メタルギアの世界に一匹の蝙蝠がINしました   作:チェリオ

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本当に兵器の投入が尋常じゃない件について

 アマンダにチコ、負傷したサンディニスタ兵士を国境なき軍隊(MSF)へと送ったスネークとバットは、(スピア)―――核の追跡をすべく、列車車庫(ターミナル)に急ぎ向かう。

 喧嘩する度にと山岳(イラス)辺りで過ごすために、いつの間にか詳しくなったチコによると、積み荷は艀から列車へと移されて山岳の列車車庫にてトラックに乗せ換えられるとの事。

 最短で向かおうにも捕虜収容所であるアルデア・ロス・デスピュルトスから珈琲工場を抜けて行かねばならないのだが、直接向かう道は塞がれているので一度カミーノ・デ・ラーバ(三叉路)に戻って珈琲工場のあるカフェタル・アロマ・エンカンタドへと行かねばならない。

 捕虜収容所に向かう際も三叉路には高台に狙撃手、珈琲工場は見張り台を設けて警備兵を配置しているので物陰にも注意を払わなければならないのだが、どうにもここらを警備している兵士は意識が低いようだ。

 

 三叉路の狙撃手は高台に伏せて待ち構えているものの、暇なのか立ててある案山子を狙い撃つ事に夢中で周囲への警戒が足りず、珈琲工場には見張り台があるものの見張りが居らず、捕まえたサンディニスタの捕虜はその辺に転がしてあるので救出がし易かったりと真面目にスニーキングミッションをしているのが馬鹿らしくなる。

 …おかげで列車車庫(ターミナル)まで何ら苦も無く突き進めた訳だが、ここまで楽出来たツケを払わされる形で敵意剥き出しの敵部隊が登場したのだ。

 

 列車車庫と言うだけあって線路に列車が停車し、列車を仕舞う建物にコンテナ類が並んでいるので遮蔽物には困らない戦場(・・)であるが、敵が所有している兵器を考えるにそれだけでは心もとなく感じる。

 

 「相手は二人なんだからもうちょっと手加減しても良いんですよ!」

 「装甲車をほぼ無傷で奪った時点でそれは聞いてもらえないだろう。ガンシップ(戦闘ヘリ)でないだけ有難く思え!!」

 「なるほど」

 「納得するより手を動かせ!」

 

 二手に分かれながら互いにカバーしつつ、敵兵力を減らす事に主眼を置いて撃ちまくる。

 彼らの手持ちは拳銃の種類こそ違うものの主武器はM16A1(アサルトライフル)に投擲武器でグレネード(手榴弾)系で、敵が持ち出した兵器に対抗するには弱すぎる。

 

 ソ連の新鋭主力戦車である第二世代主力戦車T-72U。

 主砲の125mm滑腔砲の威力は抜群で、スネークが隠れていた空の車両を吹き飛ばす程の威力を見せた。

 転がり回避したスネークを援護すべく、目立つように撃って出るバット。

 

 正直スネークもバットも焦っている。

 チコの情報に頼ってここまで来たものの、到着した時には列車より核はトラックに乗せ換えた後で、トンネルの奥へと消えて行くところであった。

 間に合わなかった上に戦車によって列車がトンネル入り口まで吹き飛ばされて、衝撃で崩落して物理的に通行不可能とされ、今はその戦車との戦闘で時間が掛けられていく。

 早く追わないといけないのに。

 焦りながらコンテナの裏に隠れる。

 

 「大丈夫ですよスネークさん。歩兵を片付けたら装甲車みたく上に飛び乗って部隊長を引き摺り下ろしてやりますよ」

 「それは心強いな」

 

 銃口を敵に向けて発砲し、戦車と共に現れた最後の随伴兵を片付けた。

 これで残るは戦車だけ。

 そう思った二人にナニカが破裂する甲高い音が聞こえ、振り返ると人が隠れられるような場所は無かったのだが、何処からか随伴兵が現れたのだ。

 

 「可笑しいでしょそれは!!」

 

