GATE 幻想郷防衛軍彼の地にて斯く戦えり 作:にょろ35106
「・・・ここもか・・・」
伊丹が黒焦げになっている死体を前に合掌する。
少し前に霊夢が見つけた煙と燃える森を見つけた。
地上に降り様子を見ていると巨大なドラゴンが飛び立つのが見えた。
「何もないところで炎を吐く習性あるのか?」
と伊丹が口にした直後、魔理沙がはたての見つけ、そして少し前に寄った一つ目の村で聞いた村が森の中にあると言う情報を思い出し急行した。
「あれ?霊夢は?」
霊夢の姿が先程から見えない事に気付き魔理沙に聞く。
「ああ、霊夢ならあそこに」
井戸の淵に腰掛けていた魔理沙が指差す先に霊夢はいた。
何やら舞らしきものを舞っていた。
「あの舞は?」
「博麗の巫女の鎮魂の舞だってさ。いつもは妖怪に喰われたりして死んだ連中の鎮魂で舞ってるんだぜ。ここじゃかなりの人が死んだらしいからな。せめてもの供養って言ってた」
「初めて見たな・・・」
いつも伊丹が見る博麗神社での霊夢は境内の掃除をしているか団子を食べて茶を飲んでいるかどう見ても幼女な鬼と酒を飲んでいるかピンク髪の仙人の修行に付き合わされているかのどれかだった。
「まぁ、鎮魂の舞だからな。いつもは夜遅くに舞ってるんだぜ。妖怪の犠牲者が出るのも夜が殆どだしな」
「そうだったのか。じゃあ、舞が終わった時の霊夢の為に水でも用意しとくとしますか」
井戸の淵のそばに置かれていた桶を井戸の中に落とす。
スコーンッ。
「ん?変な音がしたな」
水の音でもない、空井戸に落ちて桶が壊れる音でもない。
「くそ、暗くて見えないぞ。魔理沙、明かり頼めるか?」
「ああ、お安い御用だぜ」
魔理沙が魔法で井戸の中を照らす。
「ひ、人だ!!」
伊丹はすぐにそれを見つけた。
ばしゃっ。
井戸の中に降り、伊丹はまずその人物が生きているかを確かめた。
「どうだー?」
上の方から魔理沙の声がした。
「大丈夫!気を失ってるだけみたいだ!」
再びその人物を観察する。
「いや・・・人じゃなくてエルフか・・・・?」
まずはそのエルフを背負うと彼女が落下しないようにしっかりと自分自身の体と結ぶ。
「いつもより、慎重に・・・」
普段飛ぶ時は一人だからただ飛ぶ事は霊符に任せ切りだ。
だが今は気を失った相手を背負って飛ばなければならない。
魔理沙の飛行訓練を思い出す。
「イメージして・・・力を広げるように・・・」
じゃばっ。
二人の体が浮き、水面から離れる。
「おおっ?上手いぜ!そのままゆっくり!」
霊夢は舞に集中し、魔理沙は伊丹が制御に失敗して勢いよく飛び出してきた時に備えそちらに集中し、伊丹は初めての自分以外の者も飛ぶたべに霊力制御に集中力を割いている。
だからこそ、その音に気付かなかった。
ほんの少し前。
ブロロロロロロロッ・・・・キィッ。
自衛隊の特地深部偵察隊の車両が焼け跡の集落に到着した。
約1時間前に遠方から双眼鏡でドラゴンを目撃した。
コダ村にて森の中の村の話を聞いていた彼等はドラゴンが立ち去るのを確認し再び車を走らせここに来ていた。
隊長の任を受けた桑原 惣一郎が部下達に捜索を命じる。
無線越しに聞こえるのは全て黒焦げになった死体があると言う報告ばかり。
彼自身も目の前の子供を守ろうとして一緒に焼き殺されたと思われる二人の黒焦げ死体に手を合わせていた。
『た、隊長、倉田です。巫女さんがいます』
「すまん、もう一度言ってくれ」
『巫女さんです。少し変わった巫女服を着ていますが、巫女さんです』
「巫女って言うと、あの神社とかの巫女か?」
『はい。その巫女さんが舞を舞っています』
『こちら栗林。こちらでも確認しました。こちらからですと井戸の側に他に二名が確認できます。一人は帽子を被って箒を持った金髪の少女、もう一人は黒髪の和服を着た成人男性です。その・・・・日本人に見えます』
「分かった、不用意に接触するな。栗林、現在地の詳しい場所を知らせろ。総員、栗林の待機しているところまで迎え。三人に気付かれるな」
無線の向こうから部下全員が了解と答える。
