俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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20.新しい仲間 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知り合ったばかりの俺の手を引いて前を走る凛。ある意味すごいよな。俺、一応男なんだけどね。手、繋いでますよね。

 

凛に引かれるままたどり着いたのは、中庭だった。

視線の先には花陽と真姫の姿が。近くまで来ると、凛は俺の手を離して花陽へ駆け寄った。

 

 

「はぁっはぁ…あそこから、全力で走ってきたのに、息が少しもあがってない…?」

 

俺は呼吸を整えつつ、ゆっくりと三人の元へ向かう。

 

どうやら、凛と真姫が言い争いをしているようで。花陽はおろおろと二人を止めようと頑張っていた。

俺は凛と真姫の頭に手を置いて言い合いを止める。

 

「こら。二人とも、花陽が困ってるから」

 

振り返った真姫の顔はだんだん赤く染まっていく。

 

「花陽のことを考えてあげられるのはいいことだけど、真姫らしくないぞ」

 

「わ、わかってるわよ」

 

対して凛は、不服そうな顔をしながらほっぺだ膨らませていた。

 

「凛も、花陽を困らせたいわけじゃないだろ?」

 

膨らんでいるほっぺたを両手で挟む。

 

「…うぅ、ごめんなさい」

 

「よし」

 

しゅんとしょげている凛を優しくなでると、花陽は安心したように微笑んだ。

 

「んで、何をそんなに言い争っていたんだ?」

 

「かよちんを先輩たちの所に連れて行きたいのに、西木野さんがダメって」

 

「先輩たちってのは、穂乃果たちのところだよな…?真姫、理由は?」

 

「もう少し、自信をつけてからでもいいかなって思ったからよ」

 

なるほど、真姫はあの時言っていたように、本当に花陽のことを応援しているんだな。

 

「二人の意見を聞いて、花陽はどう思う?」

 

三人の視線を受けて、花陽は下を向いてしまった。

 

「わ、私は…その…」

 

「うん。今思っていること、俺に教えてくれないかな」

 

花陽は両手をぎゅっと握って、ゆっくりと顔を上げた。瞳が少し潤んでいる。

 

「私は、凛ちゃんみたいに…自分が思っていることを、ちゃんと言葉にできて。西木野さんみたいに、その、自信を持って、何かに取り組みたい。私、変わりたいんです…!」

 

花陽は一息で言いきった。

もう十分、変われていると思うな。なんて、でも、まだまだ走り始めたばかりだ。花陽も、俺も、μ'sも。

 

「ちゃんと言えるじゃん。よかったらさ、屋上、行かない?そこであいつら練習してるから」

 

手を差し出すと、花陽はゆっくりと手を前に出してくれた。

触れるまで、あと少し。

 

 

「かよちん!行こう!」

 

花陽の返事もまだなのに、凛は待てないと言わんばかりに花陽の手をとる。

 

「ちょっと、連れてくなら私が!」

 

今度は、凛とは反対側の手を真姫がとった。

 

「だれかたすけてぇ!」

 

花陽は二人に手を引っ張られて。

どんどんと俺から離れていく。

 

 

あぁ、花陽、なんかごめん。

 

俺は心の中で謝罪をして、駆けていく三人の背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、メンバーになるってこと?」

 

屋上に着くと、練習中だったが穂乃果たち三人は笑顔で迎えてくれた。

 

「はい!かよちんずっとずっと前から、アイドルやってみたいと思ってたんです!」

 

凛が、一生懸命に。

 

「そんなことはどうでもよくて、この子は結構歌唱力あるんです!」

 

真姫も、凛に負けず劣らず真剣に。

 

「どうでもいいってどういうこと?」

 

「言葉通りの意味よ!」

 

しかし、言葉のちょっとしたニュアンスの違いのせいか、またしても二人はぶつかり合う。

 

「あ…私は…まだ…なんていうか」

 

そんな中、花陽は決心が鈍ってきているのか、おろおろとし始めてしまった。

 

 

