東方古神録~幻想幼女~   作:しおさば

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今更ながらに、幼女要素ねぇなぁ……。

次章からはタイトル回収しますんで!!
少々お待ちを!!


10話/西行寺家の事情らしい

side 霊夢

 

長く続く階段を魔理沙と白髪少女を抱えながら飛んで上ると、そこには大きな屋敷がたっていた。

私が縦に並んでも二人ぐらいなら余裕を持って潜れそうな門を過ぎる。

 

「魔理沙、アンタ重い!」

 

ドサッと魔理沙をその場に落とす。カエルが潰れたような声が聞こえたが、ここまで運んであげたんだから文句は言わせない。

 

ギャーギャーと何やら叫んでいる魔理沙を無視して前を見れば、屋敷に見合うだけの広い庭が広がり、なんとも意外な事に見慣れた人物の姿があった。

 

「……なんで霞さんと紫が居んのよ」

 

わが博麗神社の祭神(疑)と幻想郷の賢者(笑)。

どちらか一方でも面倒な気配がプンプンするのに、その二人が揃えば、もはや確定事項で面倒事だ。

漂う空気も重々しい。まるで私達が場違いな程に。

 

 

 

 

「うん、どんな経緯があったか全く分からないんだけどね」

 

霞さんに異変解決を任され、私は一人の女性の前に立つ。

何処かのご令嬢と見まごう程に優雅な佇まいは、紫とはまた違った大人の色気を感じる。

私としては紫よりもこういう奥ゆかしい大人になりたいものだ。まぁ、無理だろうけど。

 

「私は博麗霊夢。幻想郷の素敵な巫女よ」

 

「あら、これはご丁寧にどうも。私は西行寺幽々子。冥界の素敵な亡霊よ」

 

幽々子と名乗った女性。口元を扇子で隠す仕草は紫もそうだが、様になっている。あれかしら、大人ってのは扇子をうまく使えるとなれるのかしら。

 

水色の着物は、辺りの雰囲気と相まってより冷たく、暗く見える。幽々子の肌も亡霊だからか白く。まさに亡霊と言うに相応しい。

 

「一応聞いとくけど、この異変を止めるつもりは?」

 

「ふふっ。面白いことを訊くのね。あれば初めから異変なんて起こしてないわ」

 

だと思った。どうしてこうも異変を起こす奴らは、それが齎す結果を考えないのかしら。

春が来ないということは、冬が終わらないということ。確かにこの冥界にいる限り、下界がどうなろうと知ったことではないのかもしれないけれど。

 

「……流石に寒いのよ!!」

 

幾ら霞さんのお陰で部屋の中ならば快適に過ごせるとしても、こう寒ければ参拝客も来やしない。それではコチラの生活に直結する問題となる。死活問題だ。

 

「だからココでアンタをぶっ飛ばすわ」

 

「その冗談は、あまり面白くないわよ?」

 

私は懐から札を取り出す。幽々子に向かって投げると、札は霊力を纏い弾幕となる。

広範囲に広がる弾幕を、余裕そうに避ける幽々子。その姿はまるで何かの舞を舞っているようにも見えた。

 

「まぁ、怖いわぁ」

 

「嘘つけ、余裕の癖に」

 

実際、幽々子は明らかに余裕を見せている。少なくとも私はこういった事に手を抜かない。何時でも全力を尽くす。さっさと終わらせたいからね。

それでも、幽々子の表情に焦りの色は見えないし、動きもまだまだ機敏だ。

 

「それじゃ今度は私の番ね」

 

そう言うと、幽々子は扇子をパチンと閉めてこちらに向ける。扇子の先に霊力が溜まっていくのがわかった。

放たれた霊力はその形を次第に変え、蝶へと変化した。

本物の蝶のようにヒラヒラと舞う蝶は、正直動きが読み辛い。

辛うじて避ければ、また次の蝶が飛んでくる。一匹二匹程度ならばまだ良いが、大量の、正しく弾幕ともなれば避け続けられている自分でも驚きだ。

 

「ふふふっ。必死ね」

 

「当たり前でしょ。こんな所で負けるわけにはいかないのよ!!」

 

ふと脳裏に蘇るのは、気紛れに霞さんが見てくれた修行の日々。まだ数日程度だけれども、私にとって新しい発見の連続でもあり、また自分の実力の低さに落胆するばかりだった。

 

---

 

頭では理解していた。

普段の言動を見ているとは言え、相手は神。それも原初の神である創造神。その実力は私を遥かに超える。それでも、今までの経験から勝てないまでも善戦できる自信があった。

しかし結果は気弾を当てることどころか、触れることすらも出来ないほどの圧倒的な敗北。

どんなに贔屓目に見ても、『善戦』とは言い難い内容。

余りの悔しさに、涙すら出てこない。

 

『霊夢は強いな』

 

投げかけられた言葉は、私を惨めにするためのものではない。それは理解出来た。

 

『霊夢は強い。だけどそれは不必要な隙を生む。人はそれを油断って言うんだよ』

 

