メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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第32話 「迎賓館での戦い」

 コロンビア中部沿岸サンヒエロニモ半島で起こったジーンの反乱は思わぬ状況へと追い込まれていた。

 賢者の遺産のありかを聞き出そうとして連れ込んだスネーク。

 何処からか入り込んだバット。

 捕まって牢に入れられていたロイ・キャンベル。

 たかが三人によって行われた抵抗は今や半島全土を呑み込もうと燃え盛っている。

 次々とジーンの反乱に加わったソ連兵が流れ、各地で人手不足が起こって対応が遅れ、さらにスネーク一派の動きは活発化しただけではなく、半島外からの援軍を連れて来たのだ。

 対してジーン側は兵力の減少に留まらず、パイソンが敗れ、ヌルは精神不安状態に陥ってメンテナンス中など戦闘に秀でた者にまで被害が出始める始末。

 そんな中でスネーク達は新たな動きを見せた。

 港の制圧と情報収集に部隊を分け、今は情報を待つべきなのだろうがスネークとバットは迎賓館へと潜入しようとしていた。

 なんでもゴーストと名乗る謎の情報提供者より迎賓館辺りでジーンと敵対する者の動きがあったらしく、味方になるような人ならこちらに引き込みたい。

 もしくは捕まっているのなら助けたい。

 そう思い二人は迎賓館まで足を運んだのだった。

 しかしながら二人は今までが順調だったばっかりに、少しばかり甘く考えていたのかも知れない。

 潜入したは良いが探している人物は見つからず、そればかりか敵兵が集中して動くに動けない状況へと追い込まれてしまったのだ。

 

 「ちょっと盛況過ぎません?」

 「俺達はここでは有名人だからな。見つかったら人だかりも出来るだろう」

 「辛いですね人気者って。目立つ行為は避けた方が良かったですねぇ」

 「何処かの馬鹿が倉庫漁りをしていたからだ」

 「そういうスネークさんだって美味い食いもんはないかって乗り気だったじゃないですか」

 

 ぶつぶつと言い合いながら銃弾飛び交う建物を走り抜ける。

 休憩を挟んで(現実世界への帰還)復帰して話を聞いて赴けばいきなりの戦闘。

 原因の一端は自分にあるとはいえ少しばかり心の準備はさせて欲しかった。

 そう思っても相手は手を緩めてくれることも無く、銃口を向けてトリガーを引き続ける。

 出来得ることなら殺さないようにしたいが、この状況下で下手なことをしていたらやられるのは目に見え、仕方が無いと割り切ってAK-47のトリガーを引く。

 撃ち抜かれて倒れるジーンについたソ連兵は援軍を要請するもどこも人手不足の上、現在港が襲われていてそれどころではない。

 スネークとバットにとって敵の人数が限られている事だけが希望を持てる状況であった。

 さすがに無限沸きなんてされれば弾切れによって敗北必至。

 兎も角数を減らすことだけを考えてトリガーを引き続ける。

 

 「見つけた…」

 

 聞き覚えのある声にバットは血の気が引いた。

 数を減らしたとはいえこの状況下であの化け物染みた奴が出てくるのは勘弁して欲しい所だ。

 気のせいであってくれと願いながら振り返ると顔の半分をマスクで隠し、マチェット片手に殺気立つ青年―――絶対兵士ヌルがそこに居た。

 嘘でしょと慌てる中、ヌルの足元に転がっているモノに気付いて思考が停止する。

 転がっていたのは敵兵。

 自分達が撃ち殺したのではなく、明らかに斬り殺されていた。

 つまり奴は味方を斬ってそこに居るのだ。

 

 「絶対兵士と戦って生き残る者は―――いない!!」

 「―――ッ、来る!!」

 

