メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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アシッド

 ストラテロジック社研究施設が火に包まれる。

 至る所から爆発が起こると舞い上がる黒煙と火の手。

 ワイズマンの手回しもあって秘密裏に処理する手筈は、B.B.の活躍もあってワイズマンは捕縛された事で崩れ、事態を把握した上層部はメタルギアを含む事件解決または事件の処理の為に軍を派遣。

 されどすでにスネーク達の活躍によりメタルギアは撃破され、特殊部隊出身者などで構成された警備兵はすでに離脱していた為、到着した軍は施設内部に入りたくとも施設が自爆によって危険極まりない状況ゆえに周りを囲む他ない。

 そんな中、施設を壊しながら姿を現したメタルギア“カイオト・ハ・カドッシュ”。

 すでにスネーク達との戦闘によって機体の損傷は激しく、武装もかなり消費しているので元のスペックと比べても脅威足り得ないどころか単なる案山子と呼んでも差し支えない程度である。

 

 だがメタルギアを初めてみた兵士達は今まで見たことのない程に巨大な兵器に圧倒され、施設を包囲していた兵士達に一時的な混乱が発生すると同時に、一部情報を知らされていた現場指揮官は核兵器を詰んでいる事から撃たせる訳にはいかないと攻撃を開始。

 兵士の銃火器に加えて戦車隊による砲撃が集中してカイオト・ハ・カドッシュの装甲は耐え切れず、ダメージは表面上どころか内部にまで届き、体制を維持出来ずに尻もちをつくように倒れ込んだ。

 見ていた兵士達も現場指揮官も倒したとホッとするのも束の間、カイオト・ハ・カドッシュが核を発射する為の砲を挙げた事に誰もが恐怖し、誰が搭乗しているかなど関係なく最悪の事態を阻止する為に再び砲火が浴びせるも、最後の意地とも見える一発を発射した

 その一発はコペルソーン博士が熱弁した中性子爆弾ではなく、何かしらの砲弾らしき物体であった。

 発射されたソレは放物線を描いて海に落ちて何かが起きる………なんて事もなく、念入りに調査されるも汚染の形跡すら見受けられなかった。

 広く海底調査も行われたがそれらしき物は発見できず、砲撃などで破損したパーツが飛んだのを誤認したのではと結論付けされた…。

 

 

 こうして事件は終結を迎えた。

 メタルギアや被検体を含めた機密事項は伏せられたが、ストラテロジック社とワイズマンが三年前の“プラウリオの惨劇”に大きく関わっていた事、違法な人体実験を行っていた事が世間に伝えられ、ワイズマンは逮捕されストラテロジック社は強制捜査を受けたり、今回の事件で大きな損失を被ったばかりか社長や多くの技術者を失った事で程なく潰れた。

 時同じくして健康だった国防長官は急に大病を患った(・・・・・・・・)として辞任。

 政界から姿を消す事に…。

 ストラテロジック社での違法な人体実験に使われた人達は、麻薬王エスコバルが人身売買を行っていたと合衆国が公表し、セレナ共和国は合衆国からの要請と共和国内の市民からの大きな声もあって逮捕に動く。

 事件の真相を暴いて報告した元捜査官ダルトンは功績が認められて復帰するも、公表される事は無かったが違法捜査である事は変わりない為に聴取を取った後に謹慎と数か月の減給処分も一緒に下された。

 

 ―――自爆したストラテロジック社研究施設内を捜索した軍からの報告に、上層部は安堵感から胸を撫で下ろすと主に落胆することになる。

 合衆国より送っていた中性子爆弾を無事回収。

 施設内の制圧時に敵兵力は存在せず、トラップもなく兵の負傷や兵器の損失は無し。

 

 ただし、地下に眠っていた被検体は自爆に巻き込まれ全滅。

 メタルギア及び被検体に対するデータを収めていたであろうメインサーバーは復旧や抽出が不可能なぐらい壊れており、ロジンスキーが取引する筈だったルシンダ・ライブラリの消失。

