沖田さんにお任せあれー!コフッ!   作:ヘイ!タクシー!

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VS遠征部隊 前半

夜の警戒区域に甲高い衝突音と銃撃音が鳴り響く。

 

「「旋空弧月」」

 

同時に放たれた太刀川と総司のブレードの刃が空中で重なり相殺しあった。

それによって弾かれた『旋空』の余波が周囲の無人民家を倒壊させる。

 

「アステロイド」

 

瓦礫と煙で視界が塞がれる中、太刀川隊の射手・出水が総司がいるであろう方向に向けてトリオンの弾を放つ。

広範囲に広げられた弾幕が煙の中へと突き刺さった。

 

煙が晴れて来るのと同時に、風間隊の歌川が煙の中かからうっすらと見える人影に向かって突入し、『スコーピオン』の斬撃を放つ。

その人影にブレードの刃が直撃する瞬間だった。唐突に影が歌川の視界からその姿を消す。

 

「なっ」

 

突然の出来事に一瞬だけ固まる歌川の背後から『弧月』の刃が伸びた。

直後、その刃が唐突に軌道を変え、歌川の首に迫っていた剣閃が彼の脚を浅く斬る。同時に地面から被弾する弾丸の音が響いた。

 

「くっ!」

 

再び迫ってくる凶刃を、歌川は煙から脱出することでギリギリ避ける。

屋根の上に着地した歌川が脚から漏出するトリオンを抑えていると、迅と戦っている風間からの通信が入った。

 

『歌川、不用意に前に出るな。相手はあの沖田だ。突出したヤツから即座に喰われるぞ』

 

『り、了解』

 

『他の奴等も気を抜くな。ヤツには危険を察知するサイドエフェクトがある。加えてあのスピードに技量だ。出水やスナイパーの援護があるとは言え、不用意に近付けば殺られるのは自分だと思え』

 

『了解』

 

風間の警告から一度を距離を置いた遠征部隊を見届けて、総司もまた少しだけ下がり援護する嵐山隊と合流する。

木虎の隣に着地した彼女は、少しだけ不満そうな表情で呟いた。

 

「むぅ……スナイパーが邪魔ですね。あのうざったいタイミング………絶対奈良坂さんですよ」

 

「スナイパーから倒したらどうですか?」

 

総司の愚痴を聞いた木虎が珍しくそう声を掛けた。ただ、その声色は普段に増して険のある様子だったが。

それについて疑問に思った総司だったが、そう言えばと木虎をイルガーの爆発に巻き込んでしまったことを思い出し、少しだけビビりながらその返事を返した。

 

「い、いやぁ。流石の沖田さんでも太刀川さんや出水先輩相手に背中を向けられる余裕無いですよ……………ちなみに、新型の爆発に巻き込んでごめんなさい」

 

「………いえ、あれは私ではどうにもなりませんでしたし、気にしてません」

 

木虎としてはむしろ、自分では止められなかったトリオン兵を総司が簡単に止めてしまった自分自身に苛立っていたのだが、そんな事を総司が知るよしも無かった。

 

そんな時に風間と戦り合っていた迅が総司達のところまで下がってくる。

 

「よお皆。頑張ってるようだな」

 

「励ましはいいですけど迅さん。この後、ホントに太刀川さんと風間隊を任せていいんですか?多分風間隊なんかはステルス使ってきますよ?」

 

「むしろそっちがスナイパー組や何人かを引き受けてくれるんだ。それだけでだいぶ楽になる」

 

そう言っていつもの表情の見えない笑みを浮かべる迅。彼がそう言うならと総司が引き下がると、今度は嵐山が迅に声をかける。

 

「と言うことは、この後相手を分断する形で良いんだな?」

 

「ああ。それにあっちも俺達を分断する気でいるようだからな。このまま相手の策に乗ろう」

 

そう迅が言い切ると、再び相手からの攻撃が始まった。

出水の『メテオラ』が迅達に降り注ぐ。

 

「さて、上手くやれよ迅」

 

「そっちもな」

 

二人がそう別れを告げると、メテオラの爆撃被害に遭わないよう彼等は二手に別れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

『手筈通り、迅と嵐山隊、沖田が別れたな。できれば沖田を迅側に持っていきたかったんだが………』

 

『仕方ないだろ風間さん。それも予想の内だ。三輪隊とウチの出水、それに当真を連れていけばなんとかなるだろ』

 

内部通信で戦略を練りながら、彼等を分断するために攻撃に苛烈さが増す。

二人の会話に、古寺が疑問点を投げ掛けた。

 

『ですが、それだと迅さんの方が手薄になりませんか?ブラックトリガー持ちですよ、迅さん』

 

『なに。いくらブラックトリガーとは言え、『風刃』は遠距離に特化したトリガーだ。距離を詰めて近接戦闘に持ち込めばただのブレードトリガーと変わらん』

 

