side 魔理沙
タンカを切って博麗神社を飛び出したはいいけれど、今になって無謀だったと思う。なんせ今も、考えなしに空を飛んでいるのだから。
何度目かの深いため息を吐きながら、私は人里までやって来た。ここならば、何かしらの情報を得られるんじゃないかと僅かな期待をしていたからだ。
だけどそんな淡い期待は降り立った瞬間に消え去ってしまう。なんせ人影が全くない。
いつもなら、昼時ともなれば賑わいを見せる大通りですら、白く染められ住人達は家の中に引きこもってるんだろう。寧ろ、こんな寒空の下外に出ている方が頭おかしいんじゃないか?
自分の事を棚に放り投げ、それでも私は積もった雪をかき分けながら歩く。もしかすると誰かいるかもしれない。そんな一縷の希望に賭けてみるのも悪くは無い。
「いや、んなわけないだろ」
自分の考えに自分でツッコミを入れる。こんな時、霊夢が居ればジト目ながらも心地よいツッコミを入れてくれるのに。
硬く閉ざされた戸が並ぶ通りを抜け、とうとう人里の反対側の入口まで来てしまった。ここまでに出会った人間はゼロ。なんとも泣きそうになる。でも泣かない、悔しくなんかないんだぜ!!
少し潤んでしまった目を空へと向ける。鈍く染められた雲が覆い尽くした空は、また白い結晶をチラホラと注ぎ込む。あ、ダメだ。泣くの我慢出来ない……。
ふと、そんな空を一つの黒い影が横切ったように見えた。それはボヤけてしまった視界で見た幻か、はたまた寂しがり屋な私が見せた妄想か。
慌てて目を擦り、もう一度空を見る。
間違いじゃない。確かに居た。それは夢でも幻でもなく、ましてや鳥でしたなんてオチもない。明らかに人の形をした何かだった。……多分、鳥だったとしても追いかけていたと思うが、それは胸の中に閉まっておこう。
私は箒に跨り後を追う。やっと会えた人間(?)なんだ、せめて話をするくらいは良いだろう。欲を言えば、ソイツがこの異変の情報を何か持っていることを願うが。つーか、情報なんてどうでもいいから、せめて少しでもこの寂しさを紛らわせたい。
「おーい!そこのお前!!止まれー!!」
大声で呼びかけると、ソイツは気が付いたのか動きを止めて振り返る。
近づいてみると、ここいらでは見かけない少女だった。青いワンピースに白い肩掛け。手には1冊の本を大事そうに抱えた、金髪の少女。うん、少なくとも言葉は通じそうだ。
「……誰かしら?」
「おう、私は魔理沙。普通の魔法使いだぜ!!」
「……そう」
それだけ言って再び飛んでいこうとする。いやいや、せめて名乗ったんだから名乗り返せよ。
「貴女が名乗ったからと言って、私が名乗る義理はないわ」
「義理はなくとも礼儀はあるだろ?」
「……アリスよ」
アリスと名乗った少女は、先程から目線を合わせようとしない。あれか?恥ずかしがり屋なのか?
そんな態度を取られたら、意地でも目線を合わせようと思うのは普通なはず。……普通だよな?
逸らされ下を向いている視線の先に身体ごと移動する。それに気がついたアリスは、今度は反対方向を向こうとする。それにも私は回り込んで視界に入ろうと潜り込む。今度は上。下。右。左。
「もう!何なのよ!!」
「お前が人の目を見て話さないのがいけないんだろ!!」
そこで気付く。コイツ、こんな寒空の下で何してたんだ?
こんな寒い中外に出るなんて馬鹿のすることだぜ。
「そっくりそのままお返しするわ。そのセリフ」
「私は別に良いんだよ!それよりもアリスは何してたんだ?」
「別に」
頭の中で『沢尻エ〇カかっ!!』とよく分からないツッコミが聞こえた気がしたが無視する。
どうも怪しくないか?もしかして、コイツが今回の異変の犯人なんじゃないか?
そんな事を思い始める。そうなると止められない。頭の中ではもう既に、アリス=異変の犯人って等式が成り立っていた。証拠?そんなモンいるのか?
「……お前がこの異変の犯人だな?」
「……ねぇ、腕の良い医者を紹介しましょうか?」
ほら、会話が成り立っていない。これは益々怪しいぜ。
「問答無用!弾幕ごっこで勝負だ!!」
「……せめて会話する意思を見せなさいよ」
私はポケットからミニ八卦路を取り出し、少し間を開け、飛びながらも弾幕を張る。アリスはため息を吐きながらも、それらを避けていく。
「……だから他人と関わるのは嫌なのよ」
そう言ってアリスは懐から2体の人形を取り出した。それぞれ体の大きさに合わせた槍のようなものを手に持ち、アリスが魔力を込めると、まるで意志を持ったかのように動き出す。
「咒符『魔彩光の上海人形』」
スペルカードの発動と共に、二体の人形はアリスの周りを回りだした。
規則的に円を描き、大きな円だと思えば、小さな円だったり。
それだけならばタダの面白い人形劇で終わるんだけどな。
人形はそれぞれ弾幕を張る。それらもまた円を描き、幾重にも重なった円は幻想的で綺麗だった。
だけど……。
「簡単にはやられないぜ!!魔符『スターダストレヴァリエ』!!」
ミニ八卦炉から無数の煌めく星を放つ。
アリスの弾幕とぶつかり弾けると、私は一気に間合いを詰める。こいつは霊夢と同じような小手先が器用なタイプ。私の最も苦手とする相手だ。ならばさっさと終わらせるに越したことは無い。
「接近戦なんだぜ!!」
「……もう帰りたい……」
雪がちらつく中、2人の勝負はまだまだ始まったばかりだった。
ウチの魔理沙はとてつもなく書きにくい。
寂しがり屋なワガママ娘って感じ。
お父さん、そんな子に育てた覚えはありません!!
魔理沙「育てられた覚えもないぜ!!」
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