あれから民間人の保護も終わり、数日後の今日。私は今作戦本部室に来ていました。
本当は行くの、あまり気乗りしないんですよねー。こないだなんて、全隊員総出でちっちゃいトリオン兵の駆除に駆り出されましたし。その後またテレビに出させられるしで疲れてるのに、あんな息の詰まった場所に行きたくないんですよ、まったく。
「失礼しまーす。A級隊員の沖田総司です」
挨拶しながら本部室の入ると、暗い暗い。なんでこの人たちこんな暗くして作戦立てようとするんでしょうか?
「来たか」
本部室には最高指令官である城戸さんと、『ネイバーは絶対許さない主義』の城戸さん派である上層部の、唐沢さん・鬼怒田さん・根付さんがいました。つまり、いつものメンバーです。
「えー、今日はなんの呼び出しですか?」
「お前に任務を与える」
城戸さんがそう言うと、彼の後ろにあるモニタースクリーンから一人の少年の映像が写し出された。
「これは?」
「男の名前は三雲修。この男がネイバーと何かしらの関係を持っている可能性がある。今、三輪隊がこの男を付けているのだが、ネイバーと交戦した場合は三輪隊の援護をしろ」
「なるほど」
つまり戦闘が起こった場合に戦場に駆け付けて、三輪隊と一緒にネイバーを殺すか捕らえると言うことですね。
「なら、沖田には早速現場に付いて貰おうか。もしかしたら未知のトリガーを持っているかもしれんしな」
「あーっと、鬼怒田さん。その前に良いですか?」
「なんだ?」
鬼怒田さんが相変わらず不機嫌そうな顔で此方を見てきます。まあ、それはいいとして。
「その三雲と言う少年がネイバーと繋がっている根拠はあるのですか?命令とあらば私は敵を斬るだけなんですが、その情報に信憑性が無いのなら沖田さんは引き受けませんよ?」
「なんだと!?貴様、これは命令だぞ!」
「いえ。沖田さんはただ『誠』があるかどうかだけ聞きたいんです。それさえあるなら、ネイバーだろうが民間人だろうが戦場である限り、斬ります」
「「っ!!?」」
?………何でしょう。此方を驚きの表情で見てくる鬼怒田さんと根付さんの視線は。まあ、どうでもいいですか。
「それで城戸さん。どうなんです?」
「………根拠はある。最近になって突発的なゲートの発生に対策が出たこともそれが理由だからだ。それに、最近のこの男の周りで不審な点が数多く出ている」
城戸さんの重苦しい言葉が本部室に響きます。なるほど、あの駆り出しの原因もそのネイバーが関係していた事だったのですか。
まあ、結局命令を受けるのであまり意味の無い問答でしたが、良かったのでしょう。
さっさと任務を片付けて甘いものでも食べましょうか!
「わかりました。では沖田総司。命令を受諾し出動します!」
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「城戸指令。やつに任せて大丈夫何ですか?」
「ええ………まさかあの子がいきなり民間人を殺す等と言うとは………」
先程、総司の意見を聞いた二人は少しだけ彼女の事を警戒していた。何せ正当性さえあれば殺人も辞さないと言ったのだから。普通に考えれば危険な思考だろう。
「………問題はない。彼女は命令を忠実にこなす人物なだけだ。それにそちらの方が私達にとってもありがたい」
「確かに。どんな汚れ仕事の命令でもこなしてくれる部下は有能です」
「唐沢営業部長………」
「それよりもまずはネイバーの排除だ。良い結果が来るのを待とう」
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「さて、っと。それでは月見さん。戦況は?」
今、総司は三輪隊のオペレーターである月見のアシストの下、警戒区域内にある封鎖された無人の駅に来ていた。
情報では、ここでネイバーと映像に映っていた三雲少年の密会が行われてようだった。
『ちょっと不味いかな。相手のネイバーに三輪君と米屋君が制圧されてしまったわ』
「え………もう、ですか?あの三輪隊の二人が?」
『そうよ。敵はトリガーをコピーして何倍にも威力と質を上げることが出来るようね』
「なるほど」
総司は月見からもたらされた情報を噛み締めて、少しだけ気合いを入れ始めた。
