鷺沢さんがオタク化したのは俺の所為じゃない。   作:バナハロ

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ふみふみはエッチになったらMそうだなと思ってやりました。反省はしているが後悔はしていない。


趣味思考フェティシズムは人それぞれ。

「と、いうわけで、文香さんと喧嘩しちゃったんだけど………」

 

 翌日の昼休み。屋上で俺は速水さんに電話をしていた。用件を伝えるなり、スマホの向こうから盛大なため息が聞こえた。

 

『全部聞いてるわよ、文香から』

 

 おお、それなら話が早い。

 

「文香さん、怒ってた?」

『…………』

 

 あれ、返事がないな。何かあったのか?いや、文香さんと話したと言うことは、向こうの結論を知っているわけだ。

 それを伝えるのが、俺と文香さんの仲直りの近道だ。それを速水さんが分かっていないはずがない。それでも教えないということは、伝えるべきか悩んでいるという事だろう。

 なら、俺は返答を待つだけだ。

 

『………んー、一応聞きたいんだけどさ』

「はい?」

『あなたの口からも昨日あった事を話してくれる?』

 

 なるほど。文香さんからの報告だけでは、内容が片寄ってるかも、と思ったわけか。それなら、説明ないとダメだな。

 との事で、説明をした。それを聞いた速水さんは、電話の向こうでしばらく黙り込んでしまった。

 

『……………』

「速水さん?」

『ちょっと黙ってて』

 

 ふむ、なんか怒られちゃった。まぁ、俺のために(或いは文香さんのため)に悩んでくれてるんだし、待機するか。……ただ、気になるのはなんで一々、話すのをやめる度に、小声で何か話してる事なんだよな。まぁ、考えても仕方ないものは考えないが。

 しばらく待ってると、速水さんは一つの結論に達した。

 

『……自分でなんとかしなさい』

「えっ?」

 

 散々考えててそれ?

 

『あんた達ほどいろんな意味でお似合いのカップル、そういないんだから。別れたら殺すわよ』

「ラジカル過ぎるよ!」

『何?ゆっこなの?』

 

 日常見てるのかよこの人……。

 

『とにかく、自分で何とかする事、良いわね?』

「ああもう分かったよ。今日学校終わったら文香さんの家に顔出す」

『そんな必要ないわよ?』

「あ?」

『今、ここに文』

「あれ?鷹宮くん?何してるの?」

「えっ?」

『えっ?』

 

 後ろから誰かに声をかけられた。振り返ると、三村さんが立っていた。

 

「……やばい、クラスメイトだ。また連絡する」

『えっ、ちょ』

 

 電話を切った。まぁ、文香さんの家に行くって伝えてあるし大丈夫だろう。万が一、クラスメイトにアイドルの知り合いがいるなんてばれたら、「サイン頼む」の連呼だろう。それだけはごめんだ。

 

「み、三村さん。何?どうかした?」

「い、いえ、私はお昼食べるの遅れてしまったから、ここで食べようて思ってここにきただけで」

「あ、そう。じ、じゃあ俺邪魔ですよね……。失礼します」

「いえ、そんなことないよ?一人で食べるのは寂しいし、一緒にいてくれると嬉しいんだけど……」

 

 ………そういうものなのか?いや、でも俺電話かけ直さないといけないし……。

 

「すみません、ちょっと電話しなきゃいけないんで」

「そ、そっか………ごめんね、無理に誘っちゃったみたいで……」

 

 ……そうやって謝られると、申し訳なくなるのは俺だけなんだろうか。

 

「………電話終わったら戻ってくるんで。それで良い?」

「……い、一緒に食べてくれるんですかっ?」

「俺は食べませんけどね」

 

 一度、屋上を出てスマホから速水さんに掛け直した。

 

『………もしもし?』

「あー、速水さん?すみません、ちょっとクラスメイトが来たもんで。ほら、文香さんとの関係バレたらマズイじゃないですか」

『………文香です』

「…………はっ?」

 

 ………え、なんで文香さんが出てんの?掛け間違えたか?

