ここは日本、ヴァレンティーノファミリーアジトにて・・・
アキトとシェルス並びにロレンツォにガブリエラ、ノアはアジトの居間でアキトの焙じたほうじ茶とロレンツォの作ったおはぎを口にしながら駄弁っていると・・・
ガラッ ピシャッ!
ヴァレンティーノファミリーの首領、ドン・ヴァレンティーノが現れた。
「今日はうどんを手作りするであろ~!」
ドンの後ろには小麦粉の大袋とミネラルウォーターのボトルが置いてある。
「首―――――領! 私も協力します!」
「ロレンツォ――ッ!」
「なぜうどん?」
「良いんじゃね? もうすぐ昼だし」
ロレンツォはドンと抱き合うと後ろに置いてあった小麦粉の袋を開け・・・
「首領の愛のこもったうどんを食べられるなんてロレンツォは世界一の幸せ者ですーッ!」
小麦粉を手で掴み、口へとかきこんだ。しかし、小麦粉は口に入るどころか舞い散る。
「ぶふっ、ぐほッ!?」
「フライング! まだ加工してないであろ―――!」
小麦粉はあちこちに撒き散らされ、もくもくと部屋を覆ってしまった。
「けほッ」
「こほっ」
「けほ、けほ!」
「ごほッ、ごほッ!」
小麦粉散布の影響でアキト達はむせって咳をする。するとこの状況にムカついたガブリエラが懐の銃を引き抜くと撃鉄を起こし、ロレンツォに向かって銃を構えた。
「ちょッ!? ガブリエラ!」
「ダ、ダメやで姐さん! 粉塵爆発してしまうで!!」
「戸を開けろ、戸を! 換気だ換気!」
シェルスとノアは目がマジのガブリエラを抑え、アキトが戸を開けて換気した事によって大爆発の危険を回避した。
―――台所に移動―――
「しかし、どうしてうどんなんか作るんや?」
「テレビで鼻からうどんを入れて、口から出す芸人がいたであろ~」
「・・・かなりクダラない理由ね」
「食べ物で遊ぶなよ、ドン・・・・・」
台所に移ったアキト達はドンの案外くだらない理由に表情を困らせていた。
「手作りしてまでやる事か? まぁ、今日は暇だし・・・・・付き合ってやろう」
ガブリエラはヤレヤレと息を吐きながら吸っていた煙草の火を消す。
「シャシャシャ♪ うむ! ファミリー一丸で作るであろ~」
ドンは嬉しそうにケラケラと笑う。
「そう言えば私、うどんを作るのも食べるのも初めてよ。らーめんとどう違うの?」
「そうだな・・・・・順を追って作って行くか・・・。それとガブさん?」
「なんだアキト?」
「煙草寄越せ。没収だ」
「げッ!?」
アキトはガブリエラから煙草没収し、ゴミ箱に突っ込んだ。
そうして、うどん作りへと移っていく。
―――手順①―――
「塩水を作る」
「塩分濃度は?」
「ん~・・・・・そこは自分の好みで」
―――手順②―――
「小麦粉をボールに入れて」ザー
「塩水を注ぐ」ダー
「ダマにならないようにな~」
―――手順③―――
「手のひらを使って混ぜ合わせる」
「お前の蹄のどこに手のひらがあるんだッ!!」
「ガブさん、それを言っちゃあオシメぇよ!」
ガブリエラの的確なツッコミが刺さる。
「では私がやります!」しゅばばば!
