宮代 健斗ことバットはスネークと再び出会えたという事実に喜んでいた。
タイトルから前回の続編だという事は察していたし、チュートリアルで出て来た赤色・青色・灰色のシルエットたちから【スネークに協力しろ】という命令と説明も受けていたが、まさか前回のデータを引き継いだスネークに会えるとは思っておらず、懐かしそうに自分の名前を呼ばれた時は嬉し過ぎて涙が出そうだった。
……本当にこれゲームなのだろうか?
ゲームでは無かったらなんだと言うんだという疑問に自答出来ないから口には出さないけど、どうもゲームに思えないんだよなぁ…。
バットの服装は野戦服に黒のロングコートなど身長が大きく伸びた分はサイズが大きくなっていたりはするが、だいたい前回と同じものであった。
懐かしさからくしゃくしゃと乱暴に頭を撫でられる。
「大きくなったなバット。見違えたようだぞ」
「えへへ、スネークさんは……老けました?」
「こいつ」
まるでじゃれ合うように接する二人を独房の中から男は呟きながら眺めていた。
「スネークにバット――そうかBIGBOSSか。驚いたな。本物か」
「俺を知っているのか?」
「知っているさ。
「ボクも?」
「そうさ。グラズニィグラードでの一件はソ連ではBIGBOSS以上に英雄視されている。なにせ交渉だけで現地の兵士の大半を味方につけ、無事に帰国できるようにしたんだからな。知れば各国の軍隊は欲しがる人材だ」
「そこまで褒められるなんて」
「あんまり褒めないでくれ。こいつは調子に乗ると何かしら仕出かすからな」
「失敬な!」
「なら胸に当てて思い返してみろ」
ムッとしながらも言われるがまま胸に手を当てて思い返してみる。
けれど別段思い当たる節がなく首を捻る。
すると何故か残念そうな視線を向けられ、ため息を吐かれた。
余計に納得できずに抗議の視線を向けていると、独房の男性から興味深そうな視線を向けられる。
「クレパス」
そういえばクレパス前でスネークさんとオセロットが戦っている時、調子に乗ってオセロットの部下に手を出して凄い弾幕が来ましたっけ。隠れれる岩と蜂の群れが現れなかったらどうなっていた事か。
「ザ・フューリー戦」
恰好をつけて挑発したら焼かれそうになったり、暗視ゴーグルで炎を直視したら目の前がホワイトアウトしました…。
あの時はスネークさんに助けて貰わなかったら文字通りに真っ黒焦げになって死んでましたね。
「荷物に紛れてトラック入ったり、倉庫を爆破したら予想以上に規模がデカかったり―――」
「すみません。思い出したんでその辺にしてください…」
次々挙がる事例にダメージを受けてしょんぼりとその場に座り込む。
独房の男性はクツクツと笑い、スネークさんは苦笑いを浮かべる。
バットが意気消沈したところでスネークは状況を整理する為にも独房の男と話を始めた。
男の名はロイ・キャンベル。
ここはキューバのほぼ真下、コロンビア中心の沿岸部にある
1964年にコロンビア最大の反政府組織FARCがソ連から軍事的支援を得るために差し出したコロンビア内のソ連領土。
その為、この辺りの正確な地形は一般の世界地図には記載されていない。
ソ連は1962年にキューバ内にアメリカ全土を射程に収めれるミサイル基地を建設しようとして失敗。それ以来新たなミサイル基地候補地を探しており、このサンヒエロニモ半島に建設する事になったのだ。
しかし米ソ共に財政難と軍事費の負担で今までのような冷戦は続けられなくなり、戦略兵器制限交渉では弾道ミサイルの保有数も制限される見込みとなっては新たなミサイル基地を建設する必要は無くなり、基地建設計画は途中で放棄された―――筈だった。
最近になり何者かの手により未完成だった基地施設が一部だが完成させられた事実。
それらの調査・確認の為にグリーンベレーの部隊が派遣されたのだが、状況の調査をしている最中にFOXの襲撃を受けて彼を除いて全滅。
唯一生き残ったロイは囚われの身となったという訳だ。
「何故FOXがコロンビアに…」
「それについてはそっちの方が詳しいんじゃないのか」
「との事ですがスネークさんに心当たりは?」
「ない。というか俺は当に除隊した身だからな」
まだまだ疑問が多く残るが圧倒的情報不足。
これ以上を知るにも解決するにも先に進むしかないだろう。
「待ってろ今助ける」
バットはスネークの取った行動に驚愕した。
囚われの身であるロイを助け出そうとするのは理解する。
グリーンベレーの隊員である彼を仲間に加えれれば、二人で任務をこなすよりも効率は段違いに上昇するだろう。
だから今助けると言葉を聞いて出すために鍵を壊したり、開錠する鍵を差し込むのだろうと思った。
スネークの行動は独房の取っ手を引くというものだった…。
独房って閉じ込めるものですよね?
