メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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REXとFOX

 バットとメリルにミネットと操られた兵士達の相手を任せ、スネークはPALの認証を一人急いで行っていた。

 あの少女が言葉通りに行動するとは限らず、こっちはこっちで待ち伏せや罠を用意している可能性を否定できず、それ以前に交渉如何または脅しを兼ねて核弾頭を発射する事だって考えられる。

 PALで核発射を防いだら俺らにも奴らにも二度と解除する方法は存在しない。

 核さえ発射出来ないのなら後は政府が大規模に軍を送り込んだり、爆撃して証拠ごと消し去るなりするだろう。

 そうなればここに留まらず撤退も視野に入れれる。

 

 低温状態のPALキーを差し込み、最後に高温状態にしてから認証させる。

 これでリキッドらは核発射能力を失う―――筈だった。

 常温・低音・高温全ての形状でPALキーを差し込むと端末から音声が流れ始めた。

 

 『全テノ PALコードノ 入力確認。安全装置ヲ解除 発射準備完了シマシタ』

 「そんな馬鹿な!?」

 

 けたたましい警報とメッセージ音声に耳を疑う。

 あり得ない。

 発射出来なく制限をかけた筈なのに、何故解除されたのか。

 何かの間違いであってくれと願うも、警報とモニターに映し出される文字から解除されたのは確かなようだ。

 どうしてと疑問が過る。

 リキッド達が解除したのだから今更解除になるなど…。

 そう思っていた時にマスターより無線が入った。

 

 『よくやってくれたスネーク。全く、形状記憶合金だったとはお粗末な話だったが』

 「どういう意味だマスター!?」

 『ベイカーからはコードを聞き出せたが、アンダーソンは中々喋らなくてな。しかも二つのコードが必要なのにオセロットが拷問で殺してしまって俺達には解除出来なかったのだ』

 

 嘘だと信じたくないと思いつつも、頭は何処か冷静に理解して行く。

 変装の達人デコイ・オクトパスがすでに死んだアンダーソン局長に化けたのは、コード以外に解除方法を知らないか探る為で、PALキーがベイカー社長や俺が所持していたのに盗らなかったのは、単に気付かなかったのではなくてあえて盗らずに解除させる目的だったと言う。

 何より自身が知らずにとは言えテロリストに加担してしまった事が悔しくて仕方がない。

 

 『これでもうメタルギアは止められない。フォックスダイの血清も渡さない訳にはいかないだろう。本当に良くやってくれたよスネーク。だがもうお前もお前達も用済みだ。俺達からにしてもペンタゴンからにしても…な』

 「マスター―――じゃないな。誰だ貴様!!」

 『スネーク!そいつはマスターじゃない!』

 「大佐!?」

 『先程マスターが自宅で殺害されているのが確認された。気を付けろ、メイ・リンによると発信源はその基地内だ』

 『今更気付いても遅いぞキャンベル。それにスネーク。まさかこれだけ話しても気付かないとは―――俺だよスネーク』

 「――ッ、リキッド!!」

 

 無線に割り込んだキャンベルの言葉にマスターと思っていた相手はクツクツと嗤いながら、指令室のガラス越しにその姿を見せた。

 マスター・ミラーが使っていたサングラスを外し、後ろで纏めていた髪を解いたリキッド・スネークが。

 すかさず撃つも指令室のガラスが防弾仕様だった為に貫通する事はない。

 

 「惨めだな。さぁ、あの世に行け!!」

 「なにっ、毒ガスか!!」

 

 指令室の扉が勝手に閉まり、四隅から音を立てて何かが注入された事に危機感を覚える。

 慌てて口を塞ぎながらドアに急ぐがロックが掛けられてビクともしない。

 危険な状況から大慌てであるも、急いでオタコンに無線を入れて状況を説明すると、『すぐに扉のロックを解除するよ』と頼もしく言った直後、扉のロックが解除されて勢いよく開いた。

 オタコンへの感謝の念よりまず先に空気を吸おうと跳び出し、笑いながらメタルギアの方へ向かうリキッドを追う。

 

 「リキッドォオオオオ!!」

 

 叫び声を上げながら銃口を向けるも、メタルギアのコクピット前にて待ち構えていたリキッドは、余裕のある笑みを浮かべた。

 その様にギリリと歯を食いしばる。

 