 大声で突っ込みながらSAA(リボルバー拳銃)の早撃ちにより、秒単位で新手を片付ける。

 まるでゲーム(・・・)のような現れようだなと思いながら、一度あったらまたあるだろうと考え、甲高い破裂音が聞こえると同時に銃口を向けて、躊躇う事無くトリガーを引く。

 するとまたも何処からか現れた随伴兵が無防備のまま倒れる。

 一体何なんだと考える暇も与えず、随伴兵を全員倒された事で「よくも!!」と叫びながら戦車より部隊長が上半身を曝け出した。

 

 「「…はぁ?」」

 

 仲間が居なくなったからと言って身を晒した意味が理解できず声が重なり漏れる。

 呆れた表情を浮かべたバットの射撃で部隊長のヘルメットが弾き飛ばされ、脱力したスネークにより顔面に麻酔弾を撃ち込まれる。

 

 「ほわぁあああああ!!」

 

 眠るでなくて大声で苦しみ叫んだ部隊長。

 一応バットが心臓発作ではないかと確認し、ただ眠っているだけと確認して苦笑いを浮かべる。

 そしてスネークは無線機でカズに連絡をつける。

 

 「カズ!積み荷はやはり核だった。間に合わず山道に入って行ったが、トンネルが封鎖されて通れない。チコに他の入り口がないか聞いてくれ」

 『山道の奥は敵の本拠地だぞ。…アンタ達にはリスク(危険)ビジネス(仕事)も関係ないんだな。チコに代わるぞ』

 『山道に行きたいんだね。でもそこからじゃ無理だよ。一度収容所に戻って北に行けば山道に通じている橋があるけど、バリケードで塞がれているんだ』

 「グレネード(手榴弾)ならあるが…」

 『そんなのじゃ無理だよ。もっと威力がいるよ』

 『ならこちらからC4爆弾を急ぎ送ろう。スネークとバットは収容所に戻っていてくれ。すぐに届ける』

 「聞こえたなバット」

 「はい。とりあえず戻りましょうか。あ、アレの回収頼みます」

 『本当にボスもバットもすごいよなぁ。たった二人で戦車奪っちゃうんだもん』

 

 素直な賛辞にバットが胸を張るも、スネークは調子に乗るなよと視線を向けて収容所へと急ぎ向かう。

 トンネル前で戦闘を起こしただけに道中の警戒レベルは高かったものの、二人共すでに通った道のりで地形を把握しているので隠れて進むのには然程苦労は無かった。

 捕虜収容所であるアルデア・ロス・デスピュルトスは、こちら側の勢力圏となっている。

 チコを助けた際に敵を無力化したのを良い事に、バットが説得し引き込んだ仲間を移して、アルデア・ロス・デスピュルトスを拠点として活動を続けさせている。

 表向きには敵の拠点であるも、内情はそう偽装したこちら側の兵士。

 これで捕虜が送られてもこちらの都合の良い誤情報を相手に掴ませ、捕虜は手間をかけずに救出できる。

 すでに仮拠点からトラックから武器まで全てを移しており、もし敵が攻め込んでも多少であれば十分に対応できるだろう。

 

 到着したのは良いがまだ壁を破壊するC4が届いておらず、二人はここで足止めを食らう事になる。

 が、二人共焦りを落ち着かせ、この時間を楽しんでいた。

 

 「美味い!!」

 「おかわりまだありますからね」

 

 昼食を取っていなかったという事で、バットが料理を振る舞っているのだ。

 マザーベースから食材を搬送させたことで、そちらもほどほどに充実していて手の込んだものも幾らかは作れる。

 バットが作ったのは焼き飯。

 味付けは塩コショウに醤油で、具材には豚バラにネギ、みじん切りにした玉葱に白米に絡めた卵など。

 簡単ながらも料理人スキルでバフが掛かった食事は兵士達の英気に繋がる。

 パラリと焼き上がった焼き飯を掻き込むように喰らい、適度な塩分が汗を流した身体に沁み込んでいく。

 さらにおかずとして出された一口大に切った鶏もも肉を焼き上げ、甘酢あんをかけた甘酢餡掛けがよく進む。

 さっぱりとした酸味に甘味が疲れた身体でも摂取しやすく、カリッとした衣から肉汁が溢れる唐揚げの旨さがどしりと胃に溜まる。

 

