メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

103 / 135
 最近シリアスが続いてコメディ要素が足りない…。


先へと進む者達と姿を現す敵

 背後でかちゃりと音がした。

 何の音だと振り返ったスネークとバットの視界に入ったのは銃口をスネークに向けたテリコであった。

 動揺しているものの「どういうつもりだ?」と見据えるスネークに、咄嗟に銃に手を伸ばそうとして「動かないで!撃つわよ!」との一言で身動きが取れなくなったバット。

 二人はこんな事をした意図を探りつつ、テリコの動きを待つ。

 そのテリコの様子がおかしい…。

 呼吸は荒く、銃身は振るえ、焦点も何処か揺れている。

 完全に平常ではないようだ。

 

 「スネーク…貴方はハンスなの?」

 「いや、俺はスネークだ…」

 「私だって信じたい!」

 

 甲高い叫びがやけに響き渡る。

 平静さを欠いた今の状態のテリコなら取り押さえる事は容易い。

 しかし心中乱れ切っている状態では最悪乱射しかねない。

 機器に囲まれたここでは跳弾が怖いところ…。

 バットは浮かんだ考えを取り消し、状況を見守るしかないと思って伸ばしていた手を止めて、自然体で行く末を眺める。

 

 「貴方は私が憧れた英雄…だから、信じたい…」

 「テリコ…すまない。俺は信じてくれとしか言えない」

 「だったらさっきの無線の相手は誰?貴方の仲間なんでしょ!!」

 「…いや、まぁ、そうだが…」

 「認めるのね!!」

 

 今にもトリガーを引きそうになったテリコを見て、さすがにバットがスネークと銃口の間に入る。

 

 「待て待て待て!なんかおかしくないか?」

 「何がよ!」

 「なんかズレてるっていうか噛み合ってねぇ!まずはテリコ、何があったか話してくれないか?」

 

 バットにも警戒しつつテリコはアリスより伝えられた事を話す。

 スネークはハンスであり、メタルギアの回収とハンスの証拠を消す為に研究所に入った事。

 疑っていたロジャーはスネークの仲間によって捕らえられた事。

 そしてこの事を伝えてきたアリスは撃ち殺されたであろう事…。

 

 さすがに驚きを隠せないバットもスネークを見るも、スネークからしたらなんの話か分からない。

 そもそも内容がおかしい(・・・・・・・)

 

 「ロジャーが捕まった?何を言っているんだ?俺が無線したのはそのロジャーなのだが…」

 「そんな…でもそれは貴方の仲間が捕らえたから…」

 「なら無線してみろ」

 

 言われて半信半疑で無線をするも繋がらない。

 バットも試しにとロジャーへと無線をするが同様に繋がらなかった。

 その事に不思議がりながらスネークが無線をするとどうしてか(・・・・・)繋がり、スネークはテリコへと無線機を渡す。

 引っ手繰るように手にしたテリコは無線機よりロジャーの声が聞こえた事でホッと胸を撫でおろす。

 

 「大佐、無事なんですね!」

 『あぁ…話は聞かせて貰っていたがどうしてそうなったのか…』

 「では先ほどの無線は?それにどうしてスネークの無線だけ…」

 『それについては今調べて…ん?なんだこれは?――ッ、ゴースト!?何を――――…』

 「――ッ!?大佐?大佐!!」

 

 銃声が無線機より響いた。 

 まさかと再びロジャーに無線しようとするも繋がらなくなってしまった。

 混沌としてしまった中、バットが首を傾げながら問いかける。

 

 「で、どうする?まだここで無駄に銃を向けるか?先へ進むか?」

 「――ッ、私は…」

 