 「どうだ兄弟!操り人形になった気分は?」

 「貴様ッ!!」

 「フハハハハ、違うな。確かに俺はお前を利用した。だがな、そもそもお前はペンタゴンの操り人形だろう?」

 「なに、どういう意味だそれは?」

 「人質救出とメタルギアの核発射阻止が本当の任務だと?馬鹿馬鹿しい。国防省の奴らはもっと狡猾的に俺達邪魔者を排除し、メタルギアを無傷で奪還する作戦を実行したのだ」

 

 その言葉に無意識に銃口が僅かに下がる。

 思い当たる節はある。

 別に任務に違和感を覚えた訳ではないが、キャンベル大佐の様子がおかしかった事がそれに該当するだろう。

 あの様子から多分俺に伝えた任務意外に何か口に出来ない事があるのは確か。

 予想であるがそれがリキッドの言う本来の任務…。

 

 「フォックスダイという特定の遺伝子に反応して死に至らせるウイルスを運ぶためだけの運び屋(ベクター)。覚えはないか?ナオミに注射されただろうに」

 「ではナオミはお前達ではなくペンタゴンと組んでいたのか!?」

 「連中はそのつもりだっただろうな。しかしペンタゴンに忍び込ませたスパイからの報告では作戦直前でフォックスダイのプログラムを改竄したらしい。目的は不明だが――いや、すでにフォックスダイの血清すらいらんかも知れん」

 「どういう意味だ」

 「ベイカーもオクトパスもそれで死んだ。しかしバグか何かは知らんが俺もオセロットも、そして遺伝子情報が俺と同じ(・・・・・・・・・・)お前も発症した兆候すら見られないのだからな」

 「遺伝情報が同じって…双子?」

 「フン、ただの双子ではない。“恐るべき子供達計画”によって創り出された存在。親父(ビッグボス)のクローンだ」

 

 スネークは困惑で考えが纏まらない。

 自身がビッグボスのクローンで、尚且つ目の前のリキッドの兄弟になるなど。

 ただでさえ多少の情報で殴られて、より混乱は深まるばかり。

 その最中でリキッドは怒鳴り付ける。

 

 「だが、貴様は良い!親父の良いところだけを受け継いだ優勢遺伝子で、俺は劣性遺伝子という親父の搾りカスを押し付けられた挙句に貴様という優性種を生み出す仕掛けとして創造されたのだからな!!」

 

 激怒したリキッドは声を荒げ、そして格納庫端を指で示した。

 そこにあるのは大きなシートで所々を覆われた巨大な機械。

 トリケラトプスのような外見をしたソレは古びていながら力強さを強く残していた。

 

 「アレを見ろ!親父たちが活躍していた頃に作られ、防水対策を施されたコンテナの中に仕舞われカリブ海沖に沈んでいたメタルギアモドキ(・・・)だ」

 

 信じられない。

 確かに古くはあるだろうがそれほど前だとは思えない。

 そもそもアレだけの巨体を支える仕組みに、動かすだけの技術がそんな昔から存在したというのか。

 

 「アレは俺だ!新型メタルギアREX(レックス)が完成した暁には、デモンストレーションとしてあの遺物と戦わせて兵器としての箔をつけるそうだ。REXの価値と有用性を解り易くする為だけの踏み台―――だが、俺はアレとは違う!俺は俺だ!決して貴様の踏み台ではない!―――俺は誓った。親父の意志を受け継ぎ、親父を超えて全て俺で塗り替えて親父の存在そのものを殺す!!それこそが己の手で殺せなかった俺の復讐だ!!」

 

 そう宣言したリキッドはメタルギアに飛び乗り、無意識にも銃口を下げてしまっていたがゆえに、即座に撃てなかったことを後悔しつつ、察して真っ先にその場を離れる。

 起動音と軋みがメタルギアREXから響き渡ると、器用に片足を持ち上げて組まれていた足場を崩すように振り下ろして来やがった。

 大慌てで駆け下りようとしたが間に合わず、足場の崩落に巻き込まれるも何とか放り投げ出されないように必死にしがみ付き、地面にある程度近づいた所で自ら跳んで素直に着地するのではなく、転がってダメージを逃がすように着地する。

 

 下から見上げるようにメタルギアREXと対峙する。

 巨体を支えるには細く見える二本の脚。

 手はなくも新型核弾頭を発射できる巨大なレールガン(超電磁砲)

