俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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18.好きって気持ち

 

 

 

 

 

 

 

ファーストライブが終わり、やっと俺の周りが落ち着いてきた。

ただ、μ’sの活動が終わったわけではない。

 

 

 

μ’sのポスターの前でおろおろしている子が一人。眼鏡をかけていて、なんだか少し気の弱そうな…リボンの色からして一年生。

たしか、μ’sのライブを見に来てくれていた子だ。

 

「どうしたの?」

 

「はい!?あ、えっと…」

 

良かれと思って声をかけたが、驚かせてしまったようだ。眼鏡の奥で、彼女の瞳が怯えてしまっているのがよくわかる。

 

「ごめんね。驚かせるつもりはなかったんだけど…困ってるみたいだったから」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ぺこりとお辞儀をして、一歩離れてしまった。

うん。少しだけ悲しい。

 

 

「俺は、三年の結城大翔です」

 

「私は…小泉花陽っていいます。一年生です」

 

「………」

 

今さらだけど、これは無理やり自己紹介させてしまっただろうか。

突然黙り込む俺に、彼女は頭にはてなを浮かべてこてんと首を傾けた。

 

「あ、あぁ…なんかいきなりごめんね。その、何か力になれたらなって思ったんだけど。名前も知らない人にそんなこといわれてもあれかなぁってさ」

 

「わかってるので大丈夫ですよ。結城先輩」

 

そう言ってにっこりと微笑まれる。

こ、こんなかわいい子に先輩呼びをされるなんて、萌える…

 

っじゃねーよ!何考えてんだ、俺。

 

 

「その、俺、先輩呼びされるのあまり好きじゃないんだ。困ったな…」

 

「じゃあ、大翔くんって…呼びますね?私のことは、花陽って呼んでくださぃ…」

 

真っ赤な顔をして、ダメな先輩のフォローをしてくれる。

 

「ありがとう、花陽」

 

一生懸命な花陽がかわいくて、思わず頭に手を伸ばしてしまう。

そのままぽんぽんと軽く頭をなでると、花陽は顔を隠すように下を向いてしまった。

 

「それで、何してたの?」

 

「あ、これ、落し物みたいで…」

 

花陽は手に生徒手帳を持っていた。よく見ると、西木野真姫と書かれている。

 

「これ真姫のじゃん。俺、友達なんだけど届けようか?」

 

「その…もう帰っちゃってるみたいで。家に届けようと思っていたんです」

 

だから、と言葉を濁す。

 

「じゃあ、俺も一緒に行くよ。女の子一人だと心配だしさ」

 

俺の言葉を聞くなり、花陽の表情が明るくなる。きっと、花陽が優しいから届けようと思ってくれたんだと思うけど、真姫のことだから教室ではツンツンしてるんだろう。

そりゃ、一人で行くのはちょっと嫌だよな。

 

「よし、じゃあ行こっか」

 

 

 

 

 

 

 

真姫の家までの道のり。俺と花陽はお互い自然に話せるくらいには打ち解けていた。

 

「へぇ。じゃあ、花陽はアイドル大好きなんだ」

 

「そうなんです!だから、音ノ木坂にもスクールアイドルができたって聞いて、すごく嬉しくて」

 

瞳を輝かせて、満面の笑みを浮かべる花陽に、いつしかの友人を重ねる。今は、俺の前ではそんな笑顔見せてくれないけど。

 

「じゃあさ、自分もアイドルやってみたいな、とか思わない?」

 

「えっ?」

 

「俺さ、μ’sのマネージャーをやってるんだけど。花陽みたいな子がいたら、もっともっとよくなるかなって」

 

花陽は、一瞬期待したような顔をしたが、すぐにそれは困惑へと変わってしまった。

 

「私なんかには、できないです」

 

これ以上無理に勧誘するのは、さらに困らせてしまうだろうか。

 

「そっか。いきなり変なこと言ってごめん。でもさ、よかったら俺にアイドルのこととか教えてよ。マネージャーとか偉そうなこと言ってるけど、あまりアイドルのこと知らないんだ」

 

お願い、と言うと、花陽は嬉しそうに笑った。

 

「ふふっもちろんです」

 

その後は、今どんなアイドルが人気なのかなど、詳しいところまでいろいろ聞いた。

花陽なら、にこと仲良くできるかもな。なんて、これからあるかないかわからない未来を想像して。顔はだらしなく緩むばかりで。緩む頬を引き締めるよう努めていると、花陽は突然立ち止まった。

 

 

「こ、これが。西木野さんの…?」

 

花陽が指差すところをみると、そこにはいかにもお金持ちが住んでいそうな家が。

念のため表札を確認するが、やはり西木野と書かれている。

 

「と、とりあえずピンポンするか」

 

言葉ではなく、首を一生懸命縦に振って答える花陽に思わず笑みがこぼれる。

インターフォンのボタンを押すと、すぐに女の人が玄関から出てきた。

どことなく真姫と似ている…?

