ちょっと真面目な愛徒先生   作:逸般ピーポー

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おかしい。こんなにシリーズ化するはずじゃなかった。


【外伝】冥聖くんと野良猫少女5

初めまして。海野美鶴…です。

 

今私は、よくわからない人の元に居候しています。

亡くなった母が、私が小さい頃から

 

『困ったら富都さんを頼るのよ。お母さん達、そういう約束してるから』

 

そう言って、すぐその後に親友の富都美奈子さんとの思い出話をしていました。

その言葉を信じて、そして本当に困ったことになったので、少ない情報を頼りにたどり着きました。

そして週刊ゴンゴン編集部の剛健さんから、

 

『とりあえず、今日はうちに泊まりなさい』

 

という言葉をもらった次の日に、すぐにまた他の人の所へ。

 

ああ、またたらい回しかなぁ…。

そう思った先で出会ったのが、よくわからない人。兎美都冥聖さんです。

若い男の人で、しかも一人暮らし。住んでいるのは見るからに高級なマンションで。

ああ、これは「そういうこと」をされるかも知れないなぁ…。むしろ、「そういうこと」をされてでもなんとか生活させてくれないと困るなぁ。なんて。

 

そう思った日からはや一ヶ月が経ちました。

衣食住は完璧で、いつ追い出されるかとびくびくしていたら当面の生活費、ということで。

10万円もぽん、と。当面って。3ヶ月くらいはこれでなんとかなる…よ?

しかもその週の土曜日にはスマホとかお布団とか。

あ、あとお洋服も買ってもらいました。

怒られるかも知れないと思いながら、

これとこれと、あとこれも、と言ったら

 

『構わん』

 

の一言ですぐに会計してしまったのはびっくりしました。生活レベルが違う…。

 

 

でも、冥聖さんは別に苦労しないでお金持ちになった訳じゃなくて。

私がしばらく過ごすうちに、いつも本当に真剣に机に向かって何かを描いていました。それがまんがだって知ったのは、冥聖さんの顔を見るのが怖いと思わなくなってからだったけど。

 

 

最初は追い出されないために怖くて必死でお料理とか掃除をしてたけど、今は少しだけ、冥聖さんのお手伝いが楽しいと思っています。

もちろんいつ追い出されるかわかんないし、そういう怖さはずっとあるけど。

あ、それと。おこづかいが貰えるようになりました。

一ヶ月の食費とは別に、私の自由に使っていいお金だそうです。

 

『貴様がいつまで居るか分からんし、俺様がいつまで貴様を置いておけるか分からんが…。

貴様が出ていきたいと言うか俺様が出ていけと言うまで、小遣いもないのは不便だろう』

 

と言って渡してくれました。月々3000円。

これ以外にもこれが必要だと私が言って、冥聖さんが必要だと判断したものは別途後からお金をくれます。

食費に服に、文房具に携帯代と、冥聖さんは割といろいろしてくれます。見ず知らずだった私に。

それでいて、私に「そういうこと」を迫ったりもせず、基本的に怒りません。

何か裏があるんじゃないかな…。

なんて。最初はずっと思ってました。正直今でもちょっと思ってます。

でも、冥聖さんはまんがには一生懸命で、でも人とうまく付き合うのはとても下手くそで。

きっと、この人は不器用なだけで、すごく頑張り屋さんなんだと思います。あと、ちょっと世話焼き?

 

だからお料理を頑張ってみたり、冥聖さんのスケジュール管理のお手伝いを最近は始めました。

 

 

そんなある日のこと。

 

 

冥聖さんが、記念パーティーに行きたいかどうか尋ねてきました。

行きたいです。

 

 

夕食の時に詳しい話を聞くと、冥聖さんのまんがを載せている出版社のゴンゴンの編集長さんが、私に会いたいと言っているのだそうです。冥聖さんは、私の好きにするように言ってくれました。でも、冥聖さん自身は行って欲しくないみたいです。というか行きたくないみたいです。人付き合い、苦手だもんね...。

