Diplomatの日常   作:rainバレルーk

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フルキモノタチ

 

 

 

俺は水を飲むように盃の中の酒をガブリと飲む。

奥座敷の広間には俺の他にも多くの『人外』達が各々に盃の酒を酌み交わす。

 

 

『どうしたんやアーカードちゃん? そんなしかめっ面なんてして?』

 

「い・・・いや、なんでもないよ」

 

『ほうかほうか。さぁ、飲め飲め!』

 

『そうだぞ暁の吸血鬼、もっと飲め飲め!』

 

「ちょっ、注ぎすぎ注ぎすぎ!」

 

そう言って着物に袴姿の鯖虎猫『子駒』さんや他の人外達が空になった盃に酒をつぐ。俺はそれをまたグビリと飲み干す。

 

どうしてこんな状況になってるのかと言うと・・・・・

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

これより三日前、ヴァレンティーノファミリーアジトにある招待状が届いた。

招待状の送り主は京都に拠点を置く人外達の集まり『古き者会』である。

招待状の内容はと言うと・・・

 

 

「定期集会であろ?」

 

「あぁ、そうなんだよ。でも定期集会って言ってもただ集まって酒を飲み、肉を食らうだけだからな~」

 

「なんだそれ? 飲み会か何かか?」

 

「当たらずも遠からずだな」

 

アキトは招待状を手に困った顔をしながら息をつく。

 

 

「なんか、いやそうやな~。いやなら行かんでエエんとちゃう?」

 

「そうはイカの金時計だ、ノア。前回も仕事を理由にハケたからな・・・・・連続はキツい・・・カナ~?」

 

そう言って、アキトはのけ反りながら眉間に皺を寄せているとドンが口を開いた。

 

 

「行ってくるであろー」

 

「・・・えぇ?」

 

「『古き者会』には昔から世話になってるであろ。なら義を通す為にも行ってくるであろー」

 

「・・・そうだな~」

 

ドンの話を聞いて、アキトは納得の色を見せて来る。

 

 

「でもアキト?」

 

「おん? なんだよガブさん?」

 

「お前、シェルスはどうするんだよ?」

 

そうここにはいつもファミリーと共にいる赤毛の吸血鬼『シェルス』がいない。

 

 

「シェルスは仕事でウィッチー卿と一緒に欧州にいるだろう? てか、なんでシェルスの名前が出てくるよ?」

 

「飲み会とはいえ、色んなヤツらが集まってくるだろ? という事はだ、色んなヤツがお前に迫って来るんじゃあないのか?」

 

ガブリエラはニタニタと悪い笑みを浮かべて、おちょくるようにアキトに言う。しかし、アキトはポカンとした後にケラケラと笑いだした。

 

 

「カカカッ♪ 俺に『迫って来る』? バカを言っちゃあいけないよ。カカッ♪」

 

アキトは可笑しそうにケラケラと笑うがガブリエラ達はヤレヤレと眉間に皺を寄せる。

 

 

「(この馬鹿は自分がどんな位置にいるのかわかってないんだよな」ボソリ

 

「(しょうがないで姐さん。アキトは基本的にシェルス姉以外の好意には無頓着やからね」ボソリ

 

「(アキトは以外と罪な男ですね~」ボソリ

 

ガブリエラとロレンツォ達が呟いている中でドンとアキトは朗らかに話をしている。

 

 

「お土産は生八橋が良かろー」

 

「わかったよ」

 

「そう言えば・・・その飲み会とやらは何処でやるのだ?」

 

「おん? 確か、招待状に場所が書いてあるよ」

 

アキトが招待状の中身を取り出す。そこには『古き者会』の定期集会場所が書かれていた。

 

 

「え~と場所は・・・・・『皇家邸宅離れ』か・・・って、そこでやるのかよ?!」

 

こうして冒頭に戻る。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ドンチャン♪ドンチャン♪と人に化けた人外達がホロ酔い気分で宴を盛り上げる。

