すみません。本当にお待たせしてしまいました…。
お知らせです。
今月より「メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました」は毎月十日に投稿することにしました。
もしも余裕があって投稿するときは二十五日に投稿するかもしれません。
静かな森の中。
木々より生えた葉の隙間より太陽の光が差し込み、人目どころか木漏れ日からも身を隠すようにしたスネークは木にもたれ、口で咥える枝を力強く噛み締めて険しい表情を浮かべていた。
バットは出会った時を思い出しながらスネークの太ももに触れる。
深々とボウガンの矢が突き刺さっており、痛みにより行動するのもままならない。
ゆえにこの場で治療しなければならないのだが、その治療が問題だった。
矢に塗られた毒は解毒剤で何とかなった。だが、刺さった矢を何とかしなければ先に進めない。刺さったままでは痛みに苛まれ、動きづらい上に治ろうとした肉が矢とくっ付いて手術なしでは抜けなくなってしまう。かといって引っ張りぬこうとすれば矢の返しに血肉が抉られ、傷口を大きくしてしまう。
対処法が分からないバットは無線機を使って指示を請うた。
『返しがあって引っ張れないんだったら、押し込んだらいいんじゃない』
なんとも軽く回答されたのだが実際それしかないように思える。
押し込めば余計に傷口を増やすが引っ張るよりは傷口は小さいうえに摘出し易い。
すぐさま伝えた所、承諾したスネークは枝を咥えて我慢するからやってくれと今に至る。
「―――ぐぅううううう!?」
矢尻に手を乗せ、「いち、にの、さんで!」とカウントダウンをして力を込める。押し込んだ矢より肉を引き裂き、押し進んでいく感触を感じて険しい表情を浮かべるが、決して力は緩めない。
刺さった反対側より先を覗かせた矢をそのまま抜き取り、すぐに消毒と止血、包帯で治療する。
痛みで脂汗を掻いたスネークは大きく息を吐き出した。
「これで治療は終了ですよ」
「あぁ、すまない。助かった」
「いえいえ、どういたしまして」
「さてと、行くか」
「ちょ!?いやいやいや少し休みましょうよ」
治療が終わったことで何事もなかったように立ち上がり先へ進もうとするスネークをバットは制止する。
傷の治療は終わったとはいえ毒や傷などで弱っているのには変わりない。出来ればどこかで休息を取るべきなのだろうが戦場のど真ん中では難しい。それでも多少休むべしと制止しようとするがそれを払われる。
「休んでいる訳にもいかないだろう。少しでも先に…」
「ほら、無理しないで」
やはり強がっていても本調子ではなく、足元がふらついて倒れそうになるのを何とか支える。肩でも貸せれば良いのだろうが身長差がありすぎてできない。もちろんおんぶなどすればバットは耐え切れず倒れるに決まっているので提案すらしない。
先を急く様子に諦め、AK-47を構えながら先に進む。
「ボクが先に行きますのでゆっくりでいいのでついてきてください」
大きく頷いたスネークはすまないと呟き、身体に鞭打ってゆっくりと進みだす。
研究所方面から森を抜け、ポニゾヴィエ倉庫へと戻ってきた。
前回強行突破した際に急いでいたとはいえオセロットを邪険に扱ってしまった。彼はプライドが高そうなのであんな目に合わせたら執念深く追って来そうで怖い。薄暗い通路を周囲に気を配りながら進む。勿論、後ろからスネークが付いてくるのを確認しながらだ。敵だけに注意すればいい状況からスネークの事も気にせねばならなくなり、精神的に疲れが増してゆく。
急いでいたために前回は気が付かなかったが、食糧庫を発見しさっそく漁ろうと思うのだが兵士が巡回している。
二階に一人、一階に二人の万全とは言えない兵士が徘徊している。
え?徘徊じゃなくて巡回?
