新型メタルギアREXは完全でもないにしても撃破された。
修理すれば使えない事はないだろうが蹶起した連中にはそれだけの資金も時間も存在しない。
精鋭たるフォックスハウンドに多くのゲノム兵を失って戦力低下した上に、
この事は無線を通してキャンベル大佐に伝わっており、上層部へも共有されている。
今頃は占拠されたこの核廃棄施設奪還と蹶起した者達を捕縛・排除すべく部隊を派遣する準備をしている事だろう。
メタルギアREXを倒す事で新型核発射という最悪の事態を回避した功労者であるソリッド・スネークは、浮かない表情で立ち尽くしていた。
なにせ爆炎に包まれたのはリキッド・スネークだけではなく、グレイ・フォックスもだったのだから。
ミネットの兵隊を倒して合流したバットとメリルもスネークからメタルギアREX戦での事を聞いて暗い顔を浮かべる。
せめて遺体、または遺品だけでも回収しようとバットから提案が出たところで、慌てた様子のキャンベルからの無線が飛び込む。
『スネーク、聞こえるか!』
「そんなに慌ててどうしたんだ大佐?」
『落ち着いて聞いてくれ。カレーナ基地よりB2爆撃機が離陸した。目的地はアラスカ沖フォックス諸島、核廃棄施設―――つまりはそこへ目指している』
「……つまりは証拠隠滅の為の爆撃を行うつもりなのか?」
『ただの爆撃ではない。地表貫通式戦術核爆弾B61‐13を搭載している事から核攻撃を…』
「馬鹿な!?メタルギアは破壊したんだぞ!」
『上は核を使って全てを消し去るつもりらしい』
「本作戦の指揮権は大佐にあった筈だ」
『先程国防長官に移った。―――私に出来るのは爆撃中止命令を出して命令系統に僅かな混乱を作るぐらいだ』
「伯父さん、まさか!」
無線を聞いていた誰もが理解した。
降りたばかりとは言え指揮官だっただけに混乱を生じさせることは確かに可能だろう。
しかしそんな事をすればキャンベルの身がどうなるかは容易に想像出来る。
解っていながらも僅かながらの時間を稼ぎ、何とか逃がそうとしてくれている…。
メリルが悲痛そうな叫びをあげるも、キャンベルは穏やかな口調で返す。
『私なら大丈夫だ。早くそこから脱出するんだ。スネーク、メリルを頼む…』
「大佐…」
『さぁ、早く――ッ、なんだ!?ぐわぁッ!?』
「大佐?おい、どうした!?」
無線越しにドタバタと音がする。
何が起きたのか解らず耳を傾けているとキャンベルとは違う声が答えた。
『私は国防省長官、ジム・ハウスマンだ』
「国防長官!?――いや、それより大佐はどうした!」
『彼ならたった今機密漏洩と国家反逆罪で逮捕監禁した』
「馬鹿な!」
『本当に馬鹿な男だよ』
淡々と冷徹そうな口調から自分達もだが捕まった大佐の安否が心配される。
特にメリルは顔を青くして心配している様子だ。
スネークも怒りからギリリと噛み締め、無線越しの相手を睨む。
「全てを消し去って終わる気か…」
「ここにはまだ研究員やゲノム兵だっているんだぞ」
『私の親友、ドナルドは死んでしまった。演習データを記録した光ディスクを持っていれば話は別だが、そうでなければお前達を――特に七十年代の恥部である
光ディスクはベイカー社長よりスネークは渡されたけれど、捕まった際にオセロットに奪われてしまった。
ゆえに所持していないが、そもそも渡したところで相手の感じから助けるとは思えない。
悩み沈黙しているとジム・ハウスマンは鼻を鳴らして無線を切った。
「どうするの!?」
「どうするもこうするもない。脱出するぞ」
「強行突破になるだろうな」
叔父の事もあって慌てているメリルに対してスネークとバットは脱出時の事を考えている。
大佐を助けに行くとしてもここを脱出せねば話にならない。
まずはそちらに専念せねば。
蹶起した首謀者にメタルギアを倒した事で計画を頓挫させはしたが、一般兵にまで情報は伝達されていない事から侵入者たる自分達を見つけたら交戦に至るのは当たり前。
