メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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第12話 『グラーニン救出大作戦!』

 アレクサンドル・レオノヴィッチ・グラーニン。

 ソ連きっての科学者のひとりであり、グラーニン設計局の局長だった男。

 今や設計局をソコロフに奪われ、ヴォルギンには研究資金を止められ、ただただ酒を飲むだけの時間を過ごしていた。

 

 銃を持った制服姿の兵士に促されるまま、重い腰を持ち上げ部屋を後にする。

 

 『裏切者の容疑がかけられている。我々と一緒に来て頂く』

 

 ヴォルギン直轄の部隊に囲まれ、研究所の狭い廊下を歩いて行く。

 …あの少年との語らいは久しぶりに楽しかったなぁ…。

 

 バットと名乗った年若き工作員を思い出しながら持っていた酒をぐびりと飲む。

 喉を焼くような感覚と脳内に響き渡るアルコールを感じ、大きく息をつく。

 

 どうせヴォルギンの事だ。拷問と称して甚振って殺すのだろう。

 飲み納めだと酒を煽る。

 

 研究所前には戦闘服姿の兵士が並んでおり、近くにはサイドカー付きのバイクが停められていた。

 

 「グロズニィグラードまではバイクで行くのか?」

 「いえ、大佐は急いでいらっしゃったのでハインドを準備しました」

 「腰が痛むよりは良いか」

 

 舗装されていない地面を長時間バイクに揺られるなど年老いた身体が持たないし、たぶん途中で酔いが回って吐いてしまう。

 振動の少ないヘリならそこまでの事はないだろうと思っていると、遠くから響くヘリのローター音が近づきその姿を現した。

 

 ―――突如銃声が鳴り響き、ハインドの装甲に穴が空けられ、火を吹き出し黒煙を撒き散らし始めた。

 

 騒然となる研究所前でグラーニンだけは落ち着いた様子で酒を飲みながらただ見ていた。

 

 「て、敵襲!!」

 「各自周辺警戒!バイクに搭乗せよ!」

 

 あるひとりの兵士が叫ぶと同時に我に返った制服組の指揮官が声を張り上げて、周りの兵士たちに指示を飛ばすが新たな爆音に言葉はかき消された。

 停めてあったバイクは、黒煙を上げて墜落していくヘリより照準を変えられた銃弾で蜂の巣となり、燃料タンクに引火して爆発を引き起こした。運が悪いことに指揮官の命令で搭乗しようとしていた兵士達はバイクが爆発したことで起こった爆風、爆炎、飛び散る破片などを受けて負傷してしまった。

 

 グラーニンを迎えに来た部隊は不運としか言いようがない。

 指揮官を含めた制服組12名、野戦服を着た兵士16名、サイドカー付きバイク5台と搭乗要員10名、攻撃ヘリのハインドと戦闘能力を持たない年老いた研究員を、自分たちの勢力圏内で護送するには充分すぎる戦力。が、戦力差から手加減が出来ない彼を止めれるだけの戦力ではなかった。

 入り口まで出てきていた研究員は大慌てで研究所に戻り、兵士たちは負傷兵救出や突然の奇襲で混乱状態に陥っていた。統率が取れなくなった部隊をまとめようと声を張り上げる指揮官だがもはや彼らの耳に届かない。

 

 戦場に似つかわしくない幼顔の少年がAK-47を構え、森より飛び出して来たのだ。

 

 突如、味方が撃たれたことで指揮官が拳銃を向けるが相手が子供だったことで躊躇してしまった。

 次の瞬間にはAKの銃口より放たれた弾丸が右肩を撃ち抜いていた。

 

 「グラーニンさん!!こっちへ!」

 「おぉ!?君は…」

 「早く!!」

 

 先ほど思い返した少年――バットが大声で叫びながら応戦しようとする兵士に躊躇いなく発砲を繰り返す。小さな遮蔽物でも小柄な体格の為に身を隠すのには充分過ぎ、隠れながら素早く移動と射撃を繰り返し兵士たちを無力化して行く。

 ようやくグラーニンの元まで辿り着いたバットは有無を言わさず手を引いて来た方向へと向かう。

 

 周りを観察してみると多くの兵士が倒れているがそのほとんどは負傷しているものの死んでいる者は少ない。どうやらわざと足や肩を狙って撃っているようだ。敵対するものは無力化し、負傷兵を救出しようとする者や逃げ惑うものには決して銃口を向けない。

