甲鉄城のカバネリ   作:遥か夢の如く

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続きませんよ?


第1話

男の、女の。

 

しわがれた声、甲高い声。

 

様々な叫び声が辺りを埋め尽くす。

 

意味の理解出来ない、なんとも言えない叫び声が辺りを渦巻く。

 

その駅は何処からか現れたカバネにより混乱していた。

 

一際目立つ立派な建物の中で、2つの影が立っていた。

 

いや、影は2つではなかった。

 

その2つの影を囲うかのように、異様な動きをする複数の影がそこにはあった。

 

「お前が…お前が…」

 

偉そうな服を着た、いや、実際偉いのだろう、そんな男が1人の少女を見つめて何事か呟く。

 

その男は開いていた口を一度閉じ、唾を飲み込んだ後、目に力を入れ再度口を開いた。

 

「貴様の存在意義はカバネを倒すことだ…」

 

 

◆

 

 

「懐かしい夢を見た…」

 

暗闇の中、少女のものであろう、高い声がその揺れる暗く狭い部屋の中に響き渡った。

 

その少女は目が覚めてから、夢を見た原因に辿り着く。

 

そして、体を起こそうとして。

 

「目が覚めたか」

自分のものではない男の声に体を止めた。

男の声は続く。

 

「武士が凌いだ。眠っていていい。…今は」

 

少女は何かを視るように顔を部屋の外に向けた。

 

「あの駅の戦えない人は何を思ったのかな…」

 

少女の小さな呟きは、駿城の音と共に後に残された。

 

 

◇

 

 

少女は呼ばれた気がして目を覚ます。

 

「起きたか。顕金駅に着いた。四方川家当主に挨拶をするから支度を」

 

男はそう言うと、そこにいたもう1人の少女の名を呼ぶ。

 

そうして暫くすると眠そうに目を擦りながら少女が起きた。

 

「無名、ここの惣領に会いに行くんだって。だから、支度をしろだってさ」

 

最初に起こされた少女が、もう1人の少女…無名にそう言う。

 

「わかった。でも、特に用意するものなんてないよね。刹那もでしょ?」

 

そう言いながら無名は荷物の中からけん玉を取り出し、なんとなしに始める。

 

「それもそうだけどね。ああ、でも顔を隠す服が欲しいかも」

 

すると、無名がけん玉をやりながらも目を離し、不思議そうに刹那に顔を向け。

 

「えっ?私はそのままでいいと思うけど…」

 

と言った。

その言葉に答えるように刹那は。

 

「でも、これだと周りの反応が面倒になるんだよね」

 

自身の髪を手に取ってそう言った。

 

白い髪…。

 

極稀に色が薄く産まれる人間がいるらしい。

その理由は分かっておらず、それ故に幸運が訪れると言われ、過度の期待を寄せられた。

 

今となってはそこまで気にはしてないけどね…。でも、面倒なのは嫌いだ。

 

「別に私はいいと思うけどなぁ。刹那のその髪、私は好きだよ?綺麗だし」

「でも、見られると面倒なことに…」

「それに、今この駅で、刹那にちょっかい出せる人も、刹那をどうにか出来る人もいないと思うよ?」

 

それもそうだ。私自身その事は分かってる。

そうだな。それに無名がそこまで言うなら…。

 

「分かったよ。じゃあ、このまま行こう。着るとやっぱり暑いからね」

 

いつの間にか止まっていたけん玉の音が、再びその場に響いた。

 

 

◇

 

ととん、と表してもいいのだろうか。

聞こうとすればかろうじて聞こえるような音が響く。

 

続いて。

ちりん、と鈴の音が響く。

 

その音に反応したのか、刹那達に視線が集まる。

 

そしてその視線は流れるように刹那の髪へと移動した。

 

はあ、やっぱりこの視線には慣れないなぁ。

 

刹那はその視線を無視して、人が驚きで固まっているのをいい事に出口の方向に歩みを進める。

 

だが、長くは続かなかったようで。

 

「おい、そこの子供!出口は反対側だ。子供でも、検閲を受けてもらうぞ!」

 

1人の武士が刹那達の前に立ちはだかった。

 

声を荒げれば縮こまるとでも思ってるのかな?

 

「…例えば私の身分がおじさんよりも上なら、今頃首が繋がってないと思うよ?」

 

刹那がそう言うと武士は、ハッとしたような焦った表情を見せる。

 

「人をはかるに、外見をもって成すは愚行である…って、兄様が言ってたよ、髭のおじさん」

 

無名が追い打ちをかけるように言うと、武士の顔色が目に見えて悪くなる。

 

と、その時、一際立派に見える男が近づいて。

 

「よい、そちらは私の客人だ」

 

「おっ、親方様!」

 

その男の発した言葉の内容を理解して更に顔色が悪くなる。

 

そしてすぐに、その武士は必死に、刹那達を謝り倒し始めた。

 

「お、おじさん。別に客として来たってだけだから…。えっと、からかいすぎちゃったかな?」

 

唯謝り続ける武士に遂に刹那がおろおろし始める。

流石の刹那も、命だけはお助けを等と言われると困ってしまう。

 

やがてその行動が無礼だとして他の武士に連れて行かれてしまった。

 

悪いことをしてしまった。

 

刹那はそう感じた。

刹那は権力、上下関係といったものが嫌いだ。

だからこそ、からかい過ぎてしまったと自己嫌悪に陥る。

 

「えっと、ここで一番偉い人?悪いのは私だから、さっきのおじさんは許してあげてもらえないかな?」

 

故に、親方と呼ばれた人にそう頼み込む。

 

「はい。四方川家の当主を務めております、堅将と申します。お望みの通り、先ほどの者は釈放すると誓いましょう」

 

堅将の言葉に刹那は表情が綻ばせお礼を言う。

 

と、そこに四文が少し遅れて合流した。

 

「四方川殿、世話になります」

 

「四文様ですね。お話は先の書状にて。まずは、我らの屋敷においでください」

 

そう言って案内するように歩き出した堅将の後を、刹那達3人がついて行った。

 

 

と、その時。

 

人の叫び声、そしてカバネだ!という声が響いた。

 

チラリと後ろを見ると、確かに腕に傷がある男の人がいた。だが、傷があるだけだ。

 

武士以外の人は散り散りになって逃げ、武士は蒸気筒を掲げてその男の人を囲う。

 

囲う武士からは恐怖が見て取れた。

 

人間は怖がりだ。臆病者だ。

ここであの男はカバネの疑いで殺されるのかな。カバネじゃないのに。

 

と言っても私が何を言っても意味はなさないだろう。

 

わかっていてもここで助けに入ることはできない。簡単に人の臆病をなくせるのなら、兄様も動かない。

 

唯撃たれて、すぐ死ぬものだと思っていた。だが。

 

「やめろ!」

 

予想外の言葉が響き渡った。

 

思わず振り向く。

 

「なんだ貴様は!」

「カバネじゃないって言ってる!」

「信じられるか!」

 

武士はそう言うと、逃げてきた男に蒸気筒を向ける。

すると。

 

「やめろっ!臆病者!」

 

先ほどの男が逃げてきた男を守るように、射程に割り込む。

 

へぇ。

 

無名も感心したように息を吐く。

 

でも、こういう人間は淘汰されていく。

今も、武士が囲って暴行を加えていた。

 

臆病すぎて、遂に人間にも手を出し始めるなんて。

 

 

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