メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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第33話 「メタルギア戦」

 バットとスネークが迎賓館より姿を晦まして数時間後。

 深夜帯まで稼働している工場区画に反ジーン派の面々の半数近くが集結していた。

 倉庫へ向かったスコウロンスキー大佐の部隊は合流を果たせなかったが、時間が少ないことから短期決戦を挑むべく行動を起こした。

 

 「斉射開始!」

 

 ニコライの指示で戦端の火蓋が斬って堕とされた。

 工場は周囲をちょっとした崖で囲まれたところに建設され、さらに木々が生い茂っている事から秘匿性が高い。しかしバレれば高所を取られて不利になる。元々防衛施設ではなく組み立てなどを行う施設だったからか、それとも資金や人員的に防衛能力を持たせれずに隠匿するしかなかったのかは分からない。

 なんにせよそのおかげでこちらは高所より有利に攻撃を行えるのだから有難いことだ。

 

 「派手に行こうぜ!!」

 

 別動隊を率いていたロイの部隊も別方向よりニコライ達に合わせて攻撃を開始。

 突然の銃撃に建物の外で作業していた者らが次々と撃ち抜かれていく。

 応戦しようと建物に身を隠しながら反撃する者も徐々に増え、工場外延部は激しい銃撃戦が行われ、その最中にスネーク達は身を潜めて工場に潜入しようとしていた。

 味方の応援に向かおうとしていた兵士にバットが飛び出し意識が集中したところで、背後より忍び寄っていたパイソンが最後尾の二人を掴んで凍り付かす。

 背後の事に気付かない残りの兵士達はバットに銃口を向けて撃ち続けるがCQCモードを起動して回避され、スネークの援護射撃と懐に入ったバットのCQCによって全員が命か意識を失った。

 

 「まるで魔法ですね」

 「確かに。パイソンさんなんてまさにそうですもん」

 「「お前が言うか?」」

 

 エルザの一言に笑みを浮かべて答えたバットだったが、スネークとパイソンが同じ返しをしてきたのが理解できずに小首を傾げる。24と年齢を聞いた割りに可愛らしい動作にエルザが微笑む。

 パイソンとエルザがスネーク達に合流してひと悶着はあった。

 あー…いや、“FOX隊員を信用できるか!”とか“ジーンのスパイではないか?”とか言った疑念に凝ったものではなく、“参考までに聞きたいんだがどうやってあんな若い子を口説いた?”などと言い出したロイによる不用意な発言が原因であった。

 パイソンの加入についてはスネークが喜び、話を聞いたバットがウェルカム状態だったので誰も異論無しで即決。というかほとんどが取り込まれた経験者だった事も大きかった。

 ロイのやり取りは最初は放っておこうかなと思っていたのだが、さすがに“あと五年も待てば”などと失礼な発言をし始めたので注意したのだ。そして小声でしていたつもりでしていたのだろうけどもエルザにもバッチリ聞こえており、二人から厳重注意を受ける羽目になったのだ。

 

 真面目な話をするとエルザがジーンを裏切ったのは核を使わせない事が理由だという。

 共産圏でもアメリカでもESPを軍事利用したいがためにエルザとウルスラの姉妹を研究し続けた。

 人道的に行われたものではなかった…。

 表に公表しないために世間の目は届かない。

 実験動物として扱われる日々。

 それから救ってくれたジーンには今でも感謝しているが、核を使用する事だけは許せない。

 両親が物理化学者で、ソ連滞在時にキシュテム核施設で起きた爆発に巻き込まれて死亡。エルザとウルスラはその際に被爆し、未だに爆発で死んだ両親の夢に魘されるらしい。

 想像を絶する光景だろう…。

 両親の死に降り注ぐ死の灰、そして被爆したという現実。

 

 真剣に語られた過去に誰もが同意し、ジーンを止めなければと意気込んだ。

 それとエルザの言によれば銃弾を鉈で弾いていたヌルという兵士は調整中で居ないとの事で、警戒すべき敵はカニンガムにジーンのみ。ジーンはヌル以上に高い反射能力を持っているので注意との事だが銃弾に対応できる人間より上ってそれコブラ部隊(人外)か何かじゃないかな?