 『うまそうだな』

 「言うまでもなく美味いぞ。酒があれば最高だろうな。この甘酢餡だったか…これだけで瓶の一本や二本は空くだろうな」

 『…ゴクリ……な、なぁ、スネーク』

 「言っておくがこれは俺の分だし、持ち帰るのは厳しいぞ」

 『そ、そんなぁ…』

 「帰ったら作ってあげますから」

 『ほ、本当か!?』

 

 無線越しでも身を乗り出して喜んでいるのを察するが、同時に指令室に籠っている部下達が白い眼を向けているのも判る。

 カズはそんな空気を一新しようとわざとらしい咳ばらいをし、話題を別のものに変える。

 

 『そう言えば一つ聞きたかったのだが…バットはどうしてこの話に乗ったんだ。まさかあの教授の話を真に受けた訳ではないんだろう?』

 

 逸らし方は雑だったが、確かに気になるところだろう。

 カズや他の仲間にとってはバットに“英雄像”を抱いている連中だっているだろうし…。

 俺は予想がつくので聞く気すらなかったが…。

 

 「え?だってパスちゃん可哀そうじゃないですか。それに話を聞いて許せなかったですし」

 『それだけなのか…ほかに思う事とか―』

 「思う事…そう言えば教授、良い声してましたよねぇ」

 『……スネーク』

 「言うな。そして聞くな。こういう奴なんだ」

 「ボス。爆破準備整いました!」

 「今行く」

 

 残っていた焼き飯を口に掻き込み、水で流し込むと甘酢餡掛けを二つほど放り込んで、噛み締めながら向かう。

 腹も膨れたし、ちょっとした休憩も取れて精神的にも肉体的にも多少は回復した。

 勢いのある二人はバリケードを爆破して出来た道を通り、二重になっている橋を渡り、小さな砦を攻略して敵の本拠地である施設に潜り込んだ。

 装備は充実していたようだが人手不足、もしくは本拠地近くだから油断していたのか兵士の数自体は少なく、突破は難しくなかった。

 砦の奥より拠点内部に入れるようで、入り口には数台のトラックが停車している。

 

 「どれが核を詰んだ奴か解ります?」

 「…探すぞ」

 「覚えてます?」

 「手あたり次第探すぞ!」

 

 冷めた視線に一瞬の沈黙を振り払うようにスネークはトラックの荷台を覗き込み叫ぶ。

 

 「太陽ぉおおおおおおおおお!!」

 「うるさっ(五月蠅い)!?敵地なんですよ」

 「すまない。口が勝手に…」

 「しっかりしてくださいよまったく………スネークさん、マグロがありますよ!!」

 「お前も十分五月蠅いぞ」

 「良いからフルトン回収を!」

 「落ち着け」

 

 「監督!?」と叫んだり、女性のポスターに声を漏らしたりと騒がしくも潜入工作を続ける二人は、トラックの荷台を探し回って最後の最後に目的のトラックに巡り合えた。

 荷物はないけれどまだ温かく、停車してまだ間もない事が分かる。

 中に入ると自然豊かだった外とは変わって機械的な内装なので、雰囲気と言うか空気から異なって感じられる。

 潜入してからはトラックの時の様に騒がしくせず、ちゃんと潜入しながら奥に進んで行く。

 

 「待ってくれ!話が違う!!」

 

 聞こえてきた怒鳴り声に身を隠して様子を窺う。

 声は階段の上の方からしており、身を潜めながらも見上げてみると二人の男性が険悪な雰囲気で話し合っていた。

 片やスキンヘッドの男性で、もう一人は眼鏡をかけた知的そうな男性。

 ただ眼鏡をかけている方は体格を考えて、明らかに頭の位置が低い事からナニカに座っている、もしくは車椅子の可能性が高い。

 二人共耳を澄ますも距離が合って上手く聞き取れず“完全なる抑止力”とか単語が僅かに拾えるばかり。

 収音マイクでもあれば助かったのだけど…。

 

