メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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 投稿が遅くなり申し訳ありません。
 食当たりか何かで数日間ダウンしてました。
 私の胃はスネークほど丈夫ではなかったようです…。

 あの時ほどキュアーが欲しいと思った事はない。
 ステックが回せれればもっと早く。


被検体

 別に嘗めていたつもりではなかった。

 限られた兵員の中から動かせる人員を連れ、格納庫にあった戦車だって全部持って来た。

 二足で歩こうが大きくても兵器は兵器。

 幾ら頑強と言えど火砲を浴びれば撃破出来ない訳がない。

 

 ――しくじった。

 今までの経験から十分と判断したが、あの新型メタルギア“カイオト・ハ・カドッシュ”相手には不遜過ぎた…。

 俺は警備部長であってメタルギア開発者ではない。

 スペックを知っていればまた対応も変わっていたかも知れないが、今更後悔して振り返ろうとも意味はないのは解っている。

 けれど社長も先にメタルギアに関する情報をくれても良かったものを。

 いや、これは責任転嫁になるのか…。

 機密性の高いメタルギアの情報を漏らす訳にもいかないだろうし、現状を鑑みると社長もいっぱいいっぱいで感情的である事から真っ当な判断は出来ないだろうしな。

  

 威風堂々とした戦車一個中隊クラスはスクラップと化して荒野に転がる。

 メタルギアに対した損害も与える事叶わずにこの惨状…。

 

 「まったく、大したもんだなメタルギアってのは…」

 

 警備部長であるビンスは愚痴を零しながら辺りを見渡す。

 圧倒的な防御力と火力を以て全戦車は撃破され、満足気に去って行ったメタルギアの後にはこうして敗残兵が残った訳だ。

 生き残った警備兵も居るが大概が負傷兵。

 見捨てて行く訳にもいかずに残っている訳だが、正直な話をすれば俺がここに残る意味もあまりないように感じて成らない。

 

 「ほんと大したもんだよ」

 

 メタルギアに対して発した感想を、今度は個人に向けて呟く。

 相手は施設内に無断で侵入した賊の一人。

 コードネームは“ゴースト”。

 敵だというのに敵の敵ならば協力出来ると言ってメタルギアと戦っている最中に割り込んで来た。

 戦車が案山子同然だというのにたかが一人の兵士で何が出来ると侮っていたら、存外に良い動きでメタルギアを翻弄していた。

 施設の被検体(・・・・・・)を除いてもこういったバケモノというのはいるものなのだな。

 

 「――ん、ビンスさんも食べます?」

 「いや、俺は遠慮しておこう。腹は空いてないんでな」

 

 全ての戦車を叩きのめして去って行ったメタルギアを追う事なく、ゴーストは頼みもしていないのに負傷者への治療を開始。

 それも重傷者であろうが“キュアー”と呟いて治療を開始すると僅かな時間で治療を施すばかりかほぼ完治にまで持って行く。

 最早神業というよりは魔法の類だ。

 死にそうでも死んでいなければ助けれると言わんばかりの治療でも、減少した体力(・・・・・・)を回復させるには食べ物を食す他に方法がないとの事で荒野にて食事会が開催されている。

 敵だっていうのに部下共は言葉を交わすと心底信頼して、毒が仕込まれても可笑しくねぇってのに無警戒に平らげて行く。

 正直こいつに部下を全員取られるんじゃあないかと心配するほどに…。

 

 「そう言えば戦場にもおとぎ話があったな―――夜な夜な兵士を連れ去る吸血鬼の話。知ってるか?」

 「さぁ、聞いた事あるような無いような」

 「他にもビッグボスと呼ばれた男には神がかった医術を持ち、敵を味方にしてしまう男が居たそうだ。それも料理が上手いとか…な」

 