 「弾丸を弾く超人より上か」

 「安心しろ。こっちには弾丸を回避する奴がいるぐらいだ」

 「小さくて当たらないだけではないか?」

 ……パイソンさん、絶対にあの時の会話は忘れませんからね。

 思い出して怒りが込み上げるが深呼吸を繰り返して冷静さを取り戻し、こっそりと扉の隙間より中を確認してバットを先頭に四人は工場内へと侵入して行った。

 外の騒ぎに気を取られ、ほとんどが応援に向かって手薄なのか、それとも何かの罠なのか…。

 気を抜かずにそのまま進む。

 

 道中誰にも出会わず最深部まで到達した一行はコンテナ群の奥に佇む兵器に目が行った。

 中心のブロックに対して羽が折り畳まれたような形状の機会。

 戦車でも装甲車でもない。

 羽の内側には脚部みたいなのが見受けられることからこれがメタルギアなのだろう

 

 「シャゴホットに比べたら随分と小さいですね」

 「まだ核は搭載前のようだな。さっさと爆弾を設置しよう」

 

 ジーンの切り札で強奪された兵器を破壊したとなればスネークに掛った反乱の嫌疑を晴らす補強材料になる。

 さらに戦局は大きくスネーク側に傾くことも予想できる。

 一石二鳥とはこの事だろう。 

 早く設置しようと近づく一向に忍び寄る者がいた。

 

 「今度は逃がさんぞスネーク」

 

 聞き覚えのある声に振り返るとそこにはジーンが護衛も引き連れずに立っていた。

 周囲を警戒しつつ銃口を向けて牽制する。

 

 「これがお前の切り札か?」

 

 銃口を向けられたというのに余裕の表情は崩れない。

 当たらないと確信があるのか…。

 不穏な雰囲気を感じながら全員がジーンを睨みつける中、当の本人は大声で笑った。

 

 「フハハハハ、切り札?違うな。私の切り札は別にある」

 「何!?」

 「起きろ!ウルスラ!!」

 

 ウルスラと聞いて周囲を確認するがここには五人しか居らず、ウルスラは何処にもいなかった。

 注意を逸らすための発言かと疑っているとエルザが呻き声を漏らし、両腕で身体を押さえるように抱きしめていた。

 

 「駄目よ…駄目…ウルスラ…」

 「どうしたんだエルザ!?」

 「ウルスラが来る前に私を…撃ちなさい!!」

 「本当にどうしたんですかエルザさん――――ッ!?」

 

 何かに突き飛ばされるように身体が飛んだ。

 床を転げながらすぐさま体勢を立て直す。

 周りを見るとバットだけでなくスネークとパイソンも同様に転がり立ち上がり警戒をエルザに向けていた。

 

 『呪われた蛇の子供たちが生まれる前に…』

 

 ふわりと宙を浮いたエルザ。

 雰囲気が変わり危機感が増す。

 

 「PK(サイコキネシス)!?」

 「ウルスラとエルザは元々一つの人格だった。人工的に超能力を強化する過程で二つに分かれ、ウルスラは感情と引換に強大な力を手に入れた。あのメタルギアは未完成の試作機だ。だが、ウルスラが搭乗することで補ってくれる」

 

 自慢げに話すジーンの言葉にバットは思わず可哀そうなモノを見る様な瞳を向けてしまった、

 

 「え?なんで乗せちゃったの…」

 

 単体で飛行能力にサイコキネシスを扱えるウルスラは強敵だ。

 仲間意識の芽生えているエルザの人格がある分戦い難く、コブラ部隊と同格かそれ以上の敵だったろう。

 それなのになんで欠陥機を補うために乗せちゃうかなと本音が漏れてしまった…。

 

 羽と思われた部位が左右に開き、浮遊しながら中央ブロック下部に取り付けられたガトリングガンが銃口を向ける。

 起動し動き出して機械部品が駆動する音が奇声のように響き渡る。

 そこに浮遊したウルスラが乗り込む。

 

 「来るぞ!散れ!!」

 

 パイソンの叫びに呼応して周囲のコンテナを盾にして身を隠す。

 ガトリングガンが火を噴いてスネークが隠れたコンテナに銃弾を叩き込んでいく。

 先の言葉と攻撃対象からスネークを狙っていると気付いたバットとパイソンは身を乗り出してトリガーを引くが、メタルギアの装甲はそう薄いものではない。

 何十発も放った弾丸は甲高い音を発生させて弾かれる。

 打つ手はないのかと焦りを濃くする二人に希望が映り込む。

 脚部に当たった弾丸が火花でなく電流が散った。

 