 真っ直ぐ突っ走って来るヌルを確認したその場の兵士全員が動いた。

 敵も味方も無く銃口が一斉にヌルへと向けられる。

 バットとスネークは敵としてだが、ジーンに下ったソ連兵は暴走状態に至ってしまっている事に気付いて死にたくない一心で迎撃する。

 飛び交う弾丸をマチェットで弾きながら近くにいた者を無差別に斬り捨てて行く様子にスネークは目を見張る。

 

 「なんだアイツは!?」

 「絶対兵士って呼ばれてました!」

 「こいつが!」

 

 弾丸を弾き、近くにいた味方を切り裂きながら接近してきたヌルに銃口を向ける。

 スネークが放った弾丸も他と同じように弾かれるが、その後の結果は異なっていた。

 弾きながらも接近してきたヌルの一振りを躱し、二撃目をAK-47を投げつける事で防ぎ、素早く抜いたM1911A1で反撃したのだ。

 さすがにゼロ距離では弾くにも動作する時間も動きも間に合わない。

 咄嗟に飛び退いて頬を掠める程度で済まし、マチェットを構える。   

 

 「この動き…どこかで。確かモザンビークで…」

 

 たった一瞬だったがどこか想うところがあったのだろう。

 スネークがぼそりと言葉を漏らすと急にヌルが呻き声を挙げ、頭を抱え始めた。

 何事かと呆気にとられるスネークを他所にバットが腕を引く。  

 

 「思い出してる場合ですか!」

 

 苦しみ始めて動きを止めたヌルを無視して、バットがスネークを引っ張って近くの扉へと誘導する。

 逃げようとすることに気付いた兵も居たが、攻撃されるより先にスモークグレネードを投げて視界を奪う。

 慌てて跳び込んだ部屋の安全性を確認しつつ、扉を閉めて内側より鍵をかける。

 

 「ほぅ…ここまで来るとはな」

 

 安堵するのも束の間、不意に体の芯にまで響いたような感覚の声に肩を震わしながら振り返る。

 声の主は二階部分より話しかけており、明らかにその辺に居た兵士とは漂っている雰囲気が異なっていた。

 赤いベレー帽に鋭い眼光、姿勢は凛としており銃器を持っているバットとスネークを前にしても後ろで腕を組んでいるだけで警戒すらしていない。寧ろ余裕すら窺える…。

 

 「スネーク。それにバットだったか。お前たちは何故戦う?国の為か?己が無罪を晴らす為か?」

 

 問いに沈黙を返すと満足そうに頷かれた。

 ただ者ならぬ気配にバットですら相手が何者なのかと察する。

 FOXを率いて新兵器を強奪し、半島のソ連兵を引き込んだ反乱の首謀者(ジーン)

 警戒しながら見下ろしてくるジーンを睨みつける。

 対してジーンは微笑を崩さない。

 

 「お前たちにひとつ面白い話を聞かせてやろう」

 「面白い話?」

 「今回の新兵器(メタルギア)強奪はCIAによって仕組まれたものだ」

 「CIAが自ら強奪計画を立てたというのか」

 「彼らはアメリカが開発したメタルギアをソ連に引き渡すつもりだったのだ。

  ソ連は冷戦を維持するだけの膨大な軍事支出に耐え切れない経済状況に加え賢者の遺産を失った。

  逆に賢者の遺産の半分を手に入れたアメリカは軍備を進めた。このままでは世界のパワーバランスが崩壊する。

  維持すると共に主だった戦争活動よりCIAによる諜報活動の優位性を生み出す」

 「なるほど。組織の利益の為に使い捨てにされた訳か。それがお前たちが裏切った理由だな」

 「確かにそれもあるが、私は駒で終わるつもりなど毛頭ない。私は私が望む世界を創る。

  兵士が優れた将校を必要とするように、人類には優れた指導者が必要だ。

  高い戦闘スキルに戦略を立てる頭脳、兵士の心を掌握する圧倒的なカリスマ。

  私はアメリカが極秘裏に進めていた最高の戦闘指揮官を造る相続者計画によって生み出された。

  私の声には特別な力があるのもその成果なのだ。モデルに選ばれたのは伝説の英雄――」

 