鍵が掛かっていて当たり前。
なのにスネークは二度、三度と取っ手をガシャンガシャンと音を立てて引くだけ。
「無駄だ。散々試した」
ですよね。
そして開くのであればとっくに脱出してますよね。
「この独房は専用の鍵がないと開かない」
生暖かい目でスネークを見守っていたバットは「ふぅ…」と息を吐き、背負っているバックパックを降ろす。
「ここはボクの出番ですね」
「鍵を持っているのか?」
「鍵は持ってないですけどこんな独房開ける事なんて簡単ですよ」
ごそごそとバックパックを漁り目的の物を探す。
チュートリアルで以前扱っていた武器や衣料品を引き継げたのである筈なのだ。
AK-47突撃銃やM1911A1、各種弾薬や手榴弾などを掻き分けて顔を突っ込む様な体勢でガサゴソと探り、やっとの事で目的の物を取り出した。
「ちょ!?おま!!」
「さぁ、行きますよ。ロイさん離れて下さいね」
イサカM37散弾銃を独房へと向けたバットにロイもスネークも青い顔を晒した。
止めようとしたスネークは間に合わず、ロイは身の危険を感じて扉の前から飛び退く。
銃口から放たれた弾丸は轟音を辺りに撒き散らしながら鍵穴を吹き飛ばした。
二人の視線を受けるバットは笑みを浮かべながら鍵が不必要となった独房の扉を開け放った。
「ね?簡単でしょ」
「……ここが敵地のど真ん中って理解しているか?」
「・・・・・・・・・あ」
警報がBGMのように鳴り響く中、バットは間の抜けた声を漏らし、スネークは頭痛がした頭を軽く押さえる。
こうしてバットとスネークの第二幕が始まったのである…。
ロイ・キャンベルは耳にした話と目の前の青年が違い過ぎて戸惑っていた。
特殊部隊の母であるザ・ボスとGRUの過激派将校で“サンダーボルト”の異名を持つヴォルギン大佐の一派と戦った二人のうちの片割れ。
ザ・ボスの弟子で装備無しの状態でも単独で任務をこなせる能力を持つBIGBOSSことスネーク。
そして格闘・医術・調理に長け、敵兵の多くを味方に変えて現地で反抗勢力を作り上げたバット。
しかも上層部とコネがあるのか、ヴォルギンと共に行動したがバットの下に付いた兵士達を無事にソ連に帰還させたうえ、なにもお咎めがない様に計らった人物としてソ連では英雄視されている。
イメージ的には高度な交渉術と高い知性、相手を引き込む様な演技力を持つ人物を想像していた。
だが実際は何処にでもいそうな青年。
今青年という事は当時は子供と呼べる時分だったろう。
なのにどうしてグロズニィグラードではそれほまでの
鍵がないと開けれない独房を開けれると断言したときはさすがと心の中で称えてしまったよ。
…それが間違いだったと分かったのには十秒も掛からなかった。
「デカくなっただけでこういうところは変わらんな」
「いやぁ、すみません」
俺が入っていた独房がある小さな収容所の入り口に銃弾が引っ切り無しに放たれ続ける。
銃声に壁に弾丸が直撃して起こる破砕音が鳴り続ける中、困り顔ではあるものの慣れた様子で話す二人に怪訝な顔を向ける。
場慣れというのもあるのだろうがこれは
撃たれれば死ぬか、良くても戦闘能力が低下して戦い抜く事は難しくなる。
なのにこの状況下で余裕さえ感じさせるというのは一種の狂気だ。
「さっきM1911A1持っていたな」
「持ってますよ。はい、どうぞっと、ロイさんにはAK-47で良いですか?」
「良いんだがこの状況をどうする気だ?
