メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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 投稿遅れ申し訳ありません!
 この作品を含んだ三作品の投稿日直前に、最新話が気に入らずに三作品とも書き直しに入り、今になってしまいました。


第27話 『薬を求めて…』

 一刻も早くロイの為にマラリアの治療薬を入手しようとバットとスネークは色々と探し回った。

 最初に襲った駐留部隊哨戒基地を拠点としてスネークがパラメディックに相談しようと通信基地へと向かい、バットは仲間にした兵士のジョナサンが病院に大量の医薬品が運び込まれたとの情報を持っていたのでそちらへ潜入を行った。

 正直スネークの方は存外に簡単に終えたが、バットが向かった病院は困難が予想された。

 規模はさほどではないものの、負傷者の治療から感染症の患者を隔離する目的もあるのか内に対しても外に対しても厳重な防衛設備を備えている。

 入り口は一つに絞り、病院に向かう道は五メートルを超える壁が囲んで道幅はかなり狭い。

 もしも(・・・)入り口付近の道に敵兵が待機し、外への監視を強めていたらさすがのスネークやバットでも突破は不可能だったろう。

 隠れるところはなく、道は長い上に狭い。

 壁で両側を塞がれている事で別ルートを選ぶことも出来ない。

 攻めるに攻め難いし、無理に突破しようとすれば被害は想像を絶するものとなるだろう。

 逆に守るには容易い場所。

 被害を抑えて突破しようと考えると重武装の戦闘ヘリなどで爆撃するしかないのではないだろうか。

 勿論スネーク達はそのような兵器を保有してないので思うだけだ。

 

 こんな敵が圧倒的有利の地形をどうやって攻略すれば良いのか…。

 

 誰も見張りに立って居ない道。

 ガバガバな敷地内の監視網。

 駐車してある二台のトラックに障害物で身を隠しやすい状況。

 

 何と言う肩透かし。

 というかどうなってんのこの病院!?

 警備が警備してない上にし難いこの乱雑な置き方にどうやっても狭い道を通れないトラック。

 兵士は職務怠慢なのか油断の産物なのかはこの際置いとくとしてもトラックはおかしい。部品を持ち込んでここで組み立てたのか、それとも空輸でもしたのかと疑問を覚える。

 まぁ、なんにしても一番の問題が消え去った事は嬉しい事だ。

 ………マラリアの治療薬は一切置いていなかったが…。

 

 しかし悪い事ばかりでは無かった。

 病院と通信基地の敵兵を捕縛して説得したおかげで十二名と医療技術を有する女医の二人が味方となった。

 さらには病院に残された資料によれば医薬品は“研究所”に運ばれたらしく、位置は飛び去って行くヘリの行き先で凡そ把握できた。というのも外部からは発見できない所に建てられており、調べるにも潜入能力の高い者でなければ難しいとの事。

 そこで一度駐留部隊哨戒基地へと戻ったスネークとバットは装備を整えて研究所に向かうのであった。

 

 「って、本当にここが研究所なんですかぁ?」

 

 あからさまに疑いの眼差しを向けるバットにスネークは同意したい気持ちを抑えて手を動かす。

 周り360°全てがコンクリートで形成された空間で、直角の壁や大きな木箱が幾重にも積み重ねられて駐留部隊哨戒基地以上に乱雑な状況。

 研究所の入り口というより物置のような場所だとは思う。

 バットの疑問は当然と言えるが…。

 

 木箱の陰に潜んでいたスネークは近くを通りかかった研究員を素早く片腕で締め上げながら、もう一方でMk22を構えて離れた敵兵に麻酔弾を撃ち込む。

 その近場を巡回していた兵士がスネークに気付く前に、コンクリートの小屋の上を移動していたバットが飛び降り、背後から肩に強烈な一撃を入れて着地する。

 酸欠で意識を失った研究員を離すとほぼ同時に三名の人間がその場に倒れ込んだ。

 

 「研究員に巡回の兵士…研究所でなかったとしても重要な施設なのは間違いないだろうな」

 「ですよねぇ。でもどう見ても荷物置き場が良い所ですよ」

 「文句があるなら一人戻るか?女医たちが喜ぶ」

 「任務を続けましょう!」

 

 先ほどまで面倒臭そうだったと言うのに女医と口にしたらやる気に燃えた目をしてきた。

 気持ちは分かるがな。

 バットは男性というよりは女性よりの顔をしていて、女医から見たら年下の子。

 味方になった瞬間、完全に玩具にされたからなぁ。

 女医や女性兵士の制服から彼女らの私服などなど…。

 

 「着せ替え人形になるのは嫌か」

 「なら代わって貰えます?」

 「俺は似合わないからな。適材適所ってやつだ」

 「他人事だと思って…」

 

 不服そうな視線が向けられるが受け流し、先を見上げる。

 階段もはしごも無いただの壁。

 手や足をかける段差もないとくればどうしたものかと悩ませる。

 すると木箱を登って上へと向かうバットが視界に入り、苦い笑みを浮かべる。

 

