メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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ハンスの陰…

 ACUA兵には己の意志はなく、命令に忠実である。

 死への恐怖や恐れを抱かず、躊躇いがなく死地へと跳び込み、自身の命を勘定に入れない。

 恐ろしくもあれど人形(・・)ではスネークもバットも倒す事は不可能だ。

 数の差がある上に弾薬にも限りがあるスネーク達に対して、逃げ場のない状況で遮蔽物に身を隠して持久戦に持ち込めれば勝てた筈だった…。

 敵対者の排除を命令されていたACUA兵はただ実行すべく、仲間や自身が撃たれようとただただ突っ込んで来た。

 暗がりでもバットによって方向が丸解りで来ただけ突っ込んで来るACUA兵を殲滅するのに然程時間は掛からなかった。

 広い上に狙撃兵(バット)が居た事も大きい。

 

 火力発電所を抜けてアリスの透視もあってだいたいの位置を把握し、隠された下水への入り口をバット(・・・)探して(に探させて)敷石を退かしてみると、地下へと繋がる穴と降りる為の梯子が姿を現した。

 隠されていた事もあって罠は無いと思いたいが警戒するに越した事はない。

 と言う事で罠にも鼻が利くバットが先行して降りる事に。

 ため息交じりに降りていく様に働かせっぱなしだと理解しているのですまんとだけ小さく謝っておく。

 降りていくバットを見送っていると声が聞こえた。

 

 「…嘆かわしい、いつから人類は淘汰を失った?」

 

 ハンスの声がやけに響く。

 周囲には待機しているテリコしか居らず、ハンスの姿どころか気配すら見当たらない。

 しかし声が確実に聞こえているのだ。

 

 「何事も進化の過程には淘汰(・・)が存在する。しかし人間は法や道徳などルールを設けて安全を設け、弱者を護るように死なぬように手を尽くしている。淘汰の無い人類という“種”にはこれ以上進化は無い。待っているのは退化だけだ」 

 

 頭痛…と言うよりはぼんやりと意識が掠れる。

 ハンスの言葉に吞まれるように混濁してきた…。

 

 「私は淘汰を与える。その為のメタルギアなのだ。No.16の好きにはさせるものか。あれは私の宿願なのだから…」

 「すねー……ク、スネーク!」

 

 テリコの声で我に返ったスネークはどうした?と視線を向けると、バットが下に到着したってと伝えられる。

 そうか、と自分も降りようとするも今度は別の声が聞こえる。

 たださっきと違うのは居る筈のないモノの声ではなく、無線から届いていたという事。

 

 『これ以上進むなスネーク』

 「お前は…」

 『相棒(バディ)だ。これは警告だ。これ以上進むんじゃないスネーク。貴様が核心に触れたら貴様の奥底に眠るハンスが目覚める。スネークとしてのすべてが覆るぞ』

 「スネーク?どうしたの?」

 「前に連絡してきた相棒(バディ)とか言う奴からなんだが…」

 

 忠告しているようなのだが、何処か声色がおかしい。

 おかしいというか苦しそうというか…。

 疑念を抱いていると別の声が入り込む。

 

 『今ならまだ間に合う。引き返せスネーク―――ッ!?』

 『苦しそうね。随分と機内で吸い込んじゃったみたいだけど』

 

 くすくすと笑う声が入り、バディは黙り込んだ。

 状況を知る為にも神経を研ぎ澄ませて音を拾おうとする。

 が、バディの様子は解らず、別の声が言葉をこちらに向けた。

 

 『スネーク。貴方は何が何でも進まなければならない。何故ならメタルギアは核を放ち、どこかの国が消え去るのだから。数十機のジャンボ機も落ち、多くの人の死によって地上に地獄が落ちる』

 「貴様がNo.16か…」

 『進むのよスネーク』

 『…貴様、これで勝ったつもりか?』

 『貴方は恐れて幾つもの偽名を使った。けど駄目よ。貴方とスネークは違う。所詮“名を()る者”なのよ』

 『これだけは言っておく。貴様では私に辿り着けない…』

 『でも、引き摺りだした』

 「おい、バディ!お前はいったい……切れたか」

 