 バットは気の毒にとテリコに憐みを向ける。

 この状況はテリコにとって酷く精神に響いてきた事だろう。

 ただでさえ部隊が自分を残して全滅した挙句、合流した憧れの英雄は敵かも知れない。

 敵地のど真ん中でそれも部隊を壊滅させたレオーネの部隊を容易に潰したACUA兵がいつ現れるかも分からない。

 付け加えて情報があやふやであるがアリスとロジャーの生死不明に、審議がつかない情報に苛まされて精神状態は最悪だ。

 さらに敵対するのがスネークだけならまだしも自分が居る。

 ソリッド・スネークと戦場を共にした戦友で、テリコとは初対面の人物。

 もしもスネークが敵であるならば当然その仲間と思うだろう。

 どれだけ神経をすり減らしてここまで耐えてきた事か…。

 

 限界を超えたテリコは悲壮な表情を浮かべ、震えていた銃口を下げた。

 

 「自分を信じれない(・・・・・・・・)から他人を疑う(・・・・・・・)。父さんは嫌疑を掛けられた時でも自分を信じて他人を信じようとした。私は信じる。貴方を本物の―――私が憧れた英雄だと思う自分を信じる」

 

 先ほどまでブレていた瞳が力強い意志が宿った。

 彼女は彼女で今行える最善を行おうとしている。

 否、そうすることで潰れかけた不安を逸らそうとしているのかも知れない。

 なんにしても進むしかないのは確かだ。

 

 三人は通信が切れたロジャーとアリスの事を気に掛けつつ先へと進む。

 進みに進んだ先は開けた空間が広がっていた。

 眼下にはコンテナなど多くの物資が並び、奥には巨大なナニカ(・・・)が鎮座していた。

 

 「これが―――メタルギア…」

 「いや、ドラム缶じゃねコレ」

 

 初めてメタルギアを見て驚くテリコに対して、スネークとバットは怪訝な顔を晒す。

 マッドナーが作ったメタルギアやヴェノムが搭乗したサヘラントロプスと対峙した二人にしてみれば異様な姿に戸惑うばかり。

 人に説明するとすればバットが言ったドラム缶に脚が生えている感じなのである。

 だがサイズは他のメタルギアに劣らず巨体だ。

 破壊するにしても大変そうだとバットがため息を漏らしている中、スネークは冷めた視線を向けつつ近づいて行く。

 足場はメタルギアの頭頂部まで続いており、その上に立ったスネークはある一点に視線を降ろす。

 

 「このハッチより内部に入る」

 「中から壊すにしても爆薬足りないぞ?」

 「いや、フレミングを捕らえて停止させれば事は終える。二人は外で待っていてくれ」

 「捕縛するにしても複数人居た方が…」

 『お帰りなさいハンスさん』

 

 話し合いをしているとフレミングの無線が入る。

 一瞬周囲を警戒するもやはり内部に居るだろうとすぐにメタルギアを見つめる。

 

 『どうぞ中へ。貴方の玉座は空けております』

 「―――ッ、…良くやった。後は性能を試すだけだ」

 

 纏っていた雰囲気が変わった。

 咄嗟に警戒態勢に入ったバットは距離を取る意味もあって足場まで下がりつつ銃口を向け、テリコは不安げにスネークを見つめる。

 

 『支配された(・・・・・)ようだな』

 「何か言ったか?」

 『なんでもありません。No.16の意向が無くともいずれこの時は訪れた。しかし今は逆鱗に触れぬように従順に振るわなければ。でないと私のコンスタンスが…』

 「最早貴様も貴様の娘も、No.16も関係ない。私は私の意志に従う。怪物(No.16)のヒステリーなどに付き合ってはいられんさ」

 『ハ、ハンス?』

 

 クツクツと嗤う様は最早別人であった。

 側はスネークだというのに中身が異なる違和感。

 同時にフレミングとハンスの様子に何処か噛み合わない亀裂のようなものを誰もが感じ取った。

 

 「しかし感謝すべきか。こんな機会でも無ければこいつの力を試す事など出来んからな」

 『試す?貴方は玉座で観覧しているだけで良いのですよ』

 「メタルギアの側は完成した。だが核発射のデータが足りないとは思わないか?目標は何処にするべきか…BEAGLEを慄かすなら合衆国本土か。そして結果起こり得る責を誰が受けるかだ」