 持ち込んだ食料でごった煮を作っては警備兵に配り続けるゴーストは、ビンスの確信を抱いた発言に苦笑いを浮かべる。

 もうそれが答えみたいなものなのだが噂通りならばどう対処すれば良いってんだ。

 今の所は友好的だから良いが、敵対した場合は減少した今の兵力では抑えきれんぞ。

 大きなため息を漏らしながら対象(ゴースト)へと困り果てた視線を向ける。

 

 「どうして俺達を助けた?」

 「アレを倒すんなら人手は大いに越した事はないでしょ?」

 「確かにそうだが、俺達はお前達の敵である事は変わらない。メタルギアを撃破した暁には喜びのハグではなく銃口を向け合わなければならなくなるぞ」

 「まぁ、その時はその時で―――戦いましょう」

 「―――ッ!?」

 

 微笑みながら何気なく返された返答。

 睨みも怒りも殺気も微塵もなく、自然な返しながらビンスはゾクリと背筋が凍り付くような寒気を感じ取った。

 考え無しのようでさも当然と平然と返した…。

 こちらの力が削がれたからと甘く見積もっている訳でもなく、純粋にそれすらも楽しそうに受け入れ呑み込もうとする。

 無数の蝙蝠が空を覆い尽くすような…。

 ゴクリと生唾を呑み込むビンスに対して微笑みかける。

 

 「今はまだ協力者って事で良いんじゃないかな?」

 「……あぁ、それで良い。こちらとしても最優先目標はメタルギアの破壊だからな。それよりお前の仲間は大丈夫なのか?警備部の連中ならまだしも被検体を相手にするならアンタは必要なんじゃないのか?」

 「大丈夫だと思うよ」

 「自信満々だな。何か根拠はあるのか?」

 「仮にも蛇の名(・・・)を持つ者だ。何とかなるでしょ」

 「信頼してんのか楽観主義なのか解らねぇな」

 

 凍り付くような感覚は遠のき、呆れを視線に込めて見つめるもクツクツと笑って流す。

 敵になる以上疲弊するのは構わないが、メタルギアを倒す際に使えなければ意味がない。

 なんにせよ確信を持った発言に肩を竦ませながら、こいつが言うなら大丈夫かという謎の安心感を抱き始める。

 

 

 

 

 

 

 当の本人達はそんな事を思われているとは知らず、危機的状況に苦しんでいる真っ最中であった。

 量産メタルギア・グスタフ()は小型とは言えメタルギアの名を冠するだけあって、非常に厄介な兵器である事には変わりなく、寧ろ小型で小回りが利く上に高い機動性を持って連射力と攻撃力の高い機関銃・機関砲は戦闘車両は兎も角として対人兵器としては非常に有効であろう。

 しかもメタルギアは核ミサイルを搭載する前提がある為に巨大兵器ならざるを得ないが、メタルギアGにはその縛りが存在しない為に小型化されているので当たり判定(・・・・・)が従来機に比べて小さい。

 

 『どうしたブラザー!お前の実力ってのはそんなもんか!?』

 「ご指名掛かってるわよ。応えてあげないの?」

 「俺に兄弟が居た記憶はあるかどうかも分からんが、いきなり機関銃をぶっ放す兄弟は勘弁したいものだ」

 「熱烈で良いじゃない」

 「なら代わってくれ」

 「嫌よ。やんちゃが過ぎるわ」

 

 軽口を交わしながら格納庫内を動き回るメタルギアGをちらりと覗く。

 機体外部にレーダー類の危機が見受けられる事から索敵機または支援機としての設計思想が元々あったのだろうと推測される。

 メタルギアというのは完全無欠の兵器などでは決してない。

 頑丈な装甲で身を護り強力な火力を誇ろうともたった一機の兵器に他ならず、機械化混成部隊の質と量によっては撃破される事もあり得る。

 元来の思想としてはどんな悪路でも走破可能な二足歩行を持って移動し、搭載している核弾頭を発射するというステルス性を重視した戦略兵器。が、使用者の思想とは別に交戦状態に入る事は無きにしも非ず。