アキトも段々と気分が高くなって来ていると、座敷の襖を開けてオールバックスタイルの『人間』が入って来た。

 

 

「おん? 『藤堂』さんじゃあないか!」

 

「ん、暁か・・・飲んでいるか?」

 

「かなり飲んだよ。カカカッ♪」

 

楽しそうに笑うアキトの周りには一升瓶が幾つか転がる。

 

 

「その割りにはまるでシラフのようだぞ。やはり吸血鬼と言ったところか?」

 

「こんなに飲むつもりじゃあなかったんだけどな・・・この人がな」

 

「・・・あぁ、そういう事か」

 

アキトの指差す先に藤堂は納得の声をあげる。そこにはマタタビ酒を鱈腹飲んで鯖虎柄を赤くした子駒が喉を鳴らして、膝の上で鼻提灯をふくらませている。

 

 

『にゃ~ゴ・・・ゴロゴロ・・・///』

 

「・・・しかし、困ったな」

 

「おん? どうしたんだよ藤堂さん?」

 

「いやな、『神楽耶』さまに子駒殿を呼ぶように来たのだが・・・」

 

「あ~、これだと無理そうだな・・・」

 

喉を鳴らして眠る子駒を見ながら藤堂は古武士のような表情をしかめる。

 

 

「どうするよ藤堂さん?」

 

「うむぅ・・・しょうがない・・・暁、お前が変わりに来い」

 

「・・・はッ!?」

 

藤堂の突然の提案にアキトは持っていた盃を落としそうになる。

 

 

「なんでまた俺が?」

 

「いやな・・・今、姫さまは凪沙と一緒に『お客』の相手をしているのだ」

 

「お客~? なんでまた・・・皇家のご当主さまが、直々に相手をするお客って・・・・・まさか・・・ッ!?」

 

その相手とやらに心当たりがあるのか、アキトは口をヘの字に歪める。

 

 

「そう・・・『柊姫』だ」

 

「や・・・やっぱしぃ~?!」

 

―――『柊姫』―――彼女は京都に古くから住んでいる人外達の中でも古株であり、神楽耶が皇家当主を継ぐ時にもお世話になった方でもある。しかし・・・

 

 

「柊姫は酒と可愛いものを愛でるのを良しとしている。今は姫さまと凪沙が対応しているが・・・」

 

「時間の問題か・・・てか、なんで俺なの?」

 

「え、それは・・・・・まぁ、良いから来てくれ!」

 

「って、おいおいおいおいおいッ!?」

 

アキトはそのまま藤堂に首襟を掴まれ、連れて行かれる。

 

 

 

ドタドタドタと足を踏み鳴らして、アキトと藤堂は離れから廊下を渡り、本家の客間へと歩く。

 

二人が客間の前へと着き、襖を開けるとそこには顔を赤らめた人間が二人とその二人を体にしなだれかかせながら笑みを浮かべている人外がいた。

 

 

「おや? 早かったんやね~藤堂はん? 子駒ちゃんは連れて来たんやろね?」

 

人外はニヤリと妖艶な笑みを浮かべて藤堂を見る。

 

 

「申し訳ない。子駒殿はマタタビ酒を飲んで酩酊状態だった為に連れて来てはない」

 

「・・・ほう?」

 

藤堂の返答に人外は笑顔のままだが、眼の奥底は笑ってはいない。藤堂は間を空けまいと口を開く。

 

 

「その変わりの者を連れて来ている」

 

「変わり?」

 

「・・・どうも~」

 

藤堂の合図と共にアキトはヒョッコリと襖から顔を覗かせる。

 

 

「! いややわ~、暁のアキトはんやないの~! さぁ、此方に来てぇ?」

 

「え・・・えと・・・・・」

 

「藤堂はん? もうそろそろ無くなりそうやから、酒のおかわり持って来てくれへんやろか?」

 