油断。確かに私は油断していたんだろう。

これまでの経験。博麗の巫女の勘。それらが私の鼻を伸ばしたのだろう。

霞さんはそれに気が付き、敢えて完膚なきまでに叩きおってくれたんだと思う。

 

---

 

だからこそ、油断はしない。

どんな弱小妖怪であろうと、『博麗の巫女』に敗北は許されない。

だからこそ、全力を尽くす。

 

私は数枚の札を取り出す。

迫る蝶へと向かい投げると、札は霊力で繋がる。

円状に繋がった札は互いに霊力の膜を張り、一枚の壁となる。

壁にぶつかる蝶は霧と消た。

 

「あら、硬いわね」

 

余程の霊力を込めたのであろう蝶。それですらビクともしない壁に幽々子は表情を変えこそしないけれど、驚いているようだった。

 

「悪いけど、全力でいくわよ」

 

 

---

side 妖夢

 

幽々子様と博麗の巫女が対峙してからどれくらいだろう。

幾ら幽々子様と雖も、相手は博麗の巫女。勝負はすぐに着き、異変も終わるのだろうと思っていた。

幽々子様には申し訳ないけれど、あの博麗の巫女を相手に勝つのは難しいだろうし、何より幽々子様の性格上すぐに飽きてしまうと思っていたから。

 

でも、実際は違った。

幽々子様はいつもと違い、諦めることなく未だに勝負は続いている。

 

幽々子様へ違和感を感じ始めたのはいつの頃からだったろうか。

長く一緒に居たからこそ感じることの出来る、言葉にするのも難しいような、感覚的な違和感。

何処が違うとは、明確に言える訳では無いけれど、それでも微々たる違和感は積もり続ければ無視出来なくなる。

 

それでも私は気が付かないフリをした。

 

「幽々子様……」

 

「いや、その格好で神妙な空気出されても、失笑しか出てこないぞ?」

 

私の隣に座るのは、いつの間にか屋敷にいた紫様と知らない男性。正確には名前の知らない男性だった。

 

「ぷぷっ。笑えるぜ」

 

「いや、アナタもよ魔理沙」

 

力なくうつ伏せに倒れ込むのは魔理沙と呼ばれる魔法使いの少女。

コチラを向く気力もないのか、顔を地面に付けながらも会話には参加する。

かく言う私はと言えば。

 

「あのー、それで私はいつまでこうしてればいいんでしょうか?」

 

ロープでぐるぐる巻きにされていた。

 

「んぁ?……俺としては解いても良いんだけどな」

 

「なら解いてください」

 

「……そっちの方が面白そうだから」

 

「鬼畜ですか?!」

 

モゾモゾと自由の効かない身体を蠢かせる。私の半身でもある半霊が心配そうに私の周りをフヨフヨと漂っている。

 

「まぁ半分は冗談だが」

 

「半分は本気なんですね?!」

 

「西行寺の変化には、君も気が付いていただろう?」

 

その言葉に、私は動きを止めた。

この人は気がついているのだろう。今の幽々子様が違うと言うことに。

 

「師匠。そろそろ説明をお願いしたいのですが」

 

男性の隣に座っていた紫様が業を煮やしたように説明を求めた。

 

「さっきも言ったろう?あの西行寺からは霊力ではなく、『妖力』を感じると。本来ならば霊体である西行寺幽々子は霊力しか扱えないはずだ」

 

「た、確かにそれはそうです」

 

「そんで、この冥界にはもうひとつ、西行寺以外に妖力を発するものがある」

 

この言葉で私は気がついた。そうだ、確かに幽々子様の変化とアレは時期が同じだ。

 

今回、博麗の巫女がこの屋敷を訪れる原因となったこの異変。

『春を集めなさい』

そう幽々子様に命じられた頃からだ。違和感を感じ始めたのは。

『春』をココに集めろと命じられたのは……。

 

「あの桜の大木」

 

---

side 霞

 

「原因は分からないが、恐らくアレは自我を持ってしまっている。所謂妖怪桜ってヤツだな」

 

きっと、生前の幽々子によって死んでいった者達の恨みや憎しみといった、負の感情があの桜を妖怪へと変えていったのだろう。

しかし、妖怪としては不完全。大木から形を変えられないことからもそれは解る。だからこそ、春といった力を集めさせたのだろう。

その為に、身近にいた西行寺幽々子を操って。

 

「な、ならあの桜を切ってしまえば事は済むのでは?」

 

「初期段階ならばな。もう既に魂の深いところまで根が張られている。無理に断ち切れば、幽々子も無事では済まないよ」

 

だからこそ、霊夢に西行寺の相手をさせて俺は準備(・・)をしているのだ。

それに、幾つか別の疑問も浮かぶ。

紫がこの桜のことに気が付かなかったこと。そして、それをあの人物も気が付かなかったのか、と言うこと。

 

「まぁ、霊夢の方も俺の方ももうすぐ終わるから。そしたら一つずつ解決するさ」

 

そう言いながら、俺は霊夢達の方に意識を向ける。

 

 

 

 

どうやら、事の終わりは近いようだ。




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