 『まさか…』

 「いつの時代にも狂った科学者は居るものだ。例えば自分が作り出した核搭載兵器の性能を見せ付け、知らしめたくなる…とかな。……なぁ、このメタルギア・コドク(・・・)を制作したフレミング博士?」

 『No.16か!止めろ、スネーク(・・・・)に撃たせるつもりか!?』

 「動かないでスネーク!!」

 

 止めるしかないとテリコも銃口を向けるが、スネーク………ハンス(・・・)は余裕を持って振り返る。

 声色からして動揺しているのを察しての事だろう。

 事実、テリコにスネークは撃てないだろう。

 躊躇いから銃身がブレている。

 

 「ほぅ、お前に撃てるのかこの()を。憧れの英雄を」

 「――ッ、撃つわよ!」

 「テリコ下がれ。俺が撃つ」

 「共に戦った戦友を討てるのかバット?」

 「討つんじゃねぇよ。撃つんだよ。致命傷は避けて行動不能には出来るさ」

 『おのれェ、貴様には渡さんぞ!!』

 

 大きくメタルギアが揺れた。

 否、メタルギアが起動したのだ。

 フレミングの行動に慌てるスネーク(ハンス)を他所に、テリコはハッチから内部へと入り込む。

 反応が遅れたスネークはメタルギアより振り落とされ、動かれた事で足場が崩れ始めたバットは何とか逃れようとまだ崩れていない方向へと走る。

 何とか崩落には巻き込まれなかったが、メタルギアに掛かっていた足場は完全に落ちて滑り台のように下へと続いていた。

 その先では落ちたスネークが頭を抑えながら起き上がるところであった。

 

 「クソッ、ここは?俺は一体…」

 「意識を取り戻したのか?」

 「バット、何があった?体中が痛いんだが…」

 「それで済んだなら上々。後で湿布でも貼ってやるからまずは後ろを注目」

 

 元に戻ったスネークは振り返ってメタルギアを見上げ、最低限の状況を理解する。

 差し出されたバットの手を掴んで立ち上がり、得物を確認して戦闘態勢をとるもミサイル系を持っていないのが悔やまれる。

 対峙する二人に対してではなくフレミングをここに居ないNo.16に声を荒げた。 

 

 『騙したなNo.16!貴様の茶番に付き合えば(・・・・・・・・)コンスタンスを返すと言ったが、初めから返すつもりはなかった!!貴様は俺の研究対象!お前の正体も何を夢見ていたかも知っている…あの島だ…貴様はあの透き通る青い海に眠るサンゴ、南太平洋に浮かぶ島に想いを寄せていた……今すぐコンスタンスを開放しなければあの島を核攻撃するぞNo.16!!』

 『撃てば?その瞬間コンスタンスがどうなるか考える事ね。それより私のハンス(・・・・・)が乗っ取っちゃうかもしれないけど………良いの?』

 『クソッ…スネェエエエク!ハンス・ディヴィスに憑かれてしまった事(・・・・・・・・・)を悔やむんだな!!』

 

 脅しに失敗したフレミングはNo.16からスネークに敵意を向ける。

 やれやれと肩を竦ませ、まだ少しばかりボーとしているスネークの背を叩く。

 

 「全く…あのデカブツを叩き潰しますか」

 「そうだな。もっと武器が欲しいところではあるが、お前となら何とかなるか」

 『ちょっと、何二人だけみたいに言ってるのよ!私も居るんだからね!』

 「分かっている。頼りにしているぞテリコ」

 

 完全に戻ったスネークとバット、テリコの三人が言葉を交わしているとメタルギア・コドクが動き出す。

 円柱形だった外枠が二つに割れ、人型らしい姿が現れる。

 そのまま外装は左右に動き、各部が可変・変形を果たして戦闘状態に入った。

 