 

 森まで辿り着くと置いてあったМ63軽機関銃を何処か惜しみながらも通り過ぎて行った。

 ハインドやバイクを簡単に蜂の巣にしたのはこの銃かとグラーニンは判断した。銃器に特別なほど詳しいわけでないがAKの威力を目の当たりにして、ハインドを損傷させた弾丸の威力より低いと思っていたのだ。思っていたからどうという事はないが納得ができ少しすっきりした。

 

 「少年…どうして儂を助けた?」

 

 戦闘に対しては素人ながら追手が居なさそうなので疑問を投げかけてみた。バットも付近の警戒はしているようだが歩く速度が落ちたことでそれほど急ぐことはないと判断したのだが、実際は追撃や待ち伏せがないか注意深く警戒するために落としたのだがそれをグラーニンが知る由はなかった。

 

 「どうしてって、助けるように上官に言われたのもあるんですが、知り合い?……えーと、友達ですかね。兎も角仲良くなったグラーニンさんを殺させたくなかったというのが一番の理由です」

 「ふん、儂を助けた所で何の見返りもないぞ。もしも亡命するように説得する気なら無駄骨に終わろう」

 「あー…そこまで言われてないので…どうしましょうか?」

 

 グラーニンには強い愛国心がある。例えこれから酷く耐えがたい拷問をされるとしても、助かるために亡命を図ろうとは露とも思わない。寧ろ、亡命しようとしていたソコロフを強く軽蔑するほどだ。

 だから自分と意気投合した少年の頼みでも亡命はしない。そんな意思を込めて言ったのだが、本気で困っているバットの反応に警戒や決意は薄れ、呆れを通り越して笑いが込み上げてくる。

 

 「ふははははは。なんだ?なにも考えとらんだのか?お前さんもお前さんの上官も見返り無しに助けたかっただけと申すか?はははは、これは傑作だ」

 「そんなに笑わないで下さいよ……。あ、グラーニンさんは銃扱えますか?」 

 「扱えるには扱えるがそんな物騒な物を儂に渡す気か?」

 「あはは…ですよねぇ。それにグラーニンさんも手が塞がっていますしね」

 「あぁ、儂の手は酒で塞がっとるからな」

 

 笑い声が森に響き渡ると後ろから爆発が耳に届いた。

 バットは仁王立ちしたまま振り返るグラーニンを伏せさせながら目を凝らして警戒するが、トリガーは引く事無く先へ急ぐ。

 

 「追手のようじゃが…良いのか?」

 「ええ、ボクたちが歩いたルート以外には道中で拾ったクレイモアが仕掛けてありますので早々追いつけないでしょうから」

 「やけに手際が良いのう。ただの少年ではないという訳か」

 「あ、そうだ!ひとつお願いがあるんですけど」 

 「お願いか?良いだろう、言ってみろ」

 「その、ボクに協力してくれた兵士がいるんです。その人が祖国へ帰れるように口添えって出来ますか?」

 「儂を誰だと思っておる。レーニン勲章を授与された最高の科学者アレクサンドル・レオノヴィッチ・グラーニンだぞ。そんな事容易いわ。良かろう。その願い聞き受けた」

 「ありがとうございます!では急ぎますよ」

 

 森を抜けて倉庫へと辿り着いた二人だったがすべに連絡を受けて相当数の人員が集まっていた。

 全員がAK-47を装備しており、隊列を組んで急ぎ足で研究所への道を進もうとしていた。

 グラーニンはバットに押されるまま茂みに身を隠し、その一団が通り過ぎるのを待った。

 

 「…目と耳を塞いで下さい」

 「な、なに!?」

 

 横で同じく隠れていたバットの言葉で振り返ると、その右手には三つものグレネードが握られており、左手でピンを抜くと一団の背後に投げつけた。

 慌てながらも言われた通りに目を閉じて耳を塞ぐ。瞼越しにでも眩い光を感じ、塞いでいた耳に甲高い音が入り込む。

 

 光が収まり瞼を開けると先ほどの音と光に耳と目をやられた兵士たちがその場で悶えたり、気絶して倒れていたりしていた。それと付近を埃のように舞う金属片から投げたのはスタングレネードと無線などを妨害するチャフグレネードを投げたのだと理解する。