 少なからず護衛部隊か警備部隊は随伴となる筈。

 そうなれば悪路を走破する観点から歩兵か、メタルギア同様にどんな悪路も走破する二足歩行兵器が有益…。

 

 「で、どうするの?」

 「まずは目を潰すとしよう」

 「囮は任せたわよ」

 「仕方ない…か」

 

 意図を察したヴィナスは身を潜ませ、逆にスネークは駆けてその場を離れる。

 ガンガンと響かせるように走る足音を拾ってレーダー上に可視化して、その反応に笑みを浮かべたゴラブは操縦桿を握り締める。

 

 『そこだなブラザァアアアアア!!』

 「クソッ、反応が早い!」

 『女王への供物になるんだ!喜んで受け入れろ!!』

 「断る!俺にはやるべき事があるんでな!」

 

 反撃はほどほどに必死に足を動かし続ける。

 すぐ近くまで機関銃や機関砲の連射が迫っており、通り過ぎたコンテナ類がドカドカと風穴を空けられているのが解かる。

 自分がああなりたくなければ信じて走るしかない。

 

 『何処へ逃げようとも無駄だ!!』

 「それはどうかしら?」

 『―――ッ、なに!?』

 

 スネークが囮をやっている間にひっそりと高所へ上ったヴィナスは跳び出しているアンテナ類に標準を合わせ、放たれた弾丸は見事にほそっこいアンテナを撃ち抜いた。

 ついでと言わんばかりにレーダー機器類にも叩き込み、操縦室内のレーダーはノイズが走るとそのまま真っ暗な画面へと変わり果てた。

 ターゲットであるスネークばかりに意識を割いていたゴラブはもう一人の存在を失念しており、そのヴィナスの攻撃によってレーダーが壊される事態に酷く困惑してしまう。

 その隙を逃さずスネークは踵を返して追撃に移る。

 狙いは強固な装甲ではなくて跳び出した機関銃と機関砲の銃身と砲身。

 ここは武器を保管もしていた事が役に立った。

 拾った手榴弾をより口径の大きい砲身に向けて投げつける。

 優れた投手で目的の場所に百発百中で投げ込めるなど己惚れは無く、拾っていた数個全てを放り投げる。

 

 そのうちの一個が運よく機関砲に入り込み、内部での爆発を起こした。

 周辺に転がった手榴弾も爆発してメタルギアGの脚部を揺らす。

 内部の爆発で姿勢制御もやられたのかメタルギアGはよろめくままにバランスを崩して前のめりに倒れ込んだ。

 コクピットが開かれ転がるようにゴラブが現れるが、内部での爆発はコクピット内にまで影響していたらしく、飛び散った破片が刺さったのか至る所負傷していた。

 最早負傷兵と呼ぶのが相応しい状況であるも、ふら付きながらも強い意志を持って立ち上がる様から降伏するつもりはないと見た。

 

 「さすがブラザーだ…でもな、ただじゃあやられねぇんだよ!!」

 

 咄嗟にヴィナスが射殺しようとするが内部の損傷激しいメタルギアGが爆発して足場を揺らし、逸れた弾丸は頭ではなく右肩を撃ち抜いた。

 それでもゴラブは止まることなく残っていた燃料を吐き出しながら火を点ける。

 近くのコンテナを盾にしようとスネークは飛び退き、吹き出された火炎はスネークを辿るように燃え広がった。

 

 火薬庫で煙草を吸うだけでも自殺行為に成りえる。

 ここには保管している武器に弾薬の他にも、メタルギアGの為の燃料だって置かれている。

 そんな中で手榴弾や火炎を撒き散らせばどうなるかなど明らかだろう。

 火は燃料や弾薬に引火して爆発を引き起こし、広がった火の手はさらに別の物を引火・誘爆させていく。

 

 「全く馬鹿なんだから!ここは長くは持たないわよ」

 「あぁ、脱出するぞ」

 