外へ繋がる脱出経路となると警備体制も厳重であろう事から余計にだ。
悪態を漏らしそうになるところへ足音が近づいて来た。
「誰だ!―――オタコンか?」
「そうだよ。銃を向けないでよ」
「すまない」
「無線を
「あぁ、丁度良かった。ゲノム兵との戦闘が想定されるだけに危険は伴う」
「大丈夫だよ。そっちは
「なんとかって何をする気だ?」
『蹶起に参加した全ての同志に注ぐ。私は―――スナイパー・ウルフ』
合流したオタコンの言葉の意味を示すように施設内のスピーカーよりスナイパー・ウルフの音声が流れる。
『新型メタルギアは破壊され、リキッドは戦死。我々の蜂起は失敗に終わった。ペンタゴンは我々の排除と証拠隠滅を兼ねて当施設を核攻撃で消滅させるべく爆撃機を離陸させた。現時刻をもって当施設を放棄、総員退去せよ。繰り返す、爆撃される前に遠くに逃げなさい。これが最後の命令』
そう言って放送は終わり、オタコンは頬を緩めて「こっちにジープがあるんだ」と先導する。
リキッドでないとしても精鋭のフォックスハウンド隊員であるウルフの命令にゲノム兵は従うだろう。
希望的観測であるかも知れないが交戦を避けれる可能性が高い。
オタコンの案内のままについていくと外へと繋がる通路とジープが数台停車していた。
中には駐車位置から真新しいタイヤ痕が残っていた事から、この通路に近いゲノム兵が乗って脱出したのだろう。
ジープに乗り込んでいたらウルフも合流して乗り込む。
一瞬だけメリルとスネークが敵であったウルフとの間に緊張が走るが、それどころではないだろうにとバットが睨みながら間に割って入り、さっさと乗れと促す事で銃を向け合う事態は避けられた。
ホッと安堵しながら運転席にオタコン、助手席にウルフ、後部座席にはスネーク、メリル、バットの三人が座って急ぎ脱出すべくジープは走り出した。
検問所はあれど逃げた後で止められる事も無くスムーズに進む。
後は爆撃前に施設から脱出するだけ――――などと甘くはいかない。
「スネェエエエエエク!!」
車二台分の通路を叫び声が反響する。
この声は!?と後ろを確認すると数台のジープが追い掛けて来ており、先頭には筋肉粒々の上半身を晒して銃を構えるリキッドの姿があった。
「リキッド、生きていたのか!?」
「残念だったな!お前が死なぬ限り俺は死なん!!」
続くジープは脱出よりもリキッドの命令に従ったゲノム兵なのだろう。
躊躇いなくこちらに銃撃を浴びせようとアサルトライフルのトリガーを引いて来る。
「うわぁ!?」
「速度は落とすな!」
「あと、出来るだけ頭は低くしてろ!」
スネークとバットは即座に体制を低くしながら反撃に移るが、メリルが若干ながら出遅れる。
早々に敵だった者を信用出来る筈もない。
ウルフを警戒して助手席の真後ろに座っていただけに、後ろに反撃する場合はウルフに背を晒すことになる。
苦虫を潰した様な顔で見つめ、ウルフはどうすると目で問いかける。
「―――ッ、仕方ないわ」
「良いのか?」
「信用は出来ない。けれど
舌打ちひとつ零し、真っ先に背を晒した二人の行動からメリルも反撃に移る。
当然ウルフも味方に当てないように狙撃して、次々と運転手を討ち取って行く。
左ハンドルである事から助手席は右側。
リキッドは左側に回り込むようにして身を低くして撃ちながらも近づこうとする。
即座にウルフが撃ち抜こうとするもオタコンが壁になってしまい狙えない。
「新型核弾頭も新型メタルギアを失い、お前らの蹶起は失敗したんだ!大人しく降伏しろ!!」
「確かに貴様らのせいで蹶起は失敗した。だが俺の諦めない!俺達戦士が戦士として生きられ、世の中から求め評価される世界を実現させてやる!!」
「その為に世界を破壊するというのか!」