「わかった。暁、頼むぞ」

 

「え、ちょっ、藤堂さんッ!?」

 

アキトの叫びも届かぬまま、藤堂はすぐさまに酒を取りに行った。

 

 

「ま、マジかよ・・・行っちまった・・・」

 

「何をしてるん? はよ来なさいや」

 

「・・・ヤレヤレ・・・覚悟決めますか・・・」

 

アキトは中場、諦めたようにされど戦場に赴く気持ちでその人外『柊姫』の近くに座した。

 

アキトは座した直後に行ったのは柊姫の体に寄りかかった二人、皇家当主『皇神楽耶』と藤堂夫人こと『藤堂凪沙』の『救出』である。

 

 

「あの・・・柊姫さん?」

 

「『さん』なんて、他人行儀とちゃいますの? ウチとあんさんの仲や、ウチの事は『柊』でよろしおすと前にも言ったで、アキトはん?」

 

「えと、なら柊さん? 体に人二人を寄りかからせるのは重たいんじゃあないかな?」

 

「そうでもないで? こんな可愛い子を手元に酒を飲めるなんて、ウチ、ほんとにうれしいんよ?」

 

柊姫は薄め眼で笑いながら盃の酒を飲む。アキトは諦めずに再度試みる。

 

 

「で、でもよぉ? その体勢だと俺が貴女に酒を注ぐのが難しいんじゃあないかな?」

 

「・・・・・それもそうやな~・・・」

 

アキトの言葉が通じたのか、柊姫は二人の耳辺りに手を持っていくと、パチンッと指を鳴らした。

 

 

「・・・ん・・・ん~・・・」

 

「・・・あれ・・・・・私は・・・?」

 

するとどうだろう、先程まで眠ったように柊姫に体を預けていた二人が起き上がったのだ。

 

 

「(やっぱりなんか『術』を使ってやがったか」

 

「・・・・・! 姫さまッ!」

 

思考が回復した凪沙は真っ先に神楽耶を抱えると柊姫と距離を置く。

 

 

「そんな警戒せんえかろう凪沙はん?」

 

「そうでしょうか? それは失礼いたしました」

 

そうは言うものの凪沙は猫のように身をたたせ、警戒する。

 

 

「あの~藤堂夫人?」

 

「なんだ・・・って、暁君?! (どうして君がここに?」

 

後ろの自分の気配に気づいた凪沙にアキトは事情をボソリと柊姫に聞こえない音量で話す。

 

 

「(それで鏡志朗さんは?」

 

「(酒のお代わりを取りに行ったよ。てか、結構酒臭いぞ凪沙さん?」

 

「(すまない。柊姫の酌の相手をした時に飲んだ酒が美味しくて・・・・・つい・・・」

 

「(おいおいおい・・・神楽耶ちゃんの方は?」

 

「(柊姫に勧められて・・・1杯か、2杯・・・それでいつの間にかこの状態に・・・・・うかつだった」

 

「あるぇ~ なんでここにアキト様がぁ~? ひっく///」

 

アキトは凪沙からの事情を聞いて、「ヤレヤレ」とため息を出しそうになったが、それは出来なかった。

なぜなら・・・

 

 

「・・・何をコソコソしとるんやお二人さん?」

 

ギロリと突き刺さるような柊姫からの目線がアキトに送られたからだ。

 

 

「いや! なんでもありませんぜ柊さん! そうですよね凪沙さん?!」

 

「あ、あぁ! 暁君の言う通りです。なにもありません、はい!」

 

「ふぅ~~ん・・・そうやの・・・」

 

何とか危機を脱したアキトはすかさず凪沙に短い指示をまばたきのモールス信号で送る。

 

 

『神楽耶ちゃん連れて、脱出。急げ』

 

その信号を受信した凪沙は酔っぱらう神楽耶を背中に部屋から出て行こうとするも、また柊姫に呼び止められる。

 