 急ぎその場を離れようとするもその足はぴたりと止まり、クルリと振り返ってしまった。

 爆発によって吹っ飛ばされたのだろう気絶したままゴラブが倒れ込んでいる。

 奴とは殺されそうになり、自分は殺そうと銃口を向けていた。

 今居るここはいつ吹き飛ぶかもわからない危険地帯。

 アイツを助けていて自分が吹き飛ぶ可能性だってある。

 自身を優先するからには見捨てるべきなんだ…。

 

 「ちょっと、そいつどうするつもりよ?」

 「置いてはいけない」

 「はぁ!?アンタ馬鹿じゃないの?」

 「さぁな(さぁ?)俺は助けたいって(治したいなぁって)思ったから(思ったから)助けているだけだ(治しただけなんだけど)

 「……幽霊にでも憑りつかれたようね」

 

 どこぞの幽霊(ゴースト)同様の言葉を吐きながらゴラブに肩を貸して出入り口に向かうスネークをヴィナスは鼻で嗤い、仕方ないと嫌そうではあるが反対を支えながら急ぎ足で運ぶ。

 火の手は全体に広がって巨大な爆発を生み出して試作工場は吹き飛んだ。

 何とか脱出したスネークは本当に軽いものだが応急手当を施し、近くの物影にゴラブを転がす。

 無責任のようだがこれ以上面倒を見ている余裕もこちらにはない。

 

 「後は自分でなんとかするでしょ。さぁ、急ぐわよ!」

 

 ヴィナスに促され、スネークは急ぐ。

 残り時間も僅かゆえに急ぎメタルギア“カイオト・ハ・カドッシュ”を破壊せねばと……。

 

 

 

 

 

 

 無人機である警備ロボットはシステムを乗っ取ったコペルソーンの支配下に置かれている。

 コペルソーンの計画を妨害しようとするストラテロジック社警備部と侵入者であるスネーク達は、当然ながらその無人機による妨害に苛まれる事となる訳で、メタルギアがある格納庫へ近づけば近づくほど強固な妨害に合う。

 硬い装甲に機銃などの火器で武装している無人機は厄介な相手であるも、戦車程の強固な装甲に高い火力を持つ訳ではないので、スペックと武器装備さえ揃えれれば倒せない相手ではない。

 

 すでに警備部はロジンスキー社長よりコペルソーンを殺してでも止めろと厳命を受け、最低限残す警備を除いて残りの部隊と火器を集めて格納庫へ向かって進軍中である。

 本来なら侵入者も排除する対象である事から人数を割かねばならなかったが、ゴーストが警備部にメタルギア破壊まで協力体制を築いた事でそれらをしなくて済み、今では格納庫に向かう為に必要な第二連絡橋に部隊を配置すらしてはいない。

 同時にこれ以上の悪化を恐れたロジンスキーが厳命を下したというのも大きいが…。

 

 ロジンスキーにとって“核が放たれればどのような惨事待っているか”ではなく、“核が放たれた事実”を非常に恐れている。

 現状ワイズマンなど一部の介入こそあれど公には施設内で起こっている事件は公にはなっていない。

 国際刑事裁判所が介入してくると言う事で当局に取引を持ち掛けて保身に走っているロジンスキーとしては、核が発射されれば取引どころではなくなって会社と自身の進退に関わるとして焦っているのだ。

 

 理由がどうであれ厳命が下った以上は、警備部隊は核発射阻止の為にもメタルギアを破壊しようと急ぎ格納庫へ向かう。

 道中の無人機などは装備も充実させ、人数も揃えた警備部の敵ではなかった。しかし、ながらコペルソーンの兵力は無人機のみではない。

 ハラブセラップやゴラブのようにストラテロジック社によって生み出された被検体と呼ばれる超人染みた者達…。

 

