俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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7.笑顔の魔法

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事生徒会に入った俺らは放課後も一緒の時間を過ごすことが多くなった。

 

 

 

てか、会計の仕事がない!

おっと、これだと語弊が…

基本書記っぽい仕事とか、パソコン系の仕事、集会や行事の司会とか、会計の仕事って雑用じゃねえか。

 

 

まぁ、絵里とか希がやっているめんどくさそうな書類の作業に比べたらましか。

 

 

 

 

「なぁなぁ、俺やることないから今日は帰っていい?」

 

今日は一人だけこれといってやることがなく、ずっと外を眺めたり作業をする二人を見たり。

正直とても暇だった。

 

書類とにらめっこしていた二人は目を書類に向けたまま返事をする。

 

「んー。まぁ、確かにひろっちはやることないしなぁ」

 

「そうね。今日は別に帰ってもいいわよ。お疲れ様」

 

「おう。お疲れ!お前らも暗くなる前に帰れよー」

 

こちらを向いてくれた二人に小さく手をあげて部屋を出る。

よっし、今日は息抜きでもしよう。

 

 

 

 

あ、久しぶりにアイドル研究部にでも行ってみるかな。出しかけた靴を戻してアイドル研究部の部室へ向かう。

 

思い立ったらすぐ行動。それが、俺のポリシーなのだ。

 

 

実際あの日以来会うタイミングなんてなかったし、あの日のことは気になってしょうがないし。

 

 

 

 

考え事をしながら歩いていたせいか少しだけ通り過ぎてしまった。

危ない、危ない。

 

とりあえずドアから明かりがついているのがわかるので、矢澤は今日も一人で部活をしているのだろう。

俺は迷わずノックもしないでドアを開ける。

 

「矢澤〜。会いに来てやったぞ」

 

中に入ると鏡に向かって笑顔を作っている矢澤の姿が目に入った。変なポーズまでしている。

 

「な、ななな!?ノックくらいしなさいよ!!!」

 

その大きすぎる高い声に耳がキーンとする。

 

「うっせ」

 

「あんたが悪いんでしょ!てか、勝手に入ってくるんじゃないわよ!」

 

とりあえず、ワーワー喚いている彼女の言葉は無視することにした。

 

 

「ねね、今日俺とデートしない?矢澤の好きなとこどこでも付き合ってやるよ」

 

矢澤は一瞬怪訝そうな顔をしたかと思ったら、突然ぷっと吹きだした。

 

「はーっあんたおっかしー。にこはあんたの名前すら知らないんですけど。なんでにこのこと知ってるのよ?」

 

「あ、俺は結城大翔だ。お前のことは希から聞いたんだよ」

 

矢澤は希の名前を出した途端すごく嫌そうな顔をした。

希…お前は矢澤に何をしたんだ…

 

 

「はぁ…なるほどね。歩きながらでも話すわよ」

 

「…は?」

 

「この宇宙ナンバーワンアイドルの矢澤にことデートしたいんでしょ?大翔」

 

 

 

 

 

 

 

確かにデートしようとは言ったけど、そこまで上からで言われると腹立つな…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室を出てから矢澤は一切止まることなく無言で歩き続けている。おい、歩きながら話すとか言ってなかったか?

いい加減に我慢の限界がきて矢澤の腕を掴む。

 

「矢澤、お前歩くの早すぎなんだけど」

 

「にこよ」

 

「は?」

 

「だーかーらー!にこにーって呼びなさい」

 

振り向いた彼女の目が本気で怖く、掴んでいた手がするりと落ちる。そんなに圧かけられると逆に呼びづらいんだが…

 

 

 

「お、おう。にこ」

 

 

「…で、何が聞きたいのよ」

 

深いため息をつくと少しスピードを落としてまた歩き出した。

俺もその隣を歩く。

 

「なんで、アイドル研究部やってんのかなーって」

 

 

俺にはわからない。

 

部員一人になってまでやり続けている理由が。

 

あんな顔をしてまで一人でいる理由が。

 

 

 

 

 

 

「そんなの簡単よ」

 

 

彼女は小走りで少し先まで行くとピタリと止まって振り返った。

 

「にこがアイドルになりたいからよ」

 