 思い浮かぶ人物は一人しか居なかった。

 それはとても大切な人であり、命を奪うしかなかった人……スネークが決して忘れる事の出来ない女性。

 

 「――ザ・ボス!」

 「そうだ。私は彼女の全てを受け継いだ」

 

 ニヤリと微笑んだジーンは高みより手を差し出すかのような動きを見せ、優し気に語り掛けた。

 

 「スネーク、共に来い。私が望む世界にこそお前たちの居場所は――ヌッ!?」

 

 心の奥底まで響き渡るような言の葉は響き渡った銃声によって掻き消えた。

 音の発生源へ振り向くとAKを構えているバットの姿が…。

 

 「…チッ、外した」

 

 心の底から舌打ちしながら問答無用の銃撃にさすがのジーンも驚きを隠せないでいる。

 驚きはしたものの呆れたような視線をスネークが向けていた。

 

 「どうして撃ったか聞いておこうか?」

 「話が長い上にあんなこと(受け継いでいる云々)言ったらスネークさんは余計に敵対するでしょ?だったら会話スキップして良いかなと…」

 「お前さんが相も変わらずどうしようもないことが再認識できたよ。それと俺のことをよく解っているのもな」

 

 呆れてため息を吐きつつも顔は笑っていた。

 そしてそのままジーンを見上げる。

 

 「生憎だがその誘いは断らせてもらおう。俺達はお前の夢とやらに付き合う気はない」

 「愚かな…」

 

 明らかに失望に似た視線を向けて来るジーンに対してニカっと笑い掛けながら銃口を向ける。

 この部屋には護衛無し。

 高所は押さえられていても武器は手にしていない。

 こちらは二人で相手は一人。

 しかも相手はラスボスで倒せばこの戦いは終了する。

 有利な状況にほくそ笑んでいるとくぐもった鈍い音が聞こえてきた。

 

 「絶対兵士と戦って…生き残る兵士は…いてはいけないんだ…」

 「こわっ!!」

 

 振り返ると扉にマチェットを突き刺し、隙間からぬるりと顔を覗かせてきたヌル。

 ホラー映画のような登場に驚きドア越しに銃弾を撃ち込むが、飛び退いたのか姿が消えた。

 続いてジーンに視線を向けるとすでにそこには居らず、立ち去ったようでこれ幸いと言わんばかりにこの場より逃げ出そうと駆け出す。

 正面玄関へ繋がる扉を開けて周囲に敵兵が居ないのをさっと確認して入り口前で停止、そっと外を確認して迎賓館より脱出する。

 外へと躍り出た二人をライトが照らす。

 一瞬、目が暗み足が止まる。

 

 「そこまでだスネーク。それと…貴様がバットか?」

 

 徐々に視界が回復してくると周囲には敵兵が囲んでおり、斜め上にはフライング・プラットホームに乗って勝ち誇ったように見下ろしてくるカニンガム。さらには追って来たヌルの姿まであった。

 状況は最悪。

 バットがCQCモードを起動させようともCQCに持ち込む前に時間が過ぎ、モードが解除された途端にスネークもろとも蜂の巣だろう。

 圧倒的不利かつ絶望的な状況に歯ぎしりを鳴らしながらもどこかに打開する手段はないかと見渡す。

 

 「正直予想外だったよ。ここまで荒らしてくれるとはな…だがそれもここまでだ」

 

 正直フライング・プラットホームにも照明が取り付けられていて、服装どころか顔すらシルエットで輪郭しか見えないのでどんな表情をしているのか解らないが、声と雰囲気から蔑むように笑っているのは確かだ。

 

 「さぁ、“賢者の遺産”は何処か喋ってもらうぞスネーク」

 「だから俺は知らん!」

 「それはもう聞き飽きたぞ。だったら喋り易くしてやろう」

 