 事件を起こしたとされる被検体(スネークとヴィナス)は消息不明。

 完全包囲した軍からの報告では当該人物の脱出は確認されなかった為、施設の自爆に巻き込まれたものと断定。

 唯一破損が激しくも回収出来たメタルギア“カイオト・ハ・カドッシュ”は、解析及び保管する為に厳重な警備の下で基地へ移送中、何者かの襲撃を受けて完全に破壊されてしまう。

 襲撃者が何者かは憶測ばかりで終ぞ判明しなかったが、襲撃に合った警備していた兵士達は「満月の晩に吸血鬼が出た」と口々にして、黒のロングコートを襲撃者は良いネタとして記者達に“現代に蘇った吸血鬼”として報道されるのであった…。

 

 

 

 

 

 

 ロビーにあるソファに腰をどっしりと下ろし、ばさりと表向きの内容が書き綴られた新聞を見ながら珈琲を口にする。

 普通の珈琲ながらも出来るならアイツが置いて行った上等なのが良かったのだがと眉を潜めるも、自分の舌が肥えさせられたなと思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 ここに来て何週間が経ったのだろうとスネーク(・・・・)はため息を吐く。

 

 ストラテロジック社から脱出を図っていた際に隔壁のより閉じ込められたスネークは酷く焦った。

 残り時間は少ない中で別のルートを探すのも警備室で隔壁を解除するのも難しい。

 もし脱出したとしても被検体の生き残りとなる自分は保護ではなく、研究サンプルとして扱われる可能性が高いので軍に姿を見せる訳にもいかない。

 そこで賭けに出る事にした。

 メタルギア“カイオト・ハ・カドッシュ”が核を発射する為の砲で自分を海へと撃ち出す事。

 問題としては損傷したメタルギアが多少なりとも動ける事と、ゴーストが破壊してから脱出すると言った事であった。

 ナニカの手違いで残しといてくれと祈りながら辿り着いたスネークに映ったのは、皆で倒してから破壊された様子の無いカイオト・ハ・カドッシュ。

 どうしてなどと理由を気にする余裕はなく、急いで砲弾から中身を抜いて自分が入るスペースを確保すると、操縦して無理にでも砲身の角度を調整する。

 結果は見事軍の包囲網を突破して脱出する事に成功した。

 …ただ無事という訳ではなく、発射された際の負荷や衝撃などで全身骨折しており、察したダルトンが船で駆け付けてくれなければ海の藻屑となっていただろう。

 

 「呑気なものね全く…」

 「他にやる事もなくてな」

 「それには同意。自由を手に入れてもこんな籠の鳥にされるなんて最悪よ」

 

 苛立つ様子を隠す事無く曝け出すヴィナス。

 彼女もまた生き残った被検体という事で軍に捕まる訳にはいかず、約束通りにタキヤマを外までは手助けして軍に保護されたのを見守った後、紛れてその場を離れようとした所を背後からゴーストに銃口らしき(・・・)ものを押し当てられ、強制的にダルトンに身柄を預ける羽目に…。

 ゴースト曰く、二人共おかしなところがあるっぽい(ステータス表記)との事。

 

 そこからは全部アイツの思いのままだった。

 ダルトンの伝手で人目につかない山小屋を一つ拝借して、ゴーストの知人とやらに最新の医療機器を運び込ませ、自らの直属を派遣させて俺達を警備・監視させたりと好き勝手に…。

 良く解からないのだがアイツは治療する術が存在する(・・・・)のであれば治せる技術(キュアー)を持っていて、ヴィナスは戦闘能力を強化すべく身体的寿命を削っているとの事で移植を行ったのだ。

 ナニ(・・)ドコ(・・)までかは定かではないが、当面の問題は解決したという事だけ伝えてアイツは去って行った。

 それ以来、俺とヴィナスはダルトンが迎えに来るまでここに缶詰めにされている。

 

 騒がしく妙な奴ではあったが、もう会えないかもと思うと寂しくも感じる。

 もし会う機会があるのなら「破壊すると言っていたメタルギアをどうして破壊せずに行ったのか?」と聞いてみたいものだ。

 まさかとは思うが脱出路の一つとして残していたのかと壊さなかった理由を探しては辿り着く解の一つに、あり得ないなと否定しつつもどうであれおかげで助かったのは確かなのだ。

