メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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第18話 『爆破を行うなら火薬に対する知識。建物を吹っ飛ばすなら建築士の資格も取りましょう』

 このゲームは楽しい。

 バットは心の底よりそう思っている。

 

 味覚や嗅覚、触感などの五感に訴えかけてくるシステム。

 一人一人が個性豊かでNPCと思わせない程、高性能なAI。

 武器・アイテムを正式な使い方以外も応用力。

 何より自身の行動や言動の全てが物語を左右できる自由度の高さ。

 

 最高のゲームである。

 体調面を考慮した時間制限がなければずっとプレイし続けるのに…。

 

 そう思うこのゲームも終盤。

 コブラ部隊のザ・ペインにザ・フィアー、ザ・フューリーにジ・エンドを倒し、敵の本拠地への潜入成功。残るは標的のヴォルギン大佐にラスボスであろうザ・ボス。あとはスネークさんのライバルキャラだろうか…オセロットの三人。

 

 『最後はド派手に』と自由度が高いこのゲームならもしかしたらと思って動いたのですが――――どうやらやり過ぎたようです…。

 

 スネークさん救出後、グロズニィグラード北西部の武器庫に身を隠し、治療を行って全快させる。少し休んでもらっている間に探索を再開。というか武器庫に移動する最中に45口径回転式拳銃の弾薬を発見したのだ。しかも至る所から。これは拾わなきゃとジョニーと共に回収しまくった。

 その間、離れすぎるとベルトループに入れられた小型爆弾(ただの葉巻です)が爆発すると終始怯えていたが…。

 

 なんにせよ45口径回転式拳銃の弾薬を大量に確保し、休憩時間を取って要塞攻略に乗り出すことに。

 ログアウトする前にニコライさん達に襲撃要請を頼んで就寝。

 

 日が昇り切る前に行動を開始。

 ニコライさん達が陽動として襲撃。

 スネークさんがヴォルギンと戦い、バットとジョニーが爆弾を仕掛けていく。

 …EVAさんは賢者の遺産とかを調べるそうなので別行動。

 

 最後は一兵でも逃がして要塞を爆破するだけ。

 兵器廠に貯蔵していた武器・弾薬を吹き飛ばされれば、ヴォルギンに従う者達だって戦えなくなる。

 

 チェスでいうチェックメイトだ。

 結果は兵器廠本棟を燃料タンクにEVAさんが失敬したC3をセットし、爆破して吹っ飛ばす所までは予定通り。

 ただ東棟の武器庫の爆破は不味かった。一階の基礎ごと吹っ飛ばし、東棟そのものが傾いて本棟へと倒壊した。

 

 大爆発をした本棟に東棟が倒れ込んで土煙と熱気が辺りに吹き荒れる。

 

 「……これ、やばくないか?」

 「やばいですねジョニーさん」

 「大佐は完璧潰れただろうな」

 「でしょうね…」

 「意図したんじゃないんだな」

 「ないですねぇ。どうしましょうこれ」

 「俺に聞かれても」

 

 二人で倒壊した建物を眺めながらぽつぽつと呟く。

 辺りに集まっている兵士達はそんなバットの予想外の出来事とは知らず、こいつはヤバい奴だと若干―――いや、がっちり引いていた。

 引きはしなかったが呆れ顔をしながら倒壊する様子を眺めていたスネークはため息一つ吐き出した。

 

 「いや、まぁ、あの爆発に倒壊した建物の重量でシャゴホッドもお釈迦だろうがな」

 「では、とりあえず動きますか」

 

 スネークさん達の目標であったシャゴホッドの破壊にヴォルギン大佐の排除を終えたとしても、まだザ・ボスという最大の任務が残っている。バットはスネークの支援を命じられている事から手伝うが、その前にやる事がたんまりとあるのだ。

 まずはヴォルギンが埋もれた事でどうすれば良いのか分からない兵士達をこちら側へと勧誘。

 ヴォルギン支配地域よりの移動方法に上と掛け合って口添えをして貰うことなどなどやるべき事があり、バットはその一つ一つに対処しなければならないのだ。それにニコライさんの陽動で負傷者も出て、ここらにも怪我をして声を漏らす人が多くいる。

 怪我人の治療はバットや兵士の中で応急手当でも多少心得のある人に手伝ってもらい、ジョニーさんにはその手伝いを。ニコライさんにはここより脱出すべくヘリが操縦できる人を集めてヘリの確保に向かって貰った。ここには多数のヘリが止められているらしいのでそれらを使ってここより脱出する。あとは数が足りるかどうかだが…どうするべきか。

 