編集長さんってことは、冥聖さんのまんがを載せている一番偉い人です。

もし会えるのなら、私は編集長さんが冥聖さんのことをどう思っているのか聞きたいと思います。

冥聖さんは、すごく頑張ってます。一生懸命で、ひたむきな、頑張り屋さんです。

 

 

 

 

 

そんな思いを胸に、今日はゴンゴン創刊15周年パーティーにやってきました。

 

恥ずかしくない程度の格好をしろ、とのことで、今まで着たことのないインフォーマル?というワンピースドレスを着ています。

冥聖さんは面倒くさそうにしながら、黒いスーツをビシッと決めています。格好いいです。

でも、口を開くといつもの冥聖さんです。

それがなんだか面白くて、ちょっと笑ってしまいました。冥聖さんににらまれました。ごめんなさい。

 

 

「あー!冥聖が女の子連れてるー!」

 

どこかから女の人の声がします。

と思ったら、冥聖さんが私の目の前に背中を向けて立っています。なんでしょう。

…冥聖さんは背が高いです。背中が大きいです。そのせいで、冥聖さんの向こう側の女の人が見えません。

なので、冥聖さんの体から顔をちょこっとだけ出して、冥聖さんとお話している女の人の見ることにします。

 

周りの人達の会話から、こんのさん、ということが分かります。こんのさんは眼鏡をかけたきれいな女の人で、ベレー帽?みたいなのをかぶっています。

黒いワンピースに白色のミニスカートをはいてます。

なんでしょう。冥聖さんと仲が良いんでしょうか。

冥聖さんも、普段よりまともな対応をしています。むむ。

冥聖さんの知り合いなら、失礼のないようにします。

 

「あの…」

 

「あ!やっと出てきてくれた!ねえ冥聖、紹介しなさいよ!」

 

「…今野。セクハラしたらつまみ出すぞ」

 

「わかってるってー♪」

 

「え…と」

 

私がどうしたらいいか迷っていると、冥聖さんがため息をついてました。むむむ。

 

「ハァ…。美鶴」

 

「はい」

 

「軽くでいい、この七面倒な女に自己紹介してやれ」

 

「ん…」

 

冥聖さんの体のかげから出て、足を真っ直ぐにそろえてお辞儀する。

 

「海野美鶴…です」

 

「美鶴ちゃんね!やーんかわいいー!

ね、冥聖なんかのところじゃなくて、私のところに来ない?ね!」

 

「えと…」

 

急に抱きつかれて困ったので冥聖さんの顔を見ます。冥聖さんの方が私より背が高いので、見上げる形になってちょっと首がつらい。

 

「…今野」

 

「あっははー、ごめんね♪」

 

「ふん…」

 

冥聖さんがたしなめると、こんのさんは離れてくれました。そのままじゃあねー♪と言って手を振って背を向けて人混みに紛れて行きます。元気な人みたいです。

 

 

しばらく冥聖さんの取ってくれたオードブルやブドウジュースを食べたり飲んだりしていると、私よりも小さな女の子から声をかけられました。

 

「や!」

 

「…?」

 

冥聖さんは先ほど剛健さんに連れられてどこかに行ってしまったので、私は壁際の花になっていました。

声をかけてくれたこの…小学生?の女の子は、誰でしょうか。覚えがありません。

 

「美鶴ちゃん?」

 

「…?

はい…」

 

どうしましょう。この子は私のことを知っているみたいですが、私はこの子のことを覚えてません。困りました。

 

「美鶴ちゃん、冥聖のこと好き?」

 

「…?」

 

ええと、一体この子は誰でしょうか。

私の知り合いには居ないと思いますし。

冥聖さんの友達でしょうか。

 

「…ほほう」

 

「…?」

 

私に質問しておきながら、答えを聞くことなく私の胸を食い入るように見つめてきます。

あの、本当になんなのでしょう…。

 

「触っていい?」

 

ふるふる。

私の胸を指差しながら聞いてきたので、首を振って否定します。さすがに恥ずかしい...。

 

「そっかー」

 

「え、と…」

 

「んー…まあいっか。ばははーい」

 

「え…」

 

その女の子はあごに人差し指を当ててしばらく考えた後、唐突に手を振って去っていきました。

あの…なんだったのでしょうか。

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