 

 「おいおい、お前達だけ貧乏くじだと思うなよ。雇われてすぐに俺も警備という事でお守をさせられてるんだからな」

 「再就職後に文句を垂れ流すなんてお行儀の悪い番犬だこと」

 「相変わらず口は悪いな」

 

 朗らかに笑うはストラテロジック社元警備部長ビンスである。

 脱出したビンスはゴーストから再就職先に知人を紹介され、数日の期間を経て部隊ごと雇われる事が決定したのだ。

 なんと今はCIA所属の特殊部隊とは恐れ入る。

 理由としては警備部の各個人の経歴に、以前とある作戦(ロビト島)で特殊部隊を損失した事とその作戦で活躍した工作員ほどでなくとも自由の利く部隊が欲しいとの案があったらしく採用された。

 無論経歴は色々な手段を持って誤魔化しはされたらしい。

 

 「カッカしなさんな。コスタリカ産のバナナ食うか?」

 

 プチっと何かが切れた幻聴が聞こえた…。

 ゴーストは去り際にポーチに入れていたコスタリカ産の珈琲とバナナ(※装備可能)を置いて行ったのだ。

 そのバナナこそヴィナスの背に当てた銃口らしきものの正体であり、拳銃と思って従ったヴィナスはその真実に相当苛立っている。

 口悪く言われた軽い返し、もしくは揶揄いのつもりなのだろうが、ビンスはヴィナスの怒りの導火線に火を灯してしまった…。

 

 「喧嘩売ってるのね?そうね?誰か銃を貸してくれないかしら。出来れば重機関銃が良いわね」

 「熱烈なアプローチだが遠慮さして貰おう。さすがに初任務で監視対象と交戦したなんて笑えないからな」

 「落ち着けヴィナス。小屋が吹き飛ぶ」

 「少しは俺の心配してくれてもいいんだが?」

 「お前が壊しそう(主武器:RPG‐7)で怖いんだ」

 「なんだ、なんだ?随分と元気そうだな。良い子でお留守番してたか?」

 

 今にも噛みつきそうなヴィナスに肩を竦めていると、扉が開いてダルトンを筆頭に複数人がロビーに姿を現す。

 待ちに待った登場に感動の涙ではなく怒気と殺意の籠ったヴィナスの熱すぎる視線が向けられる。

 

 「レディを待たせるなんて悪い人ね?」

 「悪かったって。こっちも色々忙しかったんだぞ。ようやくごたごたも落ち着いて休暇(※自宅謹慎)が取れたから急いで来たってのに」

 「絶対に違うだろ…」

 「――っそうだ、二人に紹介しておこう。こちらCIAのロジャー・マッコイ大佐だ」

 「始めまして。話はゴーストから聞いているよ」

 

 慌てるように横に避けて後ろに並んでいた初老の男性を紹介し始めた。

 彼こそゴーストが言っていた知人なのだろう。

 落ち着いた雰囲気を持つロジャーとあのゴーストを思い浮かべると、どうも正反対のように思えてならない。

 

 「貴方ね。あのゴーストの知人とかいう変わり者は。色々巻き込まれて苦労してるでしょうに」

 「はは、そんな事もないさ。私は彼に命を救われた恩があるんだ。そんな彼から頼まれたら断る訳にもいかないだろう」

 

 優し気に微笑むロジャーは鞄から取り出した書類一式を渡し、それが合衆国で暮らしていくに必要な偽りの(・・・)身分証明などであると認識して目を疑った。 

 恩人からの頼みという事はこれらもゴーストが用意させたのだろうが、何から何まで頼り過ぎではないだろうか。

 

