灰降る世界に星は降りたる   作:瑞雲さん

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こっちの方がすいすい書けた


3B.無縁墓地

墓場を歩く。

ざり、ざりと灰まみれの道を踏み締める。

棺から零れあふれた残滓なのか、あるいはこの墓場から出ることすら叶わず崩折れた同胞なのか。

 

不死は、死ねども死ねぬ。

死ぬのだ。殺せば死にはするのだ。

されどその亡骸は灰と散り、何処かの何かに惹かれてまた積み上がる。

それが己の寝床の上か、世界を通じる残り火の傍か。

ともかくも故ある郷にてまた生き返ることは確かだった。

全ては戻らぬものもあるから、死にはせねどもいずれは朽ちるのだが。

不死人はそこまで頑なではない。

 

 

「――む」

気付けば、棺の中で横たわっていた。

体を持ち上げ、ぼやけた頭を振る。どうなっていたか。

 

そうだ、死んだのだった。

暗い道を行き、広間に出る。闇の向こうに、蠢く何かが居た。

歪な二刀を持つ墓守だ。腐った衣に、腐った頭巾、血に塗れて反り返った刃。

 

飛びかかられた。大きく肩越しに振りかぶられた二刀を躱した。

反撃をするか。身構えた端に返す二刀に身を裂かれた。

すわ堪らん。逃げ出したその先で唸り声が聞こえた。

 

「獣か」

 

痩せこけ、あばらが浮き、灰に塗れた餓えた野犬。

あ、と気が付けば首が締まった。噛み付かれたのだ。

ひと堪りもなかった。地に引き倒され、首を引き回され、気を失ったのだ。

なるほど、あとは野犬の馳走になったに違いなかった。美味かどうかはさておいて。

 

対策が必要だった。

このまま行き直せば先の光景の焼き直しに違いない。

さあ、何をすべきか。

 

……そういえば、私は何ができるのだろうか?

寝起きか、何か、すっかりとそこが抜け落ちていた。

ああ、いかん。既に己は朽ちかけているのだろうか。

 

視界を下して、己の身なりを確認する。

まずは学院のコートが目に入った。――学院?

いいや、そうか。私は学徒だ。ヴィンハイム、その竜の学院の魔術師だったのだ。

コートの下に、学院の正装と硬く煮詰めた革の鎧。いつかの使命で、旅のために纏ったのだろう。

 

腕を見やる。

コートの袖を肘から切り取り、その先に輝く手甲があった。

幾重に銀を重ね、重厚さと柔軟さを合わせたそれは、貴い者に使える騎士のものだ。

しかし、思い返して私は騎士になった覚えなどなかった。奪ったのだろう、恐らくは。

 

脚を見る。

緑の脚絆に、無骨な足甲。

巧みに鉄の覆いを組み分けられ、やはり重厚さと柔軟さをと両立させていた。

ところで腕のそれとは鎧の意匠が大きく違う。また他所の騎士から奪ったのだろうか。

 

はて、私は一体何なのだろうか?体を硬く銀と鉄で装い、しかし羽織るコートは魔術師のものだ。

頭に手をやれば布に触れた。帽子だ。使命のため、学院を卒業する証として捨て去るべきもの。

思い返して、思い出した。捨てられなかったのだ。捨ててしまうには、あまりにも忍びなくて。

 

他に何かが無いかと己の身体をまさぐる。

頭、帽子。肩、フード。体、革鎧。腰、ベルトにポーチ。脚、具足。

いよいよもって何もない。思わず辺りを見回し、傍に落ちていたものに気が付いた。

 

 

――ああ、そうだ。そうだった。これだ。これを忘れてしまうわけにはいかなかった。




ぼくのかんがえたさいきょうの
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