 『で、スネーク。メタルギアを壊すにはどうしたら良いの?』

 「手あたり次第に壊せば良い」

 『それでいい訳!?』 

 「分からん」

 『ちょっと!』

 「他に何か手はあるなら聞くが?」

 『……もぅ!解かったわよ!!』

 「頼むぞテリコ。出来る事なら俺達はミンチに成る前にな」

 「ミンチと言うか武装によっては後が残るかどうか怪しいけどね」

 『なら手を貸してやろう』

 

 突如無線に入って来たのはNo.16でも相棒(バディ)を名乗る者でも無かった。

 同時にメタルギア・コドクに銃弾が浴びせられる。

 何事かと振り返ればそこ立っていたのはレオーネであった。

 

 「生きていたのか?」

 「モルフォ蝶と取引してな。おかげで後始末に駆り出された訳だ」

 「今は()の手も借りたいところだから有難い」

 「蝙蝠、背後には気を付けろよ。誤射は怖いぞ」

 「対物ライフル向けながら言われるとマジで怖いな…」

 『クソ、クソ、クソッ!死にぞこない共もまとめて殺してやる!!』

 「来るぞ!!」

 

 外装部よりミサイルが放たれて向かってくる。

 レオーネを含めた部隊もそれぞれ散開して、遮蔽物の影へと身を隠す。

 

 「蝙蝠!奴の肩を狙え!」

 「狙撃銃であの装甲抜けんのかよ!?」

 「問題ない。あの外装はステルス重視でな、狙撃銃でもかなりのダメージが入るらしい」

 「さすがに詳しいな」

 「俺じゃない。モルフォ蝶が調べたんだ」

 

 道理で知っていたかのように回避行動に入った訳だ。

 そうと決まるとスネークを含めて残存レオーネ隊の面々は打ち上げられるミサイルを迎撃しようと銃を撃ち続ける。

 ミサイル兵器で攻撃出来れば楽なのであるが、外装のステルス性能が強力でスティンガーなどの誘導兵器は撃とうにも目標として捉えれず撃てないのだ。

 途中モルフォ蝶によって操作されているサイファーと四脚ロボットの参戦もあり、メタルギア戦の割には上手く言っているように思える。

 

 「思っていた程ではないな」

 「気を抜くなよ。と言ってもアレは本調子ではないようだがな」

 「どういう意味だ?」

 「何でもメタルギア・コドクはネオテニー…No.16が操縦して本領を発揮するらしい」

 「機体は良くても乗り手が合ってないという事か」

 

 会話を混ぜながら大型対戦車ライフル“シモノフ”を撃っては装甲を風穴を空け、ミサイルを発射した発射口をバットがPSG-1で狙撃して、ダメージ総量が限界を超えたのか右側の外装が崩れ落ちた。

 獣のような咆哮を挙げながらメタルギア・コドクはそれでも戦い続ける。

 と言ってもフレミングは科学者として優秀でも乗り手としては優れている訳でない。

 装填しては発射を繰り返す単調なミサイル攻撃に、一定の距離に近づいたロボットに対して下部に取り付けたレーザーで焼くと言ったパターンで攻撃してくるばかり。

 そもそも外装と上半身が大きくて動きも遅い。

 サヘラントロプスほどの脅威ではない。

 スネークやバットはそう思い込んでいた(・・・・・・・・・)

 

 右側に続いて左側の外装も壊れ、ようやく姿を完全に現したメタルギア・コドク。

 内部でテリコが暴れまくっているのもあってかかなり挙動が怪しい。

 当然フレミングの焦りも高まっている。

 

 『クソが!!貴様ら全員消えるが良い!!』

 

 フレミングがそう叫ぶとメタルギア・コドクは頭を下げるように頭頂部を向けてきた。

 すると頭頂部付近に光が収束し始めた。

 何が起こっているのか分からないが、酷く嫌な予感がしてならない。

 

 「レオーネ!アレはなんだ!?」

 「確か大型レーザーだったか。一応聞いたが馬鹿げた威力でここぐらいなら面で焼かれるだろうよ」

 「逃げる事もままならないか!」

 「いや、奴の足元に飛び込めれば…」

 「間に合わない!」

 「バット、発射口を狙え!」

 