「もう!いつまで迷ってるの?絶対やったほうがいいの!」

 

「それには賛成!」

 

前に視線を向ければ、穂乃果が俺のほうを見て、ウインクをして小首を傾げた。

見守ろう、そういうことだろうか。

 

 

「やってみたい気持ちがあるならやってみた方がいいわ!」

 

「で、でも…」

 

「先も言ったでしょう?声出すなんて簡単!あなただったらできるわ!」

 

真姫は、家で話をした時のようにとても優しい顔をしていた。

真姫の、こういう優しくて素敵なところをもっといろんな人に知ってもらいたいな。

 

「凛は知ってるよ!かよちんがずっとずっとアイドルになりたいって思ってたこと!」

 

凛は明るくて、人懐っこくて、それでいて友だちのことをこんなにも想える。

 

「凛ちゃん…西木野さん…」

 

花陽は、心優しくて、ほんわかしてて。ちょっぴり引っ込み思案なところもあるけど、そんなの関係なしにいいところがたくさんある。

 

 

「頑張って!凜がずっとついてあげるから…!」

 

「私も、少しは応援してあげるって言ったでしょ?」

 

花陽の背中を、凛と真姫がトンっと優しく押す。

花陽はしっかりと一歩前に出た。手はギュッと拳を握っている。

 

 

「私、小泉花陽と言います!一年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、得意なものは何もないです…」

 

だんだんと花陽の顔は下を向き始める。

しかし、俺の心配は杞憂だったようで、一呼吸置くと、花陽は穂乃果をしっかりと見て続けた。

 

「でも…でも!アイドルへの思いは誰にも負けないつもりです!だから!μ'sのメンバーにしてください!」

 

普段からは想像つかないくらいにしっかりと響いた花陽の声。

そんな花陽に、穂乃果は笑顔を向けて答える。

 

「こちらこそ」

 

穂乃果が手を差し出すと、花陽は少しだけ戸惑った。

 

「あ、え…」

 

遠慮がちにのばされた手を、穂乃果はしっかりと握った。

 

「よろしくっ!」

 

見守っていた俺も、ほっと胸をおろした。

これでも花陽もμ'sの一員というわけだ。

まぁ、俺は最初からこうなるって思ってたけどな。ほんとに、俺自身が望んでいることでもあったから。

 

 

「かよちん、えらいよー」

 

そんな様子を後ろから見ていた凛は、涙声で。

 

「なに泣いてるのよ?」

 

真姫はあたかも冷静を装ってそう言う。

 

「だって…って!西木野さんも泣いてる?」

 

そう。凛だけじゃなくて、真姫も目が潤んでいるのだ。まったく、素直じゃないな。

 

「だ、誰が…泣いてなんかないわよ!」

 

またもや言い合いが始まってしまいそうなので、俺は後ろから二人の肩を組んだ。

 

「それで、二人は?」

 

そう言って二人の髪をわしゃわしゃと撫でると、二人はゆっくり俺のほうを向いた。

 

「ほら、前見てみ?」

 

乱れた髪を直してあげてから、俺は一歩後ろへと下り、先ほどの二人が花陽にしたように背中を軽く押す。

 

「まだまだメンバーは、募集中ですよ!」

 

「うん!」

 

そんな二人を、海未とことりが笑顔で手を差し出して待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーー、朝練って毎日こんなに早起きしなくちゃいけないのー?」

 

「このくらい当然よ!」

 

「当然なの?」

 

「そう!当然よ!」

 

朝練のため、神田明神へ向かう途中。っていっても、あとは階段のぼるだけだけど…

前には凛と真姫が一緒に歩いていた。本当はすぐに話しかけるつもりだったが、二人のやりとりの邪魔しするのも…なんて思ってしまう。だって、なんか仲良くなってるみたいだし。

でも、会話に入れないのはそれはそれで嫌だな。

 

「よっ!二人とも!」

 

なんとなく凛の肩に手を置く。

 

「あー、ひろにぃ!おはようにゃ!」

 