いやいや、足音より大きな腹の音を鳴らし、口を開けば「腹減ったなぁ」と呟き、ネズミを追い回す様子は警備ではなく食べ物を求めて彷徨うゾンビそのもの。
巡回という言葉より徘徊のほうがしっくりくるんですよ。
顎に手を当てて考え、ふと自分の中では妙案を思いついた。
笑みを浮かべながらスネークを柱の間に隠し、食糧庫前を徘徊する兵士を顔を少しだけ覗かして様子を窺い、背を向けた瞬間に残っていたレーションを放った。
一瞬何が降ってきたのか理解できなかったが、それが食べ物だと理解すると大慌てで近づき手を伸ばす。
「あー!こんなところに食べ物があるぞ」
「――っが!?」
拾いに行った兵士の後頭部に一撃をお見舞いしつつ、下の階の兵士にも聞こえるような大声で叫ぶ。
一撃で気絶させた兵士を脇に寄せ、急ぎ隠れる。一階からは「なに!?食べ物!?」と言いながら大慌てで駆けてくる足音が響いてくる。
気絶している仲間よりもレーションに飛び掛かった二人が奪い合いしている隙に背後から、スネークより借りたMk22で頭部を撃って眠らせる。気絶したやつにも一発撃ちこんでおいた。
食糧庫を漁るとカ●リーメイトと即席ラーメンと書かれた四角形の袋が置かれていた。カロ●ーメイトは以前に食べた事があるが、即席ラーメンなるものはまったくわからない。とりあえずポーチに仕舞いながらスネークと共に一階にある赤い扉を目指す。
去り際、腹が減ってもなお彼らが手を付けなかった食糧庫より食糧を調達した罪悪感からか、レーションは回収せずにその場に残していった。
―――出る直前に見つけたミナミオカガニはポーチに仕舞ったがね。
そしてここからが長かった。
また森林地帯を抜けなければならないのだが、道のりが長い。
しかも森の至る所にトラップやら兵士やらが配置されており、なんとかスネークと共に掻い潜り、もしくは無力化しながら先に進む。
スヴィヤトゴルニ南部から西部、そして東部へとただひたすら進む。
道中、エヴァよりスネークに無線が入り、どうもこの先でコブラ部隊がひとり、ジ・エンドという名の知れた狙撃兵が待ち構えているらしい。
スネークは最悪のコンディションで、バットはそろそろ休憩時間を挟まなければならない時間。
焦りと不安が混ざり合う中、バットは自分たちの幸運を喜んだ。
なんと小屋があったのだ。
これで少しは休めるだろう。付近の敵兵を排除すればだが…と見つからないようにやる気はあるのだが、最悪交戦の覚悟を決めて潜みながら向かったのだが……ザ・ボスと一度戦ったからか敵がすごく弱く感じる。
あっけなさすぎる相手に首を傾げながら一人ずつ捕らえていく。殺すのが一番楽なんだけどやはり罪悪感からか躊躇ってしまう。躊躇なく気絶はさせていくけどね。
小屋と言うかコテージ・別荘と呼ぶべき建物の内部と付近には合計5名もの敵兵がおり、指と足を縛って角に集めておいた。
「ちょっと出てきますけどゆっくり休んでいてくださいね」
「どこへ行く…」
「食糧調達ですよ」
「なら、俺も手伝お――」
「ちゃんと動けるようになってから言ってください。次はジ・エンドっていう狙撃の名手と戦うんでしたよね。今のままでは難しいでしょ?だからしっかりと休んでいてください」
実際問題ひとりで勝てるか不安なのだ。なのでスネークには万全の状態を整えてほしい。
はっきり言われて口を閉じたスネークは諦めたのか壁にもたれて瞼を閉じた。一応兵士たちを縛ったロープが緩くないか確認して出かける。
この森は宝の宝庫だった。
小屋から食糧探索に出たバットの最初の感想である。
生き物はアナウサギ、カササギ、ベニスズメ、サンゴヘビ。果物は以前に食べたヤーブラカマラカにツタウリと初めて目にした物を手に入れた。気になってツタウリはその場で試食。実がみずみずしくてのどの渇きを潤し、美味しさが口の中いっぱいに広がった。これは調理せずにそのまま切り分けて食べたほうが良さそうかなと思いながら満面の笑みで仕舞っていく。
探索中にバルトスズメバチの巣も見つけたのだが、今回は武器や弾薬はXM16E1の弾薬以外落ちてなかった。当たり前と言えば当たり前なのだが今までその辺歩いたら弾薬が無造作に落ちていたりしていたので少し残念である。
代わりに雑誌が二冊ほど落ちていたのだけどこれはどうしたものか…。
道中気絶させた兵士たちをもう一度気絶させ、縛って一人ずつ小屋の前に運んでいく。途中で起きて増援を呼ばれたら迷惑だし、殺すのは気が引ける。精神面を考慮して連れて来たが肉体的疲労が思ったよりやばい。
