ちょっと真面目な愛徒先生   作:逸般ピーポー

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おかしい、いつの間にか冥聖くんが主人公になっている。
何故だ…?


【外伝】冥聖くんと野良猫少女4

ある日のこと。

 

「めいせい」

 

「ん?」

 

ネームを描いていた手を止めて、海野美鶴が持ってきた封筒を受けとる。

何も言わずに受けとる俺様と何も言わずに家事に戻る海野美鶴の奇妙な共同生活は、既に一ヶ月ほど続いていた。

 

 

 

実際のところ、冥聖は自尊心が高すぎる故に人といさかいになることが多いが、海野美鶴だけは別だった。

別段、海野美鶴に対して冥聖が特別な思いを抱いている訳でも、海野美鶴が冥聖に惚れている訳でもない。

ただ単に、変に突っかかってこないで素直に言うことを聞く海野美鶴が冥聖にとって扱いやすく、むやみやたらと無駄な関わりを持たない冥聖が海野美鶴にとって接しやすい相手である。つまり、二人の相性がたまたま良かっただけであった。

 

しかしこれまで会う人全員と問題を起こす勢いだった冥聖が、ついに人と問題を起こすことなく関わることが出来たかと、冥聖の兄、剛健(ごうけん)は密かに感動していたりする。

 

 

 

「ゴンゴン創刊15周年記念パーティーのお誘い…か」

 

封筒の中身はパーティーの参加確認だった。

普通こういうのは10とか20とかのキリの良い数字でやらないだろうか。それとも記念パーティーにかこつけて、何か発表でもあるのか。編集長が変わるとか。

…いや、それはないか。あのロリ編集長になってからゴンゴンの売り上げは大分伸びたらしいからな。むしろ、景気が良いから記念パーティーを開いたと言われる方が納得出来る。

 

しかし…ふん。

どうするか…。

 

ゴンゴン創刊15周年記念パーティーに…

 

行く ←

行かない

 

 

行く

行かない ←

 

 

…そうだな。

どうせ行ったところで話をする相手など居ない。むしろ、愚鈍なクズ作家どもに絡まれるのが落ちだろう。

それに、今の俺様の家には居候もいる。

そういう奴でないことは分かってはいるが、家主が長時間出掛けて家に居候だけ、というのもアレだ。一応の警戒は必要だろう…。

そう考え、不参加に丸を付けようとしたところでスマホが振動した。

 

見ると、電話だ。相手は皆野編集長。

あのロリ編集長が俺様に電話とは珍しい。…取らざるを得ないか。こいつは人で遊ぶのが好きな奴だから、出来うる限りかかわり合いになりたくないんだが…。

 

「…冥聖だ」

 

『やっほー冥聖』

 

「何の用だ」

 

『今時間大丈夫?』

 

「さっさと用件を言え」

 

『ほいさー。

冥聖には、今度の記念パーティーに来てもらいたいの』

 

「断る」

 

『どうして?』

 

「知っているかもしれんが、今うちには居候がいるからな」

 

『連れてきていいよ』

 

「…なに?」

 

嫌な予感しかしない。

 

『っていうかねー。剛健から聞いたけど、冥聖が問題なく関われる人なんて初めてじゃない?

だから会ってみようと思って』

 

「断る」

 

やっぱり面倒ごとじゃねえか。

 

『まーまー、そう言わずに』

 

「メリットがねえ」

 

主に俺に。

美鶴が来てから飯は美味しくなったし栄養バランスも良くなった。というか美鶴の料理の腕前は今でも上がっている。意外だったが、どうやら料理が楽しいらしい。それはまあ、何よりだ。

しかも美鶴が規則正しい生活をするから、夜は12時、朝は7時には起きる、超健康的な生活になってしまった。およそマンガ家の生活リズムじゃない。

もちろん〆切前や修羅場ではそうもいかないが、そうならないようなスケジューリングも半分あいつがやっている。もはや半分マネージャーである。予想外に良い拾いものだった。

 

『んー…。じゃあ、その子だけ呼ぶね』

 

「待て」

 

美鶴だけ呼ぶだと?

そんなことをされたらあいつは何も考えずに付いて行くに決まっている。

そしてあのロリ編集長のことだ、俺様のことを根掘り葉掘り聞くだろう。そして俺様を思う存分に弄ってくるに違いない。…いや、それだけならまだいい。最悪、今野一華に流して弄ってくることすら考えられる。

そうなれば最悪だ。俺様のことを徹底的に面白おかしく吹聴するに決まっている。…それはなんとか避けたいところだ。

 

そうすると、俺様が美鶴に付いて行った方が、最悪の事態は阻止出来る。言って欲しくないことは言わないように見張っていれば良い。

その代わり、俺様が女子高生と同棲していることはバレるが。…いや、既に剛健から聞いて知っているか?

 

 

「…仕方ない。良いだろう。

俺様が美鶴を連れて行ってやる」

 

『美鶴ちゃんも参加ね。おけー』

 

「あっ、ちょ」

 

ツーッ、ツーッ、ツーッ。

…あいつ、言いたいけとだけ言って切りやがった。

だからあのロリ編集長は苦手なんだ。くそ。

 

 

「おい美鶴」

 

キッチンに向かって呼びかけると、相変わらずのぼさぼさ頭に無感情な半開きの目。制服の上にエプロンを付けた美鶴がおたまを片手にひょっこり顔を出した。

 

「貴様、ゴンゴンの記念パーティーに行きたいか」

 

ぜひ行きたくないと言ってくれ。そうすれば俺が一人で行くか、行かなくてすむ。

 

「…?」

 

こてん、と首を傾げる美鶴。…さすがに説明をはしょりすぎたか?

 

「…めいせいのまんがのところ?」

 

「ああ」

 

「…行く」

 

「…そうか」

 

ちっ。くそ、行くしかないか。あのロリ編集長の手のひらで遊ばれているようで気に食わん。

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