 「全く、幽霊と言いながら引っ掻き回し過ぎだろう」

 「本当に余計なお世話ばかりね。今度会ったら聖水を掛けてやろうかしら」

 「止めておけよ。新聞では吸血鬼らしいからなアイツ…」

 「君達はそうなのか。だが私は色々と新鮮な体験をさせて貰っているよ。この歳で子持ちになるとは思わなかったがね」

 「子持ち?―――ッ、ルーシー!」

 「久しぶりねスネーク。それにヴィナス」

 

 散々な言い様にクツクツと笑うロジャーの背後よりひょっこりと現れたルーシーに驚きを隠せなかった。

 確かにスネークもヴィナスも死亡確認は一切していない。

 アイツの能力(キュアー)を知らなかったのもあるし、しっかりと確認してなかった自分の落ち度も認めよう。

 されどアイツに対して恨み節の一つぐらい抱いても良いだろう。

 ダルトンは知っていたようで反応を見て笑い、ヴィナスは面白くなさそうにルーシーを睨みつける。

 

 「――生きていたのね?」

 「えぇ、私も幽霊に助けられた口なの」

 「コードネーム変えた方が良いんじゃない?幽霊が憑りついて祟るなら兎も角蘇らせるとかどうなの?」

 「あの人は死者は救えない。死にぞこないならモノさえ揃って居れば何とかできるんですって」

 「第四世代の被検体だったり?」

 「ルシンダの記憶には無いわ。アレは別のバケモノの類よ」

 「……本当に散々な言われようだな…解らなくもないが」

 「アレもその一端か?」

 

 ゴーストの異質な医療技術(キュアー)にルーシーの登場など脱出してから余計に驚かされているスネークとヴィナスは、ビンスが示す方向に居た者達を視界に収めても驚くよりは、呆れ果てた様子でため息をつくだけだった。

 ビンスが指示した方向にはゴラブ、カイギディエルなど対峙した被検体が制服を着熟して、ロジャーに随伴してきた兵士に紛れているのだから…。

 さすがにハラブセラップは身体が大き過ぎる為に山荘の外で待機している。

 

 「驚いたものだよ。自分は少し前に義娘(アリス)を引き取ったから面倒見てくれないかと頼まれてな。すると彼らも“おまけ”にと押し付けられた」

 「……頼まれ過ぎじゃない?」

 「この歳で義娘など戸惑いはしたが家が賑やかになってそれはそれで良いものだよ。それに知っての通り彼女はあまり手は掛からないし、彼女を慕っている彼らが警備しているんで家の警備体制はかなり高い」

 「だろうな。中隊規模で押し入っても返り討ちに出来そうだな」

 「過剰戦力過ぎる気もするが…」

 

 苦労は絶えないだろうなと同情の視線を送る。

 確かに手間や面倒はあったけれど、協力者が居たおかげでそれほどでもない。

 

 軍としてはデータやサンプル的な意味合いで被検体は欲している。

 されど今や研究所内のデータは勿論ルシンダ・ライブラリの消失によって詳細な情報どころか顔写真も残っていない。

 付け加えれば施設内に残っていた監視カメラに映っていた映像やワイズマンが入手していた被検体の写真などのデータは、何者か(B.B.)の手によって消去されていて被検体がどのような見た目をしているかさえ分からなくしてくれた。 

 他にもB.B.など(・・)色々と手を回してくれた者が居てくれたおかげで何とかはなった(・・・・・・・)

 寧ろ山荘への医療機器の手配や直属部隊を山岳訓練との理由で派遣したり、スネークとヴィナスの書類一式の準備の方が別の意味で手間だったまである。

 

 コホンと咳払いをしたロジャーとダルトンはスネークとヴィナスを真面目な眼差しを向ける。

 

 「君達はこれからどうするつもりだ?」

 「私は好き(自由)にさせてもらうわ」

 

 問いに鼻で嗤いながら当然のようにヴィナスは言い放った。

 対してスネークは少し考え込んでからぽつりと零すように返す。

 

 「俺は今まで過去を探していた。けど解かったのは俺には何もなく、ただの作りもんだったと言う事…」

 「お前ッ!?」

 「だからこれからは前を向いて生きて行こうと思う。作り物でも何も無くても生きて行く事は出来る。そうだろ?」

 「――ッ、ったくお前は…間違ってんだよ。ほら、入って来ていいぞ!」

 「スネーク!!」

 

