?」

 

「そ、それは…当たり前じゃないですか」

 

今にも座り込んでしまいそうな海未の頭をひとなで。おまけにもうひとなで。

 

「今日まで、それも含めて頑張って練習しただろ?絶対に大丈夫だから。俺が保証してやる」

 

俺に向かって、そこまでですかって海未は笑って。いつの間にか、俺たちのところまで来ていた穂乃果とことりにも笑われて。

 

「そうだ。海未も、衣装似合ってるよ」

 

照れながらも、ありがとうございますと返す海未の頬は少し赤く染まっていて。穂乃果とことりがからかう。

そんな穂乃果たちを叱りながらも、海未の顔には笑みが浮かんでいた。

 

その様子に、最初に自分が言ったことを思い出す。

 

「うん。やっぱり笑ってたほうがかわいいな」

 

 

ぽつりと呟いた俺の言葉に、三人は目を丸くさせてお互いをみる。

 

 

「ひろくんは、ひろくんだね」

 

「そうですね。どうしようもないくらいに、ひろはばかです」

 

「たいちゃんって、いっつもそんなんだよねー」

 

三者三様に俺に言葉をぶつけてきて。

それが、褒められているのかけなされているのかもよくわからず。

 

「なんだよ、それ」

 

三人だけが通じ合っている様子に、少しだけ拗ねてみせる。すると、また笑いだす三人。

 

 

「ほら、もう時間だから」

 

もう勝てる気がしなくて、時間なのをいいことに、三人をステージに向かわせる。

ちらりと俺を見た穂乃果の口が、がんばるねと動いたことに安心して。

俺は、自分のやることを始めることにした。

 

 

 

 

 

幕を開けるのが俺の仕事。

放送の声が終わったと同時に幕を開ける。

開始時間ぴったり。ここからは、俺の仕事はμ’sのライブを見守ることだ。

 

しかし、幕はたしかに開いているはずだが、あたりはしんと静まり返っている。

何事かと思い、俺は急いでステージ脇からステージを覗き込む。

 

「嘘…だろ…」

 

 

観客の姿がない。ただ、その光景だけが目に入る。少し視線をずらすと、泣きそうな顔をで穂乃果を見ることりの姿が。

穂乃果と海未の表情は、ここからではわからないが、きっと大丈夫じゃないだろう。

 

心配になって観客席まで降りる。

穂乃果をはじめ、三人の顔は暗かった。

いてもたってもいられなくなって、そんな三人の顔を見るのが辛くて。

 

「…穂乃果」

 

 

「あれ!?ライブは?…あれ?」

 

俺が声をかけたと同時に、講堂のドアから一人の女の子が。

あれは、一年生だ。

 

「花陽ちゃん…」

 

知り合いなのか、穂乃果はその子の名前を呼ぶ。

 

「やろう!そのために、今日まで頑張ってきたんだから!」

 

三人は意思を確認するように名前を呼び合うと、最初の位置に立った。

その顔は、どこかやる気に満ちている。

 

 

 

音楽が流れ始める。

 

 

 

 

I say...

Hey, hey, hey, START:DASH!!

Hey, hey, hey, START:DASH!!

 

 

 

三人の息は、今までで一番あっていて。

なんだか、感動で胸が熱くなる。

三人から目が離せないのは、きっと俺だけじゃないはずだ。

そして何より嬉しいのが、三人がライブを楽しんでいることだ。率直に、今までで一番いい顔をしている。

 

 

最後のポーズが決まる。

見に来てくれた一年生二人が拍手をする。俺も反射的に拍手をする。

辺りを見回すと、入り口のところには真姫がいた。

真姫と目が合うと逸らされてしまったが、俺は目が合わなくなってしまった彼女に微笑みかけた。

もう一度ステージに目を移すと、穂乃果たちと目が合った。満面の笑みで俺を見る。

やりきった、そんな顔。

俺は、そんな顔を見て、穂乃果たちに親指を立ててぐっと前に出した。

 

「お疲れ様。ほんと、よかったよ」

 

もしかしたら、聞こえなかったかもしれないが、俺の思いは伝わったようで。

三人はハイタッチをして喜ぶ。

 

しかし、突然後ろから足音が聞こえてきたかと思ったら、三人が目を丸くさせて俺の後ろのほうを見た。

ゆっくりと後ろを向く。

 

「…っ」

 

絵里だ。

今は完全に、生徒会長モード。

 

「生徒会長…」

 

「どうするつもり?」

 

絵里は真顔で穂乃果を見つめる。

穂乃果は絵里をしっかりと見つめ返す。

 

「続けます」

 

「なぜ?これ以上続けても、意味があるとは思えないけれど」

 

相変わらず表情はない。

 

「やりたいからです!今、私…もっともっと歌いたい、踊りたいって思ってます。こんな気持ち、初めてなんです!やってよかったって、本気で思えたんです!」

 

穂乃果は、想いをぶつけるように言葉を続ける。絵里の眉が、ぴくりと動く。

 

「いつか…いつか私たち、ここを満員にしてみせます!!!」

 

穂乃果と絵里は睨み合う。

空気の悪い中、μ’sのファーストライブは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





お読みいただきありがとうございました。

最近は雨ばかりですね。
体調を崩さないように気をつけてくださいね。



やっとファーストライブが終わった…
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