 ヘリの事を考えながらも治療の手は止めない。

 火傷には軟膏を塗って包帯で巻き、銃創には消毒液ぶっかけて止血剤を貼った上で包帯を巻く。弾丸が残っていたらナイフかフォークで取り出さなければならない。勿論麻酔は使えないので痛みに耐えて貰うか、ジョニーさんに押さえてもらい無理やりに取り出すしかないが。

 不調を訴える者の中には爆破の衝撃で吐き気を催す者もいて、ぐるぐると回ってもらって吐かせたりと次々と処置を行っていく。

 他の者より手早く治療を行っていくがどんどんと治療アイテムが減っていく。バットが持っている数では限度がある。補給しなければ…。

 

 「誰か!治療アイテムをかき集めて来てください。もしくはバルトスズメバチの巣(軟膏)スラブニガハッカ(消毒薬)エゾヒレハリソウ(固定具)オオバコモドキ(止血材)を獲ってきて欲しいんですけど」

 「そんなもん集めてどうするんだ?」

 「薬品などが出てくるんですよ」

 「出てくる?なにを言って――」

 「嘘だと思うなら獲った蜂の巣を割ってくださいよ。中から軟膏獲れますから」 

 

 馬鹿な事を言っているのは理解している。

 でも、実際出てくるんだから仕方がない。

 だってこれはゲームなんだから理解が及ばない事の方が多い筈だ。リアルに比べて簡易にしていたり、普通なら何とでも出来る物で道を塞いだりと。

 

 目の前に触れただけで怪我などの名称に治療法が浮かび上がったりなどもゲームならではのものだしね。

 

 治療の手は休めずにニコライさんからの報告や獲って来てくれた兵士の対応をこなしていく。

 報告ではヘリは結構数はあったそうなのだがここに集まっている兵士全員乗せるとなるとギリギリらしいのだ。何人かはトラックなど多人数を乗せれる乗り物で陸路を進むしかない。陸路を進むとなると第一書記の軍と接触する可能性が高い……いや、多くのヘリを飛ばすのだからその時点で見つかるので、先にこちら側より通達しておかなければ撃墜されかねない。

 無線機で上司役に事の次第を伝えると『面倒だけどいいっすよ~』と軽過ぎる返事が返って来た。…軽い受け答えにチュートリアルを思い出し、多分だけど今連絡を受けたキャラクターとチュートリアルのキャラ設定した人は多分同じなんだろうなと微妙な表情を浮かべてしまった。

 グラーニンは後続部隊と共に今こちらに向かっているそうなので合流後は直ちに離脱。彼らには一足先に帰国してもらう事になった。―――まだラスボス戦(ザ・ボス戦)が残っているけれどもあの人と少し戦っただけでわかる。あの人に数での勝負は無意味だ。ゲーム中にあるモブが敵キャラの強さを引き立てる戦闘ムービーの如く無双されるのが想像に易い。ならば当初の予定通りスネークさんとボクとで戦った方が良い。

 

 あ!戦いで思い出したのだけれどヴォルギンが倒れても未だ敵対する兵士が滑走路の一部を占拠している。ヘリなどを止めてある区画は制圧できたから問題ないけれど、飛行時にRPGなんかを撃ち込まれれば大惨事だ。とりあえず戦える味方によって押し込めているけど排除も視野に入れて対処も考えなければならないかな。

 

 どうしようかなと悩んでいると蜂の巣を獲って来た兵士が「軟膏なんて出て来ませんよ」と困り顔で寄って来たので、ずぼっと手を突っ込んで中より軟膏を引き摺り出して見せる。蜂蜜でべとべとの軟膏のチューブと大穴が空いた蜂の巣を交互に見て呆然としたが何かおかしい事をしただろうか?

 周囲に集まっていた兵士に痛みを堪えて治療を受けていた者も全員が開いた口が塞がらないといった顔をしていた。

 いつの間にか合流しスネークと会話していたEVAも同様に目を見開いて驚きを露わにしている。

 普通はその反応で良いのだか、食べ物や植物から医薬品が出てきたり、銃弾がその辺に落ちていたりしていた光景を何度も目にしたバットには今更驚く要素がなかったのである。

 

 「…バット。それはなんだ?」

 「え?軟膏ですけど」

 「良いか。普通蜂の巣から軟膏は――チューブは出てこない」

 「ん?いや、だって現に―――」

 「手品の類じゃないのそれ」

 

 手品と言われて首を傾げるバットはスラブニガハッカから瓶に入った消毒薬、エゾヒレハリソウから固定具、オオバコモドキから止血材をむんずと掴み取る。

 常識的にあり得ない光景にスネークは頭を抱えた。

 