 “カイギディエル”。

 顔を隠すようにフード付きのマントの上に笠を被り、マントの下には緩い防護服と防弾チョッキを纏い、手には単発のグレネードランチャーを持ち、アサルトライフルを背負う。

 特徴的な服装であるが一番目を引くのは腰回りに括ってある地雷の数々であろうか。

 銃器を手にしているがカイギディエルが得意とするのは地雷と催眠術。

 催眠術による同士討ちに地雷による待ち伏せ、小柄な体躯を活かした立ち回りに天井に張り付くと言った能力を誇る。

 時間がない現状ではあまり相手をしたくない相手ではあった。

 そう、天敵(・・)とも言える二人と出くわさなければ…。

 

 銃撃を躱すカイギディエルはそのまま天井に張り付いて、周囲に地雷を放って相手の行く手を遮ると同時に動きに制限をかけようとするも、投げた瞬間に銃声が響いたと思えば落ちる前に地雷が次々と撃ち抜かれて爆散して行く。

 爆風や破片から身を護らんと飛び退き、自身だけが地面に降り立った。

 

 「天井に張り付くとか初めて見たかも」

 「クソッ、お前達のような者に…」

 「おっと、退きなゴースト!」

 

 リボルバーによる早撃ちで地雷を撃ち落したゴーストは驚いたままに口にするが、舞い上がった煙の隙間からカイギディエルが催眠術を行おうとしていたのが見えたビンスが庇うように前に出る。

 口から毒々しくも色彩豊かな煙を吐き出しながら放つ催眠術。

 目を合わさないとかしゃがんで視線を切るなど対処法はあるが、ビンスはそんな対処法など行わずに向かい合う。

 RPGを主武器にしているビンスとの敵対も非常に厄介であるも、催眠術を受けたビンスはゴーストに敵対する素振りすら見せない。

 

 「悪いな。俺には効かねぇ」

 「化け物共がぁ」

 「お前らが言うか?それに独特な笑い声(イーヒッヒ)はどうした?」

 「黙れ!“受胎”が終わるまでは絶対に邪魔はさせん!!」

 

 ビンスもまた普通の人とは異なっている。

 常人ならざる怪力に時折青く光る瞳―――彼は幾分かサイボーグ化されていた。

 視覚や嗅覚から惑わすであろうカイギディエルであるも、さすがに目を始めとして機械化されているビンスに対しては意味がなかった訳である。

 投げたところで撃ち落される地雷もまた同様。

 身を隠せばビンスのロケット弾で吹き飛ばされ、身を出せばゴーストに撃ち抜かれる。

 単体ならまだしも両方をカバーされては勝負もあったものではない。

 

 「女王の為に!!」

 

 苛立ちを隠せないカイギディエルは最後に地雷を撒き散らすとグレネードを構える。

 予想通りに地雷はゴーストによって撃ち落されたが先のと合わせて残弾はゼロの筈。

 次にビンスがRPG‐7を構えて撃って来るもグレネードで相殺する。

 リロード時間を考えればどちらも即座に攻撃は行えない。

 グレネードを投げ捨てて背負っていたアサルトライフルを構えたカイギディエルの方が一歩抜きんでる筈だった…。

 

 「ガァ!?グゥ…き、貴様…」

 

 持ち直したと思った矢先の銃声。

 手にしていたアサルトライフルに直撃した破損され、防弾チョッキに数発の弾丸が撃ち込まれ、貫通こそしなかったが衝撃から倒れ込んでしまう。

 痛みに耐えながら睨みつけるとゴーストは、スコフィールド(リボルバー)からグロッグ17L RGカスタムに持ち替えていた。

 同じように複数武器を身に着けていたという条件は同じでも、取り出し易いホルスターに納まっていた拳銃と背負っていたアサルトライフルでは取り換える為の速度に差が出るのは当然。

  

 「被検体の最期か―――前進しろ!格納庫までの道のりを確保するんだ!!」

 「「「了解です、少佐(・・)」」」

 「だから部長と呼べと言っているだろう!!」

 