入り口は一つ。そこには今現在銃弾の雨霰で出るに出れない。
それにこちらの戦力は三名であちらさんは一個小隊近く居るぞ」
「勿論突破しますよ。アレから勉強もしてましたし」
「勉強って…」
「なら俺はどうしたら良い?」
「援護願います」
ニカっと気持ちの良い笑みを浮かべたバットは手にした三個ほどグレネードの安全ピンを引き抜いた。驚きの余り目を見開いて凝視する最中、手や顔を入り口から出さぬように注意しながら三つのグレネードは外へと放り投げられた。
放り投げて空いた手で耳を塞いで入口より目を逸らす。同じくスネークも塞いだので倣って耳を手で塞ぐと、塞いでいるにも関わらず聞こえる甲高い破裂音に入口より閃光が内部を照らす。
「行きます!」
「行け!」
それだけ言うと何の躊躇いもなくバットは跳び出し、スネークは銃を構えて入口より身を晒した。自分も援護しようと渡されたAKを手にして身を出すとそこには信じられない光景が広がっていた。
二十人近くの兵の半数近くが先の閃光で目が眩み、のた打ち回っていた。その兵には目もくれずに駆けていくバットはふら付きながらも銃口を向けている兵士に向かう。
耳を塞いでも聞こえた音に反射だというのに目に光の残滓が残る強烈な発光。
考えるまでもない。先ほどバットが投げたグレネードは音で耳を、光で目を潰すスタングレネード。
転がっているのはもろに光を目にし、その上で音で耳をやられて気絶。もしくは気絶寸前の消えかけの意識で踏ん張っている奴らだろう。
立って居るのは僅かでも防げた連中。運が良かったのか、それとも咄嗟の機転か分からないがあんな状態では戦力としては期待できるものではないが…。視界は何とか守れても音で耳がやられて平衡感覚が狂っている。足元は覚束ないし、身体の芯がブレブレだ。あんな状態では狙って撃っても目標に掠りもしないだろう。
しかし数撃てば当たる確率は増す。さらに言えばバットは接近しているので命中率は格段に上がっている。
それでもバットには掠りもしていない。
何やら口元が度々動くとまるで一人だけ時間の流れが違うかのように
敵の懐まで接近すると自分より大きな相手に対し、素早く関節を決めたり、相手の動きを利用したりして、あっという間に意識を刈り取って地面に転がす。
スネークの援護も的確で相手はまさに為す術なく倒され、一分もしない内に一個小隊もの敵兵が無力化された。
…化け物。
これがあの二人に俺が抱いてしまった感情だ。
多分だが彼らが戦ったというコブラ部隊や特殊部隊の母と謳われたザ・ボスも彼ら並みの…否、彼ら以上の化け物だったのだろう。
化け物と言っても俺は彼らを恐れ戦いている訳ではない。
寧ろ仲間であることに心強さを感じているところだ。
彼らとならば何とかなるんじゃないかと。
慣れた様子で戦闘不能となった敵兵を縛り、銃弾や物資を拝借しているバットとスネークは不敵な笑みを浮かべる。
「さぁ、これからどうするか」
アレだけの敵兵を殺さずに無力化しておいて余裕のある笑み。
本当に心強い……。
「だったら通信しs―――」
「ご飯にしましょう!果物や動物を捕らえて」
「良いなぁそれ。バットの飯は美味しかったからな」
「料理の方も色々調べてましたからね。ロイさんも期待していてくださいね」
「え、ア、ハイ…」
…心強い筈なのだが今の言動に牢での一件。
どこか不安が残るのはなぜだろう。
次回一月十日投稿予定。
では、少し早いですが良いお年を