 

『………掛け間違いではありませんよ』

「あ、やっぱりか。あの、速水さんと一緒にいるんですか?」

『………はい』

 

 何したんだよあいつ。俺と同い年ってことは高校生だろ?何で学校サボってんの。まぁいいや、そこら辺突っ込むとあいつ多分うるさいし。

 

「あの、それで……なんで文香さんが?」

『……いえ、奏さんにスマホをお借りして………』

「や、そうじゃなくて。なんで俺の事怒ったのに電話代わったのかなーって………」

『…………それは、その……謝り、たくて………』

「はっ?」

 

 昨日の事か?なんで怒っておいて謝ってんの?

 

『………昨晩、理不尽に怒ってしまって……』

「あ、いや………えっ?てっきり、俺がなんかやらかしたかと思って、でも理由がわかんなくて速水さんに助けを求めようと思ってたんですけど……」

『……いえ、昨晩は本当に私が悪かったです。千秋くんにだって、クラスメイトと仲良くすることだってあるでしょうに………』

「は、はぁ……。まぁ、別に俺は怒ってませんけど」

『………ほ、ホントですか⁉︎』

「はい」

 

 まぁ、実際怒ってないからな。そもそも俺ってあんま基本的に怒らないから。人の所為にするの嫌いだから。

 

『………良かったぁ。じゃあ……その、今日。また、私の部屋に…来てくれますか………?』

「はい。全然行きます」

『………じゃあ、楽しみにしてますね!』

 

 良かった、なんか元気戻ったみたいだ。さて、そろそろ俺、三村さんのところ戻らないと。

 

「じゃあ、また放課後。三村さんのお昼付き合わなきゃいけないんで」

『はい………えっ?三村さんって……』

「失礼します」

 

 電話を切った。………あれ、そういえば結局、昨日はなんで怒られたんだろう。

 少し考えながら、屋上の三村さんと合流した。

 

「すみません。お待たせしました」

「あ、ううん?さ、食べよう?」

 

 おい、まだ弁当箱開けてねーのかよ。あと昼休み10分だぞ。

 

「……や、別に先に食ってりゃ良かったのに」

「だって、せっかく一緒に食べるってなったから……」

「俺はだから食べないんだって……」

「………食べる?私の」

「いや、いいよ」

 

 言いながら俺は2メートルくらい距離を開けた場所に座った。

 

「えっ、なんでそんなに離れるの?」

「え、いやそんな離れてるつもりはないですけど」

「一緒に食べるんだから、もう少し近くでも良いよ」

 

 三村さんは俺の隣に座って来た。あの、ちょっ……近い近い近い近いっつーの。

 

「えっ、あの………」

「いただきまーす」

 

 なんでそんな近づいてから普通に食うんだよ。もしかしてあれか、あまり距離感とか測らない子なのか?

 

「んー、美味しい」

 

 おい、弁当箱の中クッキーとかしか入ってねーぞ。ちゃんと飯くらい食え。

 

「………鷹宮くん」

「はい?」

「鷹宮くんは、私のこと知ってる?」

「は?」

 

 何言ってんだこの子。サイコパスなの?この前知り合ったばかりだろ。

 

「そりゃ知ってますけど。同じ班に誘ってもらえましたし」

「………うん。まぁ、そうだよね。少し複雑かな」

「えっ?何が?」

「ううん。私的には、そっちの方が良いから」

「あ?そう?」

 

 聞かれたくないニュアンスを含まれてたから、とりあえず聞かないでおこう。

 

「………まぁ、なんでもいいけど」

「それより、鷹宮くんは沖縄どこに行きたい?」

「んー……アニ○イトに行ければあとはどこでも」

「えー?沖縄まで行って?」

「はい。あとは他の奴の好きな場所で良いよ」

「………うーん、まぁ鷹宮君がそう言うなら」

 

 実際、行きたい場所なんてないからな。あるといえば美ら海水族館くらいだが、そういう見学する場所は一人でのんびりと見回りたいし。

 

「三村さんは行きたい場所とかあるんですか?」

「んー……サーターアンダギー」

「それは食べ物だろ……」

「あ、あはは……そうだよね。でも、私も海以外は特に行きたい場所があるわけじゃないんだよね」

「……あの、もしかしてお菓子とか好きなん?」

「う、うん……。自分で作ったりもするんだ」

「へぇー………なるほどな」

 

