薄気味悪い墓場
仮に今僕がいる場所が何処なのかと誰かに聞かれたならばそう答えるだろう。
狙ったかのような霧のせいで陽が差し込むことがないため薄暗く、名前も知らない雑草が当たり一面ぼうぼうに生えている。
そんな僕の趣味とは見当違い甚だしい場所で今石の大鍋の前でグズグズ泣きながら呪文のような物を唱えてる男、ワームテールに額の傷が痛んでる間に墓石の一つに縛り付けられているんだけど…刺された右腕もチクチクしてて痛いしどうしようか。
一緒に移動キーになってた優勝杯に触った先輩もここに来てるはずだから別に心配するようなこともないんだろうけど…
そう考えていたらやっと終わったみたい。
ワームテールがまだ泣きながら倒れてる傍の大鍋の中の液体が白く濁ったと思ったら思わず目が眩んでしまうほどの光が出てきた。
けどぱっと見なんともなってない…失敗か、ざまぁ。
だけどそう思っていた時、いきなり大鍋からドライアイスに水を大量にぶっかけたような白い煙が立ち上った。
靄は徐々に薄れていきその中にいるナニカの影が見え、今まで座っていたのかそれとも屈んでいたのか、ゆっくりと立ち上がるような動作を見せた
さらにその姿が見えてくる
ナニカはどうやら人間のようだが、その姿は普通の人間というにはあまりにも…異常だ
その手足身体は死ぬ間際の病人のように瘦せ細り、鼻のないのっぺりとした醜悪そのものの顔は見たもの全てに嫌悪感を抱かせる
そしてナニカ、ヴォルデモートは仰々しい身振りと共に言葉を…この世に再び闇の帝王として復活した証を静かに、だけど確かに重みを抱かせるかのように発する
「…戻ったぞ。…俺様は、確かに‼ 今ここに戻ってきた「うおらぁぁあああ‼」ぞもガッ⁉」
「我が君ぃッ⁉」
目の前で自分自身に死の飛翔なんてふざけたイタイ名前をつけたヴォルデモートの口に何かが直撃し、出てきた大鍋の底に再び戻っていった。
そんな一昔前のコントのような目の前の出来事、だけど散歩にでもきたような私服姿でこちらに歩いてくる先輩が今までしでかしたことを考えるとある意味では仕方ないことかもしれない。
「ようハリー、元気そうだな‼」
「…せめてその場違いな笑顔引っ込めてから来てくださいよ」
僕よりも二つ年上で人なつっこそうな笑顔を浮かべるこの大会の本当のホグワーツ代表者、足木日向先輩にそう愚痴ると悪い悪いと全く反省した感じがしない言葉で返してくる。
なお、笑顔をやめるつもりはないようだ。
「今やったのはどこのどいつだーっ‼」
ふざけていると確か先輩の出身国では中二病と呼ばれるらしいヴォルデモートがまた戻ってきた。
青筋をいくつも作って怒鳴るも要領がはっきりした物でないのを察するに、どうやらあまりにいきなり過ぎてさっき何をされたのかよく分かってないみたいだ。
そうして大鍋から上半身だけを見せるという非常にシュールな格好で見回すと今まで居なかった足木さんに目を向けて少しの間止まり、鼻で笑った。
「はっ、誰かと思えば東洋の猿ではないか。何をぶつけてきたかは知らんが、所詮身の丈にあった貧相極まりないものに違いあるまい」
…ああ、やっちゃったなあ。
知らないから仕方ないんだろうけど先輩そういうの気にしないからな。
両親の敵であるにも関わらず同情しつつ先輩の方を伺うと案の状顔を俯かせフルフルと震え小声でだが呟いていた。
「俺の…が貧相、だと…」
「そうだ‼ 所詮は肌の黄色い猿が思いついた曲芸だ‼」
そんな先輩の様子に何を思ってしまったのか、全世界見てもオンリーワンの肌の色をした男がブーメランを盛大に放り投げつつ煽ってくる。
…ワームテールはもうどっかに行った。去年散々先輩と戯れてたしね(意味深)。
「…上等だ、やってやるよ。決闘だ」
「ほう? どうやらそれぐらいの知恵はあるようだな。いいだろう俺様が直々に相手をしてやる」
…もう何も言うまい。
僕が入学してからも散々見てきた光景だ。
せめてしかとこの目に焼き付けて校長先生に報告しておこう。
「さあ、まずはお辞儀をするのだ…そう、やれば出来るではないか。では次に………して最後にそこから一、二の、三で振り返りお互い呪文を唱えるのだ」
「…ああ、わかった」
「ではいくぞ…」
確かに先輩は一見知り合いの双子のように滅茶苦茶だけどなんだかんだで礼儀はしっかりしてる。
けどヴォルデモートは気づいてるだろうか…先輩の手に杖などどこにも見当たらず、何かを握るような手の動きを…
「「一、二の、三‼」」
合図でお互いに振り返る。
先に杖をふりあげたのは…ヴォルデモートだった。