それに、と太刀川は更に付け加えた。

 

『久々に本気の迅と戦り合えるんだ。援護は風間隊だけでいい』

 

そう言って太刀川は好戦的な笑みをその顔に張り付けた。

多分皆が思ったことだろう。この人、ただ迅と戦いたいだけだろうと。

だが誰一人として太刀川の身を案じてはいなかった。彼の実力に加えて、A級三位の風間隊が迅の相手をするのだ。なら、余計な援護はむしろ邪魔になると考えたのだろう。

 

『むしろ総司に気を付けろ。サシなら俺か風間さん以外勝てないだろうからな。出水やスナイパーと連携しながら切り崩していけ』

 

『了解』

 

 

 

 

 

 

 

 

__________

 

 

「さて、どうやら上手く釣れたようだな」

 

「やっぱり足止めとして三輪隊を中心に来てますね。三輪先輩の『レッドバレット』がありますし」

 

「沖田さんとしては出水先輩がいるのが嫌なんですよね………あの人の弾幕と『バイパー』は避けづらいですし」

 

嵐山隊と総司はバレない程度に迅と引き離されながら、所定のポイントまで下がっていた。

 

嵐山隊のメンバーはガンナー寄りのオールラウンダーである、嵐山と時枝。アタッカー寄りのオールラウンダー、木虎。ここにはいないスナイパーの佐鳥と言った構成でできている。

 

今回の相手は三輪隊に出水とスナイパーNo.1の当真がいる。

普段の嵐山隊なら前衛が薄い分、かなり厳しい戦いを強いられたであろう。

 

しかし、

 

「アタッカーの人達が少ないですね。もしかして、沖田さん嘗められてます?」

 

沖田総司と言う女の子一人が参加しただけで、状況は一気に引っくり返る。

 

『あんのスピードバカ。完璧に俺達を見下してるぜ』

 

『だが、確かに前衛が少ねーな。おい三輪、大丈夫か?』

 

『沖田は基本的にソロだ。いくら嵐山隊とは言え、即興であいつの速度に対応できる訳がない。連携して一人ずつ潰していくぞ』

 

三輪は先程の戦闘を分析して、そう判断した。

彼女の戦闘方法は特殊な歩法技術で相手の死角に入り斬るのが常。その死角は総司にしか判断できないため、ガンナーは援護が非常に難しくなる。また、彼等は今回が初めての連携の筈。

なら連携で崩す。それが三輪の考えであった。

 

「なら、さっさと始めちまおうぜ」

 

そう出水が告げると、両手からトリオンのキューブを出現させた。

 

直後、そんな出水に近くのマンションから放たれた弾丸が襲う。

出水の頭部目掛けて被弾する筈だった弾は、しかし、フェイントで切り替えたトリオンのシールドに阻まれた。

 

「佐鳥見っけ」

 

『うわっ、きったねぇ。フェイントかよ出水先輩!」

 

「ちょっとツインバカさん何やってんですかー!あの人の性格の悪さは筋金入り何ですから気を付けて下さいよ!」

 

「よし総司。お前は後でお説教だ」

 

総司の発言に出水は額に青筋を立てる。心なしか、彼の軽薄そうな笑顔も怖さが増していた。

そんな下らないやり取りをしているが、戦場は緊迫していた。

 

「陽介、お前は佐鳥を獲りに行け」

 

「木虎、カバーだ!」

 

「「了解」」

 

佐鳥の位置が判明して落とすよう指示した三輪と、佐鳥のカバーを指示した嵐山に同時に了承の返事をした二人が動く。

 

出水はその二人を見届けながら正面にいる総司話し掛ける。

 

「どうした総司。お前にしては大人しいじゃねーか。昔のお前なら槍バカくらい空中で叩っ斬ってるのによ」

 

「…………誘っても無駄ですよ出水先輩。スナイパーNo.1とNo.2の両方から狙われてるのはわかってます。さっきから勘がバンバン危険信号を訴えてますからね」

 

「さっすが」

 

そう。総司は不用意に動けないでいた。

今の出水が言ったように、彼女が米屋を狙って空中を飛べばその瞬間、ボーダーの2トップに入るスナイパーから狙い撃ちにされただろう。

 

いくら総司が素早い動きが出来てかつ『グラスホッパー』を持っていたとしても、地上ほど自由に動き回れるわけではない。

そのため、動きを予想もしくは補足されやすいのだ。しかも二人は狙いを総司のみに絞っていた。そのせいで彼女の勘がガンガン警報を鳴らしているのだ。

 

マンションの中で米屋と木虎の戦闘が始まる。それに合わせて出水は再び構えた。

 

「さあて、俺等もボチボチやり始めますか」

 

そう言って出水はトリオンキューブを出現・夥しく分割させる。

圧倒的な数の弾丸が総司へと放たれた。

 

 

 

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