和製アニメが好きだった。
特にロボットアニメが大好きで、科学者になったのだってアニメに登場するようなロボットを創りたかったからに他ならない。
だから独学ながらも必死で勉強して工科大学に入学して様々な専門知識を身に着けて、入社したアームズ・テック社でロボット開発を任された時は嬉しくてたまらなかった。
軍事兵器の一つであった事は想う所はあったが、社長の説明によるとミサイル防衛システムの一環という事で、誰かに害をなす兵器ではなくて護るための兵器。
多少の懸念は残っていたけれどロボットが創れるという興奮の方が勝った。
本計画はアームズ・テック社の威信をかけているという事で、人員も資金も結構豊富でやりがいもある。
社長の力の入れようも強く、二足歩行の実験データや
特に見本として用意された物に僕は驚愕した。
なにせ用意されたのは巨大なロボットそのものだったのだから。
かなり古びてはいたが重量感のあって、威風堂々とした佇まいはロボット好きとしては見惚れてしまう。
社長曰く、“骨董品”と呼ばれた見本は僕が生まれるよりも前に創られた品物で、防水対策が施された巨大コンテナ内に納められたまま、近年までカリブ海の海底で眠っていたらしい。
さすがに古過ぎて稼働も出来ず、今回のコンセプトと違ったので修理はされなかったが、あの存在は僕に勇気とやる気を与えてくれた。
そんな昔の人でもこれほどのロボットが出来たのだから自分も負けてられないという意地と、これを超えるロボットを創ってやると言う意欲が湧きたって仕方がない。
それに本計画を終えた後にアームズ・テック社で扱えないかと解析と修理の予定も入っているので、早く終えて弄りたいと楽しみにしていた。
それなのに何故こんなことになってしまったのだろう。
メタルギア“レックス”の開発を行い、シャドーモセス島の核廃棄施設での演習を行う段階で蹶起が行われた。
僕はレックスの開発者という事で殺される事はなく、研究室内に閉じ込められる事になった。
室外への移動に制限が掛かったものの殺される事は今の所ないと思えばそれほど僕的には悪い状況ではないのかも知れない。
だけどいつまでこの状況が続くのだろうか?
などと考えていた数十分前の自分が恨めしい。
「博士、決して部屋から出ないで下さい!」
「入り口を封鎖しろ!」
「配置急げ!!」
どうも侵入者が現れたようだ。
それも味方の損害から研究室か僕が目当てなようだ。
防護服に身を包んだ兵士達が慌ただしく、研究室前の通路で配置につく。
あれだけの兵士が居たんだから大丈夫だよね。
自身を落ち着かせる為に言い聞かせるが不安はより強くなる。
「ぎゃあ!!」
「撃て撃て撃て!!」
「なんで弾が当たらない!?」
「喋ってないで撃ち続けろ!」
「奴め、何処に行った!?―――グワァ!?」
「このバケモノめ!このバケモノがぁあああああ!!」
締め切った扉越しに通路からの悲鳴が響いてくる。
徐々に少なくなる銃声にぶつかり合う様な金属音、そしてつんざくような悲鳴と悪態。
さらに不安が掻き立てられる中、銃声と悲鳴が止んで静けさが戻る。
倒したという希望的観測より、浮かんだのは兵士達が全滅したのではという最悪の状況。
扉に視線を向けていると勝手に扉が開いて誰かが入室してきた。
姿は見えないがナニカがそこに居るのは解かる。
入って来たナニカは刀を持っているらしく、宙に刀だけが浮いて見える為に、自分にゆっくりと近づいて来ているのが理解出来た。
殺される……そう思ったら足が震えて、逃げ出そうとするも足が言う事を聞かずに絡まり、ドベっと転んでしまった。
死にたくない一心で這いずるも後ろは壁。
もう逃げ場はなく、殺意を放ちながら刀を持つ何かは近づき、透明のナニカはようやく姿を現した。
身体全体を覆うメカメカしくもスリムなスーツを纏うソレは機械の面越しに見下ろす。
「す、ステルス迷彩だって!?き、君は一体……」
「俺の友は何処だ?」
「な、なんの事だよ」
透明になっていた理由に勘付くも何を言っているのか解らない。
ただこのままでは自分―――ハル・エメリッヒはここで殺されるだろう。
ガタガタと震えながらズボン類が
M1戦車を撃破した一行は研究棟に辿り着いたスネーク一行は、高圧電流が流されている床に行く手を阻まれた。
されど
