東方古神録~幻想幼女~   作:しおさば

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今更ながらに、幼女成分が不足してるなぁ、と思ってしまった。
まぁ、次の章から幼女成分マシマシなんで!!


9話/亡霊の殺意らしい

静寂が辺りを包んだ。

時折吹いていた生温い風も、今ではピタリと止んでしまった。

ごく一般的な感性を持っているのならば、ここまでの庭を造ろうなんて考えもしないであろう程広大な庭の中、一本の桜の大木の前で三人は互いを牽制し合うように立っていた。

 

「言ってる意味が……分からないわ」

 

それもそうだ。いきなり普通に会話をしていた相手から「君は誰だ」等と問われれば、相手の頭が急にあさっての方向に飛んでいったか、若しくは自分の知らない間に日本語の使い方が変わってしまったか。そのどちらかを疑う。

凡そ大体が前者であるが。

しかし、今回の場合は少しだけ状況が違う。それは問われた本人が良く分かっていた。

 

「し、師匠。私にも分かるように説明願います。幾ら師匠でも、私の友人を侮辱するのは許せません」

 

霞の隣に立っていた紫も、霞のセリフに戸惑っていた。

紫の師匠である霞は確かに『創造神』であり、尚且つ『自由を司る神』でもある。その言動が突拍子も無いことはあった。それでもその言動が無駄に終わったことは紫が知る中では一度もない。

それはつまり、自分がその考えに至っていないだけで、霞にはより先が見えているのだろう。そう思う程には霞を信頼していたし、恐らくこの先もその思いは覆ることは無い。

 

だが、今回は違った。

つい先程まで、霞は普通に会話をしていた。傍から聞いていても何気ない会話すぎて聴き逃しそうになるくらい、平和なものだった。たまたま目を惹くほどの大木が庭にあり、それが何の木なのか問うただけだ。

 

「紫、お前の友人ってのは、今日あったばかりの相手に殺意を抱くような人物なのか?」

 

「……門前での事なら謝るわ。ちょっとした遊び心だったのよ」

 

紫が霞を紹介した時、彼女は揶揄うつもりだったのだろう。その有する能力を発動させた。彼女曰く、直ぐに解除するつもりだったらしいが、元より霞には『死』の概念が無いために効くことは無かった。それでその場は終わったはずだ。紫の知る霞ならば、長く根に持つようなことはないと思っていた。

 

「あぁ、違う違う。まぁ紫が気が付かないのも無理はないか。かなりうまく隠してるものな」

 

そう言うと霞は右手を払う。すると空間が裂け、その中に手を突っ込んだ。

 

「会話自体には違和感なんて無かったよ。そりゃぁもう、初めて会ったって言うのにも関わらず、長年の知り合いのように話すんだもんな」

 

空間から取り出したのは霞の愛刀『夜月』。長らく霞と共にある一振の太刀。

 

「それが何か問題かしら。もしかして馴れ馴れしかったとか?」

 

「そんな事気にしないさ。問題なのは、殺意を隠して俺をこの木から遠ざけようとしている事だ」

 

「……」

 

「君にとってこの木がとても大事で、若しかすると触れて欲しくなかったり、もっと言えば近づいても欲しくないのかもしれない。それならば、それだけならば俺も素直に謝ってこの話は終わりにするんだけどね」

 

紫は固唾を飲んだ。さっきから霞が何を言っているのか分からなかった。友人が霞に対して殺意を抱くとはどういう事だ。紫の知る友人は、あの大木に対してそこまで敏感ではなかったはずだ。

少なくとも近寄られただけで殺意を抱くなんてことは無いと断言できた。

 

「君の殺意は『妖力(・・)』を含んでいる」

 

 

 

紫の友人である『西行寺幽々子』は亡霊である。

今は亡き肉体から魂だけが離れ、成仏せずにこの冥界で管理を任されていた。

そう、亡霊(・・)なのだ。

妖怪でも魔族でも、ましてや神でもない。つまり彼女が使う力は『霊力』でなくてはならない。そんな彼女から霊力以外の力が感じられ、それを隠そうとしている。これが意味するのは。

 

「妖力なんてこの冥界では異質だろ。良いとこ紫か、藍が来た時位じゃないか?」

 

紫は会話に口を挟むことが出来なかった。それは霞の言葉に反論出来ないのもあるが、何よりも友人の変化に気が付けなかったからだ。

長く付き合いのある友人の変化に、まだ会って数時間も経っていない霞が気付いた事実は、紫の言葉を奪うのに充分だった。

 

「……なんだ。気が付いてたんだ」

 

「おぅ。神様舐めんなよ」

 

霞は夜月を腰に差す。その姿は欠けていたピースがピッタリとハマり、完成された一枚の絵のようだった。

 

「ついでに言うと、君の正体も大体は想像がつく」

 

「そう。ならばどうするの?」

 

そう言って紫の友人であったものは両腕を広げる。無抵抗を現すかのように。

 

「ふむ。俺が終わらせても良いんだけどな。それよりも適役がもうすぐ来るんでね、そっちに任せるよ」

 

そう。霞は気が付いていた。門前から伸びる長い階段の下に、よく知る二つの気配がある事を。その二人にならば任せられると。

 

「自由な神様が必要になるのは、もう少し後のようだしね」

 

霞がそう言った瞬間。屋敷の門が派手な音をさせながら無遠慮に開かれた。

許可も挨拶もなく、傍若無人な態度で屋敷へと足を踏み入れたのは、紫もよく知る赤と白の巫女服に身を包んだ少女だった。

 

「魔理沙、アンタ重い!」

 

「あ、乙女に向かってそのセリフは禁句なんだぜ!!」

 

紅白巫女の肩には、これまたよく知る白黒の魔法使い。

反対の手に握られたロープに縛られているのも、また紫がよく知るこの屋敷の庭師の姿だった。

 

「ゆ、幽々子様~。申し訳ございません~」

 

何故か半泣きで。その周りを彼女の半身でもある半透明の魂がふよふよと浮かんでいる。

 

「……なんで霞さんと紫が居んのよ」

 

「ちょいと野暮用でな。なに、今回は手出しをしないから、存分にどうぞ」

 

「私としては、寧ろ霞さんがやってくれた方が助かるんだけど」

 

「……魔理沙には階段のこと黙っててやるよ」

 

「……さぁ!!アンタがこの異変の犯人ね!!」

 

紫には二人が何の会話をしているのか分からなかったが。少なくとも分かることが一つだけあった。

 

 

「師匠、面倒くさくなりましたね」

 

「そ、そんな事ねーし……」




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