メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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BEAGLEが生み出した者…

 本物のテリコと合流して得た情報は大きかった。

 テリコはラ・クラウンが“フレミングがメタルギアを起動させる前にFARに向かう”事を口にしていたらしく、さらにFAR

に向かうには北に吊り橋があるという情報を持っていたのだ。

 これで三つ巴…否、ゲリー(フレミング)ラ・クラウン(BEAGLE側)、ハイジャック犯に要求された自分達にレオーネ隊とメタルギアを巡った四つ巴(・・・)の争奪戦は“フレミングの集会場”であるFAR(最奥部)へ持ち込まれる事に…。

 

 フレミングもクラウンは勿論だがレオーネ隊も向かっている筈。

 となればこれ以上遅れを取る訳にはいかない。

 状況説明をロジャーより受けたテリコの案内で吊り橋へと辿り着いた一行であったが、無人航空機(U.A.V.)サイファーが何機も警戒にあたっている為に手持ちの銃火器では狙撃は難しい。

 遮蔽物があれば別であるが橋の上ではそんな場所などある筈もなく、狙撃銃があると思われる武器庫に戻る事になった。

 

 武器庫は厳戒態勢が取られていたのだけど、難なく保管されていたセミオートマチック狙撃銃“PSG-1”。しかも弾薬も確保する事が出来た。

 確かに厳戒態勢は敷かれていたが、侵入者に警戒するよりも身内を疑って(・・・・・・)それどころではなくなっていた。

 侵入した直後に武器庫内で銃撃戦が発生。

 勿論スネーク達がバレた訳でも発砲した訳でもなく、レオーネ隊員同士での撃ち合いである。

 

 ロジャー曰く、テリコ達HRT潜入部隊やスネークとバット以外に部隊の派遣はされていないようだ。

 そうなると内輪揉めという事に成るが、こちらとしては敵兵を捕縛して聞き出す時間も勿体ない。

 なんにしても敵が混乱しているのを好機と見て、今の内だというスネークの意見を聞いて情報収集よりも混乱に乗じて狙撃銃を手にする事が出来た。

 

 「やっぱりライフルがしっくりくるわね」

 「なら、そっちが使うか?」

 

 PSG-1の握り心地を確かめていたテリコの一言に、バットがどうする?と問いかける。

 少しばかり迷ったテリコであるも首を横に振って断った。

 

 「さすがに本職が居るのに奪う訳にはいかないでしょ。それも英雄(・・)のパートナーの」

 「ハードルが高いんだが…。なぁ、英雄(・・)さん」

 「お前ら…いや、良い……」

 

 ため息交じりに抗議しようとするも言ったところで無駄なので言葉を呑み込む。

 ロジャーより状況説明を受けたテリコは現状を理解すると同時に、目の前に居たスネークがロジャーが話してくれた憧れの英雄である事に驚き喜んでいた。

 ただ憧れの人物とであった…だけならそこまででもなかったろう。

 しかし伝説の兵士であるソリッド・スネーク(憧れの英雄)と戦場で組むというのは心強いものがある。

 

 だが本人は“憧れ”や“英雄”と呼ばれるのは居心地が悪く、テリコは良いとしてもバットは悪戯半分に口にしているので質が悪い。

 内心覚えていろよと毒づく。

 丁度その時、無線機から音が聞こえ始めた。

 誰だと周波数を見るも知らないもので、鮮明になりつつあるも雑音塗れな音声に不気味さが漂う。

 今でさえ疑心暗鬼もあって、これ以上爆弾(問題)は抱え込みたくはないものだ。

 

 「誰だお前は?」

 『…相棒(バディ)と名乗っておこう。時間がないので端的に言おう。レオーネと組めスネーク』

 「なに?」

 

 変声機を使っているのか男性か女性かも判断がつかない。

 一瞬これも幻覚の類かと怪しむも、音を漏らすとバットもテリコも聞こえているのが様子から分かる。

 