 光が収束している中を全員が持てる火力を持って攻撃を開始。

 今まで撃たなかったスティンガーなどのミサイル兵器も出し切るつもりで撃ち続ける。

 複数の爆発に銃弾を嵐を弱点である発射口に集中されれば、さすがに耐え切れずに収束していた光は霧散した。

 

 

 

 外部内部共に悲惨な程のダメージを負ったメタルギア・コドク。

 しかしフレミングはまだ諦め切れてなかった。

 なにせこのメタルギア―――核搭載二足歩行戦車には奥の手である核弾頭が残っているのだ。

 キーボードを素早く撃って核発射のシステムを起動させようとする。 

 

 「せめてこいつを撃てば俺が本気だと分かる筈だ。さすればコンスタンスもきっと…」

 「いったい何人の…いえ、どれだけの被害が出るか解っているの!?」

 

 フレミングは手を止めて振り返る。

 そこには銃を構えたテリコが睨みを利かせていた。

 内部で異常が起こっていた事から鼠が入り込んでいる事は知っていたが、こうも邪魔されると不愉快極まりない。

 だが今はそんな事よりコンスタンスを優先する以外にフレミングに考えはない。

 

 「…知った事か」

 「なんですって?」

 「何十、何百、何千、何万、何億、何兆の被害が出たとて構うものか!私のコンスタンス以上に価値があるものなど居ない!!」

 「核を背負った怪物を創り出しておいてその脅威を理解出来ていないの!?」

 「言ったはずだ。コンスタンスと比べよう筈もないと!」

 

 苛立ちから声を荒げるフレミングだったが、同時にテリコの言葉に苦笑する。

 いや、心底可笑しくて笑い転げそうになる。

 そんなフレミングを警戒しつつ怪訝な顔で見つめる。

 笑い終えて一息ついたフレミングはクツクツと嘲笑う。

 

 「俺が創った怪物?違うな、これは創らされた怪物の成れの果て(・・・・・・・・)…いや、出来損ない(・・・・・)と言うべきか」

 「どういう意味?」

 「さぁな、お前達の方が詳しいんじゃないのか?」

 

 どういう事かと思考を巡らすテリコを見て、フレミングは隠し持っていた銃を手に取った。

 しかし彼は早撃ちが得意なガンマンでも、軍隊上がりの精鋭と言う訳でもない科学者。

 抜いて構えるまでのモーションよりもすでに構えているテリコがトリガーを引く方が早かった。

 銃を目にして咄嗟に放たれた弾丸はフレミングの急所を見事撃ち抜いて即死させてしまう。

 情報を聞き出したいという想いもあっただけにこの時ばかりは自分の腕前が悔やまれる。

 最期にぽつりと「コンスタンス…大丈夫だ……パパが付いて…るぞ…」と呟いたのが酷く耳に残る…。

 

 「スネーク…フレミングを射殺したわ」

 『そうか…解った。兎も角合流するぞ』

 

 その場を離れようとしたテリコは次に入って来た無線に脚を止めた。

 

 『――聞こえるかスネーク、テリコ、バット…』

 「大佐!?」

 

 間違えようがないロジャーの声に三人とも驚くと共に安堵した。

 しかし返って来た言葉は『すまない』という謝罪であった。

 無線を聞きながらテリコは梯子を昇ってメタルギア・コドクのハッチより脱出してスネークとバット、そして協力したレオーネ達の下へ合流した。

 

 『調子はどうかしら―――ハンス(・・・)

 「アリス?」

 「貴方、撃たれたんじゃあ…」

 

 そう、テリコにスネークはハンスだと告げ、スネークの仲間に殺害されたように思われていたアリス。

 彼女はスネークの反応に深いため息を吐き出す。

 