 「早く昇りますよ」

 「よくもそういったものを見つける」

 

 しっかりと重ねられた木箱にバットと同じように上り、辺りを警戒しつつ慎重に行動する。

 太い柱が何本もある通路を進み、太陽の光が差し込んでいる角まで進むと二人そろって隠れつつ様子を窺う。

 

 「―――の状況は?」

 「――――記憶野の初期k―――」

 

 目を凝らして見つめているとこちらに背中を向けて四人の男女が歩いている。

 後ろの二人は知らないだ、前を歩いて研究員らしき人物と言葉を交わしていた男には覚えがあった。

 

 「あれはカニンガム」

 「カニンガムって言うと捕虜尋問官でしたっけ。スネークさんを尋問した――」

 「そうだ。奴がここに居るという事は…」

 

 周りの気配に注意しつつ何とか会話を聞けないかと耳を澄ますも、途切れ途切れでしか伝わってこない。

 それでも何かの調整に十二時間必要だという事と、俺達の捜索は難航している事はよく分かった。

 

 突然後ろを歩いていた男女が立ち止まり上を見上げる。

 その先には建築中の施設があり、多くの兵士達が作業に没頭している。

 

 男性に声を掛けられたのかカニンガムが足を止めて振り返った瞬間、施設上部より鉄柱が落下してカニンガムの目の前に突き刺さった。

 まさに間一髪といった状況にカニンガムは驚くが、後ろの二人は微動だにしない。

 周囲の兵士達が慌てて駆け寄るとカニンガムではなく男性が口を開いた。

 

 【作業を急がせてすまない】

 

 発せられた声が頭に響く。

 どこか甘く、思考を揺さぶる声に鳥肌が立った。

 

 普通ではない。

 確実に何かしらの能力を保有している。

 それから彼が語った内容は兵士一人一人の働きに感謝し、自分達の夢の為には君ら一人一人が大事だというものだった。

 敵の言葉であるのだがそれがスーと心に溶け込んでくる。

 兵士の中には涙を流して敬意を示す者も見える。

 

 「あれがジーンか。それに今の声に予知能力……ESPなのか?

 「なんですかESPって?」

 「超能力と言えば分かるか?一般的な人間が持っていない特殊能力者とでも思えばいい」

 「あぁ~、コブラ部隊みたいな感じですね。解りました」

 「………そういえばお前さんもそういった類だったな」

 

 不服そうな視線が突き刺さる。

 が、その視線はすぐさま消え去り、代わりに大きなため息が聞こえた。

 

 「まぁ、良いですけどね。兎にも角にも薬を探さないと」

 「ロイも首を長くして待っているだろうからな」

 「研究施設を探すとなれば―――二手に分かれた方が無難ですかね?」

 「そうするか」

 

 ジーンたちが去って行くのを確認した二人は物陰から物陰へと移り、それぞれが建物へと踏み込む。

 入って幾つかの部屋を見渡していくがおかしな点に気付く。

 巡回の兵士が少ない上に機材の数がやけに少ない。まるで引っ越し作業中のように。

 

 疑念を抱きつつ奥へ奥へと進むと逆に機材で囲まれた一室に入り込んでしまった。

 中には液体で満たされた箱の中に一人の男性が眠っているように沈んでいた。

 なんだこれはと眉を潜めながら近づくと背後より人の気配を感じて振り返る。

 

 「誰?立ち入り禁止の張り紙が読めないの?」

 

 扉が開いて入って来たのは研究着を着た若い女性……しかも先ほどジーンと並んでいた女性ではないか。

 いや、それよりもだ。

 

 「子供?どうしてこんなところに?」

 「私はここの責任者です!」

 「責任者!?」

 

 疑問よりも先に驚きが口から洩れてしまった。

 ムッとした様子で言い返されるが未だに信じられない。

 

 カツカツカツと足音が外より聞こえてくる。

 人数的には二人だろう。

 ここで見つかれば入り口を封鎖されれば逃げ場はなく、銃撃戦に発展すれば彼女もただでは済まない。

 悩むも足音が近づいて時間が無い。

 スネークよりも慌てた様子の彼女がロッカーを指差す。

 

 「そのロッカーに隠れて」

 「なに?」

 「良いから急いでスネーク(・・・・)

 

 背中を押されて慌てて中に入り込むと扉が開いて二名の兵士が姿を現した。

 緊張からゴクリと喉が成り、隙間より静観する。

 

 「何があったのですか?調整室内は立ち入り禁止ですが」

 「すみませんミス・エルザ。実は侵入者が―――」

 

 兵士は彼女に敬意を払いつつ不審な人物を見なかったかと問いかける。

 彼女は自然な様子で見なかったとだけ答え、兵士達が大人しく帰っていくまで決してこちらの事を漏らさなかった。

 兵士が出て行き扉が閉まるとロッカーより出る。

 

 「驚いたな。本当に責任者だったとは。それに俺を庇ってくれるとはな―――何故助けたんだ」

 「分からない…必要な気がしたから…」

 「・・・質問を変えよう。何故俺の名を知っていた?君もFOXの隊員か?」

 「いいえ、違うわ」

 「だがその制服――」

 

