俺と彼女たちの物語   作:YURYI*

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9.これから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃校の知らせを聞いた翌日の放課後。

俺と絵里と希は理事長の元へ来ていた。

 

 

 

「廃校になるのは、入学希望者の人数が定員を下回った場合なんですよね?」

 

「だったら、上回ったら…」

 

そう、俺たちは廃校を阻止するべく、生徒会でもなにか活動をさせてほしいとお願いをしに来たのだ。

絵里と希が理事長に訴えるが、理事長が首を縦に振ってくれることはなかった。

 

 

 

「それが出来たら、この結果にはなっていません」

 

わかってる。わかってるけど、そんなことで納得できるわけがない。

そんな気持ちに追い打ちをかけるかのように理事長は続ける。

 

「思いつきで行動しても簡単に状況は変わりません。生徒会は今いる生徒の学校生活をより良くすることを考えるべきです」

 

 

理事長の言うことが最も正しく、俺たちの考えていることが間違っているのは痛いほどわかる。

その事実に、手のひらに指が食い込むほど拳を握って悔しむことしかできない。

 

しかし、このまま何もせずに黙って廃校となることだけは嫌なんだよ。

それがここにいる三人とも同じ気持ちなのは、表情を見ればわかることで。

 

 

 

本来ならまだ一言も喋っていない俺がなんとか説得するべきなのだろうが、あいにくいい言葉が見当たらない。

 

「でも、このまま何もしないわけにはーーー」

 

シンとした空気の中、絵里はいまにも理事長に食ってかかりそうな勢いで前に出た。

 

「えりち」

 

「絵里」

 

そんな絵里に、俺と希が同時に声をかける。絵里はハッとした表情で後ろへ戻った。

気持ちはわかるが、理事長を責めることは違うはずだ。理事長も学校のために最善を尽くしてきたのだから。

 

 

「ありがとう、絢瀬さん。その気持ちだけ、ありがたく受け取っておきます」

 

理事長は穏やかな笑みを浮かべる。一瞬、理事長と目があった気がしたのは気のせいだろうか。

その笑顔の裏では何を考えているんだろう。

 

 

「「失礼しました」」

 

絵里と希を先に行かせて俺は理事長と向かい合う。

 

 

「先ほどは絢瀬が失礼しました」

 

「いえ、結城くんが謝ることじゃないわ」

 

やはりその顔には笑みを浮かべている。

なぜだ?本当にわからない。

 

 

「すみません。理事長は、どうしてそんなに嬉しそうなんですか…?」

 

理事長は首を傾げて考え始める。

そこまでして答えてもらおうとは思っていなかったのだが…

 

しばらくすると、理事長はふぅ、と息をついてにこりと笑った。

 

 

「ふふっそれは、あなたに期待しているからかしらね?」

 

 

 

その笑顔がことりと重なって見えて、少しドキりとしてしまった。

 

 

 

てか、それ答えになってない!

 

 

目で訴えても気づかないふりをされてしまった。

 

 

 

 

 

 

どうやら俺は、理事長が苦手みたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵里たちはちゃんと先に生徒会室へ向かったようなので、俺はのんびりと向かうことにした。

どうせやることなんてないしな。

 

 

 

 

「あ!ひろくん!」

 

こ、この声は…!

声をかけられた方向へゆっくりと向くと、俺の予想した通り、南ことりの姿があった。

悪いとは思いつつも、さっきの理事長のことを思い出して、あからさまに顔を背けてしまった。

 

タイミングがいいのか悪いのか…

 

 

「ひろくん?」

 

罪悪感が勝ってしまい、ことりの方を向くと悲しそうに潤ませた瞳と目があった。

もうほんと心臓に悪いから。

 

 

「あ、あぁ…悪い。こんなところでどうしたんだ?」

 

「そうそう!海未ちゃんのところに行こうと思って…」

 

海未のところってことは、今は部活してるだろうし弓道場か。

何しに行くんだろう?ま、俺には関係ないか。

 

「そっか。気をつけてな」

 

「うん…あっ、ひろくんも一緒に来てくれないかなぁ?」

 

ことりは下から覗き込むように俺を見てくる。

 

「な、なんで俺も行かなきゃなん……あーもう、わかったから!一緒に行くから!」

 

瞳を潤ませて見つめられてしまえば、何も言えなくなってしまう。

 

俺って弱い。

まぁ、ことりにお願いされてる時点で断ることなんて難しいんだけどな…

 

想像してみ?