確かに普通に渡ろうとすれば感電死。
飛び越えるには距離があり、無理に渡るのは不可能。
困惑するメリルと異なってスネークとバットは無線でキャンベル大佐に電源の位置を聞き、リモコンミサイルでの遠距離破壊が可能かどうかを問う。
司令部でもリモコンミサイルで配電盤を破壊して、電流を止めるのが最善策と判断され、道中拾ったリモコンミサイルで予定通りに破壊に成功。
高圧電流が流れなければただの通路。
「罠が仕掛けてあったという事は何かしら足止めしたい理由があったという事か」
「でしょうね。ついでに罠を頼りにしていたでしょうから人員の配置は予想より少ないのかも」
「過小評価で油断するのも駄目だが、お前と俺……いや、この面子なら大丈夫だろう」
「ちょっと慣れ過ぎじゃないの?」
判断を交えていたスネークとバットは、不思議そうにするメリルに首を傾げる。
二人からすれば何故そのような反応をされるのかすぐには解らなかった。
なにせ彼らは以前に高電圧が流れる罠を知っており、同様の方法で突破したという実績を持っている。
これぞ経験の差というもの。
メリルは様々な状況を想定した
察した二人と同時にメリルも経験の差だと気付き、悔しそうにしかめっ面を浮かべた為に、それ以上どちらも口にする事は無かった。
「……先に進むか」
「レディ・ファーストと
「ありがとう。でも髭面の紳士に譲るわ」
「ブフゥッ―――ク、ククッ…アァーハハハハハッ!!」
「言うようになったな。少しは肩の力が抜けたか。………それにしても笑い過ぎだバット」
ごめんごめんと謝るも声を殺して笑っているのは嫌でも気付く。
顔を反らしたまま肩を震わせているのだから。
「―――ッ、銃声…」
「え、何も聞こえないけど」
「急ぐぞ!」
笑いを堪えていたバットがピクリと固まる。
耳が良い事を知っているスネークは察して先を急ぐ。
進むにつれて悲鳴や銃声が聞こえ始め、研究室前の通路には斬り捨てられた防護服を纏った兵士達が横たわっていた。
生存者は無し。
視線を研究室入り口に向けると電子ロックが破壊されていた。
ハル・エメリッヒ博士が殺されては一大事と研究室に飛び込むと、オセロットの腕を斬り落とした乱入者―――サイボーグ忍者が研究着を着た男性を片隅に追いやっている所であった。
「スネェエエエエク!待っていたぞ!!」
「さっきの忍者か!」
「貴方の知り合い?」
「いや……何者だ!」
「敵でも味方でもない。そういうくだらない関係を超越した世界から蘇って来た。俺と一対一で勝負しろ!邪魔者は片付けてきた―――俺はずっと待ち望んでいたんだ。お前との一時を」
スネークはサイボーグ忍者と対峙し、サイボーグ忍者もスネーク意外に興味がないようだ。
様子を伺っていたバットは見られていると解っていながらもスネークから離れて、サイボーグ忍者を囲む様な体勢を取る。
「そこのアンタ。ハル・エメリッヒ博士か?助けに来た。今のうちにそいつから離れる事を提案するが?」
「あ、ああ!た、助かった」
震えながらもハル・エメリッヒ博士は這いずりながらバットの方へと向かう。
殺そうとしていたサイボーグ忍者は一瞬視線を向けるも、さして何かする様子なく見送った。
「俺への恨みか?復讐か?」
「そんな陳腐な感情ではない――――俺は、
「なら勝手に死んでなさい!!」
相手はスネークにしか眼中になく、気持ちよく語り合っていた事を思えば、中々良い不意打ちではあっただろう。
だが問題はそこではない。
サイボーグ忍者はスネークに意識を向けているが、他を完全に除外している訳では決してなかった事だ。
メリルがこっそりとタイミングを計っていたのも完全に見抜いていた。
一定の距離を保って銃口を向けたメリルと刀しか所持していないサイボーグ忍者。
射程からして有利なのは一方的な程にメリルだっただろう。
しかしながらサイボーグ忍者はそんな有利を一瞬で無に帰した。
「――ッ、邪魔をするな!!」
一喝と共に放たれた弾丸を刀で見事弾いて見せたのだ。
まるで弾丸の動きを目で追い、反応し切った様子は馬鹿馬鹿しく偶然で片付けたいと心理が働きそうになるも、スネークとバットの答えは別であった。
「グレイ……」
「――フォックス!?」
ザンジバーランド要塞に敵だったフランク・イェーガーことグレイ・フォックスは、ザンジバーランド撤退時に殿を務めて以降行方不明となっている二人に馴染みのある人物。