(トリガーのコピーですか………少々面倒ですね。となると相手はかなり手数を持っているはず。三輪隊のスナイパーと協力して、相手の隙を見つつ短期決戦に持ち込みますか)
「情報感謝しますね月見さん。まずは目標と接近します」
そう言うと総司は廃墟の駅に突っ込みに行く。
そして総司が見た光景は、三輪と米屋が情報にあったレッドバレットのコピーで制圧されていたところだった。
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side 修
「いやー。見事にヤられてますね、三輪さんと米屋さん」
そんな声と共に現れたのは和服の一人の少女だった。
ただし可愛らしい容姿に似合わないボーダーのトリガーである弧月を持っていることから、すぐに彼女がボーダーからやって来た刺客であることは間違いないだろう。
「なんだお前?」
「空閑、気を付けろ!その娘も多分ボーダー隊員だ!」
僕は未だ警戒体制に入っていない空閑にすぐ呼び掛けた。
そんな僕の言葉に反応したのだろう。その娘は僕に目を向けてきた。
「あー………貴方が三雲少年ですか。それで?そっちの黒い少年は見たこと無いトリオン体ですね」
「沖田!そいつは人に似ているがネイバーだ!容赦するなよ!」
三輪さんがその娘ーーーーー沖田さんと言う女の人に注意を促した。多分また空閑と戦闘を起こすつもりなんだろう。でも今度の相手は一人。先程圧倒的な戦闘力を見せ付けた空閑の力なら多分大丈夫なはず……。
「勿論ですよ三輪さん。戦場に事の善悪なし…ただひたすらに敵を斬るのみ、ですから」
その女の子がそう宣言した瞬間、僕の視界から消えたのだ。
「えっ」
「おわっ!?」
すると空閑から僅かな驚きの声が上がった。そちらを見ると、そこには先程消えた女の子と、後方に下がった空閑の姿が見えたのだ。
しかも空閑のトリオン体には切り刻まれた箇所が何本もあり、その傷から大量のトリオンが漏出していた。
「なっ!?いつの間に!」
「……こいつは速いな。避けるのがやっとだったぞ」
「まさか私の技を初見で避けるとは………レッドバレットで動きが制限されているからと、少し手を抜き過ぎましたね」
女の子は弧月で肩を叩きながらそう呟いた。
まさか………A級隊の人達ですら四人係でも倒せなかったあの空閑が、いきなり手傷を負わせられるなんて………何者なんだあの人。
『ユーマ。損傷が酷い。速攻で敵を抑えた方がいい』
「わかった。
レプリカの言葉に、空閑は女の子に向かって先程三輪隊に放った、重しを付ける弾丸を撃つ。
あのトリガーはトリオンのガードをする抜ける上に、避けることが出来ないほどの弾幕だ。
これで空閑の勝ち。そう思ってた。
「フッ!」
「っ!」
「そんな!?」
僕の確信に満ちた予想は、彼女の圧倒的な身体能力によって外すこととなった。
彼女はガードが無意味だと知っていたんだろう。空閑の弾をガードせずに、放たれた弾全てを接近しながら回避して見せたのだ。
彼女は回避すると、再び僕の視界から消えた。
「『弾印』」
慌てて空閑の方に目を向ければ、彼女の放った弧月の斬撃を空中に避ける事で回避した空閑と、その空閑に目を向けている彼女の姿が写った。
そこであることに気付いた僕は慌てて空閑に呼び掛ける。
「駄目だ空閑!空中はスナイパーにーーーーー」
僕の忠告が言い終わる前に、三輪隊スナイパーの人達の弾丸が放たれた。
でも空閑は空中で身を捻ることで、今度はその弾を余裕で回避する。
その光景を見て僕は安堵してしまったが、空閑にとってはそうはいかなかった。
「
空閑は一早く弧月の女の子の接近に気付き、跳んでくる彼女に向かって先程の弾丸を放った。
回避の出来ない空中のため当たる筈なのだが、彼女は空中に出来た何かを踏み台に、その弾幕の尽くを避けきる。
「空閑!」
そのまま空閑に接近した彼女が弧月の刃を振るう。
もう駄目だと思い声を出した瞬間だった。
その刃が空閑に当たることはなく、その剣閃にトリオンのブレードが割って入ったのだ。
「ふう。危機一髪ってところだな」
空閑とその女の子の弧月に割って入ったブレードの持ち主。迅さんがそう呟いた。