 

「あ、あの!私、真姫…さんと同じクラスの小泉です!」

 

 

真姫に似ている女性はやわらかく微笑むと、俺らを家の中へと案内してくれた。

 

 

 

 

「それで、そっちの彼は真姫ちゃんとはどういう関係なの?」

 

「あ、俺も、友達です。年は俺のほうが上なんですけど」

 

「あら、そうなの。残念だわぁ…彼氏なのかと思っちゃった」

 

「俺なんかが彼氏とかないですよ!?」

 

そう?と首をかしげる女性。

 

 

「でも、母としてはお友達がお家に来てくれただけでも安心したわ」

 

そう言って、ほっと息をつく。

少しの沈黙。

 

 

 

「…えぇ!?お母さんですか!?」

 

俺がいきなり立ち上がって大きな声をあげるものだから、隣に座っている花陽はびくりと肩を震わせた。

 

 

「ええ、そうよ?」

 

にっこりと笑って頷かれる。

 

「お、お若いですね。てっきりお姉さんか何かだと…」

 

本心だ。大事だからもう一度言っておく、これは俺の本心だ。

 

「ありがとう。大翔くん」

 

そう言って微笑んだ真姫のお母さんは、やはり、真姫に似ていた。いや、真姫が似ているというのが正しいのだろうか?

 

その後、3分ほど会話をすると、部屋のドアがガチャリと開いた。

不機嫌そうな真姫と目が合う。

 

「ちょっと、私の家で何やってるのよ」

 

「あら、真姫ちゃん。おかえりなさい」

 

「ただいま」

 

真姫が帰ってきたのを確認すると、真姫母はお茶持ってくるわね、と笑顔で部屋から出ていった。

 

 

「おう、真姫。おかえり」

 

「ただいま…って、違うわよ!?」

 

何が楽しいのか一人でツッコミをすると、テーブルを挟んで俺たちの向かいの一人掛けソファに座った。

 

「それで、小泉さんまで。何の用なの?」

 

「あ、えっと…これを渡しに…」

 

丁寧にバックから真姫の生徒手帳を取り出して差し出す。

真姫はそれを受け取る。真姫は、渡されたそれが自分のだとわかると、表情が少しだけ柔らかくなった。

 

「これ…ポスターの前にあったんだけど。西木野さん、見てたよね…?」

 

「知らないわ!人違いじゃないの?」

 

必死な真姫に、くすりと笑うと。きつく睨まれてしまった。

ちょっと攻撃したくなって。

 

「なに?真姫もμ’sの仲間に入れてもらいたくなった?」

 

なんて、にまにまとしているであろう顔で聞いた。

 

「そんなわけないでしょ!」

 

噛みつくように言う真姫をなだめる花陽は。

 

「私、放課後いつも音楽室の近くに行ってたの。

西木野さんの歌、聞きたくて…」

 

ずっと聞いていたいくらい好きで…と。

本当に楽しそうに笑うから。真姫は当然、俺も何も言えなくなってしまった。

 

純粋すぎて、もう、ほんとかわいい。

 

 

「だってよ。真姫、どうなんだ?」

 

「だから…!」

 

「わかってる。真姫が将来病院を継がなきゃいけないことくらい。さっき、お前のお母さんから聞いた」

 

「そうよ。だから私の音楽はもう終わってるってわけ。それよりもあなた、アイドル…やりたいんでしょ?」

 

真姫は花陽に目を向ける。

花陽は少しだけ困ったような顔をした。

 

「この前のライブの時、夢中になってみてたじゃない」

 

「えっ?西木野さんもいたんだ…」

 

「た、たまたまよ。偶然通りかかっただけ」

 

嘘つけ。

 

「なによ。大翔は黙ってて」

 

「俺、今声に出してた!?」

 

うるさい、とさらに眉間にしわを寄せて言うから、思わず口をつぐむ。

年上の威厳も何もあったもんじゃない。

 

 

「やりたいならやればいいじゃない。そしたら、少しは応援…してあげるから…」

 

ふわりと微笑む真姫。滅多にない、その表情に。

たぶん、真姫の優しい気持ちが、思わず俺にまでうつってしまって。

 

「そうだな。俺も…応援するよ」

 

「ふふっありがとう…ございます」

 

そんな俺らに。

花陽はちょっぴり、くすぐったそうに笑った。

 

 

 

 

大切なのは、好きって気持ち。

 

俺は楽しいことが好き。

真姫は音楽が好き。

 

 

 

 

 

ーーー花陽は?

 

 

もう、答えなんて分かっているはずなのに。

前に進めない、ちょっぴり臆病な花陽が。

正しい道に進めるようにって。

俺も真姫も思ってる。

それに、力を貸してあげたいとも。

 

だから、花陽の好きを、大切にしてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





お読みいただきありがとうございます!

更新遅くてすみません…


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