 胴体から前のめりになっているコクピットを含めた頭部。

 REXの名を冠するように、ティラノサウルスなどの肉食恐竜を彷彿させられる。

 

 「聞こえるかオタコン。REXに弱点はないのか?」

 『そうだね―――右上のレドームは見えるかい?そこには各種センサー類が集まっている。レドームさえ破壊してしまえばコクピットを開かない限り外は見えない筈だよ』

 「ならレドームを破壊して奴を狙撃するのが一番なんだな」

 『待ってよスネーク!まさかREXとやり合う気かい!?無茶だよソレは!!』

 「他に方法はない!」

 

 スネークだって正面切ってメタルギアと戦うなんて方法は取りたくはない。

 起動前で順番通りに左右に爆弾を設置しては爆破するので壊せれるならそれの方が楽で良い。

 だけど現状それ以外にやり様がない。

 少しだけ思ったのがリキッドが言ったメタルギアもどきで対応する事だが、起動できる状態なのかも分からない以上は変に期待しない方が良いだろう。

 

 戦術としては一つ。

 レドームに施設内で拾ったスティンガーミサイルを叩き込む。

 破壊し切れるかどうかも怪しいが、これに賭けるしかないのだ。

 

 コンテナなどに身を潜ませつつ、REXの動きを見て回避に専念する。

 見失ってもセンサー類が即座に補足する為に撒けず、盾代わりにしているコンテナは30mmガトリング砲は防げても対戦車ミサイルの直撃は防げない。

 レールガンに核弾頭が装填されている為に使用出来ないのは助かるがこの状況はかなり不味い。

 

 それでも30mmガトリング砲に比べて対戦車ミサイルは範囲攻撃であるも、連射能力も着弾速度も遅いので上手く動けば回避は可能。

 コンテナに隠れると案の定ガトリング砲からミサイルに切り替え放ったところを跳び出し、着弾したミサイルがコンテナを吹き飛ばすのを感じつつ、REXのレドームにスティンガーミサイルを叩き込む。

 一発放つと次を急ぎ、直撃したミサイルの爆発と黒煙が晴れると同時に二射目が直撃する。

 

 センサー類の集まっているレドームを攻撃された事でREXは頭を振りつつ揺らぐも、煙が晴れるとまだまだ大丈夫そうなレドームの姿が映る。

 

 『小癪な事を!』

 「クッ、足りなかったか」

 

 元々持ち込んだわけでもないので残弾数に不安が募る。

 再びガトリング砲を降り注ぐ中を走り抜け、またコンテナに隠れると立ち止まることなく、他のコンテナに身を隠してやり過ごす。

 今までなら即座に発見されていただろうけど、先の二発が多少なりとも効いたようで『何処だ!』と叫びながら、炙り出そうとミサイルやガトリング砲を撃ちまくり始めた。

 どうしたものかと頭を悩ます中、ナニカが目の前に降り立った。

 

 「―――見てはいられないな」

 

 それは突如として現れた。

 物理的に見えなくする光学迷彩を解除し、右腕そのものが銃器となった姿を現したサイボーグ忍者(グレイ・フォックス)

 

 「グレイ・フォックス!?どうして…」

 「懐かしいな。ディープ・スロートよりは聞こえは良い」

 

 その声は力強さを秘めつつ、とても穏やかであった。

 顔を覆っていた仮面を正面を取り外すと、しみじみとした微笑を浮かべてこちらを見る。

 

 「スネーク、お前を殺させる訳にはいかない。お前だけが俺を解放してくれる…」

 

 それは遺言のような最期に言い残すような声色で、今にも消え入りそうな雰囲気だった。

 

 「待て、ここから先は俺だけで良い。フォックス、お前にはナオミが居るんだ。彼女を救えるのはお前だけだ。だから…」

 

 生きて帰れ。

 薬漬けや改造を施されたお前はもうこんな事に付き合わなくて良い。

 ゆっくりと休んでくれ。

 素直にそう言えたらどれだけ楽だった事か。

 

 グレイ・フォックスはゆっくりと顔を横に振るう。

 

 「ナオミの両親を殺したのは俺なんだ」

 「な…に…」

 「若かった俺は幼いアイツを殺せなかった…。アイツを拾ったのは後ろめたさに耐えきれなかったから。世話をしたのはやせこけた俺の良心を満足させる為だ…。それなのにアイツは兄として俺を慕ってくれた。俺は怖かったんだ。瞳を覗かれる度にどうしようもなく恐れた―――お前から伝えてくれ!本当の仇はこの俺だと!!」