今まで見たことがないような眩しい笑顔。

思わず彼女のそんな笑顔に見惚れてしまう。

 

 

 

「なに言ってんだよ。お前はもうアイドルだろ?」

 

一応スクールアイドルってのをやっていたんだろうが。今もやっているのかは知らないけど。

 

「まだよ。アイドルはみんなを笑顔にする仕事なの。私が楽しむだけじゃダメなのよ」

 

 

あまりにも彼女が悲しく笑うから、俺まで気持ちが沈んできてしまう。絵里に似ていると思ったが、根本的なところは全く違うな。

絵里は人と接するのが嫌で一人でいたが、にこは人を笑顔にしたい気持ちが空回りして周りから人が離れていっている。

一人になりたくて自ら孤立するのと、周りが勝手に離れていって自分で追いかけることをしないのは似てるようで少しも似ていない。

 

絵里の場合は完全に前者で、こいつの場合は後者が近いかな。

理由はなんにせよ、こいつは友達がほしくないわけじゃないようだ。

 

 

「ま、にこはもっと笑ったほうがいいと思うよ。さっきの、『にっこにっこにー』ってやつ、なかなか良かったし」

 

「ほ、ほんと!?やっぱりアイドルはキャラづくりが大切よね!にこってばやっぱりかわいいから」

 

キラキラした顔になったにこを見て、俺まで笑顔になってくる。

そのくねくねした動きと言っていることは意味がわからないが。

それに…

 

「どちらかと言うとギャグに近くて面白かったってのが正しいわ」

 

「ぬゎんですって!」

 

にこは間髪入れずにツッコミを入れてくる。

おい、それはアイドルがする顔としてどうなんだ?

はははっその顔もギャグでしかねぇ。

 

 

 

 

 

ほら、やっぱり楽しい。

にこと一緒にいると飽きない。

まぁ、まだ2回しかちゃんと会っていないんだけどな。

 

「そのままのお前がいいってことだよ。にこと話してると自然と笑顔になる」

 

「あ、ありがとう…!その、一応ね」

 

 

 

 

 

俺はもう十分にこの笑顔に、その魔法に魅せられている。

 

 

 

「おう。暇になったら、寂しくなったらいつでも言えよ?俺が嫌だったら希でもいいし」

 

「さ、寂しくなんかならないわよ!」

 

「どうだか?」

 

「あんたやっぱりにこのことバカにしてるでしょ!」

 

「そんなの当たり前だろ」

 

「真顔で言うんじゃないわよー!」

 

「じゃあこんな顔で言えばいいのか?」

 

 

俺の渾身の変顔を見せる。

どう頑張っても口では説明できないくらい複雑な顔を作り出している。

 

 

「あははっ何よその顔!あんたがやると余計に面白い。お、お腹いたっふふっ」

 

 

よし、今度別の人にもやってみよう。

 

 

 

 

その後、思っていたよりも時間が経っていたため公園でにこの大好きなアイドルの話を聞いた。

正直何がそんなに楽しいのかよくわからなかったが、本当に楽しそうに語るにこを見れたし、今日は満足かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまででいいわ。送ってくれてありがとう」

 

「へいへい。またな」

 

無事にこも送り届けたし、俺もはやく帰らないとな。

 

 

「ねぇ大翔!」

 

突然の大きな声にびっくりしつつ後ろを振り返る。

そこには気の強い意地っ張りなにこではなく、妙に自信なさげならしくないにこが立っていた。

 

 

「なに?」

 

 

 

「今日は楽しかった。だから…また暇な時は部室に来なさい!」

 

 

「ははっ、ありがとな。また明日」

 

 

 

 

 

 

いつかお前のことをわかってくれるやつが現れるよ、絶対に。

少なくとも、俺や希はお前と仲良くしたいと思っているんだからな。

だから、絶対にお前は一人になんかならない。

 

 

 

 

 

 

 

それから俺はちょくちょくアイドル研究部の部室に遊びに行くようになった。

希のクラスに行くとたまに希とも話してるみたいだし。

絵里が一緒にいるとなぜか話しかけても無視してくるのはよくわからない。

まぁ、そのうち絵里とにこが仲良くなる日も来ると信じよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回からやっとアニメの話につながります。

…長かったですね。すみません。


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