かわいい女の子にかわいい声と瞳でかわいーくお願いされている自分を。

 

ほら、無理だろ。

 

 

ことりに腕を絡められ、がっちりホールドされながら海未のところへ向かった。

そんな捕まえてなくたって逃げたりしませんよ。

 

 

 

「ひろくん、歩くの早いっ」

 

「ご、ごめん」

 

恥ずかしさのあまり少し早く歩き過ぎたようだ。ことりは少し小走りになっていた。

スピードを落とすとことりはなぜかさらに強く腕に抱きついてきた。

 

 

「こと、勘違いされるから!」

 

それにまずい、いろいろとまずい。

当たってるよ。ほんとにやばいんだけど。

やわら…ぐあぁぁあああ!考えるな、俺!

 

 

「なんで?ひろくんはことりと勘違いされるの、いや?」

 

かわいい。近いせいかいい匂いするし。

って、まてまてまて!これじゃ俺が変態みたいじゃねーか。冷静になれ。

 

 

 

「そ、そーゆーことじゃなくて…あ、弓道場ついたぞ!」

 

ナイスタイミングで目的地に着き、腕を引っこ抜いた。

 

 

「あぁ、ざーんねんっ♪」

 

ことりは笑顔でそう言うと弓道場に入っていってしまった。言葉とは真逆で喜んでいるように見えるのはきっと気のせいではないだろう。

ったく、年上をからかうんじゃねぇよ。

 

 

中に入ったことりを追いかけると入口のところで立ち止まっていた。

ことりの隣から中を覗くと、今から弓を放とうとしている海未の姿が。

 

数秒後、海未の手から矢が放たれる。

 

しかし、その矢は的に当たるどころか横にそれて、なにもないところに突き刺さった。

 

 

海未は先輩らしき人に声をかけられていたが、首を振ってもう一度構える。

しかし、また放たれた矢が的に当たることはなかった。

 

なんか今、海未の口元が動いていた。

…うーん。

 

 

「海未ちゃん」

 

ことりが床にうなだれる海未に声をかけるとそのままこちらを向いた。

ことりは海未に一緒に来てほしいということを伝え、なぜか耳打ちをする。海未はその理由を聞くなり部活中にもかかわらず来てくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、穂乃果のせいで練習に集中できません」

 

「ってことは、海未ちゃんも少しはアイドルに興味があるってことだよね?」

 

前を歩く二人の会話に耳を傾ける。

アイドル?なんの話だろ?

 

「そ、そそそそういうわけでは…!」

 

二人のやりとりを見ていて、俺はふとさっきのことを思い出す。

 

 

「なぁ、そのアイドルってのはさ、さっき海未が呟いてたことと関係あんのか?」

 

「な、なんのことですか!?」

 

あからさまに動揺し始める海未にことりはキョトンとしている。

そう、海未がさっき呟いていた言葉ーーー

 

「みんなのハート打ち…もがっ」

 

「わぁぁああああ!?なんでもないですよ!」

 

最後まで言い終わる前に口を塞がれてしまった。

 

「い、んがっできもがなっが…!」

 

俺が何か喋ろうとするたびに空気を漏らすまいとすごい力で口を塞いでくる。

俺、ただ息ができないって言おうとしてるだけなのになぁ…

 

なんて呑気に考えている場合ではない。いーきーがーでーきーなーいー!!!

