人質であったドナルド・アンダーソン局長もケネス・ベイカー社長の両名が死亡。
どちらも心臓発作のようだがあまりにも奇妙。
メディカルサポートのナオミは心臓発作を引き起こせる、または心臓発作を起こしたように見える薬物がある事は語ってくれたが、実際どうかは解剖して見なければ分からないと言う事で原因不明。
加えてベイカー社長が言い残した言葉も謎を残すばかりで、何か嫌な予感というか胸騒ぎがする。
そんな中で新たに専門家が協力してくれることに。
ナスターシャ・ロマネンコという軍事評論家で軍事アナリスト。
彼女は核廃絶を訴えている事から今回の事件での危険性を理解し、情報協力は惜しまないとの事。
心強い味方はサポート班だけではなかった。
「人質は両名死亡。メタルギアがここにあって向こうはいつでも核が撃てる状態。要求としてはビッグボスの遺体。破壊や核を制止するには三つのPALキーかハル・エメリッヒ博士にご教授頂くしかない――って事で良いの?」
「あぁ、その通りだバット」
研究棟へ向かう道中でバットと合流出来たのだ。
正直古巣であるフォックスハウンドを相手にするだけでも骨が折れるというのに、乱入してきた忍者や謎が多い事から信頼できる仲間は多い方がありがたい。
ただ一緒に
メリル・シルバーバーグ。
フォックスハウンドの補充要員で蹶起に対して反対した事で捕えそうになったところを、バットによって危機を脱してからは施設内を探っているらしい。
独房で出会ってからプルパップ方式の
「それにしても伝説の英雄に会えるなんて光栄ね」
「英雄なんてもの居るのは物語の中か、俺が知っているのは死んだか刑務所の中だ」
「でも叔父から話は聞いているけど英雄そのものじゃない」
姓は違えどメリルはキャンベル大佐の姪だ。
正確にはキャンベル大佐の弟夫妻の娘で、両親が戦争で亡くなってからは大佐が面倒を見ていて、軍人だった父の影響もあって自ら軍人へと志願したらしい。
一体どんな話を聞いて来たのやら…。
「無駄話は良いからほら?」
「なんだ?小遣いでも欲しいのか?」
「違うだろ。持ってんだろ煙草」
「ほぉ、お前も煙草を吸うようになったか」
「吸うのはアンタだけで間に合ってる。赤外線見るんだよ」
だろうと思ったとスネークは煙草を渡し、火をつけた煙草の紫煙に浮かび上がる赤い線。
歩いて居れば引っ掛かるだろうが幸い下の方は空いている。
匍匐前進で進めば奥に
「罠には鼻が利くな」
「犬じゃあねぇつーの」
『というかスネーク。貴方何処に煙草隠していたの?』
「隠せるところには隠せるもんだな」
身一つで潜入する際には不凍液などを注射するなど色々検査と準備を受けている。
中には身体検査も行われ、ダイビングスーツで潜入する事から武器類すら持ち込めなかったというのに、何処に煙草を隠していたのかとナオミが不思議そうに問いかけるもスネークは自慢げに微笑むばかり。
「このアサルトいる?」
「お前が使えば良いだろ」
「アサルト系ってあんまり使わないし、弾をばら撒くのならサブマシで間に合ってる」
「なら置いて行くか」
「あー、ここの赤外線取れば簡単なセントリーガンもどき出来ますよ」
「お前……狙撃手でなくて工作兵だったか?」
「この前、母が仕掛けた物で酷い目に遭いまして……勉強したんです」
「相変わらず苦労してるんだな」
カチャカチャと壁に埋め込まれていた装置を弄り、取り外して行く様を眺めながら周辺を警戒しつつ、セントリーガンに使うであろうファマスを回収しておく。
簡易とは言え自動の銃座であるセントリーガンは役に立つ時もあるだろう。
ただその前にメリルをどうするかだ。
新兵なのは明らかだが気が強い事から待っていろと言っても勝手に動くのは明白。
正義感と言えば良いのか軍人としてなのかは解らないが、放っておけば一人で解決しようと無茶をする。
そう考えたら目の届くところにいてくれた方がまだマシ………なのか?