 

「あら? どこに行くんや凪沙はん?」

 

「え!・・・えと、そのですね・・・・・!」

 

「具合が悪いんですよね凪沙さんッ!?」

 

「へ?」

 

「あら、そうやったの?」

 

「そ・・・そうなんですよ! 実はここ最近、体調が優れなくて・・・」

 

「それは悪いことしたな~。あれ、でも神楽耶ちゃんは―――」

 

「神楽耶ちゃんはアレですよ! 未成年だから、もうそろそろ控えた方が・・・ですよね! 凪沙さんッ?!」

 

「そ、そうです! 皇家の当主が倒れられてはいけませんので、私達はこれにて・・・・・」

 

そこからの凪沙の行動は速かった。柊姫からの返事も聞かず、早々に足早に部屋から出て行った。こうして2度にわたるファインプレーで二人を救出に成功したアキトであったが・・・

 

 

「なんや、体調が悪い言う割りにはえろう早く行ったで・・・そうか! 体調悪いにかこつけて自分の旦那はんに甘えるつもりやな? ならしかたないわな~」

 

「なら、俺もここいらで―――「アキトはん? 酌・・・してくれへん?」―――喜んでぇッ!」

 

これからアキトの長いようで短いようで、実は長い戦いがはじまりを告げたのである。

 

 

「―――ッくっハ~! ゥンまァア―――いッ!」

 

トクトクトクと酒が注がれた漆塗りの大杯をスーツ姿の人外がうわばみのように飲み干す。

 

 

「良い飲みっプリやねアキトはん。さぁ、もっともっと」

 

「いやいや、俺ばっかり飲んでもダメですよ。柊さんもどうぞ」

 

「お、すまへんなぁ~」

 

アキトも柊姫の杯に酒を注ぐとそのまま杯を傾け、平らげていく。

紫の着物に紺の帯留め姿。肌は陶磁器のように透き通り、腰まで伸びた髪は綺麗な黒。眼は紫水晶のように美しい眉目秀麗な顔立ち。

ここまでは10人が見たら11人振り向く程の美人なのだが・・・

 

 

「コク・・・コク・・・おいしぃわ~」

 

特出すべきはその額である。そこには両対照に二本の5cm程の『角』が生えている。

 

 

「ん? なんやアキトはん? そんなにジロジロ見て? 恥ずかしいわぁ~///」

 

「いや、美しさはご健在だなと思いまして」

 

「まぁ! お世辞でもウチ、うれしいわぁ///」

 

フフフと口元を扇子で隠しながら柊姫は上品に赤らめた顔で笑う。

 

 

「そうそう、アキトはん?」

 

「おん? なんでしょうか?」

 

「『瀬戸内組』の豪ちゃんにはおうたの?」

 

「豪ちゃん?・・・・・あぁ、『豪三郎』さんか。もちろん会いましたよ。かなり酔ってましたけど・・・」

 

二人の言う『豪三郎』なる人物は瀬戸内海を縄張りとする仁侠の『人魚』の組長、『瀬戸豪三郎』である。

 

 

「なんや、あの子の娘の『燦』が適齢期になったら、人の子に嫁ぐらしいなぁ?」

 

「・・・なんで知ってるんですか?」

 

「挨拶に来た時にえろう泣かれてなぁ」

 

「『永澄』の事でしょう?」

 

「ほぅ、『永澄』言うんかその子?」

 

二人は酒を酌み交わし、話に花を咲かせて行った。

 

『満潮永澄』。彼は齢14の時に瀬戸内の祖父母の家に行ったおりに海で溺れた。あわやこれまでかという時に人魚族の『瀬戸燦』に救われ、それがキッカケで二人は夫婦の契りを結ぶ事となった。まぁ、ここまでトントン拍子で行く事はなく・・・

 

 

