俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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6.ツインテールな彼女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穂乃果たちとはあれ以来あまり会っていない。会ったとしても、お昼休みや放課後にばったり会うくらいだな。

 

まぁ、会ったら会ったで騒がしすぎて考えものだけど。

 

 

そんなこんなで、もう夏休みも明けてしまったとある日の放課後。

 

 

 

 

 

 

「…あ」

 

前から歩いてきた段ボールを持った女子が盛大にこけた。もう、ドシャッ!って感じで。

しかも、その彼女が今時珍しいツインテールなものだから一瞬思考が停止してしまった。

さすがに目の前で転ばれたあげく、段ボールの中身をぶちまけてしまっているのを見たら助けないわけにはいかない。

 

「大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫よ…」

 

なんだ、俺と同じ学年じゃん。

初めて見た気がするけど。

 

とりあえずばらまかれている彼女のものを拾うことにする。

なんだこれ、全部アイドルグッズじゃねーか!

段ボールにすべて詰めてそれを持って立ち上がる。

 

「よいっしょっと。立てるか?運ぶの手伝うよ」

 

「い、いいわよ!」

 

二人同時に立ち上がったが、こいつ意外と小さいな。小さいくせに声と態度はなぜかでかい。

 

「重いんだから早く案内しろって。どこまで運べばいいの?」

 

「だ、だからいいって言ってるじゃない!」

 

なんだよこいつ頑固だなぁ。本気で重いんだからとりあえず案内しろよ。

 

「女子にこんな重いもん持たせられねぇよ。それにお前ちっちゃいし」

 

「身長は関係ないでしょ!」

 

「あぁ、ごめん。身長だけじゃなかったわ」

 

彼女の顔から少しだけ目線を落としてそう言うと、理解できたのか殴ってきた。

 

「っおい!あぶねーだろ!これ窓からぶん投げるぞ」

 

「失礼なあんたが悪いでしょ!早くついてきなさいよ、まったく」

 

なんでそんな上から目線なんだよ。俺のこと見上げてるくせに。

仕方がないから歩くたびにぴょこぴょこ揺れるツインテールを追いかけることにした。

 

 

 

 

 

 

「アイドル研究部?初めて聞いたな」

 

たどり着いた先はアイドル研究部という部活の部室だった。

中に入るとたくさんのアイドルと思われるポスターとグッズの数々。

 

「悪かったわね。初めて聞くような部活で」

 

「は?誰もそんな嫌味に言ってないだろ」

 

こいつの思考相当ひねくれてる。なんて思うのは俺だけか?

それとも俺が悪いのか?

 

 

「てか、他の部員にも手伝って貰えばよかっただろ。こけるくらいなら」

 

ちゃっかりと椅子に座る。

ここでお茶の一つくらい出てきたら…ってまじで出てきた。

彼女に視線を向けると苦虫を噛み潰したかのような顔で一言。

 

「部員は私だけよ」

 

そう言った。

 

…は?ひとり?どういうことだよ。

俺がそう聞く前に彼女はまた口を開く。

 

「最初はいたんだけどね。もうみんな…っ辞めたわ」

 

 

辞めた。

そう告げた彼女の表情は何かを諦めたかのような、そんな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

次の日の昼休み、俺はがっつり後悔中。

結局あの後部室を追い出されてしまい、なんの言葉もかけてあげることができなかった。

その時の彼女の表情が助けを求めているように見えたのは、きっと勘違いじゃないだろう。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、希。アイドル研究部って知ってるか?」

 

やっぱり一人じゃどうしようもできないので、絵里がトイレに行っている間に希に相談することにした。

なんで絵里がいない間なのかは、まぁ、なんとなくっつーか。

こういう相談は希にするほうがいい気しない?

 

 

「知っとるよ?なんで?」

 

俺の予想通り知っていたみたいだ。

 

 

「昨日そこの部員と知り合ったんだけど…」

 

「あぁ、にこっちな」

 

「って知り合いかよ!?」

 

「…へ?だってウチ同じクラスだし、そもそもアイドル研究部の部員にこっちだけやん」

 

俺のツッコミにきょとんとする希。

口では遠回しに言っているが、その目はバカなの?と言っていた。

 

「俺そもそもそいつの名前知らないし」

 

俺の言葉を聞くなりため息をつかれる。しかもかなり長めのやつ。

 

「なんで名前も知らんのに、あんな深刻そうな顔で聞いてくるんよ」

 

「…っそ、それは」

 

「なぁに?名前も知らんのに好きになっちゃったん?」

 

クスクスと楽しそうに笑う希。

まったく、そんなこと絶対にないってわかってて言ってるな。

俺が睨みつけると希はこわいこわい、と肩をすくめた。

 

 

「一人なのが…気になった、だけだ」

 

そのまま目を逸らそうとしたが、希にしっかりと目を合わせられてしまったため逸らすタイミングを失ってしまった。

まるで、俺の心の内を読み取るかのように瞳の奥をのぞかれる。

少しも動くことができない。翡翠の瞳に吸い込まれていくかのような錯覚。

 

しばらくすると、希はふっとやわらかく微笑んだ。

 

「矢澤にこ。一年の時に何人かとアイドル研究部を立ち上げて、スクールアイドルをやっていたんよ。でも、ウチも理由はわからんけど、今はたった一人で部活してるみたいやなぁ。教室でも、いつも一人でいるよ」

 

「そう、なのか…」

 

突然の説明に一瞬固まってしまった。

スクールアイドル…?ふむ、アイドル…ね。アイドルやってたわりには一回も笑っているところ見なかったな。

 