「で、新兵はどうする気だ?」
「ルーキー扱いしないでって言ったでしょう!」
「置いて行く訳にも……なぁ?」
バットも同意見だったと見える。
ここは仕方がないとしか言いようがない。
下手に放置して戦死されでもしたらキャンベル大佐に会わせる顔がない。
「分かったメリル。だがここから先は遊びでは済まないぞ。躊躇ったら死ぬ」
「わ、解ってるわよ!」
「一応支援はする」
「だから私を――」
「新兵だからでなく俺は狙撃手。援護も仕事だ」
バットは早とちりしてしまった事を自覚して口籠るメリルを見てクスリと笑う。
絶対そう思うように言っただろうにと視線を送るも、知らぬ存ぜんと言った態度だ。
新米という不安は残るが今はこの三人でチームを組むのだ。
さすがに手取り足取りなんて事はせぬが。
蛇と蝙蝠。
本当なら多少ぼかしながら機密扱いの武勇伝の数々を叔父から聞かされた。
接してみて話で聞いて思い浮かべていた英雄像は崩れたけれど、頼りになるのはビシビシ伝わって来る。
潜入を主にしている為に戦闘面での強さを見る機会は独房を除けばなかったけれど、ソリッド・スネークの潜入や身を隠すノウハウに、罠に対する勘の鋭さが尋常ではないバットなど、尋常ならざるスキルを見せ付けられた。
叔父に聞かされた当時は冗談か誇張だと思っていたけれど、二人で戦闘ヘリである
研究棟へ向かって進む道中の敵兵の眼を掻い潜り、アイテムなどを回収したり赤外線が張り巡らされた通路を煙草の煙を頼りに回避して、施設から研究棟へ向かう為に雪原へと出る。
結構赤外線を見る為に煙草を消費してスネークが少し険しい顔をしていた以外は問題なく進んでいる。
そんな中、急に無線が入ってスネークが出る。
『気を付けろスネーク。その辺りにはクレイモア地雷が仕掛けられてある』
「誰だ?」
『ディープ・スロートとでも名乗っておこう』
「ウォーターゲートの内部告発者?いや、それよりもバースト通信じゃないな」
『……お前達の前方にM1戦車が待ち構えている。気を付けろ』
「本当に誰なんだ?」
『ファンの一人だよ』
突然スネークに無線が入るも相手が解らない様子。
ディープ・スロートと名乗る人物は伝える事を伝えると無線を切った。
審議は兎も角として本当ならここは地雷原で、先に進めば雪原で戦車とやり合う事になる。
どうすると悩んでいると唐突にスネークとバットが雪原に横たわり始めた。
「………何してるの?」
「なにって地雷の除去だろう?」
メリルは本当に意味が解らなかった。
この一帯が地雷原とすれば下手に進む事は叶わない。
戸惑っている彼女の前でスネークとバットは動じる事無く俯せになり、匍匐前進で雪の上を移動し始めたのだ。
訳が分からず眺めていると大分匍匐前進していたバットが回収したクレイモア地雷を見せ付けて来た事で、本当に回収していた事に目を丸くしてしまう。
真似してみると知らず知らずにクレイモア地雷を回収していた事実に何がどうなっているのか訳が分からない。
ある程度回収し終えて警戒しつつ先に進んだところで振動が伝わってきた。
駆動音とキュラキュラとキャタピラの音からまさしく戦車である事が鮮明に伝わり、真正面から一台の戦車が堂々と姿を現した事で焦りが募る。
「本当に戦車が出て来るなんて…」
「気負うなよ。たかが戦車だ」
「そんな軽く思えないわよ!」
「考え方を変えるんだな。メタルギアに比べれば大丈夫だと」
何故そんなに余裕があるのかと見ていると、戦車から巨体の男性が出てきた。
大きさも目を引くものの、それ以上に極寒の雪原で上半身裸のまま姿を出した事の方が驚きだ。
寒さを感じていないのだろうか?