「同じく人魚族の仁侠者の『江戸前組』と全面戦争の一歩手前まで行ったりとかしたからな~」

 

「それをその永澄いう子は防いだんやろ?」

 

「うむぅ・・・どちらかと言えば、燦ちゃんが気概を見せて防いだってところだね」

 

「でも、そんな娘を嫁に貰うんや。余程の気概がないと無理やで?」

 

「まぁね。永澄はそれぐらいに良い男だよ」

 

アキトはニヤリと笑って杯を傾ける。

 

 

「あんさんがそねに嬉しそうに語るなんて・・・・・ホンマに良い男なんやね~。それにウチの知らんところで、そんなオモロイ事になっとったなんて・・・なんか悔しいわぁ」

 

「(柊さんが関わるとメチャクチャになるからな」ボソ

 

「なんか言うた?」

 

「いやいや、なんでもありませんぜ。あら、杯が空になってますな。ささ、どうぞどうぞ」

 

アキトは誤魔化すように柊姫の杯に酒を注ごうとするが、徳利を持つ彼の手を彼女が掴む。

掴んだその手を柊姫は自分の頬に添わせるようにあてる。

 

 

「え・・・あの・・・・・柊さん?」

 

「あんさんの手ぇ・・・ほんのり冷とうて気持ちエエわぁ・・・フフ♪///」

 

少し頬を赤らめ、アキトの手を撫でながらウットリとする。そして、潤んだ瞳で彼を見つめる。

 

 

「なぁ・・・アキトはん?」

 

「何かな柊さん?」

 

「今日はあの子は来とらんの? あの赤い毛の外人さん」

 

「え・・・あぁ、シェルスか。シェルスならウィッチー卿の護衛で欧州に行ってるけど・・・」

 

「へ~・・・ほうなんか・・・・・」

 

その言葉を聞いて、柊姫はニヤリと企むような笑みを浮かべるとアキトに迫った。

 

 

「なぁ・・・アキトはん?」

 

「は、はい?」

 

艶やかな瞳でアキトの眼を見つめ、その肩に手を回した。その時・・・

 

 

「失礼する。お代わりを持って来た」

 

藤堂が襖を開け、徳利を持って来た。

 

 

「・・・むぅ・・・・・」

 

柊姫は頬を膨らませて藤堂を睨むとアキトから離れる。

そんな事とは露知れず、アキトは藤堂にまばたきのモールス信号を送る。

 

 

『藤堂さん、二人は?』

 

『大丈夫だ。神楽耶さまには酔い覚ましに水を飲ませて、凪沙に見てもらっている』

 

良かったとアキトは胸を撫で下ろす。

 

 

「何をしてるん、二人して? またウチに内緒の暗号かいな?」

 

「いえ・・・それでは私はこれで・・・・・(暁、気を付けろよ」

 

「おん?」

 

藤堂は呟くと早々に部屋から出て行く。柊姫は持って来てくれた徳利を傾け、杯に酒を注ぐと一気にあおぐ。

 

 

「っプハ~・・・もう・・・藤堂はんは無粋やね~・・・折角ウチとアキトはんがエエ感じやったのに・・・・・まぁ、エエわ」

 

「え、ちょっ、柊さん・・・ッ!?」

 

ブツブツと柊姫は呟くと今度はアキトの体にしなだれかかり、体を預ける。

 

 

「ん~? アキトはんの心の臓はよお響くんやね~」

 

「そりゃあ、胸に頭を乗せてたらよく聞こえるでしょうよ」

 

「フフ♪ それもそうやね・・・」

 

柊姫はアキトのドクリドクリとなる音に耳を傾ける。

 

 

「『吸血鬼』って言うんわ、心の臓府が鳴らんもんかと思うとったんやけど・・・あんさんの音は心地エエわぁ」

 

「う~ん。俺はどうやら『他』とは違うそうですからね」

 

「へ~・・・ほうなんか・・・・・なぁ、アキトはん?」

 