 

 

「海未ちゃん!ひろくんがっ」

 

ことりが海未を止めに入ってくれる。

脳が酸素が足りないと警告し、視界がぐらぐらと揺れ始める。

 

 

「すみません!」

 

ぱっと離された手に安堵しつつ、一気に肺に酸素を溜め込む。

 

「ごほっすうぅぅぅぅ…」

 

 

息を吸って数秒、海未とことりが心配そうな顔をして声をかけてこようとする。

しかし、

 

 

「ラブアローシュート!!!」

 

 

俺は叫んだ。

もちろん園田海未に向かって。

正直言葉の意味は全くわかっていない。

 

「ひ、ひろ!?な、あ…」

 

目を見開いて真っ赤になる海未を見て俺の言った言葉が正しかったということを確信する。今言ったのはさっき海未が呟いていた言葉。

 

下を向いてわなわなと震えている海未に声をかける。

 

 

「死ぬかと思ったぞ?」

 

顔を覗き込んだ瞬間、俺の顔が強制的に横を向いた。

耳がおかしくなるんじゃないかというほどの衝撃と乾いた音。そして、ワンテンポ遅れて頬に鋭い痛みが走った。

 

 

 

「…えっ」

 

「はっ!?」

 

「ひろくん…っ」

 

 

もう驚きすぎて声も出ない。

って、今海未にひっぱたかれたよな!?

なんで?ねぇ、なんで?

 

 

「す、すみません!」

 

「お、おう。大丈夫…だけど」

 

海未が俺の頬に優しく触れる。

叩かれて熱を持っているのか、海未の手がとても冷たく感じた。

今は心のほうが痛いぜ、なんて思って悲しくなる。

 

さっきは意識していなかったが、あまりの顔の近さに心臓が高鳴ってきた。

一度意識してしまえば、気にしないようにしようとしてもうまくいかない。

 

 

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

しかし、本当に心配そうに眉を下げる海未をみて少しだけ冷静になる。

 

 

「気にすんなって。それに俺もごめん。…俺かなり海未に嫌われてる…?」

 

「そんなことないです!嫌いなわけないじゃないですか!」

 

 

いやだって。

 

「普通、ビンタするか?しかも容赦なく…ま、海未らしいけど」

 

確かに俺も悪かったけど。

でも、あれはさすがにびっくりするわ。弓道やってるだけあるなってくらいの力だったからな!?

かわいいかわいい海未じゃなかったら、俺やり返してたかもしれないからね?

まぁ、相手が男子だったらオンリーでだけどな。

 

 

「いえ、そのっ!ち、ちか…くて…」

 

「ん?」

 

「い、いきなり顔が近くて…その、なんでもないですっ!」

 

理由を教えてくれるのかと思ったら、俺のことを思いっきり押して距離を取る海未。

 

「なんだよ。変な海未だな」

 

もう、お兄ちゃん高校生になった海未の扱い方わからない!

あーあ、俺なんか悲しくなってきた。

 

 

「ひろくん鈍感…」

 

「…ん?」

 

「なんでもないよ…?」

 

 

ことりが何か言っていた気がするが、怖いくらいの笑顔を向けられてしまえばそれ以上とうことはできなくなってしまった。

 

「…てか、これからなにすんの?」

 

「…あ!穂乃果ちゃん!」

 

 

穂乃果…?

なんだ、最初は海未に会うことが目的だと思っていたが、本当の目的は穂乃果だったのか。

 

 

ことりに連れられるがままきたのは校庭の隅っこ。

部活動をしている生徒の声は聞こえるが、あまり人が来ないんだよな、たしか。

 

 

少しするとかすかに音楽が聞こえてきた。

 

そして、ことりに指さされた方向を見ると穂乃果が汗をかきながら音楽に合わせて体を動かしている。

時折足が絡まり尻餅をついている。そのためか、制服はところどころ汚れてしまっていた。

 

決して上手いとは言えないが、なぜか目が離せない。

 

 

 

まさか…な。

 

隣にいることりはにこにこと穂乃果を見ている。反対の隣では海未がすごく複雑そうな顔をしていた。

 

 

 

 

流れる曲に合わせて踊る穂乃果とさっきの二人の会話。

 

 

この状況が、この後どんなことが起こるのか、それがなんとなくわかったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





この頃の絵里はThe生徒会長って感じだったなぁ…



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