疲れで発生する眠気を息とともに吐き出すように深呼吸を繰り返し、頬を叩いて眠気を多少なりとも晴らす。
「ただいま帰りまし………何しているんですか?」
「い、いや、これは休憩がてらに…その…」
「ボクにはいい大人がひとつのグラビア雑誌に群がっているようにしか見えないのですが」
バットの冷めた視線の先には縛った兵士達とスネークが中継基地で拾った雑誌を囲む形で凝視している様子が広がっていた。
先ほどとは違って呆れたため息を吐き出し、連れて来た兵士を一人ずつ角へ運んでいく。ついでに道中で拾った雑誌を読んでいた雑誌の上に無造作に投げた。
確認はしなかったが背後が慌ただしく動く気配がしたが気にせず収穫した食糧をもってキッチンへと向かう。
簡易的な台所に立つと鍋やフライパンを探す。休憩時に検索した昔の食事を作って見ようと思っていたのに鍋やフライパンはあるのだが調味料がほとんど残っていない。
少し悩みながら【なべ】料理を作ることにする。
あれなら具材を煮込むだけらしいし、出汁に出来る食材も持っていた。
アナウサギ、カササギ、ベニスズメを簡単に血抜きして身を一口サイズに切っていく。鍋には水を張り倉庫で捕まえたミナミオカガニで出汁を取る。サンゴヘビは毒ごと内臓を取り除き、身をきれいに洗ってから骨を細かく切ってからぶつ切りに。
出汁を取り終えたミナミオカガニを取り除いて殻を割って中身を出汁に混ぜる。あとは切った肉類を入れて煮込むだけ。その間にヤーブラカマラカとツタウリを切り分け、ヤーブラカマラカは炙って、中にあった軟膏を取り除いたバルトスズメバチの巣の蜂蜜をかける。
初めての鍋料理を少し食べて頬を緩ませながら、鍋とデザートの果物類をテーブルに運んでいく。
………人がせっかく料理をしていたというのにグラビア雑誌三冊を広げて敵兵士と共に鑑賞しているスネークに少しイラっとしたのは口に出さないでおこう。
「おぉ!旨そうだな」
「でしょう。グラビア雑誌に夢中になっている間に作ってみました」
「…怒っているのか?」
「さぁ、どうでしょうか」
「……すまない」
「料理が冷めるので熱いうちにどうぞ」
いけない。口に出さまいとしたのに声色に苛立ちが乗ってしまったようだ。
鍋より皿に移して食べ始めるスネークに続いて、自分も食べようと席に着こうとしたが、グラビア雑誌から一斉にこちらに向けられた視線に動きを止める。
兵士たちのゴクリというのどが鳴る音を耳にしながら少し思い悩み、何度目かのため息を吐き出し、ひとりの拘束を解いた。
「な…どうして…」
「そんな視線向けられたら食べ難いんですよ。それに量だけはいっぱいありますから。但しへんな動きをすれば容赦なく撃ちますから」
部屋の隅々まで見渡せる壁際に持たれながら仕舞っていたAK-47を構える。
拘束を解いた一人にあと二人ほど解かせ、食べながらも縛っている者の口へと食べ物を運んでいく。
美味しい美味しいと言いながら食べる敵兵士を眺めながら食糧庫で拾った●ロリーメイトを口に運ぶ。
「ふふ…」
「ほうかひまひ(どうかしまし)…ゴクン。どうかしましたか?」
「まさか敵地に潜入して敵と一緒に食事をするとは思いもしなかったなと」
「ボクもですよ」
「だが、戦場でその甘さは命とりだぞ」
「ですよね…気を付けます」
出汁までなくなった鍋と皿の上から果物が全部無くなったのを確認して、再び全員を縛り直して行く。
眼前に休憩時間までのカウントダウンが入ったので少し出ていくと伝えてバットはログアウトした。
コードネーム【バット】としてプレイしていた宮代 健斗が休憩のために自身の生まれ育った世界に戻ったのを確認して、異世界へと渡れるようにした三名は大きな息を吐き出した。
「ふっはー。異物を入れただけでこうなるか」
「最初は平穏な生活に慣れ親しんだ少年に何が出来るかと思っていたけれど中々楽しませてくれますね」
「青いのがVRを異世界転送用の端末にしたのが効いたのじゃろ。あやつ未だにゲームだと信じ込んでおるようじゃしの」
「でも最初に比べて人を殺さなくなったわよね」
「良心が痛んだんでしょう。ゲームと分かっていてもNPCに感情移入するみたいに」
「まぁ、あの世界の者達は本当に生きておるからの。言葉を交わすなどすれば感情の移入もし易いじゃろ」
各々地べたに座り込み、中央の地球儀より映し出される映像を巻き戻してそれぞれがお気に入りのシーンを再生する。