 ジーンの隣を歩いてた時は確かFOXの制服を着ていたと遠目ながら見た情報を信じ、研究着の襟元を掴んで胸元を開かせる。

 そこにはFOXの制服は無く、急に捲られた事で小さく悲鳴を挙げられる。

 慌てて手を離し目を背ける。

 そこで扉が開いて中を窺うバットと目が合った。

 

 

 顔を赤らめて研究着を押さえて胸元を隠す女性に、近くにいる男性一人。

 あ、これは駄目なやつだ。

 言い訳をするよりも早くスネークは無言で迫ったバットによって投げ飛ばされるのであった…。

 

 

 

 

 

 

 一機のヘリが研究所より飛び立つ。

 窓より外を眺めながらFOXの医療チーフであるエルザは先の二人を思い返す。

 

 他の兵士とは異なる空気と人を引き寄せる雰囲気を纏ったスネーク。

 技量は非常に高いが戦場に似つかわしくない青年のバット。

 違和感を覚える組み合わせで、一応は敵である筈なのだが妙な安心感を持った二人。

 

 いきなり研究着を引っ張られて胸元を開けられた事や、体格差をものともせずにスネークを投げ飛ばした事には驚かされた。

 それ以上に彼らは敵地だというのに抜けている。

 一番の理由はバットにあったように思えるが…。

 

 どうも彼の目にはスネークが私を襲おうとしていたように見えたらしく、敵地のど真ん中で説教を開始したのだ。

 スネークは私を姉のウルスラと勘違いしたという事でフォローに入らなければ今も続いていただろう。

 というのも以前に女性の着替えをガン見していた前科があるのでそういう事だと疑わなかったとの事。

 

 私は予知能力があり、会話しつつ彼らの未来を見た。 

 スネークの方は彼がジーンが切り札にしているアレ(・・)を破壊するもの。その先も見えそうであったが今はまだ(・・・・)ぼやけてはっきりとは見えない。

 そしてバットの方だが彼はこれから幾度と戦場を駆ける光景と、ある少女と共にこの世界から消え去る(・・・・・・・・・・)という奇妙な未来。

 

 

 ――――それ以上この者を覗くな。

 

 

 心臓が握られたような恐怖を感じ取った。

 否――――見てしまった。

 何もない空間よりこちらを見つめている青色、赤色、灰色の人影たち。

 見た目は別段なんとも感じるところは無いが、彼ら・彼女が発する力には底が見えず、自分との差に恐怖した。

 

 あの人影たちはいったい何だったのだろうか?

 ……止めよう。

 あれらが何だったかを考えた所で答えは出ないだろうし、思い出すだけでも手が震えそうだ。

 

 兎も角彼らを予知し、アレを破壊してくれるならと少しだけ協力することにする。 

 協力と言っても戦闘の助けや便宜を図るようには出来ないが、多少の情報を提供することは出来た。

 

 私と姉のウルスラがESPの素質を研究する施設で育てられ、ウルスラは共産圏でもトップの能力者である事。

 四年前にジーンが共産圏のESPを入手する任務で連れ出してくれたこともあって反乱に参加している事。

 人が考え得る感情を取り除き、戦闘技術は残して記憶は消去され、任務に忠実な戦士として強化に強化を重ね、私が調整を担当している絶対兵士計画の唯一の成功例“(ヌル)”の恐ろしさ。

 そして港に向かえば彼らが探しているものが見つかるという予知などなど、口頭でだが教えれることは教えた。

 

 あとは外に出られる通り道を教える事と予知で知っていた彼らが捜しているクロロキン耐性のマラリアに対する治療薬を渡す事ぐらいだ。

 代わりに良い物を貰ったのは嬉しい誤算だ。

 バックに入れた小包をそっと撫でる。

 中にはバットが治療薬をくれたお礼と言って干し肉をくれたのだ。

 口にした事のあるものと違って生臭くなく、不思議な事に疲労感が若干ながら消えたのだ。

 特別何かをしたという話は無かったが、到着したら少し調べてみよう。

 

 「――――ッ!?」

 

 二人を思い返しながら遠くなっていく研究所を眺めていたエルザは、あるものを見つけてしまい驚きの余りに目を見開いてしまった。

 その様子を偶然にも目撃したジーンは小首を傾げる。

 

 「なにかあったのか?」

 「い、いえ、何でもありません」

 

 ジーンの問いに慌てながら思いっきり嘘を吐いてしまった。

 何でもない筈がない。

 乾いた笑みを浮かべながら向き直したジーンから窓へと視線を戻すと先ほどの場所を見つめる。

 

 ――――居た。

 

 そこにいるのは研究所の建物の上に立ってこちらにブンブンと手を振っているバットの姿。

 困惑と驚きが押し寄せるが、犬が喜んで尻尾を振っているようで何処か愛らしく微笑みを浮かべてしまう。

 何故あのような人が戦い続ける運命を定められているのかと想いながら、エルザは彼らに武運を祈るのであった。

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