俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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4.君と友達になりたいんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今なぜか、音ノ木坂学院の屋上でお昼ご飯を食べています。

 

 

目の前には二つのお弁当箱とたくさんのチョコ。

少し視線を横にずらせば、あの俺を無視することが大好きな絢瀬さん。

 

「ちょっと、今なんか変なのと考えてたでしょ」

 

「ごめんって。いたっ痛いから!」

 

お、おっほん。俺の隣には勝手に人の心を読んで、割と強めに俺を叩いてくる女神、絢瀬絵里がいる。

 

 

 

 

なんでこんな状況になったか自分でもよくわからないんだが、一つだけ分かることがある。それは、絢瀬さんがチョコレート大好きだってこと!

 

時間はさかのぼること十分ほど前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絢瀬さん!一緒にお昼食べない?」

 

俺は授業が終わったと同時に、いやちょっとだけフライングして絢瀬さんの席に向かった。

 

「あなたと食べる理由がないわ」

 

絢瀬さんは俺に目もくれずお弁当箱を出しながら返事をする。

こうなったら昨日考えた作戦を発動だ!

 

「俺が一緒に食べたいからじゃダメ?お願い」

 

絢瀬さんの顔を覗き込むようにお願いする。

俺の知り合いの一人にこれのプロがいるんだよね。

 

「あなたって随分と自分勝手なのね」

 

はい。ダメでしたー。

こう、ギャップ?を狙ってみたんだが、やっぱ俺がやると気持ち悪いし自分勝手だって捉えられちゃうよなぁ…

 

あいにくこれしか考えていなかったもので、これ以上何かできそうにない。でも、せっかくのチャンスを無駄にしたくないんだよなぁ。どうしよう………あ。

 

ブレザーのポケットに手を突っ込んであるものを取り出す。

 

「絢瀬さん、これあげるよ」

 

俺の手にはチョコレートが3つ。

それを絢瀬さんの手に乗せる。

こんなんじゃつられないだろうな…

 

「…これ」

 

「ん?」

 

「これ、本当にもらっていいの?」

 

さっきまで目も合わせてくれなかった彼女が自ら俺と目を合わせている。しかも、結構キラキラした瞳で。

 

「あ、うん。もちろん。てかさ、俺まだまだいっぱいチョコ持ってるんだけど…」

 

一緒に食べよう、そう言い終わる前に絢瀬さんは突然お弁当を持って席を立ってしまった。…やっぱり無理だよな。

 

「何してるのよ。早くしないと時間なくなっちゃうわよ」

 

彼女はドアのところで俺を何してるの?とでも言いたげな顔で見ていた。

よっしゃあ!一緒にお昼食べてくれるってことだよな!

 

「ちょ、すぐ行くから待ってて!」

 

 

 

 

で、そのまま誰もいないであろう屋上でお昼ご飯を食べることになったとさ。

てな感じで冒頭に戻るってわけ。

 

 

 

 

 

たくさんのチョコレートを目の前に広げると、絢瀬さんは目を輝かせた。

 

「は、ハラショー!」

 

「はらしょー?」

 

初めて聞く言葉につい聞き返してしまった。どういう意味なんだろう?

絢瀬さんを見つめると顔を赤らめてそっぽを向かれてしまった。つい癖で…と彼女は何やらぶつぶつと言っている。

 

 

「ごめんなさい。素晴らしいって意味よ。ロシア語なのよ」

 

「へぇ、よくそんなこと知ってるな」

 

「私の祖母がロシア人なの。だから私はクォーター」

 

だから金髪だったり、目が青かったりするわけね。納得、納得。

 

「そーなんだ。その髪も瞳もめっちゃきれいだよな。素敵だと思う」

 

「あ、ありがとう」

 

絢瀬さんはなぜか驚いた顔をする。俺今なんか変なことでも言ったかな?