「うん。最近やっとウチと話してくれるようになったんやけどな」

 

そうか、希も気にかけていたのか。

矢澤にこ、ね。

 

最初の頃の絵里に少しだけ似ている気がする。

今でこそ絵里は俺たちの前ではここまで普通になったが、周りに対してはまだ少しとがって見える。

まぁ、その点を考えると矢澤は絵里より全然ましだな。

 

あ、そろそろ絵里が戻ってくる。

 

 

 

「二人してなんの話ししてるの?」

 

絵里は帰ってくるなり興味津々に俺らを見てくる。

周りに対しても、このくらいかわいい表情すればいいのに。ま、周りからはツンケンしてても人気なんだけどな。

 

 

「なんでもねぇよ。てか、随分と長いおトイレでしたね?」

 

「と、トイレ自体が長かったわけじゃないわよ!先生に捕まって…」

 

ワタワタと手を振って弁解する絵里がなんだか面白い。なかなかいい反応してくれるなぁ。ふくれっ面の絵里は友達の贔屓目なしでもかわいい。彼女自身、かわいいし美人だし、誰から見てもパーフェクトなんだけどね。

 

 

「ぶはっ!そこのドアから見えてたよ」

 

思わず吹き出しながらそう告げると絵里の眉間のシワが深くなった。

 

「もう、ひろっちはえりちいじめるの大好きやなぁ」

 

なんて言いながら希もお腹を抱えて笑っている。

ますます絵里は不機嫌になる。

そろそろフォローしとかないとあとが怖いな。

 

「絵里をいじめるのが好きなわけじゃないよ」

 

「ん?そうなん?」

 

二人の視線がこちらを向く。

 

 

「絵里のことが大好きなんだよ」

 

 

ウィンクをしてキメ顔でそう言い放つ。

しかし、二人はなんの反応も示さず黙りこくっている。

 

「えっと…?」

 

何か反応してほしくて絵里と目を合わせると、絵里はガバッと机に顔を伏せてしまった。

 

え、なんで?

機嫌ますます悪くなっちゃった?

ごめん。それか、ウィンク下手すぎて両目つぶってた?顔キモすぎた?

 

 

「ちょ、絵里?いじめたことは謝るから、機嫌直してくれよ!」

 

絵里を後ろから肩を掴んで揺らす。しかしビクともしないどころか、手を振り払われてしまった。

 

「今のは、ひろっちが悪い…やんなぁ…」

 

希は苦笑いでそんなこと言ってくる。

俺が悪いってなんだよ!

 

「絵里…頼むから機嫌直して…」

 

完全にスルー。

グスン…俺だってさすがに心折れちゃいそうなんだからな。

 

なにか絵里の気を引けるもの…あ、チョコだ!俺今チョコ持ってるよ!

 

「絵里!チョコあげるから、ね?」

 

絵里はその言葉にピクリと反応したかと思ったら、ゆっくりと顔を上げてこっちを見た。

 

「食べる?」

 

こくりと頷く絵里。その顔はまだ少しすねていそうだったが、俺がチョコを口の中に入れてあげると満足そうな顔で笑った。

そんな少し子どもっぽくなった絵里の頭をぽんぽんと軽くなでる。

うん、餌付けをしている気分だ。

 

 

「やっぱひろっちはえりちを手なずけるのうまいなぁ」

 

ウチも見習わないと、と笑う希に絵里は顔を赤くさせて反論する。

 

「て、手なずけられてなんかいないわよ!」

 

いや、俺完全に手なずけてるって感覚だったわ。

 

「ひろっち…えりちが暴れる」

 

「ねぇ、私は猛獣か何かなの!?大翔も何か言いなさいよー!」

 

もうほら、最終的には怒りの矛先が俺に向いてくるんだから…まったく。

そんな暴れている絵里にデコピンを一つ。

絵里を暴れされた希にはデコピンを二つ…いや、もうひとつおまけして。

 

思ってた以上に力が強かったのか、二人はおでこを抑えて静かに痛がっていた。

 

 

 

 

「で、二人でなんの話ししてたのよ」

 

おでこを赤くさせた絵里が、何事もなかったかのような顔で、戻ってきた時と同じようなことを聞いてくる。

 

「なんでもないって。絵里こそ先生と何話してたんだよ」

 

「あぁ…生徒会に入らないかって言われてね」

 

「それ俺も言われたわ。なんか成績がなんとかで生徒会の会計するの確定みたいな」

 

それにこれといって部活も入っていないから、みたいな感じで言われたな。

まぁ、バイトある日は無理だけどそれ以外の日なら暇だし、軽い感じでOKしてしまった。

 

「そう…なの…?」

 

「おう。そんで、絵里が会長でもやってくれたらいいんだけどなぁ…って思って先生に推薦した」

 

先生は絵里にもともと頼んでみるつもりだったのか、今度聞いてみると言っていた。

絵里の表情からするに、今日はそのことを頼まれていたのだろう。

 

「…引き受けようかしら。あんなに頼まれたら断れないし」

 

絵里の性格上、頼みごとなどをされるとなかなか断れない。それに今回は先生からの頼みだしな。

 

「ええやん!ウチはえりちたちのこと応援するよ!」

 

「は?何言ってんだよ。絵里が会長なら希は副会長だろ?」

 

「そうよ。希が副会長をやってくれないと、私は引き受けるつもりないわよ」

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、三人とも生徒会に入ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





おれかの6話でした。

次回もにこの話になります!


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