キャラメル風味の短編集   作:とけるキャラメル

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大変お待たせ致しました。

先日、必須タグ・性転換を入れ忘れたら警告されました……。TS入れたのに……こわい……。
なんということでしょう、これでは遠坂家のことを笑えません。
架空のキャラクター相手にこれほどの屈辱は初めてですよ……!
皆さんも投稿する際は気を付けてください。




FGOネタ 朱纏の草子 其の四

拍子抜けである。

いざ鬼の居城へと意気込んだ武者たちを出迎えたのは、見るも美しき少年の鬼。その傍らにはどこか小動物めいた、しかしこれまた美しくも人ならざる少女。いつの間にやら集まってきた使用人たちに案内され、あれよあれよという間に部屋があてがわれた。しきりに入浴を進められ、何か思惑があるのかと疑いながらも怪しまれぬよう言われたとおり風呂場へと案内される一行。大江の里では考慮するべくもないことだが、なにしろ、今は平安時代である。率直に言えば、臭かった。少なくとも常に清潔を維持できる朱纏らの感覚でいえば、であるが。そしてそのことを莫迦正直に口に出すほど、大江山の鬼は無礼でも非常識でもないのだ。

 

 

沈む夕日を背景に、季節の草木を眺めながら露天風呂。これだけでも結構な――――――時代を考慮すれば大変な――――――贅沢であるが、入浴を終えた一行は趣向を凝らした山海の珍味でもてなされる。鬼の振舞う馳走というものだから、髑髏のつけ焼きとか()()()()だの、さぞおぞましいものを出されると身構えていたが、珍しくも美味な料理に安心とともに驚愕する。見透かしたように、飢饉であっても人は食いたくないなぁと鬼屋敷の主人はこぼした。鬼でいらっしゃるのに人を食べぬのですか、某四天王の迂闊な質問に涼しい顔で答える朱纏。口を利くものを食す気にはなれぬよ、もっともかような考えをする鬼は(おれ)くらいであろうが。少女の鬼が気まずい顔をしているのに、気づいたものはいただろうか。

 

 

一宿一飯の礼に差し出された酒を、伏魔殿の主は優雅な手つきでで口へ運ぶ。と、たちまち飲み干してしまった。何か言いたげな少女に涼しい顔で微笑みかけるものだから、とうとう抗議の機会を失う茨木であった。白く美しい肌に赤はよく目立つので、朱纏が酔っているのはだれの目にも明らかである。珍しいこともあるのだな、朱纏が酔うなど滅多にないものだから、よほど良い酒を持ってきたのだろう。独り占めされたことより朱纏の幸運を想うとは、なるほど茨木、彼女は鬼らしくない。であれば、そのような者を鬼へと堕とす業とは、いかほどむごく、そしておぞましいものであろうか。さて、この一連を見守る頼光一行が何と思ったか。神ならぬ身、しかし千里眼もつ鬼たる朱纏にはわかるはずだが、無暗に心をのぞく身勝手は、この少年の嫌うところであった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「……夢?」

 

酷く、不快な気分だ。

他人の記憶を垣間見たことそのものが、ではない。それによって思いがけずとはいえ、プライバシーを侵してしまったことがだ。

 

寝汗で張り付く服に二重の不快感を覚えつつ、ゆっくりと起き上がった。

 

私、藤丸立花が先日召喚したサーヴァント・朱纏童子。夢で見た光景こそ、知られざる彼の真実なのだろう。おそらく誰一人知りえないものを知ったことに、ささやかな優越感と深い罪悪感を私は覚えていた。

 

ふと、枕をどかしてみる。案の定そこにはあるべきものはなく、机の上に置かれたままだった。

 

普段は枕の裏に敷いてあるはずの小さな袋。

それは朱纏童子から贈られた安眠のお守りだ。夢で英霊の過去を垣間見てしまい、夢の中でも気を抜けない私のため、わざわざ朱纏が作ってくれたものだ。神秘は古いほど強く、だから古い魔術師ほどすごい礼装がつくれるのは魔術師の常識(だとドクターは言ってた)。朱纏は魔術師じゃないらしいけど、千年前の鬼が作ったお守りだけあってその効き目は折り紙付きだ。ダ・ヴィンチちゃんが言うには普通の魔術師なら垂涎の品らしいけど、いろんな意味で他人に譲る気にはなれない。

 