それが生きて目の前に現れ、再び敵として姿を現した。
銃弾を刃物で弾く芸当に“ディープ・スロート”と名乗って無線で助けてくれたのは以前“ファン”と称して同じく無線で情報をくれた時に酷似している。
死んだ筈ではという疑問よりも身体が先に動く。
「弾を弾くなんてどうなって――…」
「馬鹿!足を止めんな!!」
容易く刀で銃弾を払いながら接近したサイボーグ忍者は鋭い一刀でメリルの首を刎ねようと振るう。
あまりな出来事に驚愕して立ち止まりながら撃ち続けて咄嗟に避ける判断に至らない。
そこへバットが膝カックンをするように蹴りを入れてメリルを後ろに倒らせる。
急に視界が正面より上を見る事となり、その眼前を刃が前髪数本を切って通り過ぎて行く。
九死に一生を得たメリルだが危機は去っていない。
なにせ現在無防備に仰向けに転がっているのだから、次のサイボーグ忍者の攻撃を避けるのも離れるのも難しい。
「カバー!」
「――ッ、後ろか…」
合わせるようにスネークが銃撃を別方向から浴びせるも、刀を振るって銃弾を払っていく。
その隙にバットはメリルの首根っこを掴んで引き摺る形で無理にでも離れさせる。
「逸るな!博士の身の安全が第一だ!!」
「けど私だって!!」
「分かってる。さっきの奇襲のタイミングは良かったよ!だけど相手が悪すぎる。二人掛かりでも苦労する強者だ!」
「……了解。博士の護衛に入るわ」
「助かる」
それならばと援護に向かおうとしたバットはスオミKP‐31短機関銃を取り出し、一対一の戦いの場に無粋や横やりと思いながらもトリガーを引いた。
素早く察知したサイボーグ忍者は飛び退きながら銃弾を弾く。
「今のを防ぐのか!マジかよ」
「今度は貴様か!」
「逃げろバット!!」
近接戦闘が苦手なバットに近づけさせまいと、必死に銃撃を浴びせようとするスネーク。しかし、その必至の抵抗を嘲笑うかのように、回避しつつ無傷で駆け抜けるサイボーグ忍者。
近づけまいとバットも迎撃するも呆気なく弾かれる。
命を断とうと一刀が迫る中、右手でベレッタM92を迫る刀身に向けて撃つ。
銃声とぶつかり合う金属音はほぼ同時に響き、狩ろうとしていた刀身は弾かれて上に向いていた。
出来た隙にすかさずスオミKP‐31短機関銃を撃ち込もうとするも、刀を振り戻すのでは間に合わないと思ったサイボーグ忍者はバットを蹴り飛ばした。
ゴフッ…と声を漏らし吹っ飛んだバットは素早く立ち上がって戦闘態勢をとる。
「――ッ、あっぶね!」
「ホゥ、今のをいなすか!面白い、面白いぞ!!」
「グレイ・フォックス!!」
「来い―――スネーク!!」
銃では埒が明かないと近接戦に持ち込んだスネーク。
熟練の体術の応酬にはさすがにバットは手出しできない。
途中途中姿を透明化させて距離を取って奇襲を仕掛けてくる事はあったが、目を凝らせばぼんやりとだが空間に歪みのような輪郭が浮かぶので何とか見破ることは出来ている。
交差する銃弾と刀、CQCとCQC。
「もっと、もっとだ!」
何処か楽し気に笑うサイボーグ忍者は戦いそのものを楽しんでいるようだった。
高らかに上機嫌で笑っていたのが突然震えだした。
尋常じゃない程にガタガタと触れ出し、苦しみ藻掻き始めた。
「クスリがッ……キレた…グゥぁああああああ!?」
床にガンガンと頭をぶつけ始め、何事かと警戒する全員を他所に尋常ならざる身体能力を活かして撤退して行った。
今のは一体と疑問を抱くメリルと博士を別としてスネークはすかさず無線を繋ぐ。
「大佐、あのサイボーグ忍者はグレイ・フォックスだ。間違いない!」
『まさか生きていたとは…いや、実際彼の死亡が確認された訳ではないから不思議ではないが……』
『私が所属する以前に前任者のクラーク博士指揮の下で、ゲノム兵の遺伝子治療の実験体にされた兵士が居たと聞いたことがあるわ』
『初耳だ。それにクラーク博士とは…』
『大佐やスネークが知らないのも無理はないわ。二人が除隊した後の話だもの。クラーク博士は遺伝子治療を導入した張本人で、二年前に研究所の爆発事故で亡くなった人物よ』
「ではクラーク博士本人から話を聞くのは無理か、で、その実験とグレイ・フォックスが繋がるんだ?」
