リハビリ投稿のようなモノ・・・・・
「ラーメンが喰いたい」
「・・・へ?」
23時が来ようという真夜中。
その道の世界で知らぬ者はモグリの輩とまで言われる世界最強ランカーの吸血鬼であろう人物『暁 アキト』は、ヴァレンティーノファミリーの隠れ家の自室でそう唸る。
それを間近で聞いた同じく吸血鬼である『シェルス・ヴィクトリア』は、漫画とビールを手に疑問符を浮かべた。
「どうしたのよアキト? こんな店が閉まるか、閉まらないかの微妙な時間に・・・アプリのガチャをやってたんじゃあないの?」
「やってたよ・・・やってたんだけどさぁア~・・・」
アキトはため息混じりでシェルスへ自分の携帯を見せる。するとその画面は、金ぴかに装飾された鎧を身に纏ったキャラ一色に埋められていたのだ。
「・・・アキト・・・何回ガチャやったの?」
「十連ガチャを五回・・・・・」
「えッ・・・・・それでコレ?」
「此れなのよねン・・・」
「え~と・・・・・良かったじゃない。一応、SSRよ」
「良くねぇよッ!! もう俺の所ではレベルがカンストしてるのが18人いるんだよ! てか、俺は青いアニキか赤の正義の味方狙いだったのッ! それなのに・・・それなのに・・・・・なんでWRYYYYYYYYYYYYYYYッ!!」
悔しいからなのか何なのか解らないが、這いつくばって床をゴロゴロと転げまわるアキト。シェルスはそれを呆れたように見るしかなかった。
「ヤレヤレ・・・というか、なんでそこでラーメンが出て来るの?」
「それはただ単に俺の腹が減ったからです。今の俺の精神テンションがラーメンだからなのですッ!!」
「ガチャ全然関係ないじゃあない!・・・まぁいい、私も流石にビールだけじゃあ物足りなくなってきたし」
「えッ!? 大瓶6本カラにして、今更ッ?!」
「なに言ってんの、ビールは水よ。というか、一時間にスコッチボトル2本開けたアキトに言われたくないわね」
「うッ・・・それじゃあ店が閉まらないうちに急ごう! 今なら時速300キロで飛んで行けば、昨日テレビで紹介されてた店に間に合うッ!!」
「話変えるのヘタクソかッ! てか、どこまで行くつもりなの?!」
こうして、二人は寝間着姿から外着に着替えると開店時間に間に合うよう、背中に古代生物のような翼を広げて、窓からテイクオフしたのであった。
「ところで、アキトの言っていた店では何が美味しいの?」
「おん。それは豚骨焦がしネギ油チャーシュー! それに半熟トロットロの味玉を追加してよォ~ッ!」
「ゴクッ・・・それならご飯も必須ね。スープが滴るチャーシューをご飯に乗っけて、その上で味玉を割って・・・ッ!」
「ゴクリッ・・・中々わかっているじゃあないか、ドイツの
「フッ、何を今更・・・貴方が染めたくせに・・・」
「そうと決まれば急がなきゃあなァ! 飛ばすぜぇえいッ!!」
ババシュンッ!!
上空300mを急上昇急降下の縦横無尽に飛び回りながらラーメン屋へと急ぐ二人。その姿はまさに夜空を颯爽と羽ばたく彗星。
後日、この光景がネットにアップされて話題騒然となる事を二人は知らない。
「おん、見えた! あの赤提灯を掲げた光が!!」
「まさにアヴァロンを照らす光!!」
目印を発見すると隼も吃驚の急降下で地面に着地。同時にアキトが
ドンガラガッシャアアァアアッンン!!
