東方古神録~幻想幼女~   作:しおさば

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だってもう正月休みは終わりなんだもん……


7話/うっかりと怠惰な巫女らしい

side 魔理沙

 

まったく、無駄な時間を過ごしちまった。

結果だけ見れば、異変とは無関係なアリスと弾幕ごっこで遊んでただけじゃないか。

アリスもアリスだ。関係ないならもっと早く言えってんだ。

 

だけどまったく無意味な訳じゃない。アリスから少しばかり有益な情報を手に入れることが出来た。

 

「ここ数ヶ月、『春』を集めている人物がいたわね」

「『春』を集める?」

 

その『春』ってのがどんなもので、何なのかは良く解らなかったけど、それでもこの長い冬の原因が分かったことは十分な収穫と言える。

ただ、問題なのは私の残りの魔力がかなり少ないという事。時間をかけて体を休めれば、それなりに回復はするけれど、そんな暇は今はない。

 

何故って?

 

 

 

それは私の少し前を飛んでいる、怪しげな奴を追いかけているからだ。

アリスと別れ、再び異変の調査へと戻った私だが、魔法の森を飛んでいた時にソイツを見つけた。さっきの失敗から学んだ私は、直ぐには声をかけない。先ずは泳がせて、尻尾を出すまで待つんだ。

 

ソイツは森の中を行ったり来たりしていた。普通の人間ならば、その濃い瘴気のせいで入ることすらできない魔法の森だけれど、コイツは至って平気そうだ。それだけでも充分怪しいんだが。何より怪しいのは背中に担いでいる麻袋だ。

時折、何かを見つけてはその袋にしまい込んでいる。

恐らく、あの袋の中に『春』を集めているんだろう。きっとそうだ。そうに違いない。

だがまだ慌てるな。ここで焦っては、全ての『春』を取り返せないかもしれない。

 

 

 

そんな訳で、私はソイツを尾行中なのだ。

 

麻袋を担いだ奴は空を飛び、その高度をどんどんと上げていった。もう既に地面は遠く離れ、魔法の森が小さく見えた。

雲の層をいくつか潜り、気が付くと目の前には空間の歪みのような、裂け目が広がっていた。

以前、紫や霞の使う空間と空間を繋ぐヤツを目にしたことがあるが。それとはちょっと違う。言うなれば結界の裂け目。隠しているものが少しだけ垣間見得る場所の様だった。

その裂け目に、ソイツは迷うことなく入っていく。どうやらココがヤツの隠れ家なんだろう。

私も慌てて後を追う。裂け目を潜ると、そこは薄暗く生温い空気が漂っていた。

 

「なんだココ」

 

裂け目の正面には先が見えないほど長く続く石階段が伸びている。

こんなもん態々一段ずつ上って行ったら日が暮れちまうぞ。

そう言えば博麗神社のとこの階段もちゃんとに上ったことがないな。

そんな事を考えていると、階段の脇に並ぶ灯篭に徐々に火が灯る。まるで私を歓迎しているかのように。

 

「ここまでついてきましたか」

 

そのセリフと共に、さっきの奴が姿を現した。緑色の服に銀髪。黒いリボンを頭につけた、同い年くらいの少女。ただ見慣れないのは、その周囲をフワフワと飛んでいる白い綿飴見たいなやつ。そう、よく言われる魂みたいなの。

 

「何処から気がついてた?」

「最初からですけど」

「……魔法の森から分かっていたと?」

 

「えっ?……あ、えぇそうです」

 

あ、コイツ気がついてなかったのか。

ちょっと抜けてる感じの銀髪おかっぱ頭は、背中に背負った麻袋を降ろすと、何処から出したのか二振りの刀を取り出した。

 

「出来ればそのままおかえり願えませんか?」

「そいつは出来ない相談だぜ。コッチは冬が終わらなくて困ってるんだ」

 