 「博士、私の言うとおりに大人しくしていればいいんだ!そうすればお前は学会を大手を振って歩く事が出来る!人類史に名を刻むことになるだぞ!」

 「そんなのは御免だ…僕を……僕を利用したんだな…」

 

 互いに怒鳴り声の応酬が始まったかと思えば、スキンヘッドの男性がもう一人を階段へと押しやる。

 察したバットが駆け出そうとするもスネークが肩を掴んで止め、顔を横に振って“出るな”と意志を伝える。

 抗議の視線を向けるも頑なに断り、渋々ながら言う事を聞いて引っ込んだ。

 再び覗き見ているとやはりスキンヘッドの男性が突き落として、眼鏡の男性が車いすごと転がっていく。

 

 「…博士。平和は歩いて来ない。互いに歩み寄るしかないのだ――――勝利のV(VICTORY)サイン」

 

 そう呟いてピース()サインをするだけして男は去って行き、周囲に人が居ない事を確認して車椅子の男性に駆け寄る。

 バットはパッと身体を眺めて「大怪我はしていませんよ」と安堵する。が、転げ落とされた男性は自身の事どころではない。

 「待ってくれ!」と去っていた男に対して手を伸ばしながら叫び続けていた。

 

 「おい、大丈夫か!」

 「アイツは核を使うつもりなんだ!核を撃つ気なんだ!!」

 「「―――ッ!?」」

 

 彼の発言に焦りと衝撃で二人が驚愕する中、ヘリコプターのローター音が鳴り響いて大慌てで駆けだす。

 先ほどのスキンヘッドの男性が去って行った通路へ入り、止めるべく追うも辿り着いた先は小さなドームとなっていて誰も居なかった。

 代わりに頭上にコリブリによって吊られていく巨大なロボットが、複数の戦闘ヘリに護衛されている光景が広がっていた。

 

 『潰せぇ!!』

 

 スピーカーを通して響いた声に合わせ、ロボットが運ばれるのと入れ違いでナニカが開閉可能な天幕からドーム内へと跳び込んで来た。

 推進力のブースターが取り付けられた横広がりの後部に前足のようなキャタピラ付きの脚部、後部よりかなり小さな胴体などパッと見た感じ蜘蛛みたいな見た目である。

 蜘蛛であるなら目がたくさんついた頭部がある筈なのだが、そこにはコリブリと同じ円柱の機器が取り付けられていた。

 

 『不味い!そいつは無人兵器“ピューパ”だ!!』

 

 今度は先ほどの車椅子の男性がスピーカーより届き、スネークとバットは“ピューパ”とやらに対峙するのだった。

 

 

 

 

 

 

●ちょっとした一コマ:カズの戦い

 

 俺はカズヒラ・ミラー。

 皆からはカズと呼ばれ、この国境なき軍隊(MSF)では副指令としてスネーク達の支援や運営を行っている。

 スネークは戦闘技術に兵士を惹き付ける魅力は大したもんだ。しかしながらビジネスマンとしては俺ほどではない。だからこそのパートナーだ(共同経営者)。

 部隊内の評価も信頼も人望もかなりのものだと自負している。

 顔もイケメンでナイスガイ(自己評価)な俺だが、最近悩みと言うか困った問題で頭を悩ませているのだ。

 

 一般社会では上下関係は必要であり、軍などの状況下では上下関係は絶対。

 しかし自分が上だからと頭ごなしに命令すれば反感を買い、信用もなく命を懸ける任務を命じても覚悟して受ける者はいない。

 ゆえに上となる者は少なからず部下を納得させられるだけの、実力と信頼を勝ち取らねばならないのだ。

 

 何故このような話をしたかと言うと、まさにそれが頭を悩ます種そのものだからである。

 国境なき軍隊には兵士を惹き付ける魅力あふれる者が複数名いる。

 “ビッグボス”の称号を持つ英雄スネークに厳しいが面倒見は良い頼れる兄貴分パイソン。

 自身もそれなりに技量を持っていると言ってもスネークほどの逸話も実力もなく、パイソンみたく人間離れした強さは無い。

 それでも副指令として申し分ない実力と執務をこなして来た。

 しかし突如としてスネークのパートナー(ここ強調)の立場を脅かす存在がマザーベースに現れたのだ。

 

