一応、今年中にあと何本か上げるつもりです。
……気長にお待ちください。
霞「気長にって、今年はもう何日もないぞ?」
side 霞
人里の片隅で営まれていた寺子屋に、子供たちの叫び声が響き渡る。
「うわぁぁぁぁっ」
「こっちに来たぁ!!」
子供たちは蜘蛛の子を散らすように広い庭を駆け回る。
追いかけるのは一体の鬼。その眼はギラ付き、鋭い牙を覗かせている。
「こっちに来るなぁっ!」
「やべぇ!鈴木が狙われてる!!」
「しょうがない、俺に任せろ!」
「田中!!」
なんか一人の少年が男を魅せようとしているが。
なんてことは無い。今、俺の目の前で繰り広げられているのは姫咲が鬼の鬼ごっこ。正真正銘の鬼ごっこだ。
「やーい!こっちだペッタンコ〜!!」
「……今言ったのは誰だァァァあっ!!」
あ、姫咲がキレた。流石に子供相手に本気は出さないようで、俺としては目を疑うほどの手加減ぶりだ。
「ねぇねぇ神様、今度はどう折れば良いの?」
庭を駆け回る男の子とは逆に、女の子は縁側に座る俺を取り囲み、和やかに折り紙をしていた。
何故かそんな中にルーミアも混じっているのだが。
「んぁ?次はな真ん中をこう……いい感じに折るんだ」
「飽きるの早いのかー」
だってここに来てから俺、折り紙の折り方しか教えてないぞ?
本来なら歴史やらなんやらを教えてくれって話だったんだが。慧音も半ば諦めているし。
「申し訳ない、霞殿」
いや、俺もこうなる事は想像ついてたけどね。
しかしながら、予想外なのが……。
「……なんだよ」
「いや、妹紅が子供たちに人気で嬉しいよ」
「嫌味にしか聞こえねぇ」
「うん。だって見ててめっちゃ面白いもん」
俺とは離れながらも縁側に座る妹紅。その膝の上と背中には子供が引っ付いている。以前の妹紅を知る身としては、驚きを隠せないし、面白い。
以前はこの世界そのものに絶望し、無明と共謀して異変を起こした妹紅だが。根はそんなに悪いやつじゃないらしい。その証拠が今の姿だ。
「今の姿を見たら、輝夜も腹を抱えて笑うだろうな」
「あ、アイツに言ったらただじゃおかねぇ!」
そんな平和を凝縮したような空間に、俺達は束の間の平和を味わっていた。
「ところが、人里はあまり平和とは言えない状況なのだ」
と、突然慧音の纏う空気が変わった。
「人里が?さっきは何も感じなかったが」
「それは恐らく霞殿が居たからだろう。この幻想郷で霞殿の目の前で事を起こそうとする輩はいないからな」
なるほど、俺の存在が犯罪の抑止力になっているのか。ならばこれからはちょくちょく人里を訪れるべきか。
と、そんなことを考えていると、慧音が今人里で起こっている事件の話を始めた。
「事の始まりはまだ雪が積もっていた頃からだ。その頃は寺子屋も休みにして、子供たちは皆それぞれの家にいたんだ」
先日の異変--春雪異変の時のことらしい。
「言葉にすれば簡単な話だ。どこの誰かは分からないが、子供が攫われ、行方不明になったんだよ」
簡単と語られた言葉は、しかし簡単に見過ごせるような内容ではなかった。
「攫われたって……誘拐か?」
「いや、子供の親にはなんの要求もなかった。それに攫われた子供は翌日、無傷で人里に戻ってきたんだ」
はて、どういうことだ。途端に分からなくなる。いくら文明が外の世界とかけ離れているとはいえ、誘拐した相手をそのまま逃がせば、少なからず情報が伝えられ、自らの首を締めることになる。言葉にはしないが、殺すなりなんなりの口封じはするはずだ。
「その子供からは何も聞き出せなかったのか?」
「……うむ。いや、聞き出せたのだが……」
どうも慧音の言葉が詰まる。
「その子供は
side 慧音
--1ヶ月前
「どういうことだ?」
私は伝えられた内容が分からず、聞き返すしか無かった。
子供が一人攫われたと聞いたのはつい昨日のこと。日は既に落ちて、子供が一人で外にいるのはあまりに危険な刻限になった頃。外で遊ぶことも出来ないほどの吹雪の中、家の中から子供が消え去った。
その話を聞いた時、まず思い浮かんだのが一人の妖怪のこと。あの妖怪ならばスキマを使えばどんな場所も容易に侵入でき、子供の一人くらいならば攫うのになんの苦労もないだろう。