「おん?」

 

「あんさん『爵位』を持っとるらしいなぁ?」

 

「・・・なんでそれを?」

 

神妙にアキトは柊姫の話に耳を傾ける。

 

 

「いつやったか・・・あんさん、欧州でアホやった輩を叩いて、『貴族』さん達からもろうたんやろ?」

 

「その情報をどこで仕入れたかは聞かないですけど・・・確かに『爵位』は持ってますよ」

 

「因みに何をや?」

 

「『伯爵』」

 

「へ~! 上から数えて2番目位の爵位をもろうたんやねぇ」

 

柊姫はアキトの顔を驚いたように見る。

 

 

「俺はいらないって言ったんだけど・・・ドンが貰っとけって・・・」

 

「フフフ♪ あのヤギさんらしいなぁ。それほどに向こうさんもアキトはんが欲しいんや」

 

「おん? どうゆう事?」

 

柊姫は胡座をかいたアキトの上に座り、体勢を調える。

 

 

「ええか? アキトはんは類を希にみるほどの希少な種類や」

 

「らしいですね」

 

「『らしい』やなくてホンマや。頭を潰されても、体をズタズタにされてもすぐに再生するだけやのうて、銀の武器もニンニクも・・・ましてや太陽の光さえも平気なんて、そんな吸血鬼なんて他におらんわ」

 

「でも、シェルスだって俺と同じですよ」

 

「それはあの子もあんさんと同じく希少な存在やから(まったく、そんな存在を二つも手なづけてるあのヤギさんはホンマに恐ろしいわぁ)」

 

柊姫はウンウンと頷く。

 

 

「でもエエ事きいたわぁ。なぁ、アキトはん?」

 

「何です?」

 

「神楽耶を嫁にもらわん?」

 

「ぶフッ!?」

 

あまりに唐突な言葉に飲んでいた酒を吹き、むせかえって咳を何度もする。

 

 

「も~汚いわぁ。そんなに驚かなくてもエエんやないの?」

 

「ゲホ、ゴホッ! 何を言い出すかと思えば、ゲホゲホ!」

 

「あ~はいはい、落ち着いて」

 

柊姫はアキトの背中をさすり、彼が落ち着くまで待つ。

 

 

「でも、エエ話やと思うでぇ? 神楽耶と婚姻を結べば、ヤギさん所は皇と京都の者達と友好的になれるで? それにやや子でも出来れば、皇家の将来は安泰や」

 

「いや、でも・・・って、何言ってるんですか?!」

 

「神楽耶の事なら心配あらへん。皇家の跡目争いの時に色々とあんさんはあの子の為に奮闘したんやから、好意的に思ってるはずや」

 

「思ってたとしてもそれは親戚の気前のいい兄ちゃんみたいにしか思ってないですって」

 

アキトはそう言って酒を飲み干す。

 

 

「・・・なら」

 

「おん?」

 

「・・・ウチならどうや?」

 

「はぁ―――って、うわッ!?」

 

柊姫はそう言うとアキトを押し倒す。アキトは何が起きたかわからずに混乱する。

 

 

「ちょっ柊さん、もしかして酔ってる?」

 

「・・・酔って無いことも無いことも無いで」

 

「どっちッ!?」

 

混乱するアキトなどお構いなしに胸に顔を埋める。

 

 

「皇家の跡目争いで奔走するあんさんに初めてあったのもこんな夜やったなぁ」

 

「・・・そうですね。あの時は神楽耶ちゃんの支持者を集めるのに必死で、こんな風にゆっくり酒が飲めるなんて思いもしなかったな」

 

「あの時のあんさんはホンマにカッコ良かったわぁ。丹念に磨かれて、でも血糊がついた刀のようで」

 

「・・・なんですかそれ?」

 

「エエんや、気にせんといて。思えばあの時からアキトはんに惚れとったんかもな・・・この歳で久々の『恋』ってやつやなぁ」

 