これのおかげで毎日ぐっすり安眠できるのだから、骨身に染みるありがたさだ。彼は本当に鬼なのだろうか?私にとっては地獄に仏だよ……。それに朱纏のおかげで所長も生きてるし(鬼になっちゃったけど)、もう本当に足を向けて寝られない。

 

だというのに、せっかくもらったお守りを敷き忘れたばかりか、とてつもなく嫌なことをしてしまった(わざとじゃないけど)。

 

「あ~、謝ったほうがいいのかな?勝手にスマホを見ちゃったようなものだし……。でも朱纏って、わかりやすく気を遣うより、なあなあにしたほうが好きかなあ?」

 

なにせ日本人(鬼)だし、とひとりごちる。おかしなことに今までなら返事が返ってくるのだけれど、自室には私一人だけだ。というのも2人くらいいる愛が重いサーヴァントたちが、カンカンになった朱纏にこっぴどく叱られたらしい。らしいというのはスパルタクスさんからの又聞きで、人として当然の気配りもできぬのか!!とか、鬼に説教されるようでは世も末だぞ!!とか、説教部屋(即席)から廊下まで響くほどの怒りっぷりだったらしい。寝てたから気づかなかったけど。

彼いわく、こういうところで気が利くから朱纏はギリギリ圧制者ではないらしい。そういえば夢の中でも人々に慕われていたな。そんなことを考えつつ、身支度を終えて私は部屋の外に出た。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「「源頼光?」」

「左様。彼奴はおれが打った太刀を持っておる。あれがあればオルガマリー、お前を人に戻せるであろう」

 

冬木での戦いを辛くも勝利した私たちだったが、敵の残した爪痕は想像以上に深かった。特に所長は、今は落ち着いているけど心に大きな傷を負っているはずだ。信じていた人が実は自分をずっと疎んでおり、敵の手先で、自分を肉体的に殺害し、さらにもう一度殺そうとしたのだから。改めて羅列するといくらなんでもひどすぎじゃないだろうか。もっとも裏切り者・レフは早々にその報いを受け、所長はこうして生きている。額から角がのぞいているけど。

 

戦いが苛烈さを増す中、新たなサーヴァントを召喚する必要があるわけで、当然その中には現代の魔術師がひっくり返るようなキャスターもいた。そんな彼らをして、鬼になった所長をもとに戻すのはほとんど無理だという。なにしろ鬼というものがどんなものなのかわからないから、下手に手出しして失敗するわけにはいかないのだ。そんなわけでただ一人の専門家にうかがったところ、所長の容態も安定してきたからそろそろ手を打とうということになったのだった。

 

「源頼光、10世紀から11世紀にかけての日本の英霊だね。多くの英雄を輩出した源氏に連なり、怪異・神秘殺しとしても非常に強力だ。そして、その……」

「濁さずともよい。おれを殺した女だ」

 

自国の英霊を知らないのはちょっと恥ずかしいかなあと思っていると、ドクターが説明し朱纏が補足する。とても大事なことをさらっと言うけど、被害者としてはそれでいいんだろうか。というかアーサー王といい、どうしてこう、すごそうな英霊に限って女の人なんだろう。歴史家の怠慢とか、歴史の闇を感じざるを得ない。

 

「でも、なんでその人が朱纏の刀を持ってるの? 朱纏の宝具なんでしょ?」

「あれは作ったきり、どうなったかなぞ知らなんだ。されど英雄の元へ流れ着いたとあれば、我ながら大した刀を打ったものよ。まこと奇縁よな」

 

手放した以上自分の宝具じゃないということだろうか。朱纏の持ってるお酒も元は貰い物らしいし、エクスカリバーも精霊からもらったから逆のこともあるのだろう。

 

「まあとにかく、英霊としては間違いなく一級。此度は太刀目当てだが、その後は存分に戦働きが期待できよう。その点でも召喚して損はない」

 

朱纏がそこまで言うからには相当な強さを誇るのだろう。今のカルデアには誰でも知ってるような大英雄も少なくないけれど、そんな彼らに引けを取らない朱纏を殺したなんて、異次元の存在としか思えない。残念ながら私の貧弱な想像力ではまるでイメージが湧かなかった。

 

「あの、そんな方を召喚して大丈夫なんでしょうか。朱纏童子さん斬った方ということは……」

「そ、そうよ! 鬼の敵なんでしょう!? 私まで斬られたりしないでしょうね」

 