私はバットのホットドリンクを定期的に飲んでいるから問題ないのだけど。
………そう言えば何故かスネークは頑なに拒んでいるのよね。
『ここは
「ほら、こっち」
「きゃっ!?」
スピーカーを通して発せられた言葉に続いて砲弾が撃ち出された。
スネークは飛び退く事で回避したが、突然で動けなかった私はバットに首根っこを引っ張られて、岩陰に移された事で助かった。
『ハハハハハハッ、その調子だ蛇よ。大地を這い回るが良い!』
上機嫌に叫ぶ男は中に引っ込むと戦車を操って砲弾を放ち始めた。
スネークも岩陰に入るとナスターシャから敵性戦車M1の情報を訪ねてバットへと視線を向ける。
「バット、あの戦車何とか出来るか?」
「そんな!いくら何でも狙撃銃とサブマシンガンで戦車をやるなんて!」
「注意を引いてくれるなら一発で十分」
「乗った!」
短く打ち合わせもなく跳び出したスネークとバット。
ただスネークは目立つように駆け、バットはスモークグレネードと手榴弾を纏めて放り投げると煙幕の中に消え、風と共に煙幕が流れ切った雪原上にはバットの姿は掻き消えていた。
私もと動こうとするが、さすがに戦車相手に装備が心持たなさ過ぎる。
「隠れて観ていろ!」
そう言うとスネークはファマスを構えた。
戦車を歩兵一人が相手にするなど無茶が過ぎる。
ファマスを撃つも弾丸は戦車の装甲を撫でるばかりで有効打に成りえない。
お返しにと放たれる砲弾は当たれば一撃でスネークを葬れるし、砲撃に巻き込まれれば怪我などでは済まない。
それを見極めて避けるか岩肌に隠れてやり過ごしては凌いでいく。
『隠れてばかりか蛇よ!―――ぬぅ!?』
爆発音が響いた。
小さな爆発なれど銃弾よりは響いているらしく、戦車のスピーカーから怪訝な声が漏れ出た。
何が起きていると注意深く見つめると、放物線を描いて戦車へと転がる手榴弾が見えた。
岩肌に隠れつつも手榴弾を投げてはダメージを与え、目立つように雪原を駆け抜ける。
砲塔が旋回するも近づいたスネークがチャフグレネードを放ち、妨害を受けて砲塔が停止してしまう。
『やるではないか!』
再び姿を現した巨漢の男は取り付けられた機関銃を撃ちまくり、回避しつつ近づいたスネークは戦車の死角に潜り込む。
しゃがんだと思ったらチャフの効果が切れると同時に離れだす。
何をしているのかと心配ながら眺めていると動き出した戦車の足回りにて爆発が起きる。
「何をしたの?」
「地雷を仕掛けたのさ」
「そんなのいつの間に…」
「さっき拾っただろう」
確かにそうだがあの短時間で仕掛けるなんてと驚愕の戦闘に驚くが、さすがに戦車を倒し切るには不足。
砲塔がスネークを捕えようと動く。
飛び退くか走って回避するかと思ったスネークはその場で立ち尽くし、砲塔が回って来るのを眺める。
「ちょっと!逃げないと吹き飛ばされるわよ!!」
「問題ない。アイツがいる」
自信満々に口にしたスネーク。
確実に捉えた砲身から砲弾が放たれようとする最中に一発の銃声が響き渡り、何かが砲身の中へと通り過ぎて行った。
次の瞬間、戦車は内部から爆発を起こして炎上を始めた。
「言ったろ?一発あれば十分だって」
呆気に取られていたところ、聞こえた声に振り返れば雪に埋もれて潜んでいたらしく、バットが雪の中から立ち上がって雪を払う。
立っている所を見れば一人寝そべれるだけの浅いくぼみが出来ていた。
先ほどのスモークグレネードで視界を遮り、手榴弾で潜めるだけのくぼみをあの短時間で作ったのかと理解する。
とても真似しようとは思わないが、事前の説明もなしに良くやる…。
そもそも先の戦車が撃破されたのだって、砲身の空洞に狙撃銃の弾丸を通したのだって凄すぎる。
「俺は囮か?年上に無茶をさせるもんじゃない。若いうちに苦労しとけバット」
「そんな歳でもないでしょう。寒いんだからある程度身体動かさないと氷付きますよ」
