再度言います、こちらは「東方古神録」の続編です!!
1話/古い神様の話は続くらしい
side ??
世界は夜の帳に包まれた。
寝静まった住宅街に、1人の男の叫びが木霊する。
その声は悲愴に満ち、恐怖に彩られ、絶望を孕む。
「な、なんなんだ!!」
その声に、誰も答えない。目の前まで迫るのはもはや人間とは呼べぬ存在。開ききった瞳孔に、剥き出しになった犬歯は、牙と言っても差し支えないだろう。
「お、俺が何をしたって言うんだ!!」
彼は何もしていない。
強いて言うならば、迫り来る恐怖の前にその姿を見せてしまった事。
目の前に差し出された獲物を前に、獣が大人しくしている道理は無い。
突き出された腕に、男は抵抗虚しく貫かれる。
吹き出す血の濁流。一瞬にして周囲は赤く染められ、その部分だけ日常と切り離される。
獣は吼える。不気味なまでに輝く月に向かって。
「うん。もうココには用は無いかな……」
惨劇を一部始終、静観していた。
獣と餌の、何の変哲もない狩りの様子。しかしそれは、僕の心を僅かばかり潤す結果となった。
人間の流す血とは、なんでこんなにも美しいのだろう。
人間の奏でる叫びとは、どうしてこんなにも心地よいのだろう。
理由なんてわかってる。
それは僕の心が狂っているから。甘美な狂気に心を奪われ、既に「人」としての心なんて、捨て去ってしまったのだから。
何時からだと聞かれれば、きっとあの日だろう。
唯一残っていた良心が、突如として目の前から消え去ってしまった瞬間。
心を留めていた楔が、解き放たれてしまったのだ。
良心という檻から、化物が解き放たれてしまった。
もうその轡は手から離れる。ならば化物の好きにさせよう。きっとその先に、良心は居るはずだから。化物の好きにさせよう。
「そうか、次はそこに行きたいんだね」
化物の次の獲物は、もはやこの世界には居ないようだ。
「うん。わかったよ……。次は……幻想郷なんだね……」
化物が疼く。その世界にきっといるんだね。
僕の良心。
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side 霊夢
鈍色に染められた雲から降り注ぐ白い氷の結晶は、博麗神社の境内を1面の銀世界へと変えてしまう。
こうなってしまっては、当分は参拝客なんて見込めるはずもなく、私は温められた部屋の中で寛ぐことしか出来ずにいる。
「いや、雪だけが原因じゃないだろ」
いつもの如く私の家に入り浸る白黒魔法使い-霧雨魔理沙は、勝手に炬燵に入り蜜柑を剥いていた。
「煩いわね。今日は
「……寝言は寝て言うもんだぜ」
第一、アンタもここを利用するなら賽銭くらい入れなさい、と叶うはずもない文句を言いたくなる。
ここのところ、週に3日は魔理沙の顔を見ている気がする。友達いないのかしら。
「ここは居心地が幻想郷一良いからな」
否定は出来ない。
他の家を見た訳では無いけれど、恐らく他所よりは快適にこの冬を過ごせる場所だろう。
炬燵に、えーとなんて言ったかしら。この温かい風が吹き出るやつ。「エアコンだった筈だぜ」
そう、それがあるせいで私はこの部屋から出られないで居るのだから。
それ以外にも、今は使っていないけれど床暖房なんて物もあるわけだし。
「ほんと、至れり尽せりだぜ」
それもこれも、隣で座布団を枕に寝転がっている神様のお陰。
あんまり認めたくはないけれど。これでもこの世界を創り出した、創造神なのだから。
「……この文々。新聞ってのは、天狗が作ってるんだっけか?」
「そうだぜ。まぁ、殆どが嘘っぱちのデタラメ新聞だけどな」
今朝届けられた新聞を読んでいた神様-
「俺の知ってる天狗ってのは、気の小さな奴だったんだけど。時代は変わるもんだな」
「アナタが言うと説得力あるわね」
なにせ創造神なのだから、この世の誰よりも長生きなわけで。その分、歴史を知っている。
なんでそんな偉い神様がここにいるかと聞かれれば、ここの祭神だからとしか言えない。
私も、最初に聞かされた時は信じられなかった。紫は知っていたはずなのに、何も教えてくれなかったし。何より、この人が神様だなんて信じられなかった。
だって、ココ最近の霞さんの行動を思い出せば、神様らしいことなんて何もしていない。
寒いからと言って神社から1歩も外に出ないし。かと思えば、ほんの小さな異変にすら興味本位で顔を突っ込む。
創造神でありながら、『自由』を司る神。なるほど、自由奔放だ。