 

 

 

「でも、はははは、っ絢瀬さんがチョコでそんな反応するなんて思ってなかったっ。あははっちょ、面白いわ」

 

今さらになって笑いがこみ上げてきた。あんなにかわいい笑顔なら、普段からもっと笑っていたらいいのに。

 

「もう、好きなんだからしょうがないじゃない!」

 

照れてるのか、そう言ってそっぽを向いて右手を振り上げる絢瀬さん。

これ以上はまた叩かれそうなのでやめとこう。ほんとはもっといじりたかったけど。

 

 

「ほら、早く食べようぜ。いただきまーす!」

 

母さんが朝早くに作ってくれた弁当箱を開くと俺の好きなものばっかりだった。

卵焼きを口に放り込むとほんのり甘い。うん。俺好みに甘い味付けにされてる。だしで味付けされたのも美味しいけど、俺はやっぱ甘いほうが好きかな。

 

 

「…ねぇ」

 

ご飯も俺の好きなのり弁だし。弁当初日最高!

 

「ねぇってば!」

 

「うお!?な、なに?」

 

絢瀬さんが突然大きな声を出すものだから、プチトマトが落ちちゃったじゃん。

 

「さっきから呼んでるのに、無視しないでよ」

 

あれ?弁当に夢中で全然気がつかなかった。

彼女は少し拗ねたような顔をしていた。

 

「ごめん。でも、絢瀬さんだって最初俺のこと無視してただろ?」

 

「うっ、それは…悪かったと思ってるわよ」

 

「別にいいよ。てか、どうしたの?」

 

本当に悪かったと思っているのか、シュンとしてしまった。

ほんとはこんなに表情豊かなんじゃん。

 

「その、どうして私なんかと仲良くしたいとか思ったのかなって」

 

そう言った彼女の瞳は昨日の朝のような冷たさを持っていた。

きっとこれは心が悲しがって泣いているからなんじゃないかなって勝手に思っている。

 

「ただ、自己紹介の時の声がめちゃめちゃきれいだったから。それだけ」

 

俺は素直に答える。

だって、それで友達になりたいって思ったんだから。

 

「ふふっ、あなたって変な人ね」

 

絢瀬さんはさっきまでとは違い、温かな瞳で笑っていた。そっちのほうがさっきより全然いい。

しかし、だんだんと笑い続ける彼女がどうも俺をバカにしているようにしか見えない。

 

 

「おまっバカにしてるだろ!?チョコあげねーぞ!」

 

「褒めてるのよ。だからチョコはもらうわよ」

 

「あーもう!お好きにどうぞ」

 

なんだか今は二人とも自然に話せていると思う。一歩前進ってところかな。

 

 

 

しばらく二人とも黙々とお弁当を食べていた。そわそわと落ち着かないのは、こんなきれいな子と二人きりでいるからだろう。

 

沈黙がなぜか嫌じゃない、そんな不思議な空気の中、絢瀬さんは突然お弁当箱を下に置き、ひとつ咳払いをした。

 

「私、小学生の頃にロシアからこっちに来たんだけど、この髪と瞳の色のせいでいじめられていたのよ」

 

静かに話しだしたその声に耳を傾ける。

たぶん、気まぐれで話しているのかもしれない。でも、俺に聞いてほしいって思ってくれたなら、ちゃんと答えたい。

しっかりと、絢瀬さんの声に耳を傾ける。

 

「そのうち中学生になって、そんな馬鹿げたことをやる人はいなくなったんだけど、今度は男子からこの見た目のせいか言い寄られるようになったの。女子はもちろん面白くないわよね」

 

思っていた以上に重い話。

悲しそうに目を伏せる絢瀬さんを見て、怒りがこみ上げてきた。

 

 

これでさっきの反応が納得いく。

なんで髪と瞳を褒めたとき驚いたのか。

なんで仲良くしたいのかって理由を聞いてきたことも。

 

 

 

 

そんなの…

 

 

 

「だから、男子でも女子でも友達なんかいらないって思ってたのよ。おばあ様からもらったこの髪も瞳も大好きなのに、同時に恨めしく思ったわ」

 

 

絢瀬さんは何かを堪えるように眉をまげ、閉じた口を震わせている。

絢瀬さんのことに対して俺が何か意見することは、彼女にとってなんの意味もないことかもしれない。それに、なんで俺もこんなに彼女を見て怒りと悲しみがこみ上げてくるのかわからない。

 

でも、そんなのって…!