「貴様もその一人だろうが!お前も俺も同じ穴の狢だ!殺戮を楽しんでいるんだよ貴様は!!」
「違う!俺は―――」
「否定はさせない!俺の仲間を殺して来たのだからな!殺す度に生の充実を味わった―――違うか!!」
「くっ…」
「――出口だ!!」
狭く薄い灯りのみだった通路に外からの日差しが出入り口を照らしていた。
眩い光に向かうように走られながら後続のジープを粗方片付き、後はリキッドだけと―――と、僅かにオタコンの声に反応して注意が逸れたその時、アクセルを全開に踏み込んで真横に並ぶどころか前に車体を割り込ませたのだ。
広い道路なら別だが狭い通路では避ける事も出来ず、二台のジープはぶつかった勢いで外へと車体ごと転がり出た。
外へ外へと猛スピードで走らせていただけに、ぶつかった衝撃は激し過ぎて横転。
死んでいないのは死ぬほど痛む身体の叫びで理解出来る。
「……無事か?」
「なんとか…」
「僕も…だけど」
声色からして弱っているようだったけど意識はハッキリしているメリルとオタコン。
されどスネーク同様に横転したジープが乗っていて動けやしない。
後の二人はと周囲を見渡すと横転時にジープから投げ出されてしまって、気絶しているのか雪の上に転がって動きのないウルフとバット。
まず二人の安否を確認せねばと乗っかっているジープから抜け出そうとした矢先に雪を踏み締める足音を耳にする。
近くには横向きに横転しているジープがあり、その陰からリキッド・スネークがふら付く足取りで向かって来る。
不味いと武器に手を伸ばそうとするも上手く取れない。
「スネーク、貴様だけは――…」
頭を打ったのか血を垂らし、怒りと憎しみで染まった瞳が見下ろす。
ホルスターから抜き放たれた
「死ねい、スネェエエエエエク!!―――くあっ?」
ここまでかと覚悟したところでリキッドは抜けた声を漏らし、立つ事もままならないのかそのまま雪原に倒れ込んだ…。
何故、俺は地面に伏している?
意味が解らなかった。
確かにジープは横転した際に放り出されて所々痛むが、雪がクッションになってか結構緩和されていた筈だ。
寧ろ地面に倒れ込んでいたのは奴らだ。
俺は身動きの取れない奴に銃口を降ろしていた。
スネークもキャンベルの姪もエメリッヒもジープに挟まって動けなかった事から、放り出されていたウルフか
違う、そうじゃない。
銃で撃たれた痛みとは根本的に異なる。
まさかフォックスダイか!?
奴は犯される事無く、俺の身体だけを蝕んだというのか!
ナオミ―――…あの女狐め、何か細工を…。
身体が怠く痛く苦しい。
目まで霞んで来やがった…。
クソッ、俺はこんなところで何も成せないまま朽ち果てるというのか…。
ふざけるな!!
まだ俺にはやるべき事があるんだ!
成さねばならない事が山のように…。
なんだ、この映像は…。
自分が大人の勝手で作られたビッグボスの粗悪な
ガキどもを戦える武装集団に鍛え上げ、リーダーとして指揮しつつ戦場を闊歩していたホワイトマンバと名乗っていた幼少期。
親父のような
不自由で仕方なかったあの場所から巣立って、マンティスやオセロットなどの仲間と共に戦場や軍内部を渡り歩いた。
そうして力を付けたところで耳にしたビッグボスの死。
俺がする筈だった復讐を奪われた喪失感に、奪った者への憎しみ。
リボルバー・オセロットにサイコ・マンティス、スナイパーウルフにバルカン・レイブンなどの精鋭に、忠実な人形を操る人形遣いミネット・ドネルと遺伝子操作を受けた
多くの同志にセルゲイ・ゴルルコビッチ大佐という利用出来る後ろ盾も得た。
全てはこの蹶起と蹶起後に訪れる戦士達の世界、そして何より俺のビッグボスへの復讐を成す為に準備してきたのだ。
それはこんな呆気なく水泡と帰す。
俺の命も……。
ぼやけた視界に誰かが入り込む。
最早誰かも認識する目も耳も機能していない。
光を背に見下ろす黒い影…。
お前は誰だ?