 蝙蝠のコードネームを持つバットという青年。

 彼もまた数多くの逸話を持つ英雄であり、スネークと共にヴォルギンやザ・ボスと戦ったという事は兵士達の間では有名な話だ。

 英雄度も高いがCQCはスネーク曰く「俺以上かも知れない」と言わせるほどの実力者。

 そして料理が得意で童顔で可愛らしい中性的な顔立ち。

 基本的に真面目だが何処か抜けているところが可愛いなどと言ってマザーベースの女性陣が噂を……コホン、と、兎に角、大変兵士達に影響を与える人物なのだバットは。

 協力してくれる事で兵士達の士気は高まっているのでそれは有難い事だが、“スネークの相棒”と兵士に認知され始めている事でスネークを後で支えているパートナー(副指令)である俺の立場が危うくなっているのだ。

 ここは相手が英雄であろうが臆することなく自身の実力を持って兵士達に知らしめる必要がある。

 

 ……決して…決してマザーベースに来るたびに女性陣にちやほやされて、部屋に誘われるからではなぁーい!!

 ※ただ単に容姿から着せ替え人形として遊ばれているだけである。

 

 すまない、取り乱した。

 そういう事で俺はバットに挑んで自らの実力を示し、俺こそがスネークのパートナーなのだと証明しなければならない。

 …もし上手く行けばバットに向いていた女性陣の目が俺に向くかも知れないしな(小声

 

 すでにバットには話は通しておいた。

 ここは娯楽に疎い海上プラントと言う事で兵士達に娯楽提供と、まだ馴染んでない奴らにバットの紹介も兼ねての三本勝負をしようじゃないか…と。

 いやはやこちらの真意に気付かず二つ返事で受けてくれて本当に助かるよ。

 正々堂々と握手を交わしたが、俺も馬鹿正直に競い合おうとは思っていない。

 以前スネークと出会った当初は敵対しており、部隊は壊滅して俺は捕虜の身となってしまった。

 スネークは俺に仲間になれと迫ったが、俺は癪だったので俺が負けたら仲間になるし、俺が勝てばここから逃がすという条件で勝負を行った。

 勝負は俺が自信のあるもので挑んだのだが、その事如くでスネークは上回っていて散々な結果に。

 生魚に慣れてないだろうと思って早食いを挑んだけど、慣れている以前に“サバイバルビュアー”とか言って生魚に齧り付いて食べるとかどうなんだ…

 

 ウォッホン、兎も角同じ過ちは繰り返さない。

 なにせ相手は骨折を瞬時に完治させる異能者だ。

 下調べもせずに挑めば醜態を晒す羽目になるだろう。

 そもそも相手は名を馳せた英雄だ。全力を持って立ち向かわねば失礼というもの。

 そう!前もって準備し、情報を集めて、策を巡らすのは当然の事だと言えるだろう!うん、俺間違ってない。

 

 俺の実力を知らしめる事と不正が無かったと証人になってもらうべく、告知を大々的に行った結果か大勢の兵士達が集まり、会場はかなりの熱気を誇っていた。

 そんな中で最初の勝負が行われる。

 一番目は射撃訓練上にて狙撃の腕を競う。

 狙撃が超得意と言う事はなかったが、バットよりはあるつもりだ。

 情報収集している中で、バット自身狙撃に自信がないと発言しており(ジ・エンド時)、普段からどうも悪知恵は回っても我慢強いタイプではない事から狙撃に不向きな事は解かっている。

 案の定、数を熟すうちに集中力が切れて命中率が極端に落ちて行った。

 狙撃勝負は俺の勝ちで幕を下ろす。

 

 二試合目は“早撃ち”。

 正直この勝負は捨て試合だ。

 別に俺もバットの無様を晒そうとか人間関係を崩そうと思っている訳ではない。

 勝たねばならないが勝ち方を無視してまで圧倒する事は無い。

 これからもバットとは任務を通して関わりを持たねばならないとなると、逆に勝ち方に拘らなければならない。

 全てがバットに不向きの勝負では反感の目を受けるので、二試合目はわざと負ける勝負を持ち込んだのだ。

 お互いに一勝して最終ラウンドに進んだ方が観客も盛り上がるだろ?