 本当に今日は驚かされてばかりだ。

 ダルトンが声を上げると再びドアが開いてコンスウェラが駆け出してスネークを呼びながら抱き着き、続いてロディとデイブが嬉しそうな笑みを浮かべて近づいてくる。

 仲間達との再会に感極まって涙が出そうになるが、ここで涙など流せばどんな反応を周りが示すなど解り切っている為、全身全霊を持って必死に堪える。

 

 「言ったろ。俺は約束は守る男だって。ほら、お前らが持っていた1()00万ドルも」

 「おい、1()00だっただろう」

 「冗談だ。おまけにお前の古い記録も消しといたよ」

 

 堪えつつもダルトンの冗談を返しているとロジャーが耳打ちされて「そうか」と短く答えて踵を返そうとする。

 耳打ちした女性がタキヤマ博士だった事には最早驚かないどころか、ルーシーや被検体がロジャーについている事から当たり前のように受け入れてしまった。

 そのタキヤマは申し訳なさそうながら深々と頭を下げ、スネークは軽く手を挙げて応えるだけで留めた。

 

 「会う事は――多分ないだろうが、息災である事を祈ってるよアシッド(・・・・)・スネーク」

 「アシッド?」

 「違うのかな?ゴーストがそう言っていたのだが…」

 「アシッド(ACID)か。それならそれで良いだろう」

 

 クスリと微笑んだスネークにロジャーは背を向けて帰路に就いた。

 偽造書類で入国して以来ダルトンによって保護(・・)されていたコンスウェラ達は、何があったかは聞かされていない為に困惑するばかり。

 

 「スネーク、大丈夫だった?何かされたりとか…」

 「大丈夫さ。大変ではあったがな」

 

 そう言ってスネークはコンスウェラの頭を優しく撫でた。

 各々に夢がある事から一緒にというのは難しいかも知れないが、これからも彼らとの繋がりを大事にしていこう。

 何もない訳ではなかった。

 俺には仲間との繋がりがあるのだから。

 同時にそれはコンスウェラだけでなく、今回の事件で縁を結んだ皆もだ。

 

 アシッド・スネーク(・・・・・・・・・)は非常に安らかな気持ちで仲間達を見渡し、これから先に想いを馳せるのであった。

 

 

 

 

 

 

●現代の吸血鬼…。

 

 主要道路から離れたひっそりとした道を何台もの車両が通過して行く。

 装甲車やテクニカルなどの複数台の車両に囲まれる形で、何台もの大型輸送車両が目的地へ向かって進む。

 彼らは現在極秘の輸送作戦を帯びた部隊である。

 

 ストラテロジック社で開発された新メタルギア“カイオト・ハ・カドッシュ”の残骸を予想している。

 確かにカイオト・ハ・カドッシュはスネーク達の戦闘及び、包囲した軍の一斉砲火を浴びて深刻なダメージを受けてはいた。

 当初直ちに廃棄する話も出ていたのだが、肝心のデータが自爆した研究施設には残っていない為、スクラップ同然とは言えそこからデータを拾い上げるほか術がなくなったのだ。

 軍としても再利用するつもりはなくとも設計図やデータがあればなにかと役に立つことはあるし、運が良ければ内部のデータからルシンダ・ライブラリの一端が覗ける可能性は高い。

 メタルギア同様に被検体という兵器(・・)も魅力的である事は確か…。

 

 問題はその巨大さゆえに移動手段が限られるという事。

 ストラテロジック社で事件が起きた事はすぐさま報道機関の知るところとなるだろう。

 そうなると中には報道ヘリで駆け付ける者も出て来るわけで、最高機密に相当するメタルギアを世間の目に晒させる訳にはいかない。

 そこで海路より軍を送り込んだ際に多くの戦車も移送した艦船にメタルギアを急ぎ積み込み、報道陣が駆け付けるよりも先に研究室から離して、目が届いていない湾にて陸路を持って移動。