 戦闘継続不能と判断されたカイギディエルを放置して警備部の連中が格納庫へ向かって進軍を再開。

 眺めるしかない状態であるが警戒は怠らずにゴーストはライオットピストル(麻酔ガス拳銃)を向けると引き金を引いた。

 ゴーストで見えなかったのもあってビンスは止めをさしたものだと判断して、無意識にカイギディエルを意識から外した。

 そんな中、道中で警備兵にも警備ロボットとも出くわさなかったスネークとヴィナスが追い付き、ゴーストとビンスが共にいる様に怪しむ。

 

 「遅いよ二人共。このまま僕らだけでエンディング迎えるかと思ったよ」

 「別にそれでも良いわよ。私は正直楽が出来て良いもの」

 「それよりどういう状況だ?まさかとは思うが…」

 

 再会出来たのを喜ぶべきか、敵である警備部と何事もなく普通に一緒に居ると言う事で敵である可能性を疑うべきか。

 状況から僅かに疑うスネークと最悪射殺まで思考に入れているヴィナス。

 その間を取り持ったのはビンスであった。

 軽い口調ながら間に入った彼がこれまでの経緯とメタルギア破壊までの協力すると一時休戦を取った事を語り、ゴーストであるならばしてもおかしくないと判断したスネークもヴィナスも警戒を解く。

 

 「ありがとう」とヴィナスに礼を言われたビンスはホッと胸を撫で下ろす。

 安堵したばかりの彼であったが部下からの無線がその心境を大きく搔き乱す事に…。

 

 『大変です少佐!社長がヘリで離陸しようとしています!!』

 「何だと!?ロジンスキー社長、どういう事でしょうか?」

 『ビンスか。どうもこうも私はこの島を離れる!最早すべてが遅すぎたのだ!』

 「コペルソーンは如何なさるのですか?」

 『知った事ではないわそんな事(・・・・)!国際刑事裁判所の捜査が正式に決定したのだぞ!あの政治家共め…あれだけ金を受け取っておきながら危ういと思ったら速攻で逃げ出しおって!今までの裏工作が無駄となったわ!!』

 「どうするつもりなんです?」

 『取引の話も無くなった今となってはこの国に居ては死刑になってしまう。何処か国外に逃げて余生を過ごす』

 「…俺達を見捨てるつもりなんですね」

 『五月蠅い!お前達に構っていられるものか!好きにしろ(・・・・・)!!』

 

 ロジンスキーは気付いていない。

 自身の立場が悪くなって自身を見捨てた相手を非難しつつ、自身もまた身を守るために部下を見捨てる選択肢を行使している事に……。

 そして憤慨するばかりに非常に冷めた声で問いかけたビンスの心情にも…。

 部下から社長の無線に切り替えていたビンスは再び部下へと無線を繋ぎ、短い命令を冷淡に下した。

 

 「堕とせ(・・・)

 『了解』

 

 返答の後に爆音が無線機越しに聞こえ、続いて爆発による振動と爆音が遠巻きながら僅かに聞こえる。

 面を付けている事からどんな表情をしているかは分からなくとも、どういった心情かを察して多少沈黙が過ぎる。

 ――が、全く気にしていない風のヴィナスが確認も兼ねて(・・・・・・)問いかけた。

 

 「これからどうするの?」

 「俺達の仕事は終わった。アンタらと戦う理由も無くなった訳だ。部下を連れて逃げ出して就職活動に勤しむとするさ」

 「だったら僕が紹介しましょうか?」

 

 冗談交じりに答えるビンスであったがゴーストの発言にピクリと肩を震わして勢いよく振り返る。

 調査を受ければ今回の事件が知れ渡るだろう。

 幹部クラスに研究員は法に照らし合わせて罰が下るだろうし、研究内容を詳しく知らなかっら警備の人間だとしても関わっていたという烙印を押される。

 そんな面々であろうと受け入れてくれる相手を知っているというのはある意味有難い。

 ただそれを気にしないだけなアンダーな職場なのか、受け入れるだけの力がある職場なのかは解らないが、ゴーストの性格からしたら前者ではないと何となく思ったビンスは期待を抱く。