凛は、振り返るなり人懐っこい笑顔を向けてくれた。

 

「…おはよ」

 

対して真姫はなんだか不服そうな顔。

 

「どうしたんだよ。あ、会話の邪魔してごめんな?」

 

俺の言葉になぜか真姫は前を向いて深いため息をついた。

 

「べつに」

 

それだけ言うと、また歩き出す。

 

 

「かよちんー」

 

「おはようっ!」

 

階段を登りきると、花陽がすでに準備をしていて、凛がそれに駆け寄る。

 

「あ、あれー?めがねは?」

 

「コンタクトにしてみたの。変…かなぁ?」

 

「ううん、全然かわいいよ!すっごく!」

 

ほんとだ…花陽が眼鏡とってる…

 

「…すげぇかわいいよ。花陽」

 

「あ、ありがとう。大翔くん…えへへ、照れるね」

 

顔を赤らめる花陽も見て、なんだか俺も気恥ずかしくなってしまう。

 

「へー、いいじゃない」

 

「あ…西木野さん…」

 

真姫にも褒められて、花陽さらにかを赤くする。

すると突然、真姫が。

 

「う…ねえ、眼鏡とったついでに…名前で呼んでよ!」

 

言うなり顔を赤くして、みんなから顔をそらした。

 

「えっ?」

 

「真姫?」

 

花陽と俺は驚嘆の声をあげた。凛に至っては、キョトンとしている。

俺が真姫に近づくと、両手で押し返されてしまった。

 

「どうしたんだよ」

 

真姫は、俺の胸元をくしゃっと握りしめて、頭を押し付けるように下を向いた。

ぼそぼそと何か言っているが、はっきりとは聞こえない。凛と花陽も首をかしげている。

 

「おーい?真姫さん?」

 

「だって…」

 

「おう」

 

「だって、大翔ばっかり二人と仲良くなっててずるいじゃない。私だけ、なんか、その…」

 

耳まで真っ赤にして。

かわいいかよ。おい。凛と花陽と仲良くなりたいって事だろ?

 

「真姫ちゃん!」

 

花陽が嬉しそうに真姫の名前を呼んだ。

その声に、真姫は俺からパッと離れて顔を上げる。

その顔は、うれしそうでもあり困っているような。いつも大人びている真姫とは少し違う幼い顔。

 

「真姫ちゃん!真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃん!」

 

凛は何度も真姫のことを呼びながら勢いよく抱きついた。

 

「なによ!」

 

「真姫ちゃん真姫ちゃんーー!」

 

照れからか引き離そうとする真姫をおかまいなしに、凛はもっととすり寄る。

 

「う…うるさいーー!」

 

怒った口調をしているが、顔はどこか満足げだ。

 

「照れてる照れてる!」

 

「照れてないー!」

 

「真姫ちゃん、かわいいー!」

 

「やめてってば!」

 

花陽とそんなやりとりをしている二人を微笑ましそうに眺める。

 

「花陽、嬉しそうだね?」

 

「えへへ、あの二人がもっと仲良くなってくれたらいいなって」

 

「そうだな。俺も、三人が仲良しになってくれたら嬉しいよ。もちろん俺とも仲良くしてな?」

 

なんでか花陽はころころと笑い出して。

私もそう思ってるよって。また笑うから、なんだか俺のほうが年下になったような気がして。

 

「あぁ!かよちんたちなに話してるのー?」

 

「なに二人で楽しそうにしてるのよ」

 

さっきまで自分たちも楽しそうにしてたのに、拗ねたをした二人がこっちまで来て。

 

「大翔くん、意外と子供っぽいの」

 

なんて花陽が言うから、みんなしてまた笑った。こういうのも、たまにはいいかもな、なんて。俺、べつに子供っぽくはないけど。

 

 

 

俺はその後、そのことを二年生3人にも聞かれていて茶化されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





お読みいただきありがとうございます。

今車の免許を取っているんですが、運転中に眠くなってしまう私って…
運転に向いてなさすぎる。笑
睡眠時間もっとほしい…




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