 なるほど……だからそんな文香さん並み、いや下手したらそれ以上の体型に………。

 

「………鷹宮くん?どうかした?」

「……やっ、な、なんでもないっ」

 

 馬鹿、俺の馬鹿。俺には文香さんがいるだろ。文香さん以外で欲情するな。家帰ったら逆立ち腕立て伏せ50回だな。

 

「よし、ごちそうさまでした」

 

 三村さんは食べ終わったのか、両手を合わせた。弁当箱を布に包むと、三村さんは立ち上がった。それに合わせて俺も立って、軽く伸びをした。

 

「よし、戻ろっか。もう授業始まるし」

「そーだな」

 

 教室に戻った。

 

 ×××

 

 学校が終わり、放課後。家に戻って着替えて変装してから文香さんの家に向かった。本屋に到着し、マンションのインターホンで文香さんの部屋を鳴らした。

 

「文香さん?鷹宮ですけどー」

『……………』

「文香さん?」

 

 無言のうちに自動ドアが開いた。………入って良いんだよねこれ?

 入って、エレベーターで文香さんの部屋の階まであがった。部屋の前に到着すると、再びインターホンを鳴らした。鍵が開く音がしたので、ドアノブに手をかけて入室した。

 

「お邪魔しま……えっ?」

 

 中に入ると、文香さんが目のハイライトをオフにして立っていた。なんというか、闇のオーラ的な、それこそ深遠なる闇の出現レベル、アークス12人で挑む奴みたいなオーラを出していた。

 

「ふ、文香、さん………?」

「…………千秋くん、少しお話よろしいですか?」

「は、はい………」

 

 え、なんで怒ってんの?俺何かしたっけ………?

 とりあえず、上がらせてもらった。のだが、上がるなり床の上で正座させられた。

 

「………千秋くん」

「はっ、はいっ」

「………お昼、私と電話しましたよね?」

「しましたね。それが何か……?」

「………その時、誰のお昼に付き合わないと仰いましたか?」

「えっ?えーっと、三村さんです、けど?お知り合いですか?」

 

 そんなまさか。文香さんにそんな歳下の知り合いをアイドル以外で作れる社交性があるとは思えないし。

 

「………その方は女性ですか?」

「はい。同じクラスの。修学旅行でも同じ班なんですよ」

「…………その人とは、どういう関係なんですか?」

「どういうって、今言った通りの……」

「……お昼休みに、一緒にお昼を食べるほどの仲なんですよね?」

 

 ………ああ、これもしかして。昨日、怒られた理由も分かったわ。

 

「………もしかして、ヤキモチ妬いてるんですか?」

「………………」

 

 文香さんはぷいっと顔を背けた。

 

「大丈夫ですよ。俺、浮気なんて絶対しないし、三村さんとは本当に修学旅行で同じ班ってだけですから」

「………本当に?」

「はい。だから、安心して下さい」

「………不安にも、なりますよ」

「えっ、俺ってそんな信用ないですか?」

 

 何それ死にたい。

 

「………だって、千秋くんのお知り合いの女性は、みんな可愛いじゃないですか」

「え、そうですか?そもそも知り合いの女性が少な」

「………全員アイドルじゃないですか」

「…………確かに」

 

 可愛くないわけがなかった。納得しちゃったよ。

 

「………だから、その……不安になってしまうんです。どうしても」

「大丈夫ですよ。三村さんはアイドルじゃありませんから。大体、流石にそんなにたくさんアイドルと知り合えるわけがないでしょう?」

「どの口が言いますか」

「……………」

 

 うん、今のも納得した。文香さん以外にも、速水さん、塩見さん、橘さん、渋谷さん、神谷さん、北条さん、アーニャさん、宮本さん、大槻さん、島村さんと11人。なでしこジャパン組める上に、文香さんを入れれば控え選手を一人付けられるまである。

 

「………すみません。でも、三村さんはホント違いますから」

「………私だってアイドルだと思ってるわけではありません。ただ、クラスに可愛い女子生徒はいてもおかしくないと」

「三村かな子さんっていう人なんですけど」

「………今なんて?」

「えっ?」

 

 文香さんの目つきが鋭くなった。

 

「み、三村かな子さん……?」

「kwsk」

「や、そんな詳しくは知らないですよ。ただ、今日話した感じだと、お菓子作りが好きで、声が古鷹型に似てるって事くらいで」

「………………」

 

 あれ、なんか文香さんすごい俺の事睨んでる。え、なんで?俺、何かしちゃった?