 最終的に空軍基地の大型輸送機で保管に定められた基地へと輸送される事となっている。

 

 月夜の下、人影すらない道を警戒しつつ進む車両達。

 その車両群を一機の無人偵察機(サイファー)がカメラに収めていた。

 

 『見つけたよゴースト』

 「さっすが天下一の凄腕ハッカー。情報が正確で助かるよ」

 『褒めたって何もないよ』

 「いやいや、本当に凄いよ」

 

 言う割には声が弾んで嬉しそうなのが丸解りなB.B.にゴーストは褒めながら向かってくるであろう車両に対して身構える。

 現在ゴーストは指示を受けたとかでもなく、自身の意思で任務を行っている最中である。

 内容はストラテロジック社で開発されたメタルギア“カイオト・ハ・カドッシュ”の残骸の完全破壊。

 これよりたった一人で車両の足を止めると警備している部隊を打ち破って、メタルギアを完全に破壊するのだ。

 

 研究施設で破壊していればこんな苦労はせずに済んだのだが、そこは“吐いた唾は吞めぬ”というか自身の尻拭いとでも言うべきか…。

 

 スネーク達に負傷者の治療とメタルギアの処分をすると言い切ったゴーストは、自分が言った通り負傷者の治療を次々と行い、その中には警備部だけでなく死にかけていたルーシーも含まれていた。

 キュアーを用いて治療を済ませていったゴーストはふと疑問を抱いたのだ。

 果たして手持ちの火力でメタルギアを破壊し切れるのだろうか………と。

 

 メタルギア戦で警備部も手榴弾など爆発物はほとんど消失しており、大見得切って言っただけにビンスに爆薬足りないからRPGの弾頭を山ほど下さいとは言い辛く、その場凌ぎの言い訳を残して放置するしかなかった…。

 今思い出すだけでも恥ずかしさで赤面してしまいそうだ。

 

 …という訳で事後処理にやって来た訳で、協力者としてB.B.にも手伝って貰っている。

 ゴーストの正体を探ってくれと頼まれていたB.B.は、スネークの無線からゴーストが使っている周波数を特定すると、面白そうという理由で独自に連絡を付けていたのだ。

 最初は探りを入れるようにしていたB.B.であるも、会話をしているといつの間にか意気投合。

 ハッキングや調べものしている最中、暇な時間が出来ると色々と談笑を楽しむ仲となった。

 

 ダルトンとの会話で「~それに人の意志を持たせたメタルギアってのは過去に存在したって聞いたし(・・・・)~」と言ったのも、談笑の中で過去の活躍を聞いた際にゴーストが軽く話したからである…。

 勿論他言無用でねと後押しもされ、B.B.としてもひけらかす気はなかった―――というか内容的にヤバイ気がして正直に情報として発信する止めたのだ。

 

 『どう一人で戦うのか楽しみだよ』

 「昔だったらそう難しくなかったんだけどねぇ」

 『歳には勝てないとかそう言う話?』

 「いや、(DD)なら支援砲撃で煙幕を直撃させて、煙の中へ突っ込んでフルトンを輸送車両に取り付けるだけの簡単な作業で済んだって話」

 『待って!それ凄く気になるんだけど!!』

 「後で聞かせてあげるよ。とりあえず先に済ませよう」

 

 道端で待っていたゴーストに車列が近づいてくる。

 じっくりとタイミングを計って、砲塔(・・)を先頭車両へと向け始める。

 通常の戦車が待機していたなら彼らも気付いたであろうが、ゴーストが搭乗している戦車に暗さもあって気付く者はいない。

 突然鳴り響く砲声と戦闘車両を大きく揺らす衝撃。

 攻撃を受けた事と先頭の装甲車が急停止と砲撃を受けた事で横向きに停まり、そこまで広くない道を塞いでしまった。

 急ぎ後退しようとするも指示が出る前に最後尾の車両に砲撃が行われ、後方車両の足も止められた事で前にも後ろにも進めなくなり、警備の為に随伴していた部隊が降車して周辺警戒を強める。