 一体どういう事なんだと謎は増えるも足を止めてばかりもいられない。

 先に降りたバットと合流する為にも梯子を下りて行く。

 

 

 

 『聞こえるかテリコ』

 

 梯子を下りて下水道を進んでいたテリコにロジャーより無線が入る。

 最後尾を担当していただけに先頭を進むバットに間を開けて進むスネークが見えるも、二人共反応した様子が無い事から小声で返事を返す。

 

 「はい」

 『この無線は君だけに聞こえるようにしてある』

 「…はい」

 

 二人には聞かせれない内容と言う事だろうか。

 より声量を抑えて返事をする。

 もしかしたら耳の良いバット辺りは聞こえているかも知れない。

 ロジャーの話す内容如何では返答に気を使う必要がある。

 そう考えながら続きを待つ。

 

 『君が知っている通り、かつて私は南ベトナムで拭いきれない過ちを犯した…』

 

 ――覚えている。

 言葉で言い表せない過酷な戦場。

 たった数メートルを数時間かけなければ進めず、その緊張は疲労へと繋がる。

 ロジャーはその部隊の指揮官として出来得る限り務めた。

 しかし緊張や疲労は極限に達しており、ロジャーとてそれは同様。

 そんな中で部隊内に内偵者が居るという情報が上がった。

 

 状態や状況を鑑みてロジャーは内偵者を断定。

 極限状態にいた部隊の面々は疑念に確証を得ずに膨らまし、疑惑を向けられた兵士に溜まりに溜まった感情を発露するように襲い掛かったという。

 結局、断定した兵士が内偵者だったのかは解らず仕舞い。

 彼は戦友から裏切者として罵られ、追って来た仲間達を撃ち殺し逃亡した…。

 

 ロジャーは未だに悩んでいる。

 本当に彼がそうであったのか?

 否定しなかったのはそうだったから?それとも別の…。

 

 話をしてくれた時のロジャーの後悔…否、懺悔した表情を忘れる事は出来ない。

 今も声色から相当に苦しんでいる事は変わらないと見える。

 

 『私はスネークを信じたい。だが私は間違えていないか?あの時と同じく疑うべきなのか?』

 

 ハンスの一件もあって疑心暗鬼は続いている。

 思い悩むロジャーに対してテリコは肯定も否定もしない。

 いや、どちらも必要でなない。

 

 「大佐。私がどう言おうと大佐の心は決まっているのでしょう?」

 『…そうだ…そうだな。ありがとうテリコ』

 

 どこか安心したようにロジャーは無線を切った。

 私もスネークを信じて進むだけだ。

 そう思った矢先、今度はアリスから無線が入る。

 

 『聞こえるテリコ!?』

 「なに?どうし――」

 『シッ!静かにして。黙って聞いて……この無線はスネーク達には聞こえてないわ』

 

 焦りや戸惑いなどの感情が声色に乗っていた事から何かあったのを察してテリコは黙る。

 平静を装い二人の後に続きながらアリスの言葉に耳を傾ける。

 

 『ロジャーがスネークの仲間に捕えられたわ』

 「―――ッ!?」

 『私は寸前で予知して何とか逃げたけど…追手がすぐそこまで…』

 

 そんな馬鹿なと否定したい。

 けれどアリスの様子からそうではなさそうだ。

 

 『スネークはハンス・ディヴィスよ。いえ、ハンスがスネークと言うべきかしら。彼は一つの肉体に二つの人格を持っている。

  彼はピュタゴラスが第三者に渡るのを阻止する為にスネークとして入った(・・・)。ピュタゴラスの奪還にハンスの記録の抹消…それこそスネークの…ハンスの目的。

  ロジャーも信じたがっていても疑ってはいたわ。そして私も…だから狙われた―――彼はこの期を好機と見ているわ。もう止められるのは貴方しかいない。彼が行動に出る前に彼を―――ッ、止めて…撃たないで…』

 

 最後に銃声が響き渡り、無線は切れた。

 信じられない事の連続に心が揺れ動く。

 様子がおかしいのに気付いてスネークとバットがこちらを気に掛けるが、テリコは「大丈夫」と言って先を急かす。

 スネークが敵と言うのならバットはどうなのか?