そして、これでもかという勢いと力量で入口の引き戸を絹を引き裂くようにこじ開けて一言。
「「大将/マスターッ! 豚骨焦がしネギ油チャーシュー、味玉二つ付で!!」」
二人は堪らなくなっていた。
出かける前はそこまで減っていなかった腹もグーグー鳴り出し、もうラーメン丼を想像するだけで、ヨダレが止まらなくなってしまっていた。
これで漸く・・・漸くラーメンが食べれ―――――
「すみません。ちょうどさっき、スープが終わっちゃって・・・」
ゴーン・・・
「「・・・・・・・・」」
店主からのどうしようもない告知から、二人は歓楽街の夜道をさながらゾンビみたくフラフラ徘徊していた。
ドンヨリ
「WRYYY・・・」
「わぁ・・・ッ!」
上空高らか天を煌びやかに描くは、数えようも数えきれない多くの星達。その美しさは極上の絶景であり、この光景を前にいつしか落ち込んだ二人の心は洗われ―――――
「やっぱ、腹減ったな」
「そうね」
―――食欲が思考に舞い戻って来たのだった。
「しょうがねぇ。このままじゃあ治まり付かないし・・・・・袋麺買って帰るか」
「え~・・・袋麺~?」
アキトの提案にシェルスは難色を示す。
それもそうだ。折角遠出してまでラーメンを食べに来たというのに。それが結局、インスタントものになってしまったのだから。
「そんな顔するんじゃあない、折角の可愛い顔が台無しだ。まぁ、そんな表情も好きだがな!」
「馬鹿、なに言ってんのッ///」
「へいへいっと。だが、シェルスさんや? インスタントと言ってもあれだ、特製野菜炒め入りラーメンだ」
「・・・詳しく聞こうか・・・」
話に食い付いた彼女に気を良くしたアキトは、饒舌に語り出す。
「厚めに切ったベーコンの片側をカリッカリに焼いて、すかさず歯ごたえの良いザク切りキャベツやらニンジンやらモヤシを炒める」
「ほうほう」
「肉汁と旨味が絡み合いながらも、野菜はシャッキッシャキ! さらにッ! 半熟目玉焼きと茹で立て熱々のヴルストも付けちゃう!!」
「ごくりッ・・・」
「・・・この話・・・乗るかい?」
「
そこから二人の行動は早く、来る時よりも迅速に行動した。
深夜営業しているスーパーに飛び込んで、目的の品を手に入れると来る時以上の速度で飛んで帰宅。そして、速やかに作業へと移行するのであった。
「野菜あるよなぁ?」
「ドンの家庭菜園で採った野菜がたっぷり。それと・・・とっておきのヴルストがここに!」
「
ジュージュー焼けるフライパンの中では野菜が舞い、グツグツと煮える鍋の中では麺が躍る。
その後、茹で上がった麺を同封されていたスープと絡め、その上に焼き立て熱々のベーコン野菜炒めと別に茹でていたヴルストを乗っけて出来上がり!
「美味そォ~」
「食欲そそる~」
丼から放たれるどうしようもない良い香りに腹ペコの二人はヨダレがズビッ!!
「「いただきます」」
ズビズバッ!!
食欲のタガが外れた二人は、目の前の特製ラーメンにガッツく。
今まで抑えられていた望を邪魔するものはもういない。なれば喰らえッ、欲望のままに!!
ズルズル・・・
「ん~ッ、おいひぃ~!」
「・・・カカ♪」
「ん? なによアキト」
「いんや・・・どうだい美味いだろう?」
「ええ。アキト、また腕を上げたんじゃあないの?」
「カカカ♪ そいつはどうもよ」
満面の笑顔でラーメンを食べるシェルスに対して、アキトは微笑みかける。
愛おしい眼で。頬を緩やかに上げて。
「なんやなんや! メッチャええ匂いがする思うたら」
「ラーメンではなかろ~か!」
「ずるいぞ二人して」
「おん?」
ラーメンの匂いに釣られたのか、いつものメンバーがゾロゾロとダイニングキッチンへと誘われた。
「オイオイオイオイオイ・・・なんだよドンに皆、起きちまったのかい?」
「夜中にそんなもの食べて・・・身体に悪いですよ!」
「ごめんごめん、ロレンツォ」
「アキト、ラーメンまだあるよな? 私も腹が減ったから食わせろ!」
「ウチもや! さっきまで研究やっとって、お腹ペコペコやで~」
「はいはい。ドンとロレさんはどうする?」
「シャーシャッシャ♪ 勿論いただくであろー! ワシのは、諭吉マシマシで!」
「もうドンまで!」
「おん? ロレさん食わねぇの?」
「食べます! 私のはオリーブオイルをトッピングで!!」
「了解、認識したよ」
『ヤレヤレ、結局こうなっちまったか』とアキトは内心思った。
「フフッ♪」
けれど、彼がこの騒がしい状況を心から楽しんでいる事を傍にいたシェルスが一番理解していた。
彼女もまた、この状況を楽しんでいる一人であった。
チャンチャン♪
夜中に食べるラーメンは魅惑の香り。