 

 メタルギアREXからミサイルが近くのコンテナを吹き飛ばし、今隠れているコンテナに降り注ぐのも時間の問題。

 軋みと爆音に襲われる中、グレイ・フォックスは飛び出して行った。

 

 「そろそろ決着をつけるぞ!ディープ・スロートからの最後のプレゼントだ!俺が奴の足を止めるからお前がトドメをさせ!!」

 「待て、グレイ・フォックス!!」

 

 咆哮を挙げるメタルギアREXにグレイ・フォックスは飛びかかった。

 常人離れした身体能力を駆使して飛び回るグレイ・フォックスに、30mmガトリング砲をメタルギアREXが浴びせようとするも小さく速くて当たりはせず、寧ろ右腕の銃器“アームガン”によるエネルギー弾を浴びせられる事になる。

 

 『死にぞこないが!メタルギアREXの糧にしてくれるわ!!』

 

 忌々しそうなリキッドの叫びが轟くも、お構いなしにグレイ・フォックスはレドームを狙って撃ち続ける。

 直撃に直撃を重ねてダメージを受けて大きく怯むが、センサー類にダメージが通っているだけで機体は十二分に動く。

 

 メタルギアREXの脚の付け根辺りに今まで使用してなかったレーザー兵器が搭載されており、線を引くように下から上へと真っ直ぐ伸びたレーザーがグレイ・フォックスの左肩を切り裂いた。

 

 声が漏れる。

 もう止めてくれと祈るように思うもグレイ・フォックスは顔を少し歪めながらも、決して動きを鈍らせる事無く距離を取るように後方へ跳ぶ。

 しかし後ろは格納庫の壁であり、跳んで中腹辺りの段差へと飛び移ってアームガンを構えるも、突っ込んで来たメタルギアレックスの突進をもろに受けてしまう。

 

 『中東では狐狩り(フォックス・ハウンド)の代わりにジャッカルを狩る(ロイヤル・ハリヒア)

 「グレイ・フォックス!!」

 

 レーザーで切られた左肩とメタルギアREXと壁に挟まれて血を噴き出したグレイ・フォックスを見て、スネークはガクリと膝から崩れ落ちてしまった。

 あのグレイ・フォックスが死んでしまった…。

 担いでいたスティンガーミサイルを手放しそうになったところで、ピクリと反応を見せたのを見逃しはしなかった。

 

 『フン、まだ生きているのか。だが強化骨格がいつまで持つかな?』

 「―――ッ、追い詰められた(フォックス)はジャッカルより凶暴だ!!」

 『なにっ!?貴様ぁああああ!!』

 

 もう何も出来ないと余裕ぶったリキッドの声色は思いもせぬ抵抗によって落とされる。

 押し潰そうとするメタルギアREXの動きは止まっている。

 動いている相手ならまだしも止まっている巨大な的に当てるなど造作もない。

 グレイ・フォックスはわざと体当たりを喰らって、強化骨格で耐えている間にほぼ近距離で動きを止めたメタルギアREXのレドームに残りのエネルギーを出し切るように撃ち続ける。

 外れる事のない高出力の射撃を連続で受けてレドームは壊れ、煙を舞い上げると怯んだのか後ろに一歩二歩後退し、モニターが見えなくなったらしくコクピットが開いてリキッドの姿が露わになる。

 

 「今だスネーク!奴を撃て!!」

 「しかしッ!!」

 「撃てるものか!撃てるものなら撃ってみろ!その時はグレイ・フォックスもただでは済まんぞ?」

 「構うな!撃つんだスネェエエエエク!!」 

 

 今ならコクピットのリキッドを撃つ事は出来る。

 しかしスティンガーミサイルの範囲的にグレイ・フォックスを巻き込むのは明らか。

 迷いからトリガーを引く指が重い。

 

 こちらを見つめるグレイ・フォックスと目が合う。

 見つめ合ったスネークは目をスッと閉じ、次に瞼を開いた時には覚悟の決まった瞳で返す。

 

 「まさか貴様ッ!待ッ――…」

 

 放たれたスティンガーミサイルはリキッドが居るコクピットに向かって行く。

 直撃する寸前、焦るリキッドを他所にグレイ・フォックスは穏やかな微笑を浮かべて、爆炎の中に消えて行った…。

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