 

 「当てはあるのか?」

 「勿論!連絡さえ取れれば(・・・・・・・・)受け入れてくれると思いますよ」

 

 自信満々に答える様に考え込む素振りを見せたビンスは、肩を竦ませながらため息を吐くとクツクツと肩を震わしながら笑う。

 どうやら覚悟(・・)は決まったようだ。 

 

 「了解だボス(・・)。なら少しは実力をお見せする為にもうひと働きするとしようか!」

 「僕は仲介するだけだからボス呼びは止めて。あの人(ザ・ボス)が意識してしまうから…」

 「分かった分かったボス(・・)

 「だからぁ呼ばないでって!」

 

 これからメタルギア戦だというのに笑いが起き、落ち着くとそれぞれ想いを胸に先へと踏み出す。

 

 

 

 

 

 

 格納庫へ向かう一方、ダルトンはB.B.と通信を行う為にワイズマンの目が届かないトイレへ立て籠もった。

 知りたい事も多く話を早く聞きたいダルトンであるも、正直今のB.B.のテンションなどについて行けずに頭を抱えていた。

 機密の塊である事柄を調べるにあたって色々と大変だったとは思う。

 だからといって物理的に隔離されていたからああだこうだと語られたところで、こっちとしては何が何やらで解らん上に長く籠っていると疑われる為に早く戻らねばならず、時間をかけて聞いてはいられないのだ。

 ……訂正、時間があっても解らん話だから聞き流すか…。

 

 『最終決戦間近って感じで盛り上がって来たねぇ!それに敵だったのが味方になるってのも燃える展開って奴だよね!!』

 「少し落ち着け。ったく、それで何が解かった?」

 『メタルギアEGOとか色々ね。にしてもメタルギアってのは凄いね。こんなのネットを漁っても見たこと無いよ。この会社では制御用OSを開発していたみたいそれもただのプログラムではなく、人間の思考に反射、経験などを司るプログラムのコピー―――』

 「すまん、要約すると?」

 『要するに人の魂をプログラムとしてコピーするってところだね』

 「そんな事が出来んのか?」

 『コペルソーンはそれを成功させたんだって。それに人の意志を持たせたメタルギアってのは過去に存在したって聞いたし(・・・・)。後、コピー先の被験者から都合の良い情報を取り出す為に催眠療法が使われ、ルシンダ・コペルソーンが貢献したらしく、今ではタキヤマが引き継いだみたい』

 

 疑いを持ちながら話を聞く中、B.B.の“聞いた”の発言に誰に?と問い質したい気持ちもあったが、それ以上に知り得た情報を聞く方が先かと続きを促す。

 

 『その過程でおまけ(・・・)があってね。取り出した情報を他の人間に強制的に上書き出来る事が解かったんだ。しかも何を上書きするか何を特質させるかで都合の良いように変質させる事が可能』

 「馬鹿な。SFじゃああるまいし…」

 『実際、短命だったり精神異常をきたしたりと弊害はいっぱいでさ。今まで戦って来た被検体ってのがソレ。メタルギア用新OS研究の副産物。それらもルシンダ・コペルソーンが発見して、彼女の元で行われていたらしい。その第二世代(・・・・)が三年前の事件に繋がるんだよ』

 「三年前の事件…コペルソーンの妻が亡くなった…」

 『スネークが倒した独裁政権のデカルト将軍は色々と黒い繋がりを持っていて、少数民族やゲリラに手を焼いて助けを求め、要請を受けた彼の友人が貴重な実戦データを欲しがっていたストラテロジック社に依頼したらしい。たださっき言ったように精神的に不安定な事もあって…』