刀を取り出した瞬間から、銀髪の雰囲気が変わった。何処か抜けてる感じは形を潜めて、朗らかな殺気をこちらにぶつけて来る。

 

「これより先は我が主の命により、誰一人通すことは出来ません」

「ならその主さまに用があるんで通してもらうぜ」

 

ぶっちゃけ帰りたかった。こんな残りカスの様な魔力で相手するなんて、無謀にも程がある。

ここまで付いてくるだけでもかなりしんどかったのに。

 

「私の名は魂魄妖夢!この手に握る二振りの剣にかかれば……!」

 

そう言って少女--妖夢は飛んだ。一気に距離を詰め、両手に携えた刀を振り下ろす。

間一髪でそれを避けると、地面には綺麗な2本の切れ目が残っていた。

 

「切れないものなど、あんまり無い!!」

 

 

 

「あんまりなんだな……」

 

 

----

 

side 霊夢

 

……どうしよう。

神社を出たあと、勘を頼りに飛んでいた。私の勘はどんどん上を告げていく。それに従ってどんどん上っていけば、見慣れない結界とその裂け目を見つけることが出来た。恐らく、この裂け目の先に異変の犯人がいるんだと思う。

足を踏み入れて先ず感じたのは、喉元にまとわりつくような不快感。

まるで常に喉に手をかけられているような。何時でも殺せると、脅されているかのような圧迫感に似た何か。

その正体がなにかまでは分からないけれど、それでも歓迎されていない事だけは理解出来た。

 

まぁ、歓迎されても困るんだけど。

どこの世界に自分の企みを邪魔する奴を歓迎する馬鹿が居るのか。居るならば見てみたいものだ。

しかしこの空気をいつまでも感じているのは不快極まる。

普段ならばさっさと解決して、こんな場所とはおサラバしたいんだけど。

 

少しくらいココで時間をかけよう。

ちょっとでも長く、この異変が続くように。

違う。異変が続いてほしいんじゃない。異変が解決して欲しくない(・・・・・・・)んだ。

 

面倒な事には変わりはない。正直、こんなクソ寒い冬はさっさと終わりを告げてほしい。それでも暖かい季節とアレ(・・)を天秤に掛ければ、迷ってしまう自分がいる。

 

「……ココの方が外より幾分か寒くないし、少し休憩しましょ」

と、自分自身に言い訳をしながら、私は長く続く階段の脇にある、灯篭の影に腰を下ろした。

 

それがいけなかったのかな。

異変解決をサボるなと神様からのお告げなのかしら。だとしたら余計な事をと霞さんに八つ当たりするんだけど。

ウトウトしてしまった私が、目を覚ますと階段の下には見慣れた人物と見慣れない人物が対峙していた。

あの白黒もどうやら自力でここまで辿り着いたようだ。

 

それは良い。魔理沙がこの異変を解決するのならば、私はなんの苦労もなく済む。

問題は、その魔理沙が朗らかに疲れていること。そして、アレだけのタンカを切って飛び出した魔理沙が、ココで素直に引き返すわけがない事。

状況はめんどくさい方向へと転がっている。ココで魔理沙を手助けすれば、異変解決は早まるだろう。しかし「ココで何をしていたのか」を問われれば、そこでまた一悶着起こしかねない。

幸い、二人は私には気がついていないようだし、バレないうちに移動するべきか。しかしそれは魔理沙を見捨てることになる。今の魔理沙ではどう考えても勝てないだろう。

 

さて、どうしよう。

 

 

 

まったく。今回の異変の犯人は本当に面倒なことをしてくれる。

そんな八つ当たりとも言える事を思いながら、私は懐から一枚の札を取り出しながら重くなっていた腰を上げる。

しょうがないからコレは貸しにしてあげようかしら。

 

きっと魔理沙は返してくれないだろうけどね。




魔「ちょっと休憩しないか?」
妖「……お茶でも飲みますか?」
霊「いや、何呑気に和んでんのよ!!」

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