 多くが戸惑いと敵を発見しようと必死に探しているのだが、それらしき者も兵器も見当たらない。

 

 「何処だ?」

 「なぁ、オイ…」

 「どうした!?居たのか?」

 「アレ……なんだ?」

 

 一人の兵士が不可思議な物を目にして隣の兵士に問いかけ、二人揃ってその対象に対して首を傾げる。

 道端に大きめのダンボールが立って(・・・)いるのだ。

 良く観れば二段重ねらしく、何処となく戦車を模した形である。

 何よりキャタピラの代わりに下から覗く人の足がとたとたとたと走って近づいてきている。

 なんだアレは?と困惑していた二人もようやく理解し、「「敵襲!」」と叫びながら銃口を向けて攻撃を開始。

 

 『ちょっと撃たれてるよ!?』

 「大丈夫!ダンボール戦車がこれぐらいで壊れないから!!」

 『なに、そのダンボールに対する信頼性!?』

 「僕はそこまで(ネイキッド・スネーク)ではないんだけど?」

 『もっと上がいるんだ』

 

 国境なき軍隊(MSF)の技術班が総力を挙げて開発したダンボール戦車の特殊装甲(※ダンボール)は早々破れはしない。

 徐々に削られてはいるが…。

 走って来るダンボールに戸惑いながら兵士達は撃ち続ける。

 辿り着くまで耐え切れないと判断したゴーストは盾にするように脱ぎ捨てると、スモークグレネードを手にして駆け出した。

 追うように銃口を向けられようとも手にしたスモークグレネードを幾つも放り投げて車列を煙で包み込む。

 迷うことなく突っ込むとメタルギアを乗せた輸送車へ乗り込み、背負っていたリュックサックを置いて兵士の無力化に走り回る。

 

 兵士にとっては恐怖の一時であった。

 浴びせるように放った銃弾は無情にも回避され、正体不明な敵は煙幕の中を自由気ままに駆け抜け、一人一人仲間が襲われて減っていく。

 煙りが晴れて月明かりが照らす路上に立つのは、黒のロングコートを靡かせるゴーストのみであった。

 

 『すっごい!まるでコミックだ!!』

 

 純粋に凄い凄いと興奮気味に喜んでいるB.B.にゴーストは頬を緩める。

 知り合いが観たところで「またか」など呆れかいつも通りと捉えられるため、こうしたピュアな感想が非常に嬉しくて仕方がない。

 

 警備していた兵を全員無力化したゴーストは一人ずつ路上から離れた位置に運んでは、途中で起きないように麻酔ガスを撃ち込んでを繰り返していく。

 ここなら大丈夫という距離まで運んだところで今度はメタルギアの破壊に着手する。

 リュックサックには対戦車地雷やC4爆弾、グレネードなどなどの爆発物がパンパンになるまで詰められており、とりあえず輸送車両のそれぞれに詰まれたメタルギアのパーツ内部に設置して行くのだが、当然ながらゴーストは適正な量というものを心得てはいない。

 だからありったけを積み込み、全てを設置して回った。

 

 ゆえにこれは必然だっただろう。

 起爆させると誘爆に誘爆を重ねてメタルギアの内部を完全に破壊するどころか、輸送車両や周辺の装甲車を巻き込んでの大爆発&大炎上させる結果になったのは…。

 

 あまりの迫力にB.B.は非常に喜ぶが、爆発させた本人はやらかしたと顔に出して、寝かせていた兵士の一人を叩き起こすと速攻で逃げ出すのであった…。

 

 

 

 

 ちなみにゴーストはACIDの意味を解っておらず、単にスネークだと区別がつき辛いと紫に相談したところ、タイトルであったアシッドと返された為にそう呼称することにしたのである。




 これでアシッド終了となります。
 次回は……少し悩み中。
 メタルギアソリッド(1)を書く予定だったのですが、とりあえずゴーストバベルの内容次第で先にそちらを先に描くかも知れません。
 私、ゴーストバベル未プレイなもので…。

 ……ソフトは探すとしてゲーム機動いてくれるかなぁ…。
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