 「急に敵と組めと言われても“はい、そうですか”といくものか。それも名前すら名乗らぬ奴のいう事なんか」

 『時間がないと言っただろう。レオーネの部隊が全滅するぞ』

 「願ったり叶ったりじゃない」

 『解ってないな。彼らは(・・・)“招かれざる客”だ』

 「つまり敵の敵は味方…とは言わないが利用しろという事か?」

 『分かるのが居るじゃないか。君達三人でACUA(アキュア)兵を相手にする事に成るぞ』

 「「「ACUA兵?」」」

 『個別の意思や感情を持たず、指示に忠実で恐ろしい程の統率力を誇る。僅かでも手駒が欲しいならレオーネと組む事だ』

 

 そう告げると無線は切れた。

 変声機を使っていたが雰囲気からフレミングではない。

 テリコが言うには幼さがあったという。

 なんにしてもこちらで探るのは限度がある。

 そこでアリスの能力に頼るしかない訳だ。

 

 「アリスは何か分かったか?」

 『いや、アリスは席を外していてな』

 

 そうかと呟いているとバットが険しい顔をしていた。

 やけに考え込む仕草に気になり、声を掛けようとしたスネークより先にテリコが問いかける。

 

 「何か気になる事でも?」

 「…今さっきの相手…彼らは(・・・)って言ってたよな?」

 「確かに言ったな。それが?」

 「レオーネが招かれざる客と称すのはこの場合フレミングやBEAGLEか俺ら。だけどBEAGLEならば招かれざる客はレオーネだけじゃない。俺達も(・・・)招かれざる客だ。彼ら()ではなく彼ら()の筈だ」

 「えっと、それってもしかして…」

 「内通者か…」

 「それもどっちかは不明な…」

 

 察した三人の間に沈黙が漂う。

 この場合、スネーク達が招かれざる客とカウントしないとなれば、あの無線の主はこちら側の面子の中にいるだろう。

 問題としてはそう簡単に決めつけれないという点だ。

 確かにBEAGLEにとっては邪魔ものでも、フレミング側が自分達の目的の為に自由に動けるように招いたのだとしたら…。

 いや、潜入する事になったきっかけを考えたのならハイジャック犯の方が可能性が高いか。

 飛躍し過ぎな憶測かも知れないが、今回は良く解からない事が多すぎる。

 もしかしたらと考えが止まらない。

 他にもレオーネの罠…も考えられない事もないが、奴にしては回りくど過ぎる気もする。

 

 最悪なケースとしてはハイジャック犯、またはフレミング側とこちらの誰かが繋がっている可能性があるという事。

 そう考えると真っ先に疑わしいのはゴーストだ。

 

 「ゴーストは?奴はそこに居るのか?」

 『奴ならアリスが出て行った少し後に出て行ったな』

 「ロジャー、ゴーストを見張ってくれ。何処のかは分からんがスパイの可能性がある」

 『―――ッ!?…解った。こちらでも調べておく』

 「頼む」

 

 疑わしいゴーストの一件はロジャーに任せ、スネーク達は吊り橋へと急ぐ。

 

 

 

 

 一方でアリスはハイジャックされている326便の方へと無線していた。

 ミネットは機内に仕掛けられた爆弾を必死に探していた。

 ド素人の少女にテロリストが仕掛けた爆弾を見つけて対処しろというのも無理な話。

 そのためにアリスが居る。

 気を張りながら見守るアリスは僅かばかり感情で声色が昂った。

 

 「視えた!」

 『何処に…何処にあるの?』

 「落ち着いて。爆弾は貨物室の壁…正確には断熱壁の中に埋め込まれてる」

 『壁の中!?』

 

 さすがに壁の中に潜まされた物を探すのは困難を通り過ぎて不可能だ。

 アリスは今居るミネットの位置から爆弾が隠されている方へと誘導する。

 爆弾と聞いて恐る恐る近づいて行き、言っていたように壁に埋め込まれていた爆弾を発見した。

 箱型の部品が連なり、コードがそれらを繋いで点滅する灯りが薄暗い貨物室がぼんやりと浮かぶ。

 