「もしや拉致されて逃げ延びた民間人か・・・?いや、巫女はどう説明する?コスプレイヤーって言うやつか?」
分からないことだらけの中、合流ポイントへ向かう。
幸か不幸か、彼等には第二ゲートから飛び立った三人組の存在は連絡がされていなかった。
そして現在。
桑原を先頭にして接触をする為に井戸に向かう。
金髪で帽子を被り洋服を着た少女が井戸の中を覗き込んで声を出している。
もう一人は井戸の中に降りたと栗林から報告を受けているが井戸には引き上げる為のロープなどはなく、井戸水をくみ上げる為の桶の為のロープらしき物が少したわんでいるだけだ。
「そのままそのまま!上手いぞ!」
少女が声を出した。
特地語ではなく日本語だ。
恐る恐る声をかけるが気付かれない。
「もうちょいもうちょい!さすが私の生徒だ!」
「あの」
ポンっと魔理沙の肩に手をおく桑原。
「少し待っててくれ霊夢・・・・あれ?」
思わず霊夢かと思ったが男の声だった。
「うわっ!?誰だおっさん!?」
「おっ・・・・」
思わず凹みかける桑原。
だが次の瞬間それは驚きへ変わった。
井戸の中から金髪の女性を背負った和服の男が浮き上がって来たからだ。
「な、何!?」
思わず反射的に栗林が伊丹に向けて銃口を向けてしまった。
同時に何か騒がしいと伊丹が少し目を開けた。
伊丹の目に銃口が見え、危険を察知する。
途端に霊力を制御していた集中力が無くなった。
「まずっ!耀司!?」
「うひゃーーーーー!?」
霊力が暴走し伊丹は一気に上空へと飛び上がり、滅茶苦茶な軌道を描いて飛ぶ。
「たーーーーすーーーーけーーーーてーーーー・・・・!!?」
「おっさん、話は後だ!間に合え!!」
箒を掴むと即座に跨り急上昇する。
「ま、魔法少女・・・・?」
倉田が思わず呟いた。
「耀司!落ち着け!霊力に振り回されるな!わたしが教えたことを思い出せ!」
「ま、魔法はパワーだぜ!?」
「馬鹿!違う!」
「だ、弾幕は火力だぜ!?」
「って、わざとじゃないだろうな!?ってか弾幕はまだ教えてないぞ!?なんで知ってるんだ!?」
「ええと、ええと・・・」
「焦れったい!わたしが教えうぎゃっ!?」
魔理沙が女の子が言ってはいけない悲鳴を上げ、箒から放り出される。
突如として再び伊丹の軌道が変わったのだ。
180度反転。
つまり・・・・、伊丹の頭が魔理沙の頭に直撃した。
それは伊丹と魔理沙の二人を気絶させるには十分な衝撃だった。
「まずい!二人がぶつかった!」
倉田が双眼鏡で見えた状況を報告する。
「二人とも気絶しているのか!?」
桑原が自由落下を始めた二人を見て意識が無いのを察する。
「あの高さから落ちたら即死だ!!」
勝元が叫ぶ。
「わ、私のせい・・・?私が、銃を向けて怯えさせたから・・・」
自責の念で落ち込む栗林。
各々が様々なことを考えるが地面に向けて落下して行く二人を見ている事しか出来ない。
フヒュッ!
そんな自衛隊員御一行様の真横を赤い何かが高速で通り抜けた。
突然の事に彼等は突風かと思った。
だが赤い何かが急上昇しながら落下する二人の元へ向かっている。
倉田が双眼鏡を覗く。
ガシッ!
パシッ!
華奢な霊夢の両腕が空中で伊丹と魔理沙の片腕を掴み高度を落としながら飛行を続ける。
霊力で強化していなければ二人を助けた時点で霊夢の腕にかなりの負荷をかけ、良くて脱臼悪くて両腕が千切れていただろう。
「た、助かった・・・?」
桑原が安堵の息をする。
見れば赤い巫女服の少女がもう目の前まで来ていた。
「そこ、使うから退いてくれる?」
「あ、あぁ・・・」
それが自衛隊と幻想郷の住人との最初の会話であった。
霊夢は自衛隊が開けた場所に伊丹と魔理沙を寝かせると井戸水を汲み上げそれを二人の顔に勢いよくぶち撒けた。
霊夢さんのスパルタ式目覚ましです。
自衛隊側の調査隊は原作から伊丹だけがいないメンバー構成でおやっさんが隊長を拝命しています。
霊夢の舞は代々受け継がれてきたと言う捏造設定です。
霊夢だって一方的に殺された人に対する憐れみを持っていてもいいと思います。(建前)
巫女さんといえば舞でしょ?(本音)