 

「………で、なんか結構不思議な子みたいでして。なんか、飯食ってる時に『私のこと、知ってる?』とか聞いて来て。知らねーわけねぇっつの。同じ班に誘って来た張本人だろが」

「知らないじゃないですか」

「えっ」

 

 この人まで何を言い出すのか………。どういう意味なのか聞こうとしたが、文香さんはため息をついて少し考え込んだ後、呟いた。

 

「………言わないでおきましょうか」

「はっ?」

「………いえ、なんでもありません。その三村さんとは何もないんですね?」

「ありませんよ」

 

 文香さんの纏っている闇のオーラが消えていった。俺はホッと息をついた。その一瞬の油断を突いたように文香さんは言った。

 

「………でも、許したわけではありません」

「…………はっ?」

「……今の会話で、修学旅行の間は尚更不安になりました」

 

 えっ、なんで……。そんなに信用ないのかな俺。

 

「………ですから、その……千秋くんには、私の趣味に付き合ってもらいます………」

「良いですよ別に」

「………言いましたね?」

 

 文香さんの趣味でしょ?全然良いよ?むしろ、こっちからお願いしたいくらいだ。

 そんな事を思ってると、文香さんは突然自分の着てる服のボタンを下から外し始めた。

 

「っ⁉︎ふ、文香さん⁉︎」

 

 何してんの⁉︎的なニュアンスを込めて聞いたが、無視してボタンを外す。おいおいおい、待て待て待て。そういう不純異性交遊はあなたがアイドルをやめてからって俺は決めて………‼︎

 と、思ったら、なんか俺に向けて人差し指を差し出して、とんでもないことを言い出した。

 

「………千秋くん」

「は、はいっ」

「…………何も聞かずに、その…噛んでください」

「はっ?」

「聞かないでください‼︎」

 

 はっ?や、無理だろ。お前今なんつった?

 

「………どういうこと?」

「聞かないでください‼︎」

「いやいやいやいや無理無理無理無理。説明して下さいよ」

 

 いきなり噛めって何?何プレイ?ペットだと思われてんの?

 

「………どうしても、ですか……?」

「そりゃまぁ」

「……………」

 

 文香さんは恥ずかしそうに顔を赤らめて目を逸らした。言うか言うまいか悩んでいるのだろう。だが、やがて観念したように口を開いた。

 

「………夏休みの最後、私の家で一泊したじゃないですか」

「はい」

 

 あの日か。

 

「……そ、その時に、その……一緒に料理したじゃないですか」

「はい。しました。文香さん、指切っちゃった時ですよね?」

「…………その時、指を咥えていただいたとき、その………変な、快楽が身体中に、響き渡って…………」

「……………はっ?」

「ち、千秋くんが私の匂いを嗅ぎたがるのと同じです‼︎私は千秋くんに噛まれたいんです‼︎」

「………………」

 

 そ、そんなこといきなりカミングアウトされても………。すると、再び文香さんはプルプルと手を震わせて、人差し指を立てた手を俺に向けた。

 

「………そ、そういうわけでっ、その……お願いします……」

「……………」

 

 落ち着け、俺。これは良いのか?いや、噛むことは嫌ではないし、匂い嗅ぐのと同じと言われればそうなのだが、不純異性交遊にならないか?落ち着いて検証してみよう。

 噛む、というのは日常を逸脱した行為だ。癖で、よく爪を噛む人もいるが、他人に噛まれるということは無い。

 逆説的に言えば、他人に噛まれるケースを思い付けば、条件はクリアされる。考えろ。文香さんのためにも。

 

 1、赤ちゃんはお母さんの乳首しゃぶる。

 2、以前のように傷口を舐める事もある。

 3、キスで相手の口の中を舐め回す事もある。

 