 「脚だ!脚を狙え!!」

 「解かりましたよっと!」

 

 弱点を把握できたことを幸いに手榴弾を投げ込んで脚部で爆発させる。

 一瞬崩れ落ちそうになった体勢をスラスターを吹かして浮遊する事で持ち直し、そのまま隠れていたコンテナに振って来る。

 大慌てで飛び退き、押し潰されたコンテナの破片に当たらないように転がってでも避ける。

 両翼の装甲が開かれ小型ミサイルが飛翔する。 

 

 『言っておくけど女だからって手加減は無用よ』

 「無理!手加減とかいう次元じゃないし、意識を強く持ってエルザさん!!」

 

 大声で叫んでも届きはしない。

 降り注ぐミサイル群を迎撃したり、コンテナを盾にしたりと各自で回避行動に入る。

 

 「チッ、厄介な…」

 「シャゴホットに比べればそれほどじゃない」

 「ただ中にはエルザさんが…」

 「兎も角あのメタルギアを止めるのが先決だ」

 

 少し熱くなった頭を冷やすように、体内に溜まった熱気を吐き出し。

 ニヤリと笑う。

 

 「行きます!」

 「――行け!!」

 

 跳び出したバットは回り込むように姿を晒して走り出す。

 気付いたウルスラがガトリングガンを放って命を刈り取ろうとするが、その前にスネークが脚部を銃撃して注意を分断させる。

 バットが近づいた所で何が出来る?

 単なる囮で本命は細く脆い脚部への攻撃。

 つまりはスネークだと結論付けるとまとめて吹き飛ばそうと再び両翼の装甲を展開させた。

 

 「スネークさん!!」

 「解かっている!!」

 

 逃げ回る事を辞めたバットも脚部を攻撃していたスネークも銃口を開かれた両翼に向ける。

 狙いに気付いたがもう遅い。

 発射体勢に入った小型ミサイル発射口に銃撃が集中する。

 硬い装甲版を展開させたことで銃弾でも十分なダメージが入り、さらに小型ミサイルが爆発して集中した左翼が吹き飛んだ。

 

 『おのれ…呪われた蛇だけでも!!』

 

 右翼よりミサイルが打ち上げられスネーク狙いで降り注いでいくが、スネークは走り出し、フリーとなったバットが幾らかを撃ち落とす。

 苛立ちが頂点に達しそうなウルスラは急に感じた寒気に我に返る。

 先ほどから二人ばかり見ていたがもうひとり―――パイソンは何処に行った?

 

 「――凍れ」

 

 バットとスネークを囮として死角より回り込み、接近していたパイソンが液体窒素入りの手榴弾を放って機体を凍り付かせ始めていた。

 無理にスラスターを吹かして引きはがそうとも思ったが、左翼が破損して使用不能。

 なら右翼でと思う間もなく駆け寄ったバットが爆弾を投げ込んで右翼も左翼同様に吹き飛ぶ。

 もうこのメタルギアは使い物にならないと判断して、ウルスラはサイコキネシスでハッチを強引に開く。

 

 『まだ私は!!』

 

 ハッチより出てきたウルスラは未だに戦意に満ちていた。

 サイコキネシスでスネークを吹き飛ばし、睨みながら近づいて行く。

 吹き飛ばされた衝撃でスネークの拳銃が床を転がった。

 スネークを助けようと駆け出したパイソンが同様に吹き飛ばされる中、バットは転がった拳銃を手にしてウルスラへと狙いを付けた。

 

 「エルザ(・・・)さん!」

 

 バットの叫びに反応してピクリと動いてウルスラが睨みつける。

 今にも泣き出しそうな表情で無理やりに微笑みを浮かべた顔を見るや振るわれようとしていた力の流動が停止した。

 ほんの一瞬であったが、バットは彼女を無下にしない為にも逃す愚行は犯さない。

 

 「…ごめんなさい」

 

 その言葉を聞いた彼女(・・)は薄っすらと笑みを浮かべ、放たれた弾丸をその身に受けた。

 倒れ込む彼女にバットは駆け寄る。

 死んでいないのならまだ彼女達(・・・)を助けられると信じて。

 

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