 気が付けば横に居たバットは倉庫入り口に駆け出しており、目にも止まらぬ動きで大の大人である兵士たちに近接戦を仕掛けて見事投げ飛ばし、無傷で制圧していた。

 ジェスチャーで招かれたグラーニンは茂みより抜け出して入口へと入っていく。それを確認したバットは残っていたクレイモア三つをセンサーに引っかからないようにドア前に設置して赤い扉へと急ぐ。

 倉庫内にも敵はいたが派手に動いたために時間はかけられないと止む無しに持っていたグレネードを使用して追っ払った。

 

 ここまで無事に逃げ切れたバットはスネークと別れた小屋に向かって行く。

 あそこまで逃げきれればもう大丈夫だと何の根拠もない思いを胸に…。

 

 進む先の視界の片隅で何かが動く様子を捉えた。

 それが何なのか理解はできなかったが、咄嗟にグラーニンを押す形で近くの木に身を隠す。

 押しながら通れて行くときに頭上を何かが駆け抜け、大きな銃声が鳴り響いたことで敵の待ち伏せと理解し忌々しく舌打ちをする。

 

 「ここに居てください」

 「気を付けるんだぞ!」

 「グラーニンさんとメタルギアの話をもう一度するまで死ねませんから」

 

 そう告げるとAK-47ではなくイサカM37散弾銃を取り出し、グラーニンが銃弾に晒されないように別の木々へと移る。隠れた木に銃弾が直撃すると、撃ってきた方向へと撃ち返す。

 距離があったのもあって散弾はすべて外れたが向こうの姿を捉えることが出来た。

 

 赤いベレー帽に黒のマスクと制服…確かオセロット直属の山猫部隊。

 出会いたくなかった部隊との遭遇に思わず力が入る。

 撃ちながら周辺を睨むように見渡すと10名近くの山猫部隊の兵士がいることが分かった。相手も動きが良く、素早く、腕も良い。

 

 だけど諦めたくない。

 サブミッションクリア報酬も欲しいがこんなところでゲームオーバーになりたくない。それにグラーニンさんを見殺しにしたくない。

 その一心でイサカを撃ち続ける。と言ってもイサカM37散弾銃はМ63軽機関銃と共にあの小屋で見つけたもので弾薬は少ない。弾切れを起こしたイサカを放り投げ、AK-47を取り出す。

 銃撃が止んだことで狙える位置に移動しようと木々より移動を開始した三名ほどを倒したが、再びの銃撃に反応して姿を隠されてそれ以上減らすことは出来なかった。

 

 持久戦に持ち込まれたバットはじり貧だった。AK-47はかなり弾薬を持ち歩いていたが今までの戦闘でもメインに使っていたために弾薬は少なく、マカロフは持っておらず、リボルバーは弾無し、モーゼルは装填しているだけ。

 何とか木々より姿を晒した瞬間を狙ってもう四名ほど倒したがさすがに弾切れ…。

 

 ここまでかと思ったその時、ぱちぱちと場違いながら拍手をする音が耳に届いた。

 

 「まさかたったひとりでグラーニンを救出し、あれだけの人数と私の部下相手にやりあうとは、さすがだな」

 

 銃を構える事すらせずに山猫部隊とバットの中間付近を歩きながら登場したオセロットの姿にバットは呆れるよりもさすがだなぁと感心すらしてしまう。もしも持っているAKに銃弾が残っているのなら撃っているところだ。

 といってもオセロットの早撃ちは目にしているので勝てるかどうか怪しいが…。

 

 「本来ならスネークと決着を付けたいところだが…まずは貴様と決着を付けるとしよう。無駄な抵抗はやめて出てきたまえ」

 

 銃を構えながら山猫部隊が木々より姿を現す。

 さすがにこれ以上は無理かなと弾切れしたAk-47を見えるように地面に置いて、隠れていた木より姿を現す。

 

 「素直だな。だからと言って手加減も油断ももうしない。なにせ貴様には倉庫での屈辱を返さなければならないのでな」

 

 油断しないと言いながらも銃撃戦を行っていた中心地に立ったのはなんだったんだと突っ込みたいがあえて黙っておくことにする。

 ホルスターより抜いた一丁のリボルバー。弾丸は六発―――その内の五発を抜き出してホルスターに仕舞う。

 

 「長くは楽しめない。ゆえに早撃ちで決着を付けようと思う。銃は持っているか?」

 「えと、持っているには持っていますが………残弾ゼロです」

 「なぁ!?貴様が持っていたのか…。まぁいい、一発だ。受け取れ」

 

 取り出した銀色の装飾が施されたリボルバーを見て、一瞬怒りを露わにするがすぐに冷静さを取り戻し、抜き取った弾丸の内一発を親指で弾いてこちらに投げ渡す。受け取った弾丸を装填してリボルバーを仕舞う。

 オセロットは背に回り、背中合わせの状態で立ち止まった。

 

 「三歩目だ。それが決着を付ける時だ」

 

 声には出さずに頷いて返事をする。

 これは好機だ。ここで勝てばまだゲームオーバーにならずにゲームを続けられる。しかしあれほどの早撃ちが出来る相手に勝てるのか?