 「―――ッ、つまり三年前のセレナ共和国で起こった“プラウリアの惨劇”は暴走した被検体によるものだったって事か…」

 

 その情報にダルトンは怒りで声を荒げそうになった。

 彼らの都合と実験の為に一万人以上の人間が殺されたと思ったら、怒らずにはいられなかった。

 同時にコペルソーンが要求した人物はその関係者であろうと当たりを付ける。

 ギリリと噛み締めるダルトンに、B.B.は追加の情報を与える。

 

 『第二世代の被検体によって得たデータを用いて、コペルソーンはルシンダの復活を行おうとしているらしい』

 「死者の復活だと?今までの話だって怪しい事ばかりなのに今度はオカルトか?」

 『肉体的な蘇生ではなくて精神的な復活。ルシンダの遺体を回収してスキャンして人格と記憶を抽出して、生きた被検体の脳に移植する事で蘇るんだとさ』

 「本当に出来るのか?」

 『この話はスネークにも伝えたんだけど、自身の経験にない情報を自分の物のように得る手法を知っているでしょ?』

 「―――ッ、あのナノチップエキスパンションか」

 

 スネークが使っていたシステム。

 言われれば確かに共通点が多々ある。

 オカルトと否定していた話が徐々に現実味を帯びてきた。

 

 『問題としては第二世代のような実験体では記憶や性格を上書きさせる事が出来ず、南米やアフリカから何十人もの子供を買って実験を行っていたらしいんだけど…』

 「それは俺が調べていた…アイツら…」

 

 爪が皮膚を貫きそうなほど握り締め、必死に叫ばぬように耐える。

 人を!命を何だと思ってやがるんだ!

 

 『その中で唯一の一人の少女が実験に成功したらしい』

 「少女?」

 『少しづつ記憶を植え付けられた彼女はコペルソーンはルシンダの名前を与えられた』

 「ルーシー。タキヤマと一緒にいた少女か…」

 『ゴラブが言った“女王の生誕”にカイギディエル()“受胎”と言っていたのはその実験の最終段階と言ったところだろうね。それとルシンダ・ライブラリというのは被検体から得たすべてのデータが納められたもの』

 「そんなものが誰かの手に渡ったら…」

 『うん、同じ惨劇か…それ以上の事が起こるだろうね。ワイズマンはそれらの証拠隠滅の為に送り込まれたと見るべきかな?』

 「アイツらを告発できないのか」

 『無茶言わないでよ。軍の上層部なんだからすぐに握りつぶされちゃうよ』

 「ならもっと上に告発すれば良いだろう」

 『その上って言ったら国防長官だよ!?』

 

 無茶は承知だが許せる訳がない。

 自分に力はあるならば自らの手で逮捕したいのだが、現状返り討ちに合うのは目に見えている。

 ここは頼み込むしかない。

 いいや、発破を掛ける他ない。

 

 「そうだよな。無理だよな。さすがのお前でも出来ないよなぁ」

 『―――え?』

 「いや、すまんかったな。国防長官の端末に忍び込むなんて芸当、本物の天才ハッカーでも無ければ無理だ。本当に無茶言って悪かったな」

 『―――ッ、馬鹿にするなよ!この天才ハッカーB.B.に掛かれば朝飯前だよ!!』

 「本当か!」

 『…え、あー、昼飯前ってところかなぁ…』

 「いやはや凄いよお前!巨悪を暴いた正義の超絶天才ハッカー!有名人待ったなしだな!」

 『観ててよダルトン!僕はやるよぉおおお!あ、アイツからの頼まれ事(・・・・・・・・・・)もあるからちゃっちゃと済ませて取り掛かるよ!!』

 

 意気揚々に通信を切ったB.B.にちょろい(・・・・)と思いながら、最後に言っていたアイツって誰だと疑問を残しつつ、ダルトンはトイレから出るのであった…。

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