 「お前がコブラ部隊並みに非常識と言う事が良く分かった」

 「ちょ!?皆さん取れますよね!」

 「普通は取れないわよ。そういう効果や使い方はあるんでしょうけども蜂の巣からチューブが出てくることは無いの」

 

 驚きの新事実(※常識)に今度はバットの方がポカーンと口を開けてしまった。

 放心状態のバットに苦笑を浮かべるスネークだったが、すぐに真面目な表情になり、視線を合わせるように膝を突く。

 

 「バット。これから俺とEVAはザ・ボスと決着を付けてくる」

 「え、あ、はい。だったらボクも準備を――」

 「いや…ボスとの決着は俺がつける」

 

 自分も戦うものだと思っていただけに驚いて顔を見返すと、今までになく真剣で、熱意が籠り、どこか寂しさと悲しさが同居している瞳と目が合った。

 一瞬、見惚れるほどの綺麗な瞳に宿った想いをぶつけられては何も言う事は無かった。

 ポーチよりM1911A1とXM16E1の弾薬とモーゼル自動拳銃を差し出した。

 

 「モーゼルC96か」

 「ボクのお気に入りの銃です。スネークさんにお貸しします」

 「良いのか?お気に入りなんだろ」

 「はい。ですから絶対返しに来てくださいね。スネークさんが」

 「バット…」

 「クライマックスに参加させてくれないのですからせめて持って行ってください」

 「必ず返しに戻って来る」

 「えぇ、勝ってくださいよスネークさん」

 「最後までさん付けだったな」

 

 二人で微笑み、笑い合う。

 これから戦いに行くというのにそんな空気を感じさせないほど、明るく楽し気な笑い声が辺りに広がる。

 

 

 

 『スネェエエエエエエエエク!!』

 

 

 

 笑い声を塗り潰すように辺りに響き渡った大音量スピーカーより発せられた声に全員が驚き振り返る。

 炎上し続ける兵器廠本棟に圧し掛かった瓦礫の山を押し退け姿を現したのはスクリュー状のドリルが取り付けられている大きな二本の前脚だった。その前脚が本体を瓦礫の下から出そうと瓦礫を掻き分け続けている。

 スピーカーを通して伝わった声と前脚だけとはいえ何かを理解したスネークとバットは驚愕した。

 

 「まさか生きていたのか!」

 「やっぱりあの声はヴォルギン大佐ですよね!?」

 「あぁ、それにシャゴホッドを破壊できなかったとは…頑丈に作ったものだな」

 「硬すぎですよ。一体装甲に何を使ってるんだか」

 「「「悠長に話している場合(ですか)!?」」」

 

 EVAを含んだ周囲の兵士達に一斉に突っ込みを入れられてそうだったと反応した二人は動き出す。

 バットは瓦礫に押し潰されたり、大爆発を喰らっても問題ないように動くことからRPG以外の銃器では無駄だと判断し、動ける者に怪我人の移動を指示。

 スネークはEVAが乗ったバイクに取り付けてあったサイドカーに乗り込んだ。

 

 「俺達があいつを引き付ける!」

 「二人でアレは無茶ですよ!」

 「大丈夫よ。この先の陸橋に仕掛けがあるから」

 「でしたら怪我人を移動させた後で援護に向かいます!っと、それとスネークさんこれを」

 

 ニコライがクラスノゴリエより持って来た最新鋭携行用対戦車ロケットランチャーRPG-7を渡す。

 受け取りサイドカーに置きながら抑制器付最新鋭突撃銃XM16E1を取り出して構える。

 

 「じゃあ、あとで!」

 「おう!あとでな」

 「じゃあ、行くわよ!!」

 『まだだ!!待てぇええい、スネェエエエエク!!』

 

 EVAが運転するバイクが走り出すと同時に瓦礫より出て来たシャゴホッドが追い掛ける。

 通過していく様を見てることしか出来なかったバットは二人の無事を祈りつつ、周りに指示を出し続ける。

 こちらを見つめる猫の視線に気付かないまま…。




●スキルのランクアップ
・スキル【レスキュー:E】が【レスキュー:D】へアップ。
 医療班所属時、診療所の回復速度上昇。
 心臓マッサージの連打回数軽減に蘇生後のHP回復量増加。
 
 多く治療行為をしたことで医療系としてランクアップ。

・スキル【政治家:E】が【政治家:D】へアップ
 元々は捕虜が仲間になり易いスキルだが、敵兵にも効果有り。

 何度も敵兵を仲間にしたことでランクアップ。
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