「・・・それは素直に嬉しいな」

 

「ホンマに?!」

 

柊姫は体を起こし、水晶のような綺麗な瞳でアキトを見つめる。

 

 

「ならアキトはん、ウチと」

 

「でも・・・それは出来ません」

 

と、アキトは体勢を起こす。柊姫は彼の後ろに手を回す。

 

 

「なんで? ウチの事はキライ?」

 

「そんな事はありませんよ。柊さんには皇家の騒動から色々とファミリーの事でも世話になりました。良い人だとも思っています。でも、それ以上に」

 

「『あの娘』が好きなんやね?」

 

柊姫はどこか寂しそうに確認をとると彼はコクリと首を縦にふる。

 

 

「えぇ・・・俺はどうやら心底、あの吸血鬼に・・・シェルスに惚れていますよ」

 

アキトのその言葉には確かな『思い』と『重み』があった。それを聞くと柊姫はまたアキトの胸に顔を埋める。

 

 

「・・・あんさんは罪な男やねぇ。それで今まで何人を泣かせて来たんや?」

 

「さぁ・・・・・どうなんでしょうねェ?」

 

「ホンマに・・・・・骨の髄までウチのもんにしたいわぁ」

 

こうして二人はそのまま寄り添って酒を飲んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――てな事があった」

 

「「「・・・え?」」」

 

「・・・あろ?」

 

「・・・・・は?」

 

カチャ―――ンッ・・・・・

 

後日、京都から帰って来たアキトはお土産に貰った京野菜を食べながら土産話をした。

晩飯時の食卓は凍りつく。その時、ガブリエラが箸をそっとちゃぶ台に置くと懐から銃を引き抜き、躊躇いなく引き金を引いた。

 

ガン、ガン、ガン! と銃声が響く。銃口から発射された3発の弾丸は一直線にアキトの頭をぶち抜いた。

 

 

「ゲボラッ!?」

 

アキトの頭はザクロのように弾ける。しかし、すぐさま傷は修復され、再生する。

 

 

「な、何をするだ―――ァッ!?」

 

「それはこっちの台詞だ馬鹿野郎! お前は馬鹿なのか? そうなんだな? そうだろ馬鹿野郎!」

 

ガブリエラはなおも撃鉄を起こし、マガジンが空になるまで撃ちまくる。撃たれた事でアキトの頭は一時、ミンチになるがすぐに再生する。

 

 

「そんなバカバカ撃たないでくれよ! 部屋が汚れるでしょうがぁあッ!」

 

「うるさい馬鹿!」

 

「今回はガブリエラは悪くはないですね」

 

「えッ!?」

 

「姐さん、予備のマガジンや。もっと撃ってやって」

 

「ちょっ、ちょっと二人とも?!」

 

「アキト・・・反省するがよかろー」

 

「ドンまでぇッ!?」

 

この瞬間、アキトの周りには味方はいなかった。ガブリエラはノアからマガジンを受けとると弾倉にはめこみ、スライドを引く。

 

 

「ちょっと待て待て待て待て待て! 落ち着こうよガブさん!」

 

「うるさい! 帰って来てからの晩飯時の食卓で何を自分の浮気話をしてるお前には鉛玉を食らっとけ!」

 

「今の話のどこが浮気話なの~?!」

 

「全部じゃあボケェッ!」

 

チャキリとガブリエラは照準をアキトに合わせる。

 

 

「・・・待ってガブリエラ」

 

「!・・・シェルス・・・」

 

すると、シェルスがガブリエラを制止させるとシェルスはそのままアキトの胸ぐらを掴んだ。

 

 

「えと・・・シェルス・・・・・さん?」

 

「ねぇ・・・アキト?」

 

「はい!」

 

┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"┣"・・・・・

 

シェルスは『スゴ味』を出しながらアキトに確認する。

 