―――あぁ、お前が迎えに来たのか…。
あの頃の俺は基本的に大人を信用していなかった。
例外である一人を除いて…。
バット。
ガキのような大人。
馬鹿と無茶が人の形をして歩いているような手練れの間抜け。
よく絡んで来ては俺に面倒を見させるなど鬱陶しさはあったが、決して子供だからと子供らしさを押し付ける事無く、戦士として扱ってくれた稀有な存在。
そして俺の誘いを断りやがった大馬鹿野郎。
あの日々の中で奴との煩わしい日常は―――存外心安らぐものであった…。
握り締めたピースメーカーを持ち上げるだけの力も無いが、せめてと最期の力を振り絞って引き摺って足元へと押し当てる。
ぼんやりと黒いシルエットが屈むのが僅かに映る。
もうほとんど見えもしない。
「最期に……ぇて………良かっ……た…」
そう口にした途端、全身を蝕んだフォックスダイが猛威を振るう。
幼少期にはホワイトマンバを、ダイアモンドドッグズを離れてからはリキッド・スネークを名乗っていた
アラスカ沖フォックス諸島シャドーモセス島で起こった事件は終結した。
世界が核の脅威に晒された事件ではあったが、新型核を発射する前にメタルギアREXを撃破した事で、これ幸いにと政府は公表する事はないだろう。
新型の核搭載二足歩行戦車“メタルギアREX”の開発と今回の演習を指揮して全貌を知る国防省付属機関先進研究局DARPAのドナルド・アンダーソン局長及び、軍事兵器開発会社アームズ・テックのケネス・ベイカー社長の両名が死亡。
蹶起した首謀者リキッド・スネーク及び主犯格とされるフォックスハウンド隊員の半数が戦死。
数多く生存したゲノム兵達は指揮系統を失った上に主犯格を失った事で組織として空中分解を起こし、生き残ったスナイパー・ウルフは纏めるつもりすらない。
気掛かりは姿を暗ませたリボルバー・オセロットとミネット・ドネルの二名だが、前者は片腕を失うと言う大怪我に後者は手駒が無ければ本人は戦闘に不向きなので今は無視して良い。
バットはホットドリンク片手に天を仰いだ。
ジープで脱出した地点から然程遠くない場所でのんびりしているのには訳がある。
単純に急ぐ必要がなくなっただけ。
空爆命令が取り消されたのだ。
国防省長官ジム・ハウスマンによって秘密保持と証拠隠滅の爆撃命令――というか核攻撃が指示されたが、
加えて逮捕命令を出されていたロイ・キャンベル大佐は解放。
今回の事件の知るメイ・リンがデータのバックアップを取っていたので、危険ながらもそれが保険となって今後直接的な手段を講じられる事はないだろうとの事。
ナオミ・ハンターも解放され、彼女の身の安全はキャンベル大佐が計ってくれると言う。
寧ろ一番危ぶまれるはスネークの存在だ。
“恐るべき子供達計画”。
当時の関係者も年月の経過と共にそれなりの地位に就いている者が多く、公になる事を非常に恐れている者も多い筈。
それにキャンベル大佐の話では
グビリとホットドリンクを口にして、真っ白な吐息を吐き出したバットは天から凍結した海へと視線を向ける。
そこにはスノーモービルで凍り付いた海を渡って、ここから離れるソリッド・スネークと後ろに乗るメリル・シルバーバーグの二人の姿があった。
ソリッド・スネークは脱出時、リキッドの攻撃を受けてジープごと海に落ちて行方不明。
キャンベル大佐はそういうシナリオで報告書を上げてスネークを護るらしい。
体内のナノマシンもソロソロ切れるとの事で追跡は不可能。
駄目押しとばかりに今からそれっぽい偽装工作もする事だし大丈夫だろう。
バットの側には一台のジープが止まっている。
乗って来たジープは上下逆さまになるほどに転がったが、リキッドのジープは横向きに横転したぐらいで起こし易かったのが幸いした。
ジープをそのまま下へと落としてスティンガーミサイルを撃ち込んで行く。
母さん【パス】が知ったらお粗末だと眉を潜められそうだけど、言い訳程度の偽装なので別段巧妙に施す気はない。
「これ、どうすっかな」
ため息をひとつ零し、一応拾ったピースメーカーを手にする。
急に倒れ込んだリキッド・スネークは最期に「