「だったら雪の中に籠っていたお前の方が動いた方が良いだろう。今度敵が出てきたら前衛を任せるとしよう」
「狙撃手に前衛を任すって……戦場外で何するつもりですか?」
「後ろから見学でもさせてもらうさ。そもそもお前の師匠は接近戦も強かっただろうに」
「だったらビッグボスやグレイ・フォックス並みの活躍を期待させて貰います。ナイフで銃弾弾いてくださいよ」
「無茶を言うなよ」
「そっちこそ無茶を言ってたでしょうが」
口悪く言っているが二人の顔を見ればちょっとしたじゃれ合いというのはすぐ分かる。
二人共自分は英雄ではないと否定するだろうが、対戦車兵装なしの歩兵二人で戦車を撃破するといった快挙を目にすれば英雄でなくとも凄い存在である事には違いない。
差を感じながらも負ける訳にはいかないと気合を入れ、爆発した戦車より飛び降りたゲノム兵を捕え、セキュリティカードを奪ったスネークとバットの後を追うのであった。
黒煙を巻き上げてスクラップになってしまったM1戦車から巨漢の男―――バルカン・レイブンが雪原へ降り立った。
砲塔に銃弾を通されて砲弾が爆発。
内部の砲弾が誘爆して爆発炎上した割には煤が付いたぐらいで無傷に近く、その表情は険しいどころか上機嫌と言った有様であった。
「クッハッハッハッハッ、やるなアイツら」
『どうだった?』
「ボスの目に狂い無しだ」
リキッド・スネークからの無線に対して頬が緩む。
これは予定されていた敗北。
ある事情から奴らを先に進ませなければならず、その為に奴らに罠や疑いを持たせぬ方法で新たなセキュリティカードをくれてやらねばならなかった。
だからこの敗北という結果自体は予定通りなれど、こうもあっさりやられるつもりは一切なかった。
そして対峙したレイブンは戦士として充実感を感じていた。
「アンタと同じで戦場に息吹を吹き込んでくれる。アレは俺が頂く!」
「駄目よ。アレは私の獲物。横取りは許さない」
レイブンの後頭部に銃口が付き付けられる。
視線を向ければセミオート狙撃銃H&KのPSG‐1を構えるスナイパーウルフであった。
仲間だが瞳には冗談なんて物は存在せず、気に入らない返答をすれば即座に引き金を引くと言う想いを感じ取れた。
『お前達だけで話を進めるな。私が奴は仕留めるんだからな!』
「腕を斬り落とされて逃げ帰ったそうじゃないか
「ご愁傷様。隻腕では辛いでしょう。ゆっくり休養したらどう?」
『何とでも言えシャーマン。それとウルフ。心配痛み入るがいらぬ心配だ』
割り込んで来た
誰もが入り込んだ鼠でなく極上の獲物を取り合っている。
アレを奪われてなるものかと。
「アメリカ・インディアンのスー族の“スー”は蛇を意味する。蛇は恐ろしい生き物だ」
『私はアイツを今すぐ可愛がってやりたいほどに愛してしまった』
「お熱なことだ。どうなろうと俺は奴と戦う事になる」
『予言か…』
「そうだ。額の
高揚感を抱きつつ額に描かれた烏を撫でる。
上空を旋回していたカラス達は自分達はここに居ると主張するかのように鳴いて、ウルフに続いているウルフドック達は唸り声をあげて威嚇する。
お互いにお互いを警戒して威嚇する中、レイブンは抵抗する素振りもなく目で問いかける。
「さて、狼よ。お前はどうする?」
問いに対してウルフは銃口を下げた。
渋々と言ったようではなく奴にとっては満足のいくものであったようだ。
「ほう、お前が獲物を譲るとは珍しい事だ」
「違う。私が狙うのは蛇ではなく蝙蝠」
『どちらにせよまだ泳がせておけ。奴らにはまだやってもらう事があるのだからな』
ウルフはつまらなさそうに舌打ちをし、ウルフドックを引き連れて去って行った。
それを見送ったレイブンは小さく嗤う。
最悪どちらかさえいれば良いので、ウルフが両方殺さなければ問題はない。
さぁ、蛇よ。
次の闘いこそ本番の時だ。
嬉しそうにレイブンはカラスと共に立ち去るのであった。