 『失敗しちゃった。おじさんをハンス・ディヴィスに出来なかった(・・・・・・)…つまんない』

 「どういうことなのアリス!貴方は一体!?」

 『駄目じゃないテリコ。貴方とおじさんが殺し合う所を見たかったのに』

 「…大佐、まさかアリスは…」

 『そうだ。何が遠隔透視だ…彼女はそこで長年過ごして居たんだ(・・・・・・・・・・)。当然構造は知っていた』

 「アリス、君がNo.16なのか?」

 

 肯定を口にせずとも無線越しにクスリと笑った事でそうなのだと理解する。

 道理で火力発電所でフレミングがアリスの問いに慌てたのかが説明がつく。

 まさかNo.16が混ざって来るとは思っていなかっただろうに…。

 

 『はぁ…何もかも上手くいかないものね。おじさんは私のハンス(・・・・・)成って(・・・)くれないし、フレミングも上手く動いてくれないし、あの人も余計な事を……いえ、任務に忠実だったって事だったかしら』

 「なんの話だ?」

 

 最後の言葉に首を傾げる一行。

 本当に残念がるアリスに変わってロジャーが答える。

 

 『聞いてくれスネーク。私達はゴーストを疑っていたが、奴は間違いなく白だった…』

 「ならゴーストは何をしている」

 「監視役だったとしても護衛でしょう?」

 

 スネークもバットも期待はしていなかったが、敵でないというならアレは戦力になると踏んでいた。

 見た目はコスプレ染みていたが、何となく雰囲気で戦えるか否かは察してはいた。

 だから奴がいたならアリスの好きなようにはならなかっただろうと。

 しかし返って来た答えは意外なものだった。

 

 『―――ゴーストは死んだ(・・・・・・・・)…私を護ってな…』

 

 

 

 

 

 

●アリスとゴースト…。

 

 アリスは倒れ込んだゴーストを眺めて多少ながら悲しむ。

 あの研究所で実験体として色々とされてきた(・・・・・)彼女にとって大人とは自分を利用する者ばかり。

 唯一例外があるとすれば聞かされ続けたハーメルンの子供達の憧れであるソリッド・スネーク。

 彼は“権力者の為に大いなる働きを成した男”として刷り込まれていた(・・・・・・・・)

 

 だけど今になってこんな人が現れるなんて思いもしなかった。

 表向きは護衛ながら監視要員で送られたであろうゴースト。

 けれど監視役にしては関わり過ぎる。

 それも打算無しで優しく接して、無駄にお菓子なんか作ってくれて…。

 

 おじさん(スネーク)私の物(・・・)にするのは計画にあった。

 けれどイレギュラーであるゴーストも少なからず気に入り始めていた事もあり、出来れば私の者(・・・)にしたいと願っていたというのに。

 

 「貴方は全てがイレギュラーなのね。騒がすだけ騒がしといて―――少し腹立たしいわ」

 

 倒れ込んだゴーストの額―――ガスマスクに風穴が空いている。

 説得してこちら側に招くか銃で脅して言う事を聞かそうとは思っていたけど、ゴーストを撃つつもりなど毛頭なかった。

 

 テリコにスネークへの疑心を植え付け、ロジャーの無線を繋がらないように細工したというのに、何故かスネークとだけ(・・・・・・・・・・)繋がっており、無駄な事を言わさぬようにロジャーを撃ったところで気付いたゴーストが庇って護ったのだ。

 …代わりにゴーストはガスマスクの額に風穴を空けて背から倒れ込んだ。

 

 今は拳銃で脅しながらロジャーに銃を棄てさせ、無線機の近くで待機させている。

 

 倒れた衝撃で転がっていたテンガロンハットを被り、ゴーストを撃ってしまったアストラM900を握り直す。

 

 「さぁ、幕を下ろしましょう。終わったらパーティだものね………ゴースト(・・・・)

 

 ポツリとそう零してアリスはメタルギア・コドクと戦うスネーク達を眺め、アリスはロジャーに銃口を向けたまま無線機に近づく。

 

 

 

 

 

 

 背後でゴーストの指がピクリと動く(・・・・・・・・)のを見逃して…。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。