ちょっと真面目な愛徒先生   作:逸般ピーポー

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筆が乗ったので投稿


クリスマスの…

クリスマスイブの朝。

 

「終わったー!」

 

チュンチュンと雀が鳴く、気持ちの良い青空の午前。

僕は自宅の仕事場で大きく伸びをしていた。

 

「今日は足須さん達のクリスマスパーティーに混ぜてもらうんだー」

 

「へー。よかったわね」

 

どれどれ。

そう言いながら原稿のチェックをするのは、いつも足須さんが使っている椅子に足を組んで座るみはりちゃん。今日もその慎ましやかなお胸がとってもキュート。もちろんみはりちゃんは顔も人柄もかわいいよ?

 

いやー、本当に原稿間に合って良かったー。

今日のクリスマスパーティーには、かなり頼みこんでオッケーもらったんだー。

たのしみー。

 

「ん?」

 

パラパラ。

 

「あれ?」

 

なにやらみはりちゃんが不思議そうな声を出している。なになにどうしたのー。(のんき)

 

「ねぇ、来月号付録のカレンダー用イラストは?

あれも今日〆切だけど…」

 

「え?何それ?」

 

初耳なんだけど…。

 

「は!?何言ってんの私確かに……」

 

そう言って大きい声を出しかけたみはりちゃん。

 

「………ん…?」

 

あれ…?

とか言いながら思い出すように虚空に目を向けるみはりちゃん。

確かに…?

 

「………ごめん……。伝え忘れてた…」

 

「えぇ!?」

 

言った覚えないわ…とか呟きながら、目を反らしつつ床を見ながら謝られた。

ずーん、なんて聞こえてきそうなくらいに雰囲気が暗い。けどさぁ…!

 

 

 

 

 

 

「うん…。そういうわけで行けなくなっちゃって…。うん…」

 

『そうですか……。では先生、お仕事がんばって下さい』

 

「う…。うん…」

 

僕は涙ながらに電話した。

うぅ…。ひどいよ…。

 

ピッ。

電話を切り、泣きながらよろよろと自分の机に向かう。

 

カリ……カリ……。

ふ…。ふふふ…。

おえかきだいすきー…

うふふ……ふふ……。

 

 

「ゴ…ゴメン!ホントゴメン!」

 

後ろからみはりちゃんが手を合わせて謝ってくる。

けど。

 

「…いいんだ…」

 

だって…

 

「どうせ僕が行ってもキモい事言ったりして引かれるだけだし…」

 

多分だけど、きっとそうなるから…。

だから…いいんだ…。

でも…涙が、止まらないよぅ…。

 

「うぅ…。

ほ、ほら。ケーキ買ってきたから…」

 

「…ありがと………」

 

カリカリ……。

 

 

みはりちゃんに貰ったイチゴのショートケーキにロウソクを一本立て、火を灯す。

 

「シングルベ~~ル…シングルベ~ル…」

 

あれ、おかしいな…。

温かいのが、頬を伝っていくよ…。

 

「うっ…。ううう…」

 

あははははー。

クリスマス…だよー…。

 

 

 

 

カリ……カリ…。

 

 

「あ、愛徒~…」

 

涙が目元に溜まるくらいには落ち着いてきたころ、名前を呼ばれた気がした。振り向くと、みはりちゃんが赤い三角帽子をかぶって、ワンピースサンタの格好をして立っていた。肩は丸出し、黒いベルト、下はミニスカート。

フォークの先に一口カットのケーキがささっている。

 

「ほ…ほら…。

あ…あーん…」

 

ドキッ。

みはりちゃんが、みはりちゃんが…顔を赤らめてあーんをしてくれてる…!

ガタッ。

思わず椅子からずり落ちちゃった。いや、それよりも!

 

「ど…どうしたのみはりちゃん!?

熱でも出た!?」

 

「違うわよ…」

 

床に落ちた僕に合わせるようにしゃがんだみはりちゃんは、変わらずフォークを僕に差し出したまま、赤面しながら呆れるという器用なことをしていた。

 

「わ…私のせいであんたが(ヘコ)んだから……。

元気づけようと思って…」

 

顔をカー…と赤くしながら眉を垂らして目を逸らすみはりちゃん…!かわいい…。

 

「みはりちゃん…」

 

胸がじーんとする。

ぼ、僕は…!

 

「だ…だからほら…。食べなさいよ…。

こんな事、してもらった事ないでしょ?」

 

(私もしたことないけど…)

 

「う…うん……」

 

ないです。

 

「ほ…ほら。

あ~~ん…」

 

「あ…あーん…」

 

 

目を瞑り、ドキドキしながら口を開ける。

パクっ。モグモグ。

な…なんか…!

 

「ちょっと幸せな気持ちになったかも…」

 

「そ、そう…。よかった…」

 

たんじゅん…。とか聞こえてきたけど、今の幸せな僕は耳に入ってこなかった。

 

「じゃ…じゃあ次は僕の番だね。

あーん…」

 

「え!?なんで!?」

 

驚かれた。

 

「みはりちゃんにも幸せな気持ちを分けたくて…。

い、嫌…?」

 

嫌なら仕方ないけど…。

 

「わ…わかったわよ…」

 

「じゃ、あーん」

 

「あ…あ~~~ん…」

 

恥ずかしがるみはりちゃんもgood!