奴が何を想ったのか、何故俺に押し付けたのか、なにより俺に誰を重ねたのか…。
今となっては解り様はない。
捨てるかと放り投げようとして、何となく躊躇って放り捨てるには至らず、迷った挙句にポーチに仕舞う。
『そろそろ帰還しますか?』
無線から紫の声がするが、バットは首を盾に振るわずにもう一口ホットドリンクを含む。
眼を閉じて少し悩んだ末に首を横に振るう。
「この世界、ゲームではないよな?」
確信めいた言葉に紫は咄嗟に答えるのを躊躇い、それが答えとなって確信へと変わる。
「もしもだ。俺がここに残りたいって言ったら叶えれるか?」
『――ッ、可能か不可能かで答えるなら可能です。しかし―――』
「しかし?」
『私の一存では決められません。それに行き来なら兎も角移住となると―――帰れないかも知れませんよ』
「それは、キツイな」
紫としてはどうしてそんな考えに至ったかを聞きたかったが、苦笑を浮かべたバットは情けないと言わんばかりに眉を下げた。
「即断即決出来なかった時点で、未練タラタラなんだな俺は」
『如何なさいますか?』
「そういう話があったとだけ
『予定としてはどの程度を…』
「最悪でも一週間前後かな。墓参りにも行きたいからな」
それ以上の言葉は要らなかった。
スネークはスノーモービルで離れる前にナオミにグレイ・フォックスの
平然と装っているようではあるがバットの瞳は薄っすらと涙で潤んでいる。
『取れるように掛け合いましょう』
「ありがとう。さてと…」
涙を拭って振り返ると一台のジープが近づく。
さすがに後ろから銃撃をたっぷりと浴びたジープでスネーク同様に海を渡る訳にもいかず、使えそうなジープをオタコンが探しに行ってくれていたのだ。
何より横転したジープを起こすにしても疲れたし面倒というのが本音…。
「乗って行くかい?」
「勿論――って言うか置いて行くようだったら出合い頭に
「えっ、それは困るなぁ…」
「なんの話だ?」
「なななななな、何でもないよ!ね、ねぇ、バット」
「フッ、そうだな」
運転席に座るオタコンは言わないでと必死に目で訴えかけ、それほどに興味もなかったのか助手席のスナイパー・ウルフは「そう…」とだけ呟いて景色を眺め、バットは後部座席に乗り込んでスネークが向かった先を見つめる。
リキッド・スネークは
しかし、同じ遺伝子で運び屋とされてしまったソリッド・スネークは死んでいない。
この一点についてはナオミからの言及はなかったが、スネークがすぐに発症して死ぬことはないらしい。
生物には寿命がある。
精一杯生きてくれ……と。
アラスカ沖フォックス諸島シャドーモセス島核廃棄施設。
蹶起が失敗に終わって前以上の静けさが広がっていた。
占拠していたゲノム兵も爆撃の話を聞いて大急ぎで退避して、今や生者よりも死者の方が施設内の割合を占めている。
メタルギア格納庫。
横たわるはスネークによって撃破されたメタルギアREX以外にもう
片腕を切り落とされ、強化されていた為に完全に潰れていないが腹部の外骨格に非常なまでのダメージ。
さらに最後にメタルギアREXに直撃した爆風に巻き込まれ、吹っ飛ばされた勢いのままコンテナの残骸に埋まって動く事もままならない。
否、そもそも動けないし、助かる事もない。
痛みはあるも静寂が心地よく、懐かしき良き日々を思い返す。
ネイキッド・スネークと共に戦場を歩みにナオミの面倒を見ていた何気ない平凡な日常、ソリッド・スネークと対峙した時などなど。
身体中の痛みが薄れた。
懐かしさに浸って穏やかな気持ちになったのもあるが、それ以上に身体が終わりを迎えているからだろう。
(もうすぐ……俺も…)
戦友の顔を思い浮かべたグレイ・フォックスは微かな足音を耳にする。
すでに自分以外に生者はいない筈なのに誰だと目だけを動かし音源に向けた。
視界がぼやけ始めたフランク・イェーガーはバサバサと靡かせながら歩み寄って来る者に目を見開いて驚きを露わにした。
「お前は!?……そうか。お前が―――…」
見下ろすように立ち止まったその者は、何も口にせぬまま銃口をフランクの頭に向けてトリガーを引いた…。