墓場を歩く。
ざり、ざりと灰まみれの道を踏み締める。
棺から零れあふれた残滓なのか、あるいはこの墓場から出ることすら叶わず崩折れた同胞なのか。
不死は、死ねども死ねぬ。
死ぬのだ。殺せば死にはするのだ。
されどその亡骸は灰と散り、何処かの何かに惹かれてまた積み上がる。
それが己の寝床の上か、世界を通じる残り火の傍か。
ともかくも故ある郷にてまた生き返ることは確かだった。
全ては戻らぬものもあるから、死にはせねどもいずれは朽ちるのだが。
不死人はそこまで頑なではない。
「――む」
気付けば、棺の中で横たわっていた。
体を持ち上げ、ぼやけた頭を振る。どうなっていたか。
そうだ、死んだのだった。
暗い道を行き、広間に出る。闇の向こうに、蠢く何かが居た。
歪な二刀を持つ墓守だ。腐った衣に、腐った頭巾、血に塗れて反り返った刃。
飛びかかられた。大きく肩越しに振りかぶられた二刀を躱した。
反撃をするか。身構えた端に返す二刀に身を裂かれた。
すわ堪らん。逃げ出したその先で唸り声が聞こえた。
「獣か」
痩せこけ、あばらが浮き、灰に塗れた餓えた野犬。
あ、と気が付けば首が締まった。噛み付かれたのだ。
ひと堪りもなかった。地に引き倒され、首を引き回され、気を失ったのだ。
なるほど、あとは野犬の馳走になったに違いなかった。美味かどうかはさておいて。
対策が必要だった。
このまま行き直せば先の光景の焼き直しに違いない。
さあ、何をすべきか。
……そういえば、私は何ができるのだろうか?
寝起きか、何か、すっかりとそこが抜け落ちていた。
ああ、いかん。既に己は朽ちかけているのだろうか。
視界を下して、己の身なりを確認する。
まずは学院のコートが目に入った。――学院?
いいや、そうか。私は学徒だ。ヴィンハイム、その竜の学院の魔術師だったのだ。
コートの下に、学院の正装と硬く煮詰めた革の鎧。いつかの使命で、旅のために纏ったのだろう。
腕を見やる。
コートの袖を肘から切り取り、その先に輝く手甲があった。
幾重に銀を重ね、重厚さと柔軟さを合わせたそれは、貴い者に使える騎士のものだ。
しかし、思い返して私は騎士になった覚えなどなかった。奪ったのだろう、恐らくは。
脚を見る。
緑の脚絆に、無骨な足甲。
巧みに鉄の覆いを組み分けられ、やはり重厚さと柔軟さをと両立させていた。
ところで腕のそれとは鎧の意匠が大きく違う。また他所の騎士から奪ったのだろうか。
はて、私は一体何なのだろうか?体を硬く銀と鉄で装い、しかし羽織るコートは魔術師のものだ。
頭に手をやれば布に触れた。帽子だ。使命のため、学院を卒業する証として捨て去るべきもの。
思い返して、思い出した。捨てられなかったのだ。捨ててしまうには、あまりにも忍びなくて。
他に何かが無いかと己の身体をまさぐる。
頭、帽子。肩、フード。体、革鎧。腰、ベルトにポーチ。脚、具足。
いよいよもって何もない。思わず辺りを見回し、傍に落ちていたものに気が付いた。
――ああ、そうだ。そうだった。これだ。これを忘れてしまうわけにはいかなかった。
ぼくのかんがえたさいきょうの