 

パクっ。モグモグ。

 

「お、おいしいわよ…?」

 

(は、恥ずかしい…!)

 

良かった、喜んでもらえたみたい。

なんだかとっても幸せかも…。

 

あ!そうだ!

 

「みはりちゃんにクリスマスプレゼント用意してあるんだった!」

 

「へっ?」

 

今日はみはりちゃんのミスだったけど、普段は僕が〆切ギリギリになってたり、進捗が遅れてたり、おっぱい見ちゃったり…。

けっこう迷惑かけてるからね。

うん…。ホント迷惑かけてるな、僕…。

 

ま、まあでも!

普段のおわびということで!

 

「いつも助けてもらってるからね」

 

そう言ってクリスマスプレゼントを渡す。

ちゃんとクリスマスっぽく白い箱に赤いリボン。

喜んでもらえる自信作!

 

「い、いいの?」

 

「うん」

 

「ありがと…」

 

(今日は私が迷惑かけちゃったのに…)

 

「あと、はい。これ」

 

「ん?あ、カレンダー用のイラスト」

 

「うん」

 

さっきまでで大部分は終わってたからね。

もう渡せるし、今日のお仕事はこれで終わり!

 

 

「ありがと。じゃあ私、すぐ持ってくから!」

 

「お疲れさまー」

 

たっ、と原稿とイラストの入った封筒とプレゼントを抱えて仕事場からみはりちゃんが出て行く。

がんばってねー。

 

さぁ、僕はギャルゲーでもやろうかなあ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、遅くなりました!」

 

「ん…」

 

そう言って編集室に駆け込んだ私を迎えたのは、皆野(みなの)編集長。

見た目小学生くらいにしか見えないけど、確かに月刊少年ゴンゴンの編集長。

その手にはうずまきキャンディ。あ、相変わらずですね…。

 

「愛徒の原稿?」

 

「はい。これです」

 

「ん」

 

そう言って皆野編集長は私から茶封筒を受け取った。

はぁ…。やっと今日の仕事終わった…。

今回は愛徒の奴に迷惑かけちゃったなぁ…。

 

「それ…。プレゼント…?」

 

「あ…」

 

皆野編集長に言われて、愛徒から貰ったクリスマスプレゼントを持ったまま編集室に来ていたことに気付いた。

しまった…!

 

「愛徒から?」

 

「は、はい……」

 

編集室には今、皆野編集長と私しか居ない。

皆野編集長は気まぐれで、特に気にしないでくれることもあれば、けっこう、ううん、かなり恥ずかしいことを強要してくるときもある。

できれば気にしないでほしいんだけど…。

 

「…見よう」

 

ああ、ダメだった。

 

「はい…」

 

仕方ないので、プレゼントを自分の机の上におく。

そう言えば、何が入ってるんだろう?

だいたいこういうとき、愛徒がプレゼントしてくれるものっていうと…。

 

 

 

過去の実例

①パンツ

②ブラジャー

③メイド服(コスプレ)

 

ダメだ…!まともなのがない!

こ、これは…。何がなんでも隠し通すべきだった…っ!

 

 

「開けるよ」

 

シュル……パカ。

 

「わーっ!待って下さい編集長!」

 

いつの間に!

私が気付かないうちに、皆野編集長は既に私の机の上に置いてあるプレゼントのふたを開けていた。

 

「……?」

 

今はまだふたを持ったままこっちを見てるからいいけど、中を見られたらきっと一巻の終わり…!

なら、見られる訳にはいかないっ!

 

 

ふい。

ごそごそ。

ばっ!

 

遅かった。

私が呼びかけた後も何も言わなかったからか、すぐにプレゼントの中から何かを取り出していた。

白い…。なんだろう?

なんにせよ、ブラでもパンツでもメイド服でもないみたいでホッとした。

 

「…?」

 

皆野編集長も首を傾げている。

これは?

 

「…スヌード」

 

「へ?」

 

スヌード?って、何ですか?

 

「マフラーをくっつけたやつ。これは白い毛糸だから暖かい」

 

ああ、なるほど。

愛徒の奴にしてはいいセンスしてる。ナイス。

…いつもこうだと良いんだけど…。

 

「あ」

 

皆野編集長がスヌードを弄っていると、カードが落ちた。

ひょいっと手に取ってみると、みはりちゃんへと書かれていた。

 

開くと、書いてあったのは数行のメッセージ。

 

 

『みはりちゃんへ

 

いつもありがとう。みはりちゃんが僕の担当だから、僕はマンガ家さんとしてがんばっていけるんだと思います。

みはりちゃんも、体調に気を付けて

 

愛徒』

 

 

「ほほう…」

 

ばっ!

顔を上げると、私の椅子に乗ってメッセージカードを読んでる皆野編集長が。

すぐにカードを胸元に隠すも、皆野編集長は私の顔をじっと見つめてくるだけ。

 

「あの…。もしかして、読みました?」

 

「うん」

 

事も無げにこくん、と頷く皆野編集長。

終わった…。

 

 

床に手をついて項垂れていると、ぽん、と肩を叩かれた。

 

 

「…愛されてる」

 

ええ、あの愛徒(ばか)が私を慕ってくれてるのは一応理解してます…。

 

 

 

顔から火が出そうな一日だった。

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