 解らない、分からない、判らない…。

 

 万が一の事を考えれば考え無しに行動する事は出来ない。

 止めるとしても二人が油断している時でないと…。

 何を信じれば良いのか解らずテリコは二人の背を見つめる…。

 

 

 

 下水道を抜けて機器が並べられている一室に出た。

 もう少しかと当たりを付けた所でスネークとバットはテリコの姿がない事に気付いた。

 急ぐばかり早く進み過ぎたか。

 道中顔色も悪そうだったこともあって引き返そうとした瞬間、テリコの声はダブって聞こえた。

 

 「「スネーク!」」

 

 エコーがかかった様な声に振り返るとそこには服装や装備品に至るまでそっくりのテリコが二人立っていた。

 眼を見開きやられた、ときつく噛み締める。

 クラウンの存在は知っていたのに失念していた。

 ほんの僅かに視界を外した瞬間に紛れられるとは…。

 テリコとテリコは怒りの色を纏いながらスネークに訴えかける。

 

 「こいつがクラウンよ!」

 「違う、アイツがクラウンよ!」

 「騙されないで!私がテリコなの!」

 「それこそ嘘よ!スネーク、私が本物!」

 「嘘ばかり言って!貴方なら見分けれる筈。クラウンは姿形を真似ているだけ!」

 「眼を見れば解かるわ。私の心までは真似する事は出来ない」

 

 互いが互いを偽物と罵り、どちらもが私こそが本物だと訴えかける。

 責め立てられるように騒がれながら、見定めようとするも二方向から騒がれて集中力は欠けて焦りが余計に判断を惑わす。

 終いにはテリコ同士が罵り合い“私は一人で十分”と撃ち合いを始めようとしていた。

 かちゃりと音がして三つ(・・)の銃口が向く。

 

 「嘘…バット!?」

 「分かってくれたのね!」

 

 三つ目の銃口…バットのベレッタは片方のテリコへ向けられていた。

 向けられた側は必死に説得しようともバットの表情はピクリと靡かない。

 寧ろその表情から「言いたい事は終わったか?」と冷徹な意思を感じ取れる。

 

 「本当に私はクラウンじゃない!」

 「―――ッ、何故ぇ…」

 

 必死に声を荒げる中、バットは引き金を引いた。

 ただその直前に方向を変えて、もう一方のテリコに向けてだ。

 突然の事に誰も対応出来ずに撃たれたテリコは脇腹を抑えて倒れ込む。

 痛みに表情を歪ませながら倒れ込んだテリコもスネークももう一人のテリコも不思議そうにバットへと視線を向ける。

 

 「なんで…私がクラウンと解かったの…」

 「この花のような香水(・・・・・・・)臭い(・・)だよ」

 「辺りに撒いたのだけど…鼻が良いのね…蝙蝠ではなくて犬だったのね」

 

 ふふふっ、と笑いながら痛みに苦しむクラウン。

 さすがだなと感心するスネークと本物のテリコだったが、次の一言で耳を疑った。

 

 「例え違ってもどっちも撃つつもりだったしな」

 「どっちも!?」

 「確証を得ていた訳ではないのか!?」

 「――あ?臭いの強さで判断したけどそれこそフェイクかも知れねぇだろ?」

 「本気で私も撃つつもりだったって言うの!?信じられない!」

 「だから致命傷は避けて撃ったろ?」

 「「そう言う問題じゃない!!」」

 

 治療ならスキルがありますけどと付け加えても良い訳ではない。

 がっくりと肩を落とすテリコに同情するも兎にも角にも先にクラウンだ。

 腹部を抑えたままクラウンは壁を背に座り込んだまま動かない。

 