 銃口をバットに向けて一発放った。

 慌てて転がり避けれたが周囲の銃口が一斉に向けられた事でそれ以上は動けない。

 喋らなければバットを撃つ―――否、自分が望んでいる解答をしなければ撃つという最終通告。

 焦るスネークにカニンガムは不敵な笑みを浮かべながら問う。

 

 「もう一度聞くぞスネーク!遺産は何処だ!!」

 「だから知らんと言っているだろうが!!」

 「えぇい、頑固な奴だ。脅しではない事を見せてやろう」

 「止めろカニンガム!本当に遺産は知らないんだ!!」

 

 必死に叫ぶもカニンガムは信じようとはしない。

 再びバットに銃口が向けられるとその前に立ち塞がって撃たせないように射線を塞ぐ。

 両者とも睨み合い、痺れを切らしたカニンガムが顔を真っ赤に染めながら怒鳴り上げる。

 

 「お前は遺産のありかを知っている筈だ!国防省からの情報では確かに―――ハッ」

 「国防省!?―――どうしてそこまで遺産に拘るカニンガム」

 

 CIAではなく国防省…。

 思わぬ失言にスネークの視線が鋭くなり、カニンガムは口を押えるも最早何の意味も持たない。

 質問の答えは持っていようと答える訳に行かずに間が空く。

 どう切り返すか思考しているのだろう。

 だが、焦っている時分に冷静な判断と正常な思考を働かせられる人物は稀で、カニンガムはそんな稀には含まれていない。

 彼の解答は怒鳴って黙らせようと声を荒げる程度だった。

 

 「う、五月蠅い!早くしないと―――ッ!?」

 

 一台のトラックがバリケードを突破して突っ込んできた。

 猛スピードでトラックが突っ込んできたために包囲網の一角が崩れ、タイヤを滑らしドリフトしながら後部を振った一撃がカニンガムの乗り物に激突し、衝撃に耐えきれなかったカニンガムは地面に転げ落ちた。

 突然のことに皆が何事かと固まる。

 その中で唯一動けたのはトラックに搭乗していた者達だけ。

 

 「バット、スネーク!早く乗って!!」

 「エルザさん!助かりま――」

 「あああああぁ―――ッ!?」

 

 助けに来てくれたエルザに謝罪を口にしようとすると、暴走状態に陥っているヌルが飛び掛って来た。

 咄嗟にAK-47を盾代わりにしたが鉈がめり込んで銃身が曲がってしまい使用不能に。

 すかさず二撃目を放とうと鉈が振り上げられた所をスネークがタックルでヌルを吹き飛ばし、狙い撃つも体勢をすぐさま立て直したヌルは高く飛び退いて回避し切った。

 荷台から手榴弾かと思えば液体窒素の詰まった手投げ弾が放られて、周囲の敵兵の銃器を凍り付かせるのと同時に煙幕代わりになって視界を塞いだ。

 

 「ぐずぐずするな!早くしろ!!」

 「パイソン!!」

 

 驚きを露わにしながらせめて逃がすまいと道を通せんぼしようとする兵士に威嚇射撃しながら荷台へと移る。

 上がる際に手が差し出され、力強く握るとがっしりと掴み返され引っ張り上げられる。

 幽霊の類ではないらしい。

 生きていてくれた喜びにより涙腺が緩みそうになるが、堪えて微笑を浮かべる。

 

 「生きていたのか」

 「そう簡単にくたばるものかよ」

 「確かにな」

 「ちょ!?なんでも良いですから奥に詰めて下さい!」

 

 再会を喜んでいる二人には悪いが状況が状況だ。

 バットは二人を押し込むように飛び乗り、急発進するトラックから落ちないように端にしがみ付く。

 こうしてスネークとバットは無事迎賓館より脱出するのであった。

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