 ただこれに限って言えば負け方も重要なのでCQCは無しだ。

 ……だって呆気なく投げ飛ばされて最悪意識を飛ばされるような無様を晒したくない―――副指令という立場上晒す訳にはいかないからな。

 案の定見事な早撃ちだった。

 しかし速度重視で命中精度は若干落ちているようだ。

 対して俺は速度で敗けたがだいたい的の真ん中を射抜いていた。

 

 ここまでは上手く事を進ませ、一勝一敗の接戦に観客が湧きたつ。

 そして最後の勝負は料理勝負である。

 種目が発表された瞬間に観客たちが各々にバットの勝ちだなと思い込んだ。

 彼の調理の技術は直に食べた者から周囲に伝えられ、すでに国境なき軍隊(MFS)では“スネークを虜にする腕前”として知れ渡っている。

 当然バットの勝ちだと皆が思い込んだだろう。

 雰囲気は自信なさげながらも懸命に挑む体を装い、内心では勝ちを確信してほくそ笑む。

 料理はわざわざ日本の九州より取り寄せた地鶏を使った海南鶏飯(ハイナンジ―ファ)

 作る為に独学で調理を学び、所属している兵士の中で料理人を探し出して教えを乞うたりもした。

 プロとしては及第点かも知れないが、今回の勝負に限ってはそれでも問題は無いはずだ。

 真面目に調理しながらバットの様子を眺めると同じく鶏をメインとした水炊きを作るようだが、様子を見てやはりと頬を緩めた。

 審査員は元プロ料理人や感性豊かな奴ら五名で行う事に。

 料理を口にした審査員たちの表情を見ればバットの方が高評価だったのは見れ取れた。

 だが、この勝負で負ける事はあり得ない。

 

 なにせこの勝負は味は当然として見た目に手際、調理で行った工夫などの四項目による採点。

 確かにバットの料理は普通に作ったものよりも格段美味しく感じる。

 が、しかしながらそれは項目の一つであり、工夫などせずに盛り付けも適当なバットの料理は他の項目で点数を落として行き、俺はバランスよく四項目すべてで点数を稼ぐものだから勝利は当たり前。

 

 「いやぁ、負けましたよ。美味しそうでしたものね」

 「何を言う。採点が点数制でなければこちらが負けていたさ。腕前や審査員の表情を見たら結果はどちらが美味かったかは明白だったからな」

 

 悔しそうではあるがにこやかに声をかけてきたバットに対し、うぬぼれる事無く相手を称える言葉を忘れずににこやかに握手を交わす。

 

 勝った!

 接戦だった事から観客の歓声が挙がり、俺は高らかに勝利を喜んだ。

 これで皆に見せつけられた。

 全てが計画通りと笑みを浮かべていると早速笑みを浮かべた女性が近づき―――――否、通り過ぎてバットの前で立ち止まった。 

 

 「ねぇ、私が盛り付け教えてあげましょうか?」

 「はぇ?」

 

 その抜けた声は俺だったのだろうか、それとも突然言われたバットだったのだろうか。

 呆然と見つめているとバットの周囲に女性陣が現れ「早撃ち見事だったね。今度教えてくれない?」とか「狙撃苦手なら教えてあげるよ」とか「料理するなら私味見したい」などなど和気藹々と女性達から話しかけられていた。

 最後にはイナゴの大群のように女性に群れられた中で連れていかれ、俺は厨房にぽつりと立ち尽くしていた。

 勝負を見ていたスネークが意図を理解してか、肩をポンと叩く。

 

 「お前の勝ちだな」

 「………な――」

 「な?」

 「納得できない!何故だぁあああああああ!!」

 

 マザーベースに勝利者であるカズの虚しい叫びが轟くのであった…。

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