 云々と悩みながらオセロットが数える通りに一歩ずつ踏み出す。その一歩に絶望と希望を織り交ぜながら…。

 

 そして運命を分かつ三歩目。

 二人は同時に振り向きお互いにリボルバーを構える。

 

 放たれた銃弾はオセロット、バット―――のどちらかではなく、警戒しながら二人の決着を見守っていた山猫部隊のひとりを貫いた。

 

 「なに!?」

 「オセロット隊長!敵襲です!!」

 「スネークか!」

 「今だ!」

 

 誰が撃ったか分からない状況だが、そちらに意識が向いた一瞬の隙にバットはグラーニンの隠れている木へと駆け出した。それに気づいたオセロットが慌てて撃つが焦り過ぎたせいか弾丸は逸れて森の中に消えていった。二射目を放とうとトリガーを引くが撃鉄が金属音を鳴らすだけで弾丸は放たれなかった。

 先ほど弾を抜いたことを悔やむがそれどころではない。

 

 オセロットたちを銃撃するのは一人や二人ではなく、少なくでも十人以上居る。

 数の差でも姿を晒していたことも相成って完全な不利。初弾でひとりが息絶え、応戦していた二人の内一人は今倒れた。

 

 「くぅ…また会おう!!」

 

 苦々しく逃げ文句を放ったオセロットは一目散に逃げだした。慌てて後を追おうとした最後の一人は背中より弾丸を受けてその場に倒れた。

 山猫部隊とオセロットが居なくなった事で一難去ったが、この一難をどう切り抜けようか頭を悩ませる。

 

 「お前さんの仲間か?」 

 「この戦場に居るボクの仲間は研究所に一緒に行ったスネークさんともう一人だけです。あんな団体さんは知りませんよ」

 「となると敵か?」

 「さぁ、どうなんでしょう…山猫部隊を優先して撃っていたようではありますが…」

 

 右手でリボルバーを握り締め、左手でモーゼルを取り出したバットは木の陰よりそっと顔を覗かす。

 覗いた先に居たのは山猫部隊を銃撃したとされる野戦服の兵士達。兵士たちはバットを探すというよりはバットが隠れている木を中心に辺りを警戒しているように動き始め、バットとグラーニンは首を傾げる。

 すると中のひとりが武器を下ろして歩み寄り、マスクを外した。

 

 「良かった。無事だったんだな」

 「―――ッ!?ニコライさん!?」

 

 ボルシャヤ・パスト中継基地からヘリを操縦してくれ、墜落してからは別れたGRUの兵士だ。頭には墜落時の怪我で包帯を巻いてあった。

 

 「相変わらず無茶をするんだな君は」

 「いや、それよりもこれは一体…」

 「ああ、彼らは私と同じ反ヴォルギン派とでも言っておこうか」

 「反ヴォルギン派?」

 「そうさ。君に言われて私が目を覚ましたように、ヴォルギンのやり方に疑問を覚えていた者が多かったという事だ」

 

 ニカっと笑うニコライの笑顔を見たバットは安堵感からその場にへたり込んだ。

 兎も角この場を離れるということでニコライがバットを背負い、グラーニンを含んだ18名は小屋に向けて進み始めた。

 その後、グラーニンとバットのメタルギア談義が始まるとは微塵も思いもしなかっただろうに…。




 サイド・オプス【グラーニン救出作戦】
 ミッション内容 :グラズニィグラードに連行される研究者の救出
 ターゲット   :アレクサンドル・レオノヴィッチ・グラーニン
 入手可能アイテム:ゲームクリア後に【メタルギアの設計図】を入手
 入手可能スキル :【スカウト】or【クイック・ドロー】or【三ツ星シェフ】より選択

 クリア!
 クリア報酬としてクイック・ドロー【武器構え速度向上】のスキルを選択。
 
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