 「私ね。一度も負けた事ってなかったの。だから敵に屈してみたいと思っていたのよ」

 「そりゃあ良かった。俺は親父に敗けっぱなしなんで羨ましいよ」

 「だから知らなかった。負けたらもう終わりなんだって…そうでしょう?」

 

 撃たれた位置から致命傷にはならない。

 だが俺達は敵同士。

 ここで助ける義理(・・)もなく、寧ろ人によってはトドメ(・・・)をさす事を視野に入れているだろう。

 

 「メタルギアはこの地下よ。まさに今頃起動させて、標準を定めている頃かしらね。格納庫へはこの区画の北の扉を抜けて梯子を下りるのね」

 「何故、そんな事を教える?」

 「ここで終わるって事は私は主人公じゃない。主人公ってのは最後まで生き抜くものでしょう?悪役なら…最後くらい主人公の味方をしなきゃ…」

 

 小さく笑う様子は何処か子供のように見える。

 撃たれた際に落した拳銃を拾い上げたバットは少し考え込み、ぽつりと呟いた。

 

 「一つだけ聞きたい…マンハッタンのホテルでコリン・フリードマンを自殺に見立てて殺したのはお前か?」

 「―――ッ、こいつが!!」

 

 バットの一言にテリコは驚きと怒りから銃口を額へと向ける。

 クラウンとしてはキョトンとするほかない。

 

 「分からないわ。あった様な気もするけどそういう仕事も多く熟して来たから…」

 「アンタッ、なんで止めるのよ!」

 

 父親を殺された恨み辛みを抱いているテリコは、殺したという事実も覚えてないなんて許せないとトリガーに力を籠めるも、バットによって銃口は降ろされる。

 当然ながら抗議の視線を向けるもバットはそれ以上に真剣な目で返す。

 

 「なら撃てばいい。復讐を果たしたいならどうぞ。だけどコリン・フリードマンの名誉を回復する機会は永遠に失われる」

 「それは…でも!!」

 「証拠品に口紅が付いた煙草の吸殻があるなら彼女かどうかも調べも尽くし、口を割らせれれば依頼した相手だって分かるかも知れないぞ」

 

 テリコは口を噤む。

 けどクラウンに撃って父親の復讐を果たしたい気持ちがあるのも確かだ。

 だからバットは「後は好きにすれば」というスタンスでこれ以上止める気はない。

 あの人(ヴェノム・スネーク)は人の報復心を否定する事は無いだろうから…。

 キッと睨みながら再び銃口を向けるテリコだったが、ため息を吐き出しながら自ら銃口を降ろした。

 

 「そうね。ここで復讐を果たしてもそれは私が満足するだけ。お父さんに被せられた不名誉が晴れる訳じゃない。私は兵士。私情ではなく任務を優先するわ」

 

 無線越しに状況を聞いて見守っていたロジャー(・・・・)は彼女の決断に様々な想いを抱く。

 同時にバットはクラウンの治療を始める。

 

 「バット、クラウンが犯人と言うのも勘か?」

 「確証はないけど出来すぎでしょう。父親の仇である花の香りを残した女性に、花の香りを漂わす殺し屋………香水以上にぷんぷんするだろ?」

 「まるでドラマみたいだな」

 「得てしてそういう展開(・・)は多いでしょうが」

 

 現状証拠はないがバットの言う通りであれば、テリコの父親を濡れ衣を被せて殺したのはBEAGLEの可能性だって出て来るわけで、レオーネの情報では合衆国と繋がりがあるとの事。

 最悪ラ・クラウンの存在ごと揉み消されかねない。

 

 「ロジャー。ラ・クラウンの事だがテリコの一件もある」

 『解っている。私の方で何か手を講じてみる。ただ…いや、少し待ってくれ』

 

 どうにか出来るか問おうとする最中、ロジャーは無線から遠ざかった。

 微かに声が届くが薄っすらと聞こえるだけで内容は解らない。

 戻って来たロジャーの声色は妙に暗かった…。

 