「やめんか――ッ!」チャキ
ドンの代わりにロレンツォがボールの中身を混ぜ合わせるが小麦粉が辺りに舞い散る。それを止めようとガブリエラが銃を構えて引き金をひく。
銃口から放たれた弾丸はロレンツォの眉間に当たる。
「んもう、乱暴なんだからー」
ロレンツォは眉間から血を流しながら倒れるが平気そうだ。
倒れたロレンツォに代わりにシェルスとガブリエラが混ぜ合わせる。
「お。姐さん、うまいやん」
「そうか?」
「シェルスも手慣れてやがんね」
「なんかパン作ってるみたいで楽しいわ」
ボールの中で混ぜられた生地をパックに入れると御座を敷いた床に寝かせた。
―――手順④―――
「はい、踏んでー」ピッピッピッ
ガブリエラがふく笛に合わせて、ドンとロレンツォが生地を踏んでいく。
「ねぇアキト、アレはなんの意味があるの?」
「おん。あれはうどんの麺にコシをいれるためにやってんだよ」
「へ~・・・」
ロレンツォとドンはうどん生地を踏んでは折り返し、踏んでは折り返して生地にコシを入れていく。
「すごく・・・・・絵面が地味だな」
「文句を言わないであろー。結構疲れるのだぞ?」
「うちの介護ハザードだと派手になるか?」
「そうだな」
ドン達の代わりに介護ハザードがうどん生地を踏むがハザードの爪でパックに穴があき、グサグサと生地に穴があく。
「ちょッ!?」
「ガブリエラ!?」
「介護用なのに衛生面が不安であろ―――ッ!!」
「加熱するから問題ない」
「「「「イヤイヤイヤイヤイヤ・・・」」」」
アキトとシェルスは顔を困ったように歪め、ドンとロレンツォが泣きつくようにガブリエラにすがる。
「・・・・・わかったよ、作り直せばいいんだろ」
この後、手順①~④を繰り返す。
―――手順⑤―――
「2、3時間放置して生地を伸ばす」
「最終段階ね」
調理台にうどん生地の塊をおく。
「やっとワシの見せ場が来たであろ~」
ドンは意気揚々と調理台に立つが・・・・・
グッぶに!
ガブリエラが麺棒でドンの頭ごと生地を潰した。
「ガブリエラ! 首領がいくら柔肌だからって、なんて事するんですかッ?! カタカナの『エ』になったじゃないですか!」
「ただの冗談だって」
「見てシェルス姉、山羊たく取れた~」
「綺麗に取れたわね~」
「平和だな~・・・・・」
こうしてうどん生地を伸ばし、適度な太さに切り、湯の中で泳がせた。
「完成だな。今日はうどんの味がよくわかるぶっかけで食べるか」
茹でたてのうどんを丼に盛りつけ、出汁醤油とカボスを振りかけた。
「「「「「「いただきまーす」」」」」」
ズルズル・・・ズビズバァッ!
人数分のうどんを居間に持って行き、口に運んだ。
「うまい」ズルッ
「ん・・・意外に」マグマグ
「パスタとなんか違うのね。美味しい」モッモッ
「美味い美味い」ズビズバァッ!
手作りうどんは結構好評なようだ。
「見てください首―――領!」ペロン
「おぉぉッ!! 見事、鼻から入れて口から出ているであろ~!」
ドンとロレンツォは当初の目的? をやっていた。
「ワシも出来たであろ―――!!」ちゅるん
「そのうどんを食べるこの幸せ♥」
「気持ちが悪いわッ!」
ガブリエラは拳銃をドン達の眉間に向けて撃つ。するとドンの懐から本が落ちた。
「なんだコリャ?」
「レシピの載ってる本か・・・」
ガブリエラがレシピ本を開くと付箋が付いたページがあった。そこにはうどんの歴史が書かれており・・・
『手軽な庶民・米食の代用食として、また祝い事に際して振る舞われる。『ハレ』の食物として古く食べられてきた』
・・・とあった。
「そーいや今日は姐さんの誕生日やったなぁ・・・芸人の話は口実だったみたいや。ファミリー皆で姐さんを祝おうなんて、ええヤギやないか」
「ガブリエラ」
ガブリエラを呼ぶドンの手にはクラッカーあり、それをロレンツォと共に破裂させた。
「お誕生日おめでとうであろ―――」パン
「・・・・・・・・首領・・・」
ガブリエラは嬉しそうに静かに笑う。のだったが・・・・・
「ではガブリエラもやるであろー」ワクワクワク
ドンは1本のうどんをガブリエラに押し付ける。
「ホレホレ、ホレホレ」
グイグイとドンに箸を押し付けられるガブリエラであったが、ビキリと何かが切れた。
ガンガンガンガンガンッ!
ガブリエラは拳銃の残弾を全てドン達に命中させた。
「チッ・・・・・喜んで損したわ」
「まぁまぁ・・・とりあえず用意してたケーキ食べようぜ?」
「お! アキト、用意がエエなぁ~!」
「私はお茶を淹れるわ」
「なら台所の戸棚に良い茶葉があるからよ、それ使ってくれ」
「Ja~、認識したわ」
「カカッ♪ ほら、ドン達もさっさと起きて食べようぜ」
それからファミリー達皆でガブリエラの誕生日を祝いながらアキトの作った料理を食べたのであった。
チャンチャン♪