「……ってか、いい加減認めないか?」
向かいの魔理沙が蜜柑を頬張りながら話す。
何を認めろというのだろうか。
「いや、暦をみてみろよ!明らかにこの冬は長すぎるだろう!!」
壁に掛けられた暦は、卯月になっている。
うん。
「いや、少しどころじゃないぜ。とっくに花見の季節じゃないか」
「……異常気象ってこの事を言うのね」
確かに長いかもしれない。でも、ただ長いだけだ。決して異変なんかじゃない。
「……どうあっても認めないのか」
そう言うと魔理沙は立ち上がる。
壁に立て掛けていた箒を手に取り、外に繋がる障子を開いた。
「ならこの異変は私が解決する。博麗の巫女はそこで大人しくダラケてるんだな!!」
そう言い残し、魔理沙は空へと飛び立っていった。
……せめて閉めていってほしかった。
「あれ?魔理沙さんは帰ってしまったのですか?」
入れ違いで入ってきたのは夢乃さん。何を隠そう、初代博麗の巫女である。
どういう原理かは知らないけれど、昔ある事がキッカケで不死になってしまったようだ。
「せっかくお昼にお蕎麦を作ったのですが……」
お盆に乗せられた六つのお蕎麦は、湯気を燻らせている。
「しょうがない。
「??」
霞さんの言葉に疑問を覚えつつも、私は夢乃さんの作ったお蕎麦に舌鼓を打つ。うん、美味しい。
「そう言えば、アイツらは?」
そう言えば今日は静かだ。この家の住人は全部で5人。私、霞さん、夢乃さん。そして霞さんの式である2人。
「お腹が空いたのかー!!」
「アンタはさっき、私の団子を食べたでしょうが!!」
そんな騒がしい声と共に、2人の幼女が現れた。1人は白と黒の洋服に身を包み、頭に赤いリボンの様なものを付けた娘。名前をルーミア。
もう1人は赤い着物に、頭には1本の角が生えている娘。名前を鬼ヶ原姫咲。
この2人が霞さんの式。時々思う、霞さんは幼女趣味なのだろうかと。
「霊夢。お前、いま失礼な事考えてたろ」
「まさか。気のせいじゃない?」
まぁ、この2人の姿は、本来のものじゃない。2人とも恐らく幻想郷でも一二を争う強さを持つ妖怪なのだ。
少なくとも、私は相手をしたくないと思ってしまうほどには。
ルーミアは、太古の昔から生きる「常闇の妖怪」と呼ばれる大妖怪だし。
姫咲は全ての鬼の祖とも言える「鬼子母神」。そんな2人を式として扱える霞さんも、異常と言える。
流石創造神だ。
「あら、お昼だったかしら」
余計なことを考えながらお昼を食べていると、障子が開けられた。
そこに立っていたのは紅魔館のメイド。十六夜咲夜。
青を基調としたメイド服に白いコートを羽織っていた。
「アンタらは、私の家で勝手しすぎじゃない?」
「賽銭箱の前でいくら呼んでも顔すら見せない方が悪いわ」
どうやら食事に意識を集中させすぎていたのか、咲夜の来訪にも気が付かなかった。
「嘘つけ、一言も喋らずにここに来たくせに」
「あら、流石に創造神様にはバレてしまいますか」
「……悪いが、気がついてないの霊夢だけだから」
私以外は気がついていたらしい。なんとも悔しい。
「で、なんの用よ」
「お嬢様からの伝言よ。博麗の巫女はいつまでこの異変を静観しているのか、とね」
あのカリスマ(笑)吸血鬼め、余計なことを。
「このままだと、暖炉の薪も底をつきそうなのよ」
「準備を怠ったそっちが悪いんじゃないの」
「そうね。私の予想を超えた冬の長さなのはしょうがないけれど、このままだと紅魔館の全員がこの博麗神社にお世話になるわよ」
この性悪メイド。ここが幻想郷で1番居心地良い場所だと知っているからか、あの館の全員で押しかけるつもりらしい。これ以上、私のプライベート空間に入り込まれてなるものか。
タダでさえ今でも多いというのに。
「……はぁ。分かったわよ。やればいいんでしょ!!」
箸を置き、立ち上がる。この寒い中外に出るとか、億劫にも程がある。それにこの異変を解決したくない理由は他にもあるのだけれど……。それを鑑みても、紅魔館の連中がここに居座られるよりはマシか。
「まったく。この異変の犯人はただじゃ置かないわ」
そう言いながら、私は空へと浮かぶ。空は相変わらず曇り、不気味なほど静かだった。
と、言うわけで春雪異変!!
あの方も登場しますよ!!
夢「咲夜さん、お蕎麦食べます?」
咲「あ、はい。頂きます」
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