女性らしい容姿の赤色の人影は火で炙ったヤーブラカマラカの実に蜂蜜を付けて食すシーンを見てごくりと唾を飲み込んだ。
言い出しっぺの青色の人影はあっさりとバットにヴォルギンが水中に叩き込まれ、陸地へ上がろうとしたところをザ・ボスにけり戻されるシーンを見て大爆笑。
三名の中で最年長の灰色の人影はザ・ボスとのCQC対決にザ・フィアー戦の映像を見て笑みを浮かべる。
「少し提案があるのだけど」
「提案ってなにかすんすか?まさか抜けるとか言い出すとかは…」
「久しい娯楽を投げ出すなんてことはしないわ。提案というのは少しこの世界を改変しないかっていうこと」
「弱体化とか強化みたいな特典を今更付けるんすか?」
「ぬぅ…わしは反対じゃな。ああいうのは力が有り余っとる奴がやることじゃ。わしらみたいな下っ端が行えるものではない。出来たとしても大きな力を行使すればする分だけ上役に感づかれる」
「そうそう。せいぜい無線機に介入して声をかけるか、VRを通じて異世界に一時的に飛ばすのが精いっぱいすよ。それにあまり改変するのも気分が萎えるっすよ」
反対意見を述べる二名に対して赤色はにやりと笑う(目も口も存在しないので笑っている雰囲気)。
「私も上役にばれて消失なんてされたくない。だから私が提案するのは新しい指示を出すのよ」
「指示?」
「原典になかった選択肢、方向性を示してあの子がどうするかを見るのよ」
「ほぉ!そいつは面白そうだ」
「しかし何を命じるつもりなんじゃ?」
「勿論!自然で手に入れられる素材を使った料理のレパートリーを増やさせるのよ!」
キラキラと赤色の辺りだけが輝いて見えるほど堂々と、高らかに、興奮しきった様子で言い放ったが、逆に青色と灰色は呆れたようにため息をついた。
それなりに長い付き合いになり、各々の趣味や興味を引くものを多少なりとも知っている。
中でも赤色は化粧やファッション、食に興味を持っていた。しかし科学技術を進歩させ過ぎた宮代 健斗の世界ではそのことごとくが簡略化され、味気ないものになってしまっている。
食事は材料を用いる料理から必要な栄養源と元になる料理の味に近しい味付けをしたレーション食が基本となり、服装は一部の富裕層を除いて制服で見分けられるように職種や所属している団体の服しか支給されておらず、大体が一種類のセットを複数持っているだけである。化粧に関しては簡易的な整形手術か一か月は効果を持続する薬品で事足らされている。
自身が興味をそそられるものを悉く簡素にされ、溜まりに溜まっていた思いを爆発させるのは理解できる。が、それに自分たちも巻き込まれるのは勘弁してほしい。
「増やしてどうするのさ?」
「良いじゃない。あの子の料理スキルが上がるわよ」
「メタルギアソリッドのメインの戦闘には関係ないと思うんだけど」
「…戦闘ばかりなんてメンタルが持たないわよ」
「あいつゲームとしているから娯楽としてやってんだけど」
「………えーと、灰色…」
「助けを求められてもな。諦めるんじゃな」
一言で切り捨てられた赤色はがっくりと肩を落とした。
ため息を吐き出した青色の横で灰色がわざとらしく咳き込む。
「ならわしから提案じゃ」
「…盆栽は却下すよ」
「…自分の趣味に他の者を巻き込むのはどうかと思います」
「違うわい!というか赤いのに言われたくないのぉ。
確かに興味があるがあやつの趣味ではあるまい。それに戦場のど真ん中で盆栽を楽しむ余裕もないじゃろうしな」
「じゃあなんなんすか?」
「ミッションを言い渡そうと思っての」
「「ミッション?」」
興味を持った二名の視線を受けながら灰色はニタリと笑った。
「原作では存在しないミッション。
死ぬべき定めにある人物の救出。
潜入するのはバット一人。
一度警備を破られたために厳重にされた研究所。もしくは要塞までの護送中という限られた時間と大勢の敵相手での戦い。
―――――わしはグラーニンの救出作戦を提案する」
サイド・オプス【グラーニン救出作戦】
ミッション内容 :グラズニィグラードに連行される研究者の救出
ターゲット :アレクサンドル・レオノヴィッチ・グラーニン
入手可能アイテム:ゲームクリア後に【メタルギアの設計図】を入手
入手可能スキル :【スカウト】or【クイック・ドロー】or【三ツ星シェフ】より選択
●スキルのランクアップ
・野戦料理人D→C
戦場で作った料理に疲労回復と士気向上の効果付与。
調理速度の向上。
効果はスキルのランクによって変化する。