 「十四本のコードの束が露出しているのが見える?」

 『待って!あるにはあったのだけど、どれがどのコードなのか解らないわ…』

 「どういう事?」

 

 彼女は単なる状況で子供。

 爆弾の構造は解らないだろうからどれがどの役割を担うものか判断がつかないのは当然。

 けれどなにか違う感じがして聞き返す。

 

 『飛行機の機器から伸びているコードに紛れているの』

 「そんな…」

 『まだ時間はある?』

 「正直に言うとかなり厳しい。さすがに駄目かも…」

 

 絶望的…。

 コードを読み解いて解除指示を出す事は出来るが、飛行機の配線コードと紛れているのならより危険性が増した。

 切断する配線を間違えれば爆弾が爆発するか、飛行機に致命的な被害が出る可能性が高い。

 それも操縦士が居ない状態で…。

 ハイジャック犯が要求したピュタゴラスを入手していれば交渉の余地もあったかも知れないが、時刻がかなり迫っている以上はそれもまた難しいだろう。

 

 『駄目よアリス。貴方が諦めてしまったら本当にお終いなのよ』

 

 声色から震えているのが解る。

 まだ彼女は諦めていない。

 最初は子供特有の様子に苛立ちが募ったが、まさかそうも(・・・)言われるとは思わなかった。

 

 『私、まだ頑張れるんだから』 

 「………ありがとう」

 『え?』

 「ううん、何でもない――コードの識別から始めましょうか」

 

 アリスはミネットからの稚拙な説明を受けながら読み解いていく。

 頭を使う作業から甘いものか珈琲が欲しい所であるが、生憎とゴーストはロジャーと一緒に居るのだろう(・・・・・・・・・)。 

 室内を一瞥してゴーストの姿がない事にため息を零し、アリスは爆弾解体の為の作業を続ける。

 

 

 

 

 テリコは驚きの余り、遮蔽物もない場所で固まってしまっていた。

 もしも近くに敵兵が居たのなら見つかるばかりか、銃弾を浴びせられていたかも知れない。

 幸いにも周囲には敵兵は居らず、遠くに見える無人航空機(U.A.V.)サイファーは崖底へと破片となって降り注ぐ。

 ロジャーにより語られたスネークの英雄譚(・・・)にはバットの話も含まれていた。

 正確にはスネークに協力した“幼い狙撃兵”として。

 

 「一応聞いてはいたけど…これほどなんて…」

 

 PSG-1でバットは見事狙撃をして見せた。

 自分とてライフルの扱いは慣れている。

 さすがに自分が世界一なんて己惚れてもいないし、部隊の仲間には狙撃の上手い奴は居た。

 だけど自分や上手いと思っていた奴と比べるもおこがましい程に格が違った。

 

 わざわざスコープを外して、暗がりの中から射程範囲ギリギリで次々と素早く撃ち抜いたのだ。

 この距離では装甲をそのまま貫く事は出来ず、繋ぎ目や抜けやすい脆い部位を狙って…。

 バットの狙撃技術に驚くテリコはスネークへと目をやると彼も彼で驚いている様子。

 腕が良いのは知っていたスネークだがあれからまた腕を上げているし、加えて今まではこういう芸当をしなかったのもあって驚いているのである。

 対してバットは決して驕る事も誇る事もしない。

 淡々と撃って、淡々と否定する。

 

 「これぐらいで驚くな。俺の師匠ならもっと早いし上手い」

 「かなりの数のサイファーを一掃しといてこれぐらいって…」

 「…これで英雄のパートナーとしての仕事は出来たかな?」

 「いい加減にしてくれ。それより来たぞ」

 

 橋の上を片付けた事で気にせずに堂々と通れるようになった。

 そこを渡り始めたのはテリコでもスネークでもバットでもなく、対岸からレオーネが部下数名を率いて渡って来たのだ。

 敵意を抱くどころか表情や雰囲気からして疲弊しているようだ。

 