しかし、それでも幻想郷の賢者と呼ばれる者。何よりも妖怪と人間の調和を望むあの者が、態々争いの火種を着けるような事はしないだろうと、直ぐに頭の中から振り払った。
「戻ってきたんだな?」
「え、えぇ。先程、里の前にいるのを自警団の人が見つけてくれました」
知らせを聞いて、直ぐに里の自警団を動いた。広い人里とは言え、そこに住む住人は皆顔見知りだ。誰かが居なくなったとなれば、全員が一丸となって捜索に当たるし、それが子供となれば尚更だった。
しかし、事件は余りにも簡単に収束しようとした。
「とりあえず怪我などはないんだな?」
「はい。特に外傷はないようです」
そう答えたのは自警団の一人。
子供を見つけた一人だった。
「……しかし」
「しかし?」
「……何も覚えていないと言うのです」
--現在
「なんも覚えていない?」
霞殿も驚きを隠せないようで、私の言葉をオウム返しするだけだった。
「あぁ、私もその子に話を聞いたのだが、攫われた瞬間から自警団に発見されるまでの記憶がないのだそうだ」
「……なるほど。記憶操作をされたってことか」
恐らくその通りだろう。犯人は自分の情報が少しでも伝わるのを恐れ、能力なのか、何か薬物なのか分からないが子供の記憶を消したのだ。
それだけでも理解の出来ない不可解な事件なのだが、話はそれだけで終わらない。
「そんな事件がこの1ヶ月でもう七件も起きているのだ」
「……なんだと?」
凡そ一週間に二人。そのどれもが攫われた翌日には発見され、そして誰もがその間のことを覚えていないと言っている。
「まず、この事件に紫は関係していない。アイツはつい最近まで冬眠していたからな」
「だとは思っていた。こんな手の込んだ事件を起こさなくとも、八雲紫ならばもっと簡単に、尚且つ証拠すら残さず事を起こせる」
だからこそ理解が出来ない。何故、犯人は記憶を消してまで子供を帰すのか。言葉は悪いが、そんな手のかかる事をするならば、殺してしまえば済む話だ。
結果として無事に帰ってきているのだから、良いのだが。次がそうなると誰が言いきれるだろうか。だからこそ、今人里はよく分からない緊張感と疑心感に苛まれているのだ。
「どうか霞殿も犯人捜査に協力してもらえないだろうか」
「ふむ。流石にこれは看過できないな」
今日、霞殿に出会えたのは僥倖と言える。神々の頂点である創造神の霞殿に協力してもらえれば、鬼に金棒だ。
これだけ心強い協力はない。
「わかった。俺もこの件で少し動いてみよう」
こうして、霞殿の協力を得たのだが。そんな話をしている間に、またしても事件は起きているのだった。
それも、予想の遥か外をいく意外な者の消失をもって、私達はその事実を知ることとなった。
side 霞
慧音から事件の概要を聞かされ、子供達に名残惜しまれながらも寺子屋を後にすると、空はオレンジ色に染まっていた。
ひとまず神社へと帰り、夢乃や霊夢にも話を伝えようと帰路へとついた俺達の前に、意外な人物が現れた。
「久しぶりね、創造神」
「んぁ?吸血鬼姉じゃないか」
「……その呼び方、なんとかならない?」
日が沈みかけているとはいえ、まだ明るい内にコイツの姿を外で見るとは思わなかった。いくら日傘を差しているとはいえ、吸血鬼が外に出るような時間じゃない。
「どうした?霊夢にでも会いにきたのか?」
「半分はそうよ。もう半分はアナタ」
「俺に?」
ふと気が付く。吸血鬼姉--レミリアは一人だった。何時もならばメイド長の咲夜が片時も離れずに傍に居るはずなのに。
「そう言えば咲夜はどうした?一人なんて珍しい」
「……」
そこでレミリアの空気が変わった。初めてあった時のあの余裕のなさが思い出される。
「……咲夜が消えたわ」
それは俺の想像を超えた、長く大きな異変の始まりを告げる言葉だった。
と、言うわけで物語が動き出しました。
妹紅「……おい、何処に私の活躍があるんだよ」
霞「なんだ、信じてたのか?」
妹紅「え、嘘だろ?……おい」
…………
霞「あ、逃げた」
妹紅「まてごらぁぁぁぁっ!」
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