 ………三つも事例があるなら大丈夫だろう()。

 俺は目の前の指を恐る恐る咥えた。直後、文香さんは目をキュッと瞑った。紅潮した顔から、乱れた吐息が漏れる。なんかすごいエロい。

 ………えーっと、ここからどうすれば良いのだろうか。悩んでると、文香さんは震えた声で言った。

 

「………ち、ちあきさん……」

「……ふぁい?」

「……さ、そのまま吸って下さい……!」

「ふ、ふうっへ………?(訳:吸うって?)」

「傷口を、吸う、みたいに………」

 

 よく分からなかったので、とりあえずストローを吸うように吸ってみた。すると、文香さんはなんかすごい感じてるのか、目をキュッと閉じたまま、顔を赤らめている。

 

「………んで、ください……」

「へっ?」

「………か、噛んで、下さい………」

 

 ………いや、待て待て待て。

 

「………え、噛んでって……」

「……お願い、します………」

「…………」

 

 仕方ないので、少し歯を立ててみた。

 

「んぅっ………‼︎」

「っ!い、痛いですかっ?」

「……つっ、続けて下さい……‼︎」

 

 慌てて口を離して聞いたが、文香さんはそう答えた。仕方ないので、俺は続けた。

 しばらくそのまま指以外にも腕や脚も噛ませられ、文香さんはようやく満足(?)したのか「も、もう大丈夫です……」と言われた。腕や指はともかく、脚は流石にムラムラしたわ。ていうか、今もムラムラしてる。

 と、思ったら、文香さんは何故か上に来るシャツのボタンを外し、肩まで露出し始めた。

 

「いっ……⁉︎ふ、文香さん⁉︎」

「………さ、最後に……く、首筋を…………」

「く、首筋⁉︎」

「やらないと他の女の子とお昼食べたこと、許しません‼︎」

「ッ………‼︎」

 

 ず、ずるい……!てかなんだ?ストライク・ザ・ブラッドでも読み返したのか?

 しかし、そう言われれば俺も従うしかない。髪をかきあげる文香さんの後ろから、首筋を噛み付いた。

 

「ぁっ……!」

 

 声にならない声を上げる文香さん。………あ、ダメだ。こっちの性欲が限界だ。このままじゃ襲ってしまう。だが、それはアイドルを文香さんが辞めてからじゃないと絶対にダメだ。ゴムもないし。

 何とかしてこの性欲を別の所で発散しないと………‼︎そうだ、匂いだ。文香さんの匂いをゼロ距離で嗅いで満足しよう。それしかない。

 そう決めると、俺は後頭部に鼻を押し付けた。

 

「ーッ‼︎……っ、ち、あきっ、くんっ………‼︎」

 

 すみません、これで発散しないと無理そうです。後頭部に顔を押しつけながら、首筋を噛んだ。文香さんがどんな顔をしてるのか見えないが、これでムラムラが収まるまで押さえるしか………あ、あれ?なんか、収まるどころか、余計に………。

 すると、文香さんが俺の前で脚を開いて、両手を広げた。まるで、俺に触ってくれとでも言わんばかりに。さらに、ふと窓を見ると、反射して映ってる文香さんは、顔を赤らめて後ろにいる俺を、何かを訴えるような目で見ていた。

 おい、それはっ……ナニを訴えてる目だ………?

 心の中で、俺がそう聞いた直後だった。

 

 

 ピンポーン

 

 

 その音で、俺も文香さんもビクビクッと身体が跳ね上がった。そして、二人揃って音の方を見ると、速水さんがインターホンに映っていた。

 なんか急に恥ずかしくなり、俺達はお互いに慌てて距離を取り、文香さんはインターホンのボタンを押した。

 

「は、はいっ⁉︎」

『文香ー?今日もノロケ話聞きに来てあげたわよー』

「は、はいはい!今開けますね………‼︎」

 

 今日もってことは、今日以外もこの人速水さんに色々話してんのか………や、別に良いけど。

 俺も文香さんも、顔を赤らめたままお互い目を合わせた。

 

「…………さっきまでのことは、奏さんに悟られないようにしましょうか」

「あ、当たり前です………」

 

 ちなみに、文香さんの乱れた髪、腕や足の噛み傷、掛け違えたシャツのボタン、真っ赤になった顔で、普通にバレてメチャクチャ怒られた。俺今日、怒られてばっかだな。

 

 


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