それにしても、UAが500ちょい…。まさに影でほそぼそとやっていると言える。私はこれを待っていた。この感じこそ至高…!
俺と美鶴は、早速買った雑巾と軍手、ごみ袋の封を開けた。
俺は美鶴が雑巾を洗った後の水を汲みに。
美鶴は墓石を雑巾で綺麗にし墓石にはびこった苔を落とし、雑草を抜き、どろどろになっていた花を挿す容器を洗い、周りを一通り綺麗に雑草を抜いてガラス片をごみ袋に突っ込んでいく。
昼飯も取らずにがむしゃらにやった。
そのせいか、4時過ぎにはなんとか綺麗になった。
ただ、コップは買えたがさすがにろうそく立ては無かったので、また今度買って来ることにした。
俺様は水を汲むくらいだったが、それでもジーンズは汚れた。上のシャツも汗だくだ。
だが、俺様よりもさらにひどいのが美鶴で、白かったワンピースはところどころに緑色のマーブル模様が出来て、裾のあたりには茶色い汚れがちらほらとついていた。
コップを買った時に、雑貨屋の親父さんに聞いた。
これまで寺の管理をしていた先代から、今の息子さんになってからは墓参りに来る人が年々減ったという。
それまではちゃんと手入れされた生け垣や寺があり、墓参りに来る人も割りといたらしいが。
もうここ10年かそれ以上か。
それくらいは本当にひどいもんだよ。
そう言って悲しげに笑う親父さんは、どこか寂し気に見えた。
さて、疲れたし腹も減った。
さすがに途中途中で水分補給はしていたとはいえ、昼飯も取らずにもう4時だ。
さすがにこれ以上は今は無理ということで、花を挿してコップにきれいな水を入れ、線香だけで失礼することにした。
美鶴がしゃがんで目を閉じて手を合わせている間、俺は美鶴の横顔を見つめていた。
頬には汚れや泥が付いているその横顔は。
これほど汚れているのに、ただ、とても美しいように感じた。
美鶴が立ち上がり、俺様の顔を見上げてくる。
もういいよ、ということだろう。
俺は何も言わずに美鶴の横を通りすぎ、墓石の前で目を閉じて手を合わす。
ーーーこいつの親か祖父母か、それ以外か。
なんにせよ、あんたらの血をひく美鶴は。
少なくとも、まあ、頑張ってやってるよーーー
ゆっくりと目を開ける。
さて、帰るか。
さすがに汚れたまま座席に座りたくなかったので、持ってきていたスポーツタオルを二人ともそれぞれ座席に敷く。
…運転していたら、さすがに空腹がツラい。
隣を見ると、美鶴も大分疲れた上に腹が減っているようで。普段の半目にも、光がない。ぐったりしている。分かりにくいが。
「…美鶴」
「…何ですか」
「牛丼かチャーハンが食えそうな店があれば言え。俺は腹が減った」
「異議なし…です」
しばらくすると、美鶴が声を上げた。
「ありました…!」
「何屋だ」
「お味噌汁が出るところ」
「よし行くぞ」
運良く見つけられた。反対車線でもなく、ちゃんと左側に。よしっ。
さっさとポルシェを駐車場に停めて、店内に入る。
すると、美鶴が何かやらかしてしまったような顔で、
「あ…」と声を溢した。なんだ。牛丼嫌いか。
「…お財布、忘れました」
「構わん、出してやる」
「でも…」
なおも言い募ろうとする美鶴。ええい、今俺様は腹が減ってるんだ。いいからさっさと選ばんか阿呆。
俺様は牛丼の特盛。
美鶴はおろしポン酢の大盛にした。
注文を待つ間に、美鶴がこちらを見る。なんだ。
「…冥聖、ありがとう」
「はっ、ようやく俺様の有り難みが理解出来るようになったか。感謝しろ」
腹が減ったイライラしているから、超適当に返す。
早くしろ…!いや、慌てるんじゃない。俺はアームロックがしたいだけなんだ…!
んなわけない。
「…うん。感謝してる」
「…そうかい」
なんだか調子が狂う。
けっ。
そう思って顔を横に逸らす。すると、その先から店員がこちらにどんぶりを持ってきているのが目に入った。ナイスタイミングだ。
「お待たせ致しました」
待ってたぜぇ!この時をよぉ!
美鶴が店員からお盆に乗ったおろしポン酢を受け取っていることなぞ知らぬ!
俺様はさっさと手を合わせ、いただきますしてからがつがつと食べ始めた。
うまい…!
牛肉の甘さと熱々のご飯。そして玉ねぎのシャキシャキ感が良いアクセントになり、時に味噌汁を、時に水を飲みながら食べ進める。
気づけばどんぶりの中は、もう一口か二口分しか残って居なかった。
いやあ、多少は落ち着いた。うん。うむ。
とはいえ落ち着いたところでもう完食なのだが。まあ満足できたからいい。
満足…できねえぜ…。チーム満足。それは違う。
改めて対面の美鶴を見ると、もぐもぐぱくぱくと一心不乱に食べ進めるふわふわというかぼさぼさというか、そんな感じの髪の毛の美少女が、無表情に半目の状態で見えた。…うわ、さっきまでの俺様もあんな感じだったのか。どんだけ腹減ってたんだよ…。
しかし、こうして周りがこぎれいな店内で見ると、ますます俺様と美鶴の汚れている服が気になる。
これはあれだ、帰ったら真っ先に風呂に入らねば。
しかし、そうすると美鶴が汚れた状態で放置か…。いや、俺様が汚れたまま待つなんていうのは却下だ。うむ。さっさと入ってしまおう。そうしよう。
「ふぅ…」
どうやら美鶴も食べ終わったらしく、一息ついたぜー、みたいな感じで口元を拭いている。
ごちそうさまでした。
「ごちそうさまでした…」
「行くぞ」
「うん」
美鶴と連れだって店を出る。
さて、さっさと帰るか…。
この後風呂にいの一番に入ったところ、美鶴も無理やり入ってきたため、いろいろと大変だったことだけ記しておく。
この後めちゃくちゃ