イタイことこの上ない名前をどや顔で空中に書いて他人に見せびらかすような男だが、流石に魔法世界全土で恐れられてきただけはある。
その杖の振りは今まで僕が見てきた中でも間違いなく一番といえるほどの速さだった。
…あくまで杖なら
「アバタケ・ダブ「うおらあああぁあ‼」るぁガァッ⁉」
…予想通り先輩の方が圧倒的に早かった。
そして今回のでようやくヴォルデモートも自分の口に何が入ってきたのか気づいたようで明らかに何故といった風に驚き声をあげた。
「ぐぅ、一体これは…なっ⁉ 油あげ…それに中のこれはライスなの「うおらあああぁあ‼」がガッ!?」
だけどたとえそれが何か分かったとしても先輩が投げている物、お稲荷が止むことはない。
ただひたすらヴォルデモートの口めがけてさっきの言葉を取り消させる為だけに投げ続ける。
「お稲荷はなあ‼ 酢飯と呼ばれるものを甘辛く煮た油あげの中に詰めた正真正銘我が祖国日本の伝統的な料理だ‼ そしてその日本の中でも俺の出身地名古屋が発祥だと言われ、江戸時代の頃から庶民の食べ物として百年以上経った今でも老若男女全てに愛され続けている究極の食べ物だぞお‼」
「わ…分かった。だからとりあえず一旦落ち着げガッ!?」
「それなのにお前は猿だと!? 畜生が覚えた見価値もないド底辺の曲芸だとお!? ぬかすのもほどほどにしろよブリティッシュがあ‼ 入学して直ぐの料理を食べて日本とのカルチャーショックで倒れるかと思ったぞ‼ 態々外国まで来たっていうのに毎回毎回食事のときはステーキとローストビーフしか食べれないとかどういう事だあ‼」
「そ…そこまでは言ってなギャッ!? そ…それに最後のは俺様には関係ぬぁガッ!?」
「料理何てものに大切な時間や神経を浪費するなんてばかばかしいだと? よくもそれで日本食、ひいてはその中でも最大にして至高の料理お稲荷を馬鹿にできたなこのビチクソがあ‼ 本当の料理を食べたこともないやつがお稲荷を語るんじゃねぇ‼ そして今日ここで知れ‼ お稲荷こそが世界で一番の料理であり、お前が今まで食べた料理の中でもこれから食べるだろう料理の中でも最高だと言うことを‼」
「…ピクッ」
「うぉおおらぁぁあああ‼」
…先輩は我を忘れたのか、目の前のヴォルデモートがまたナニカに戻ったにも関わらず何処から取り出しているのか恐らくダンブルドアにも分からないオイナリを投げ続ける。
ここで改めて紹介すると先輩はホグワーツに在籍しており、日本の料理のオイナリが大好きなことで有名な一応スリザリンの先輩だ。
その武勇伝は留まることを知らず…
曰く、トロールを吹っ飛ばした
『ウガア゛ァァアアア『うおらぁぁあああ‼』アグァッ!?』
曰く、バジリスクを吹っ飛ばした
『ギシャャアアア『うおらぁぁあああ‼』アジャッ!?』
曰く、狼男を吹っ飛ばした
『アォォオオオ『うおらぁぁあああ‼』オゥンッ!?』
曰く、ドラゴンを吹っ飛ばした
『グゥォォオオオ『うおらぁぁあああ‼』ォオッ!?』
曰く、どんな権力にも屈しない
『ち…父上がこの事を知ったらどうなるか分かって『うおらぁぁあああ‼』フォォオオオイッ!?』
…正直全部目の前で見たことあるけど、何もしない分にはオイナリを勧めてくるだけのいい先輩…のはずだ。
「…さあ、こんなところだろ。皆待ってるだろうしそろそろ帰るか」
ようやくオイナリの味が分からなかった相手に対するシドウも終わったようで帰る事が出来る。
本当に毎度の事だけど守りの呪文もドラゴンの牙も貫くようなオイナリとか僕含めてみんな目が死んでいくから本当やめて欲しい。
もうそれお稲荷でもオイナリでもなくただのOINARIなんじゃないだろうか。
…やめよう、先輩が喜ぶだけな気がする。
「ハリー、悪いが最後の試練(?)も俺が倒したし。優勝杯はやるから千ガリオンは俺がもらってもいいか?」
珍しい、先輩なら優勝したってことで勝者スピーチのときにOINARIを語りだして宣伝でもするんだと思ってたんだけど。
それにこの人が出るって分かった後に僕の名前出たときここで死ぬのかな? って思ってたぐらいだし何なら優勝杯も別にいらない。
…っていうか裏ありそうで怖いから持っていって欲しい。
「…別にいいですけど何か買いたい物でもあるんですか?」
そう聞くと先輩は心底楽しみだと顔をいつもよりも笑顔にして答えた。
「その金で俺の店を建てるんだ‼」
…ぶれねぇなこの先輩
後日一人の先輩が学校をやめ、同時期にお稲荷専門の店がホグズミードで建てられました。
…美味しかったです。
僕もお稲荷大好きです