マシュの疑問に乗っかる所長。確かに、鬼退治って一人残らず斬り捨てるイメージがあるし、実際のところ大丈夫なんだろうか。所長を人に戻すために召喚したいのに斬り殺されては本末転倒だ。

 

「もっともな懸念だが心配ない。そう血の気の多い者でもないからな。むしろ喜んで協力してくれるであろうよ」

 

 

 

 

 

 

そんなわけで頼光さんを召喚したのだけれど、空気が重い。

 

狙った英霊を召喚するには触媒が必要で、生前の因縁がある朱纏はこれ以上ない触媒の役割を果たす。ということで朱纏立会いの下召喚が始まったのだけれど、一発で成功はしなかった。いや、頼光さんを呼べた以上紛れもなく成功なのだけれど、それまでに彼女以外の朱纏の関係者が召喚されたのだった。

 

頼光さんの部下の一人。日本人ならたぶん誰でも知ってるおとぎ話・金太郎(正確にはそのモデルらしい)その人、坂田金時。

 

朱纏童子の片腕で、その力は朱纏と同等といわれる鬼、茨木童子。

 

全員でないとはいえ、被害者と加害者が一堂に会するという世にも奇妙なこの状況。みんながみんな気まずげな表情で、普段悠然としている朱纏ですらばつが悪そうにしているものだから、誰も話を切り出せない。こういう場合マスターである私が切り出すべきなんだろうか。それにしても気まずい。

 

「あ、あぁ~~、その、よ、ようこそカルデアへ~。私、藤丸立花っていいます。カルデアのマスターやってまして、皆さんを呼んだのはもちろん一緒に戦って欲しいからなんですけど、実はもう一つお願いがありまして~……」

「……うむ、頼光。そなたに頼みたいことがあるのだ。これは人を救うためであるからどうか聞いてほしい」

 

よかった、朱纏がつないでくれた。もしみんな黙ったままだったらどうしようかと思ったよ。

 

「……と、言いますと……?」

「そなたの太刀を貸してほしいのだ。そこな娘、オルガマリーはこのカルデアの頭でな。敵の策によって深手を負い、助けるために止むを得ず鬼にした。そのままでは不都合が多いから、人に戻すためにそなたの太刀が必要なのだ」

 

それにしてもいろいろとすごいな頼光さん。こんな人が見た目中学生の首を切り落としたって……。なんというか、犯罪臭がすごいぞ。

 

「血吸をですか? まぁ、人助けのためというのなら構いませんが……。これで一体どうするつもりですか?」

「鬼に落ちてなお人を殺める前であれば、血吸で斬ることによって人に戻すことができる。まがりなりにも神剣であるからな」

「この太刀にそのような謂れがあるとは……。どこでそのことを?」

「はじめからよ。なにせ、血吸はおれが打ったからな」

「!! それでは、貴方が……」

「いかにも、おれが安綱じゃ。」

 

気のせいか頼光さんたちが複雑な表情に。特に茨木童子はひどく驚いた様子で朱纏に問いかけている。もしかして、同時代の人なのにみんな知らなかったんだろうか。朱纏ってよほど大事なことでない限りわざわざ言わないイメージがするし。

 

「安綱?」

「えっと、様々な名剣を打ったとされる刀工だね。血吸は彼の代表作の一つで、童子切安綱、鬼切安綱、鬼切丸、髭切、鬼丸といった様々な別名を持つらしいよ」

 

すかさずドクターが答えてくれた。それにしても何でもできるんだなあ、朱纏。

 

「へえ~~、朱纏って多芸なんだね。まるでダ・ヴィンチちゃんみたい」

「あれは真の天稟よ。おれくらい無駄に生きれば誰でもできる」

 

まさかこんな形で歴史の新事実が明かされるなんて思ってもみなかったよ。しみじみ考えていると朱纏が声を張り上げた。

 

「さて、話もこれくらいにして、そろそろやるとしようか。手筈はこうじゃ。まず、おれが血吸でオルガマリーを斬る。さすれば術が解けて半死人に戻るから、すかさず神変鬼毒酒を飲ませる。斬った時点で人に戻っておるから酒の力で傷が癒えるはずじゃ」

「はずじゃ困るのよ!! 絶対成功させて頂戴!!」

 

大丈夫かなあ、ホントに。

 

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