 

「その・・・柊姫とは何もなかったのよね?」

 

「何もないよ! 朝まで一緒に酒飲んでただけだから!」

 

「・・・本当?」

 

「本当!」

 

「本当に本当?」

 

「本当に本当!」

 

「本当に本当に本当?」

 

「本当に本当に本当!」

 

必死にアキトはシェルスに弁論する。二人の間には吸血鬼ならではの空気が漂う。ゴクリと周りは固唾を飲む。

 

 

「・・・まぁ、いいわ」

 

「シェルス・・・!」

 

「『飲めば』わかるし」

 

「へ?―――って、ギャアァアッ!?」

 

シェルスはアキトの頸動脈に鋭く尖った牙をガブリと突き刺し、彼の血をゴクリと飲んだ。

 

血を飲む事でアキトの記憶がダイレクトに頭に入ってくる。そこからは様々な『ノロケ』があった。

 

 

「ッ!?///」

 

あれからアキトは柊姫と酒を酌み交わす中でシェルスとのノロケ話を長々と朝まで話していたのだ。

そこからはウンザリしながらも困ったように笑う柊姫の顔が映っていた。

 

 

「あ・・・あぁ・・・・・///」

 

「・・・気はすんだかい? フロイライン?」

 

恥ずかしそうに口を離すシェルスにアキトはヤレヤレと言う。

 

 

「シェルス姉、何が見えたんや?」

 

「やっぱりか? やっぱりなのか?!」

 

「・・・・・///」

 

ノアとガブリエラの声にシェルスは激しく首を横に振る。鼻からは血を吸った影響からか鼻血が出る。

 

 

「さて・・・・・」

 

「「「「「!」」」」」

 

「俺の免罪も晴れた事ですしぃ・・・どうしてくれようかコノ野郎?!」

 

┣"┣"┣"と今度はアキトが『スゴ味』を出してきた。

 

 

「わ、ワシはアキトがそんな事せんと信じていたであろ~!」

 

「あッ!? ドン、ズリィッ!」

 

ドンが抜け駆けしようとするがアキトはギヒリと黒目で笑い、判決をくだす。

 

 

 

 

 

 

 

「みんな・・・・・お土産の生八橋はお預けだ馬鹿野郎!」

 

「「「「え―――ッ!?」」」」

 

なんとも平和的な判決である。

 

 

「そんなァ!」

 

「楽しみにしとったのに~!」

 

「やかましい!」

 

不満が出るがアキトは一掃する。

 

 

「ふぅ・・・」

 

シェルスはホッと息をつくが・・・

 

 

「おん? 何をホッとしてるのかなシェルスさん?」

 

「・・・へ?」

 

この男が獲物を逃すはずがなかった。

 

 

「さっき、俺の血を飲んだよねぇ?」

 

「そ・・・それは確認する為に!」

 

「でも、何もなかったよね? そのお詫びが欲しいなぁ~?」

 

「え、あの、その・・・!///」

 

アキトはシェルスの頭と腰に手を添えて迫った。シェルスは申し訳なさそうにするが顔は赤く染まっている。

 

 

「いやね・・・さっきガブさんにバカバカ撃たれて血が足りないんだけど?」

 

「えッ!? それ、知らな――「問答無用」ガブリッ――あァアッ!?///」

 

アキトは首にかぶりつき、シェルスの血を吸った。シェルスは身をよじらせ、背中を強く掴む。だが、段々と力が抜けていき、体を任せた。

 

 

「ックは~! こいつは最高だ」

 

「あ・・・あぁ・・・・・///」

 

「「わぁ・・・」」

 

「あろ・・・」

 

アキトは力なくしなだれるシェルスを持ち上げると自分の部屋まで運んでいった。

居間に残されたドン達は揃って合掌をした。

 

 

 

 

 

また後日、お土産はファミリー皆で仲良く食べたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

チャンチャン♪

 

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