 「部隊は半ば壊滅状態で戦闘可能な者は僅か……無様を嗤うが良い…」

 「嗤えるかよ。誰にやられた?」

 「ACUA兵…ACUAを投与された兵士にだ!」

 

 レオーネは思い出して忌々しそうに語る。

 この研究所では主に二つの研究をBEAGLEより指示されていた。

 一つがある程度投与すれば自我を崩壊させ、ネオテニー(・・・・・)の命令にのみ従う新薬“ACUA”。

 もう一つはACUAを投与した者を操るネオテニーの創出(・・)

 それもネオテニーというのはシステムではなく人物で、世界各国から攫った大小問わずにサイ能力を秘めた子供達をあらゆる手段を用いて選別(・・・・・・・・・・・・)されたという。

 フレミングが言っていた“孤独の儀式”はその最終戦別であり、内容は残った子供達住人での殺し合いだという…。

 

 絶句するテリコとバット。

 スネークは感情的になるのを避け、情報として処理して問いかける。

 

 「そのネオテニーがフレミングが言っていた“No.16”…か」

 「あぁ、だが“No.16”は三年前にここを脱走している。今まさにハイジャックしてBEAGLEに復讐を果たさんとしている」

 「…そうなるとピュタゴラス…メタルギアは」

 「奴の目指す物ではないだろう。ここの研究員から聞き出した事から目的は復讐。それもBEAGLEにフレミング、それとハンスに対するな」

 

 フレミングが口にして単語が何なのかの謎は解けたが、新たな謎が追加され解けない謎も残っている。

 復讐をするのであれば何故ACUA兵を動かした。

 レオーネに好きにさせて居た方が復讐になるだろうに…。

 そしてその復讐対象であるハンスの情報はレオーネも職員から聞き出せなかったとの事。

 

 テリコは情報に耳を傾けながら仲間の仇であるレオーネに警戒は解かない。

 今後を考えると手を組むのが最良かも知れないが、無理であるならば敵として排除しなければならない。

 バットも同様の考えなのか様子見と言った雰囲気であるも銃をいつでも向けれるように待機している。

 

 ある程度情報を語ったレオーネは渋い表情をし、少しばかり沈黙した後にレオーネは提案した。

 

 「スネーク。俺と手を組まないか?」

 

 まさか向こうから申し出されるとは思わなかっただけに驚いてしまう。

 相手に言わせるようにして良い条件を取り付ける交渉もあるだろうに、それをしないほどに状況はひっ迫しているという事だろう。

 同時に時間がないこちらとて同じことであるが…。

 

 「お前たちはピュタゴラスが欲しいのだろう。出来れば俺も欲しかったが最悪データでも入手出来れば良い」

 「メタルギアを製造する気か?」

 「違う。俺達はBEAGLEが潰せれればそれでいいんだ」

 「メリットは?」

 「お前たちはFARに向かっているのだろう。お前達だけでは絶対にFARには潜入出来ん。だが、小勢となったが俺達と俺が持つ情報があれば可能だ」

  

 どちらも目的の為にはFARに行かねばならず、情報があっても自分達だけでは辿り付けぬと分かって提案するレオーネ。

 同行するのが一番と解っていても早々二つ返事をする訳にも行かない。

 

 「その情報は大丈夫なのか?」

 「問題ない。俺達で得た情報に加えて協力者(・・・)の情報と合わせて信頼性は高いと確信している」

 「協力者?まさか相棒(バディ)とか言う奴か?」

 「バディ?いや、俺達に協力している奴は“モルフォ蝶(・・・・・)”と名乗っていたが」

 「また蝶…か」

 

 アゲハ蝶と口にしたラ・クラウンが過る。

 多少ながら不安はあるが互いの利害の一致から協力する事が決まり、獅子(レオーネ)を共にFARに向かうのである。

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