 

 

「間違ってるだろ!そんなの。お前が悪いことなんて一つもねぇよ。だから塞ぎ込もうとなんてすんな」

 

 

髪と瞳の色が違うことが、いじめの対象になるなんて絶対に間違ってる。そして、そのことしか見ていない人たちに、絢瀬さんの人生が左右されるなんて、絶対にあってはならない。

 

そもそも絢瀬さんが魅力的なのは髪が金髪だからでも瞳が青いからでもなんでもない。少しも痛んでいない髪は絢瀬さんが努力している証だろ。その白い肌にシミひとつ出来ていないのも。全部絢瀬さんが努力しているからだろうが。

 

それに、生まれてからずっと持ってるものなんだから、自分じゃどうにも出来ないだろ?

…俺だってそうだし。

 

 

あぁ、そうか。俺はきっと、勝手に絢瀬さんと自分を重ねていたのか。俺なんかと全然レベル違うのに…恥ずかしい。

 

 

 

 

なんだかよくわからないけど、俺は絢瀬さんの見た目で仲良くなりたいって思ったわけじゃない。

絢瀬さんに、みんなが同じこと考えているなんて思ってほしくない。

きっかけは声だったかもしれないけど、絢瀬さんのこと知った今でも仲良くなりたい気持ちは変わらない。

 

 

「あ…」

 

俺はパッと顔をあげた絢瀬さんの頭に手をのせる。

しっかりと目を合わせると、絢瀬さんは涙をこらえているような、困っているような顔をしていた。

 

「今までよく頑張ったな。俺だってこの髪色のおかげで無駄に落ち込んだりもしたことあるぞ?だからさ、もう友達なんかいらないって思わないでくれよ。俺は、絢瀬さんと友達になりたい。絢瀬さんだから、仲良くしたいって思ったんだ」

 

俺の言葉を聞いて、絢瀬さんはありがとうと呟くと一筋の涙をこぼしてそのまま下を向いてしまった。

泣かせた!?ど、どうしよう…!

あたふたしていると、絢瀬さんは顔をあげてちょっとだけ笑った。

本当に嬉しそうに。その笑顔に、俺もつられるように笑って。

 

「もうとっくに友達でしょ?それに、大翔の髪も光に当たるとキラキラと赤く光って素敵よ?」

 

なんて顔で言うんだよ。ちょっとだけときめいちゃったじゃん。

それに今、初めて名前を呼んでくれた。

プラスして、俺のちょっとしたコンプレックスの髪も褒めてくれた。

うれしすぎて俺のほうが泣きそうなんだけど…

俺はこのために頑張っていたんだな、きっと。

 

「絵里!ありがとう」

 

 

 

春の暖かい風が二人の髪を優しく揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

次の日、学校に来て絢瀬さんの席に行くと笑顔で挨拶をしてくれた。

これから楽しくお話でもしようと思っていたところにもう一人訪問者が…

 

「おはよう、絢瀬さん。それに大翔くん」

 

後ろからかけられた聞き覚えのある声に振り向くと、入学式にいろいろあって知り合いになった希が。

 

「あれ?希?」

 

「もう、なんでいるのって顔してる。ウチも同じクラスやで」

 

ほっぺたをかわいらしく膨らませて、俺を睨みつけてくる。それに今関西弁だった…?

あれ?入学式の日は標準語じゃなかったっけ?

 

「ごめん、知らなかった。てか絵里と仲良いの!?」

 

あんな氷の女王みたいだった絵里と友達だったなんて俺知らない!てか、友達いらないとか言ってたのは!?

 

「いや、昨日の放課後初めて話したんよ。な?絢瀬さん」

 

「そうよ」

 

なんだよ。びっくりした。

そう言うことか、俺ってば早とちりしちまったぜ。

 

「まぁ、そういうことやから。これから仲良くしよな?」

 

 

 

 

そんなこんなで俺の高校生活はまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





絵里と友達とか羨ましすぎる…


ちょっと、場所変わらない?

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