 『大丈夫なはずだ…』

 「どうした?声が暗いぞ」

 『取引をした。私としては確証は出来ないが向こうは手立てがあると…』

 「相手は誰だ?」

 『済まない。それは言えない約束なんだ』

 

 疑念は残るもロジャーはそれ以上に言いそうにない。

 だが、それ以上問う事も無い。

 なにせこちらが疑念を抱こうとハンスの一件で疑念を抱かれつつも今は追及しない事を考えれば、こちらだけが追及する事など出来る筈もない。

 

 「行こうスネーク。もうラストが近い」

 「あぁ、この島での任務を終えよう」

 

 スネークとバットはラ・クラウンをその場に残して先へ進もうとする。

 その背後でテリコがゆっくりと銃口を向ける…。

 

 

 

 

 

 

 レオーネは壁に背を預け、ずるずると地面に座り込む。

 周囲にはレオーネ隊の残存兵力が終結を果たすも、負傷者合わせて十名と少し。

 最早BEAGLEとやり合うだけの余力どころかここの脱出や再起すら怪しい。

 これが俺らの末路かと思うと悔しさより虚しさが先に来る。

 

 「…なぁ、少し頼まれてくれないか?」

 

 疲弊と疲労からぽつりと漏らす。

 投げかけた先には警備用に使われていた四脚のロボット。

 この手の兵器はすでに自分達の手を離れ、フレミング博士に奪われ………いや、取り戻されている。

 しかしながら“モルフォ蝶”によるハッキングにて数機は指揮下から離れて行動をしている。

 おかげでFAR前でフレミングとACUA兵に囲まれた際に、数機のサイファーと四脚ロボットが援護してくれた為、自分達はこうして今も生き延びれたのだ。

 

 レオーネはロボットを通して聞いている“モルフォ蝶”に頼む事にした。

 弱り切った自分達では成せないであろう願いを僅かながら叶えるために…。

 しかし内容を聞く前に“モルフォ蝶”が言葉を遮った。

 

 『お断りよ。私は利害の一致による協力者。貴方達の望みは利から外れるもの』

 「くそったれが…情けはねぇのか?」

 『一つだけあるわ』

 

 冷たく突き放しといて僅かな望みのある言葉を残す。

 なんだと肩眉を吊り上げながら耳を傾ける。

 

 『私達は利が一致すれば手を取り合える関係なの。だから貴方達の目的の一つを諦めて、私達にとっての害を取り払う』

 「それで俺達は何を得る?」

 『得たれるのはそこから生還する手立ての一つ』

 

 目的を諦めてただ生き延びる…。

 今の状況を考えると諦めかけた生存の可能性を掴むのが最善だと思われる。

 だけどそれで良いのかと自分自身が訴えかけて来る。

 同時に部下を自分の妄執に付き合わせるという行為の先に何が残るのかと考えると即答もしかねる…。

 

 『それだけだと不満でしょう?』

 「何でもお見通しか…何を出してくれるんだ?」

 『直接的なフレミングの企みの頓挫』

 「ははは…そりゃあ最高だな」

 

 俺達を嘲笑うように罠に掛けたあのクソ野郎にとっておきの仕返しが出来るのか。

 カラカラと笑うがそれだけで納得し得ない。

 思っていた以上に自分は我侭なようだ。

 スッと笑うのを止めて真顔で睨む。

 

 「もう一つ。お前らの目的を教えろ。何をしようとしてやがる?」

 

 四脚のロボットには銃が取り付けられている。

 最悪この場で“モルフォ蝶”は俺達を一方的に銃殺する事も出来得る。

 銃口が向いている状況で一切怯む事も無く、カメラを睨みつけていると四脚が近づいてぼそりと小さな音量で囁かれ、レオーネはその内容に心底笑った。

 

 「良いだろう。俺達はお前の話に乗ってやる!」

 

 獰猛な笑みを浮かべる様は敗残の兵ではなく、獣そのものであった。


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