『どうも実験に使われた被験者というのがザンジバーランドの生き残りでフォックスハウンド元隊員という話があるの』
詳しい話を聞いてスネークは怒りでいっぱいいっぱいだった。
あのザンジバーランド陥落後、殿を務めたグレイ・フォックスは最後まで戦い抜いて生き残る事は出来たものの、死んでいてもおかしくない程の重傷を負っていたらしい。
回収された後に強化骨格を施され、麻薬漬けにされて死の淵から生存したグレイ・フォックスは被検体として様々な実験を施され、その実験データがゲノム兵に活かされている。
グレイ・フォックスが自身を狙うのはその事を恨んでいるのか。
それともまた別の……。
考えを巡らせていると、ぼさぼさの髪に眼鏡をかけたハル・エメリッヒ博士が恐る恐る物陰から出てきた。
その表情には不安の色が浮かばせながら、足を引き摺りながら近づいてくる。
「その、さ、助けに来てくれたんだよね?」
「ああ、その足はどうした?」
「さっき捻っちゃって」
「博士、助け出す前に聞きたい事がある。メタルギアを開発した本当の目的を」
「あぁ、レックスの事かい?アレは移動可能なミサイル防衛システムで―――」
「そんな訳があるか!!メタルギアの本来の意味は核搭載二足歩行戦車だ!今回アームズ・テック社とダーパの共同で計画され、単なるメタルギアでない事も核を搭載している事も知っている!!今更誤魔化そうとするな!!」
「ま、待ってくれ!核って一体何のことだい!?」
「白を切ろうとしても…」
「待ってスネーク」
「そうよ。少し落ち着いて」
エメリッヒ博士の言葉を聞いたスネークが胸倉を掴んで事実を聞き出そうとするも、バットとメリルの制止を聞いて少し冷静さを取り戻すと手を緩め、話を聞いて見るも自身の情報とハル・エメリッヒ博士の事情とでどうも話が噛み合わない。
本当にベイカー社長にはそうとしか聞いていなかったらしく、搭載する兵器類に関しては社長自ら指揮を執って別部署が担当して、武装はバルカン砲にレーザーとレールガン・ユニットがあるとだけしか知らないらしい。
真実を知っての憤りは本物だった。
祖父がマンハッタン計画に参加し、父親はヒロシマに原爆が投下された日に生まれ、その後も何かしら核が関わる計画に携わっていて、父親は兎も角祖父は携わった事をずっと後悔していてのを知っており、知らずとは言え核兵器に携わってしまったことに強い怒りを抱いている。
「“科学は人の生活を助ける”って信じて研究して来たけど親子三代に渡って核に関わることになるなんて……」
「それよりメタルギアはどこにあるのよ?」
「通信棟の遥か北にある地下整備基地だと思う。僕が呼ばれなくなった事を考えると用無しになったんだろうね。発射まで時間がないかも知れない。急いだ方が良いよ!」
「核の解除システムの端末もそこに?」
「そうだよ。地下整備基地の司令塔に」
目的地も決まった。
PALキーもこちらの手にある。
後はその地下整備基地に向かうだけだ。
三人とも同意見な中で
「僕も連れて行ってくれ!」
「その足でか?悪いが足手纏いだ」
「僕が創ったレックスだ。僕にはアレを破壊する義務と責任がある」
「―――…そうか。この基地とメタルギアには詳しいな?戦うのは俺達の役目だ。アンタは情報をくれれば良い」
「そう来なくっちゃ。それと僕の事は“オタコン”と呼んでくれ」
「オタコン?」
「オタク・コンベンションの略さ。和製アニメのオタクなんだ」
自分でケリを付けれなくともその協力で妥協してくれたのは良いが、足を負傷した非戦闘員を放置する訳にもいかない。
となれば一緒に連れて行くか何処かに潜ませるか、護衛を付けて置いて行くかの三択。
「メリルを護衛につけよう」
「あぁ、その心配は無用だよ。ほら」
スネークの提案にオタコンは遠慮して、肩の辺りをポンと叩くと姿が掻き消えた。
サイボーグ忍者同様にステルス迷彩なる光の屈折で透明化する機器を所持していて、それなら足が怪我していようとも関係なく隠れれる。
それなら大丈夫だなと判断したスネークの背中に視線が刺さる。
護衛という役割を押し付けて置いて行こうとしたわねという
あからさまに置き去りにしようとしますかと
突き刺さる視線から振り向けないスネークに正面より大変そうだねと
この後の道中、背中に鋭い視線を受けながら進む事になるのだった。